清掃員の格好と道具を持った集団がディガルコーポレーションの受付に話し掛ける。
「失礼、会議室の清掃を頼まれたのだがセキュリティカードを戴けないだろうか?」
物腰柔らかく告げられた言葉に受付の女性はうっとりとする。
それは言葉以外にも話し掛けた男が美形だったからだろう。
「今日....は清掃の予定は入っていない筈ですが....」
「おや?しかしこちらも連絡を受けたんだけどな....
クライアントの名前は園咲冴子さんなんだよ。」
「えっ!代表取締役が?」
「あぁ、何でも自分が会社に戻る間に部屋を完璧に綺麗にして欲しいと頼まれたんだ。
あの方の完璧主義は有名だろう?
ここで揉めて掃除が遅れたとなれば君にも迷惑が掛かる....そうだ、不安ならば中に入れて鍵を閉めてくれても構わないよ。
どちらにしろ時間が掛かるからね....どうだろうか?」
その言葉に受付は納得するとその集団を会議室へと運ぶのだった。
鍵を閉められたことを確認すると清掃員は帽子を取る。
その正体は霧彦と赤矢、そして黒岩だった。
「上手く潜入できたな。」
「あぁ、彼女の癖が変わっていなくて良かったよ。」
冴子は時間を無駄にすることを嫌う完璧主義者だ。
それは掃除にも現れていた。
掃除の時間を分単位で決めておりそれは会社の中でも有名だった。
清掃業者の予定をいきなり入れることもそこまで不思議ではなかった。
「それで...これからどうする?」
黒岩が霧彦に尋ねる。
「この会議室の隣が冴子のいる社長室だ。
セキュリティは厳しいが入れればリーゼの居場所も分かる。」
「必要なのは会社でも役員を取り締まれる権限を持った者に与えられるセキュリティカードだ。
昔の私は持っていたが....冴子に殺されかけた時に服ごと壊されたからもう使えない。」
「それじゃどうするんだ?」
「ここもガイアメモリに関する仕事をしていても表向きは普通の会社だ。
このセキュリティカードを持っている役員はいる。」
「その役員からセキュリティカードを盗むんだな?」
「その通りだ。
二人にはもう少し協力して貰うよ。」
霧彦はそう言うと準備を始めるのだった。
役員の顔を覚えていた霧彦が黒岩と共に通路を歩いていた役員を捕まえると気絶させる。
そして役員からカードを奪うとそれを使い社長室に入り込んだ。
霧彦は社長室にあるパソコンを操作し必要なデータを調べる。
「.....ここだな。
地下30階の研究フロアにリーゼがいる。
このまま行くなら廊下を出た隠しエレベーターから行くと良いい。
そこまでのセキュリティは解除しておく。」
「助かります。
貴方はどうするのですか?」
「私はこの部屋に用があるからね。
それが終わったらさっさと退散するよ。
君達こそ早く....まだバレてはいないが潜入に気付かれるのも時間の問題だ。」
霧彦の言葉に従い赤矢と黒岩は社長室を出ていくとリーゼの元へ向かうのだった。
誰もいなくなった室内を霧彦はゆっくりと見渡し一つの怪しい空間に目を付ける。
壁にカードが入る穴が一つだけ開いている。
「ここか。」
冴子がミュージアム関連のメモリを保管する際に使っていた隠し部屋....ここならばきっと
霧彦は周りを見ながら懐から何かを取り出そうとすると社長室がノックされる。
コンコン.....
その事に霧彦は違和感を覚える。
(おかしい....社員ならこの時間帯に社長室に誰もいないことは分かる筈だ。
社外の者なら一体.....)
そう考えていると扉が開き中に入ってきた。
そして、霧彦を見るなり言う。
「あぁ、漸く会えましたね"須藤 霧彦"さん。」
「....貴方は?」
「あぁ、申し遅れました。
私は井坂 深紅郎、風都でしがない町医者を営んでいます。
そして、ガイアメモリの信奉者でもある。」
そう言うと井坂はウェザーメモリを取り出して霧彦に見せた。
本来会う筈の無かった二人が出会う。
同じ女性に関わったものとして....
「しかし、驚きましたよ。
冴子君がミュージアムに行っている間、ここで待っていたら思わぬ来客があったのですから....
何をするのか気になって見ていましたが無名の部下は救援で貴方はそこに隠された何かを欲しているようですね。」
「それを邪魔すると言う訳か?
風都を震撼させた殺人鬼君。」
「まさか、ただ何をしたいのか気になっているだけですよ。
その中身は知りませんが....自分を殺した者のいる会社に入るリスクを負ってまで何を手に入れたいのかとね。」
「私はこの力を復讐に使うつもりはない。
これ以上の犠牲を生まないように止める力が欲しいだけだ。」
「それが、この中にあると?
.......ふむ、以前の私なら貴方の行動を見逃したでしょうね。
自分の実力一つで冴子君の夫になる程の力を見せた。
そんな貴方の行う事はきっと面白いのでしょうが私にも野望があります。」
「Weather upgrade」
「ですからここで死んでください。」
井坂はそう言いながらメモリを挿して強化ウェザードーパントへと変身する。
井坂は手に竜巻を作ると霧彦へ放った。
その攻撃が当たる前に外からガラスを割って堂本が現れる。
「ほぉ、今日は来客が多い様だ。」
「お前の相手は俺がする。」
堂本はそう言うとNEVERドライバーを着ける。
「METAL」
「変身」
堂本がドライバーにメモリを装填し展開すると肉体が銀色の鋼で覆われていき一本の角のようなアンテナが頭部に現れると変身が完了した。
「新しい仮面ライダーですか....どれだけ強いのか試してみましょうかね!」
井坂は雷撃を堂本に放つ。
堂本はそれを避けようとせず真正面から受けた。
強烈な火花が上がるがダメージは無い。
「強化された私の雷撃でダメージが無いとは、随分と硬いですね。」
仮面ライダーメタルは他のNEVERのライダーと違い特出する能力は無いがその辺、メタルの硬度を限界まで引き上げており並大抵の攻撃では傷一つ付かない。
堂本はメタルシャフトを生成すると井坂に向けて構える。
「今度はこっちから行くぞ。」
堂本は一気に井坂との間合いを詰めるとメタルシャフトを振るうのだった。
井坂と堂本が戦っている中、霧彦は懐からカードとデバイスを取り出すとデバイスから伸びたコードに持っているカードを接続し壁にカードを差し込む。
するとデバイスが動きロックされているパスワードを解読する。
ピーと言う音と共にロックが解除されると隠された扉が開く。
中にあった赤い箱を霧彦は手に取ると蓋を開ける。
そこには霧彦が過去に持っていたナスカメモリが入っていた。
そして霧彦は孤島でメイカーに渡された"ガイアドライバーⅡ"を取り出す。
孤島で目を覚ました私にメイカーが話し掛けてきた時を思い出す。
「お目覚めですか須藤 霧彦さん。」
天井のスピーカーから声が聞こえてくる。
「君は?」
「私はメイカー....この孤島で皆様のサポートをしている人工知能です。
先ずは、意識を取り戻して下さりありがとうございます。
無名様も喜ぶでしょう。」
「無名?.....私を助けたのは無名だったのか?」
「えぇ、それと貴方の妹である雪絵さんも.....
彼女は貴方が死んだと聞いてから復讐のために動いていました。
そんな彼女を止めて無名が孤島へと招いたのです。」
「そうか......」
「無名様が貴方に残されたデータがありますのでご覧下さい。」
そう言うと霧彦の前にモニターが現れる。
その中には無名が映っていた。
「意識を取り戻してくれてありがとうございます。
いきなりの事で驚いているでしょうが、この映像が流れていると言うことは状況が悪い方向に進んでいると言うことです。」
無名は霧彦が目を覚ました時の為に映像を残していた。
そして、この映像は無名とコンタクトが付かなくなった時に霧彦が目を覚ましたら見せるようにメイカーに伝えていた。
「貴方はミュージアムに裏切られて死ぬ運命でした。
ですが、私は貴方が死ぬことと妹さんの記憶が失う運命をどうしても認めることが出来なかった。
だから、ミュージアムを....園咲 琉兵衛を騙し貴方達を助けることにしました。
貴方はもう自由です....妹を連れてここから離れても良い。
だけど、もし戦いを...力を望むのならそれも否定することは出来ません。
だから、貴方にこれを渡します。
この力をどう使うかは貴方の自由です。」
映像が止まるとアームがアタッシュケースを霧彦へと渡す。
「これは無名様が製作された貴方専用のガイアドライバーⅡです。
今の貴方の身体でも使える様に調整してあります。」
しかし、差し出されたアタッシュケースを霧彦は受け取ろうとしない。
「これで...私は何をしたら良いんだ?
私は風都では死んだ人間だ。
死者に無名は何を求めているんだ?」
霧彦の問いにメイカーが答える。
「いえ、無名様がこのドライバーを貴方に残したのは選択して欲しいからです。
園咲家の婿養子として生きてきた貴方だが貴方には他の幹部と違う点があります。
それは"自分の判断に従える強い心"があると言うことです。
だからこそ、貴方はバードドーパントになった少女を助けた。
ミュージアムのトップである園咲 琉兵衛の意見に反抗してでも....自らの意思で拒絶できる心。
それは人工知能である私が持てない素晴らしい力です。
無名様は仰っていました。
"貴方は強い信念がありそれを貫ける覚悟がある"....とこのドライバーを受け取るかは貴方の自由です。」
「風都は、仮面ライダーは今どうなっているんだい?」
霧彦の問いにメイカーが答える。
「ミュージアムとして見れば順調です。
しかし、仮面ライダーや無名個人として見れば....危険です。」
「そうか、なら決めたよ。」
霧彦はドライバーを受け取る。
(私は翔太郎と無名に命を救われた....ならばその借りは返さないといけない。
それに雪絵もほおっておく訳には行かないからな。)
霧彦はガイアドライバーⅡを腰に付ける。
「久し振りの実践だ。
慣らしておこうか。」
「Nasca」
メモリをドライバーに装填して展開する。
肉体が変異しナスカドーパントへと変わる。
その色は
そして、霧彦は言った。
「超高速」
すると身体の色は一気に青へと変わると井坂へと近付き腹部を殴り吹き飛ばした。
「グオっ!」
その姿に堂本が尋ねる。
「随分と強力なメモリだな。」
「いや、自分も驚いているよ。
ここまでの力が出るとはね。」
そう言いながらも彼の色は白色へと戻る。
「?....成る程、短時間しかこの力は使えないのか。」
そう分析していると井坂が立ち上がった。
「あぁ、なんて素晴らしいメモリだ!この私を....強化されたウェザーの力を凌駕するとは....欲しい。
とても欲しいですよそのメモリ!」
興奮する井坂に堂本と霧彦は警戒する。
「あの顔、そう簡単に逃がしてくれそうには無いな。」
「堂本君、君の力も長くはもたない....違うかい?」
「そう言うって事はアンタの力もか?」
「あぁ、直感だが長くはもたない気がしてね。」
「なら、こんな奴に時間をかけてられないな。
逃げるにしても下に行った奴等を置いていけない。」
「なら、逃げる時間を稼ぎつつ"全員脱出"出来る何かを起こせれば良いかな?」
「出来るのか?」
「このドライバーでナスカメモリを使って感覚的だが出来る可能性を見つけた。
だが、少し時間がかかる...それまで
「良いだろう....やってやる。」
そう言うと堂本は一人で井坂へと向かっていった。
その間、霧彦はイメージする。
(無名の部下がいるのは地下30階の研究フロア....どうすればここに行ける?
超高速では壁や地面が邪魔で通れない。
この壁を通り抜ける....いや前提を変えようこれは壁ではない。
もっと、奥へ入れる...."水"、そうだ水だ。
"とても深い水に入る"....その力が欲しい。)
その願いにメモリが答える。
身体の色が緑色に代わると手と足が変化しヒレの様なものが現れる。
それに合わせて霧彦が言った。
「"超潜航"」
霧彦は自分の周りの地面をまるで水のように変わると潜っていった。
「何だ!その力は!」
井坂は霧彦を見て驚く。
「余所見とは良い度胸だな!」
その隙を見逃さない堂本はメタルシャフトを井坂の首へ思いっきり振り下ろした。
回避が間に合わない井坂はダメージを受けてしまう。
普通のドーパントなら致命傷のダメージだが井坂は立ち上がると寧ろ、メモリの力が増大した。
(久々に奥の手を使わされるとは....油断し過ぎましたね。)
井坂の奥の手である歯の中に埋め込んだエンゼルビゼラを使いメモリの力を増強させてダメージから回復したのだ。
(形勢はこちらが不利ですねぇ。
仕方がありません。)
そう考えた井坂は懐からスイッチを取り出し押した。
「それは何だ?」
堂本の疑問に答える。
「冴子君がもしもの時にと渡してくれた緊急用の通信装置です。
これを押すと園咲家に"緊急事態がディガルコーポレーションで起きた"と連絡が行くようになってます。」
その言葉を聞いた堂本は急いでその場を後にする。
それが嘘でも本当でも地下にいる無名の部下が危険になることは明白だったからだ。
敵のいなくなった井坂はメモリを抜くと口から大量の血を吐いた。
「グボハッ!.....やはり無茶はするべきではありませんねぇ。
暫くは身体の回復に勤しまなければ.....テラーのメモリを手にいれる為にも」
井坂はその場で倒れると目を瞑り意識を手放した。
そして、堂本が外を見るとそこには霧彦と無名の部下が何かを抱えて外に出ていた。
計画の成功を確信した堂本は窓ガラスを割るとそのまま外に飛び出した。
ズガン!と言う音とコンクリートの地面が砕けたが堂本本人に大した怪我はなかった。
メタルメモリにより強化されたライダーの身体は頑丈の域を越えていたが、メモリはそうじゃなかった。
落下して立ち上がると堂本の変身が解除されメモリが砕けてしまった。
しかし、堂本はそんなことを気にする様子もなくその場から離れるのであった。
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