無名と共にジェイルメモリの内部へと入り込んだフィリップは目の前の景色に驚愕していた。
そこには"沢山の獅子神"や他にも知らない人物が牢獄へと閉じ込められていた。
皆、牢の鉄格子を握りながら何かを訴えている。
「ここがジェイルメモリの内部?
こんな姿まるで.....」
「"刑務所"みたい......ですか?」
そう言いながら無名はフィリップの前に現れた。
「無名、ここは?」
「優しく言うなら捨てられた魂の拠り所.....
悪く言うなら不要な感情のゴミ箱ですかね?」
「ゴミ箱だって?」
「恐らく、このメモリを発見した時、ミュージアムは実験をした筈です。
何が出来るのか何が出来ないのか確かめる為にね。
そして感情を切り捨てられる能力があると知った。
これを反目する疑いのある構成員に使えば.....」
「決して組織を裏切らない人間を作れる。
まさか、ここにいる人達は....」
「その憐れな実験動物たちでしょうね。
獅子神は自分からこのメモリを使うことを望んでいましたが.....」
「そんな....こんなことって」
フィリップがショックを受ける中、牢獄にいる一人の男性に無名は目を向けた。
それは原作に登場していた"山城 論"の姿もあった。
彼は鉄格子に身を委ねながら一頻りに「葉子....翼...」と家族の名を呼んでいた。
(彼の家族への感情すら奪い取ったのか。
だが、ミュージアムの研究員の資料を見た時、山城 論の名前は無かった。
つまり、彼の身体はもう....)
無名は改めてフィリップに向き直った。
「あまり時間も無さそうだ。
早く、左 翔太郎の閉じ込められている牢獄を探しましょう。」
「だが、彼等をほおっておくのかい?」
「ここにいる者は見たことあります。
ミュージアムの実験により亡くなっている者ばかりです。
仮に彼等を解放しても戻る肉体がなければ意味がない。
もしかしたら、より凶悪な怪物を産むかもしれません。」
ガイアメモリとは人間には未知の部分が数多く残っている。
バイラスの一件から精神体でもドーパントになれる程、その力は常軌を逸している。
もう、これ以上の危険は犯せない.....それに
「こんな窮屈な牢獄からは早く自由になって欲しいですからね。」
無名はそう言うと翔太郎の牢獄を探し始める。
フィリップも言いたいことはあるが今は翔太郎を優先させるべきだと考えて翔太郎探しを続けるのだった。
暫く探していると見覚えのある帽子を着けた翔太郎を見つけた。
「翔太郎!」
フィリップは嬉しさのあまり彼の元へ駆け寄る。
「お前....フィリップか!?
どうしてここに?....まさか、お前もこのメモリに捕まっちまったのか?」
その問いに無名が答える。
「いいえ、貴方を救う為に来たんですよ。」
「お前は.....」
「久し振りですね左 翔太郎さん。」
翔太郎の無事な姿を見たフィリップは涙を流しそうになる。
「兎に角、今は早くここから出よう。」
そう言って牢に手を掛けるがビクともしない。
「何故だ!本にはここに来れば助けられると....」
そう言って焦るフィリップを他所に無名は翔太郎の顔を見て聞いた。
「貴方自身が拒否しているんですね翔太郎さん。」
「...え?」
「なぁ、俺は....この牢獄にいる間の俺は一体何をしたんだ?」
「それはどういう意味ですか?」
「このメモリを挿されてから....感情の制御が難しくなっていった。
最初は軽くイラつく程度だったが、残虐な犯罪や外道と会う度に怒りが強くなっていった。
そして、ジュエルドーパントと戦っていた時、奴の言葉で俺の怒りが限界を向かえて....気が付いたら」
「この牢獄に来ていた...そうですね?」
無名の言葉に翔太郎は頷いた。
「なぁ、教えてくれ。
あの後、俺は何をしたんだ?
俺は......一体....」
その顔は自分の行った罪に対する恐怖で一杯だった。
その問いには相棒であるフィリップも答えられない。
何故なら真実を話したら翔太郎が何を思い感じるのか分かっていたからだ。
その沈黙を破ったのが無名だった。
「僕も詳しいことは分かりません。
何故なら、僕の身体も別の存在に奪われていたからです。」
「別の....存在?」
「"正真正銘の悪魔"とでも言っておきます。
その悪魔に乗っ取られた僕が貴方にジェイルメモリを使い....シュラウドが求めた兵器としての仮面ライダーを生み出そうとしました。」
「仮面ライダーを兵器に.....」
「はい、ですが貴方は兵器にはなっていない。
照井 竜が大道 克己がフィリップが貴方を命懸けで止めました。
お陰で貴方はまだ誰も殺していない。
師である鳴海 荘吉の意思を捨てずに済んでいます。」
「そうか......」
「ですが、怪我人は出ました。
死にかけた人も....」
「!?」
「無名!...君は!」
「だけどそれは貴方一人の責任じゃない。
僕の責任でもある。
僕が身体を奪われなければこんな事態にはならなかった。
だから、僕は"僕の罪"を数えます。
そして、悪魔と向き合い決着を着ける。
貴方はどうしますか?
罪を悔いて生きますか?それとも罪を数えて生きますか?」
「......俺は」
「鳴海 荘吉も完璧ではない。
罪を犯しそれを数えて今の彼が出来上がったんです。
彼が残した言葉は貴方も受け取った筈です。」
「Nobodys....perfect...」
「誰も完璧ではない。
地球の本棚の知識を得られるフィリップですら完璧じゃない。
人は間違う....故に人なんです。
人だから間違い、それを認め改めて未来へと進んでいく。」
「もう一度聞きます左 翔太郎。
貴方はどうしますか?
これから、どう生きていきますか?」
無名の問いに翔太郎は静かに悩む。
「俺は、凡人だ。
お前らみたいに頭も良くねぇ。
だが、親っさんに託された探偵としての生き方や街の人が与えてくれた仮面ライダーの名には誇りを持っている。
これは捨てたくねぇ.....俺はまだ探偵として仮面ライダーとしていたい!」
「ではもう一度、"契約"を......
フィリップと言う悪魔とまた相乗りする為に」
「契約なんて堅苦しい言い方じゃなくて良い。
僕達には約束で十分だ。
翔太郎....僕は一度、君を見捨てようとした。
Wに変身できなくなった時だ。
その時に翔太郎が感じていた気持ちが今、漸く分かった。
僕はもう諦めない。
君が僕の唯一の相棒だ....だから翔太郎!
僕ともう一度!」
「悪魔と相乗りしてくれ!」
「あぁ!勿論だぜ!フィリップ!」
フィリップがそう言って手を差し出す。
その手を翔太郎が強く握ると牢屋が開き辺りの景色が光に包まれた。
次に目を開けるとそこには変身解除した翔太郎とフィリップが手を繋いで倒れていた。
二人とも目を覚ますとその姿を見た克己が声をかける。
「やっと目を覚ましたか。
最近、寝不足だったか?」
「あぁ、オマケに最悪の悪夢付きでな。」
そう返した翔太郎を見て克己は笑う。
「ふふっ、そこまでの減らず口が叩けるのなら無事だな。
無名も元に戻った。
奴は部下の元へ向かった....俺もこの街から離れる。」
そう言って背を向ける克己を翔太郎が止める。
「待てよ!....おめぇには借りが出来ちまったな。
何時か絶対返すからよ。
それと、ありがとうな。
俺とフィリップを助けてくれて...」
「......ふん。
ハーフボイルドは健在か...じゃあな。」
そう言うと克己はその場から消えていった。
そして倒れている二人を照井を抱えた亜樹子が見つける。
「フィ....フィリップ君!それに....翔太郎!」
「おぉ、お前も来たのか亜樹子。」
そう言って起き上がる翔太郎に亜樹子はスリッパを振り下ろす。
パコン!
「痛ってぇ!気が付いて早々、頭叩くんじゃねぇよ!」
「....良かったぁ!何時もの翔太郎君だぁぁぁ!」
その姿を見た亜樹子が泣き出す。
「おいおい、いくらなんでも泣くことはねぇだろ。」
「だってぇぇぇぇ!うわぁぁぁん!」
ギャン泣きをかまされ照井とフィリップ...そして翔太郎はただ笑い合うのだった。
目を覚ました無名は部下と合流する前に電話をかけた。
ワンコールで電話が繋がる。
「もしもし」
「無名です琉兵衛様。」
「.....ほぅ、ゴエティアを退けたか無名。
先ずはおめでとうと言っておこう。」
「その名を知っていると言う事は....彼の正体も分かっているのですね?」
「神すら創造したあらゆる存在の主、超越者。
彼には随分としてやられたからね。」
「貴方は彼を使って何をするつもりだったんですか?」
「私の願い等、君はもう知っているだろう?」
「ガイアインパクト....人類を強制的に進化させる。
その意味は何なんですか?
何故、それをする必要があるんです!
家族との仲を引き裂いてまで....」
「愚問だね。
全ては"家族の為"だよ....」
「その為に奥さんを殺しかけたんですか?」
「ネメシスメモリの事は知っていた。
彼処で来人を奪われるくらいなら少し眠って貰った方が都合が良いと考えたまでだ。」
「娘の人生すら変えてまでですか?」
「冴子の事を言っているのかね?
あの子は私に認められたくて必死だ。
だからこそ、私の後継を狙っている。
愛しさゆえの反逆だよ。
若菜には可哀想なことをするがそれも彼女が地球の巫女になれば全て.....」
「いい加減にしろ!!アンタの言い分は聞き飽きた。」
「....そうか、冴子から聞いたよ。
霧彦君を生かしていたそうだね。
あれは君だろう?
ミュージアム.....いや私の意思に反する気かね?」
「例えそうだとしても僕は、僕の求める結末の為に生きます。
ゴエティアとも決着を着けなければいけませんから....」
「ゴエティアの器として造られただけの存在が言うじゃないか。
良かろう....君の好きにしたまえ。
また会う日を楽しみにしているよ。」
そう言うと琉兵衛は電話を切った。
琉兵衛への反逆はミュージアムとの別離を意味する。
だが、後悔はない。
僕はゴエティアの器としてこの世界に産まれた。
でも、"原作キャラを生かしたい"....そう考えているのはゴエティアではなく僕の意思だ。
僕もこの風都に住む一人の人間として意思を貫いてやる。
恐らく、ここからはどちらが先に目的を達するかのレースだ。
敵はミュージアムやそれにあまねく全て....対して僕にある手札は少ない。
でも負けるつもりはない絶対に勝つ。
その為には先ず準備だ。
やることは多い...風都を離れないと行けないだろう。
この風都はまだ荒れる....だけど問題ない。
何故ならこの街には仮面ライダーがいるのだから....
地球の本棚の奥底で鎖に身体を縛られたゴエティア。
その姿はまるで罪の裁きを待つ罪人のようにも見えた。
だが、その表情は最初と違い笑顔になっていた。
「ふっふっ...ははっあはははははは....」
ゴエティアの笑い声が部屋に木霊する。
その笑いは自分を嘲笑したものか世界を嘲り笑う声かは分からない。
だが、ゴエティアは今、楽しいという感情を抱いていた。
「ただの人間程度にしか思っていなかったが、私を出し抜くとは存外捨てたもんではありませんね人間も...」
(だからこそ、コスモスはコイツらを愛し、そして....)
「ふん、下らない。
全てが座興じゃないか。
人の死も地球の終わりも私達にとっては大した違いはない.....まぁ、良い。
園咲 若菜の覚醒と風都への根回し……もう種は蒔き終わった。
この結末はお前でも止められないぞ無名。」
フィリップを逃がした日、私は無名からタナハとコスモスについて話を聞いた。
フィリップが脱出したからか素直に答えてくれた。
「タナハについて知っていたのは貴方の本を読んだからです。」
「だが、私に関する記憶の本にはプロテクトが掛かっていた筈だ。
無理矢理読むなんて不可能なプロテクトだ....それは一体どうしたんだ?」
「コスモスが僕の前に現れたんです。」
「.....え?」
「彼女が本のプロテクトを解いてくれました。」
「それは....何時だ?」
「フィリップがここに来る前ですよ。」
それを聞いて確信した。
私の仮説に間違いはなかった。
コスモスの力が宿ったジョーカーメモリの力を呼び起こすことでコスモスが目覚めたのだ。
ならば、救うことが出来る。
「僕は彼女から願いを受けました。」
「当ててやろうか?
私の計画を阻止して欲しい....そうだろ?」
「止まる気はないんですね。」
「お前も私の記憶を見たのなら分かる筈だ。
タナハも私もコスモスを愛していた。
彼女に笑顔になって欲しくて行動した。
地球の本棚もそれが始まりだ。」
「貴方の本を読んで彼女がジョーカーメモリの力の本質だと言われて納得しました。
コスモスは感情を生み出しゴエティア達に与えて代わりに寿命という代償を負った。
プラスとマイナス、両方の力の可能性を秘めている存在。」
「だが、それでも私達は彼女が好きだった。
彼女のために肉体を用意しようとしてタナハは失敗した。
それは彼女が愛した地球を守ろうとしたからだ。」
「貴方の目的は彼女を救うことなんですか?」
「あぁ、その為に何度も何度もやり直してきた。
良い機会だ教えてやろう。
本の書き換え....リセットは強力な力だが代償がある。
一度のリセットを行う度に私の記憶や精神を切り取って使っている。
超越者と言われた私も今や見る影も無い程、弱体化しているよ。」
「それ程の力を持っていて弱体化しているとは元の強さを考えたくはありませんね。」
「そう言うな。
正直、後一回でもリセットをすれば私の精神は完全に消えてなくなる。
だからこれが正真正銘の"ラストチャンスだった。
そして、運命は私に味方した。
君の話を聞いて確信したよ。
このルートならばコスモスを救える。
私は彼女を救う....例え彼女が愛した地球を滅ぼしてもね。」
「そんな事はさせません!
僕は彼女の願いを....」
「私の器風情が彼女を語るなっ!....もういい聞きたいことは聞けた。
私は元の世界へ戻る。」
そして、戻った矢先、私は肉体の主導権を無名に取り返されここに幽閉された訳だ。
だが、これで良い。
後は琉兵衛が手筈通りに進めるだろう。
「また会う時こそ君の最後だ無名。」
そう言うとゴエティアは一人の部屋で笑い続けるのだった。
Another side
無名からの宣戦布告を受けた琉兵衛の顔は珍しく曇っていた。
それを察してかミックが琉兵衛の膝に乗る。
「励ましてくれるのかいミック?
どうやら、私は無名に嫌われてしまったようだ。」
その声にミックはただ耳を傾ける。
「私はねミック。
無名も獅子神もサラも家族のように思っているんだよ。
だからこそこんな形で家族がバラバラになるのは本当に悲しい。
....けどねそれでも私は家族のためにガイアインパクトを為し遂げるよ。
それに家族の情が邪魔をするのなら....私は」
琉兵衛は書斎に納められた木箱を見つめる。
中にあるのは琉兵衛が"イーヴィルテイル"と呼ぶ大切な物....いや存在が入っていた。
それを見つめる今の琉兵衛の瞳は酷く冷たくなっている事をミックのみが知っていた。
外伝 続編の投稿に関して
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