もう一人の悪魔   作:多趣味の男

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(翔太郎)の意識が戻りフィリップや亜樹子と探偵業を復活させている中、街には変化が起きていた。

ディガルコーポレーションが火の不始末により本社ビルが燃えてしまったと報道されているが真相は井坂と揉めた事が原因らしい。

そして、俺は霧彦と再開した。
生きていた霧彦に驚いて事情を聞くと無名が助けてくれたと言っていた。
フィリップも言っていたが無名は俺達の味方で奴の中にいたゴエティアが敵だったみたいだ。(そのゴエティアも今は手が出せない所にいるらしい。)

霧彦と克己は仲間を守る為だと言って風都を離れた。
無名も一緒にいると言っていたから彼について行ったんだろう。

"ミュージアムはこれから本格的に行動を起こしてくるから警戒しておいた方が良い"去り際に霧彦が俺にそう忠告してくれた。

俺達は風都を守る仮面ライダーだ。
街を泣かせる悪党は許さねぇ....それが例えどんなに強大な怪物でも

今日も事務所の扉が叩かれ依頼人が来る。
そして、依頼人から話を聞くため俺も席に着くのだった。


第百七十七話 Nの憩い/束の間の休息

 

「ふぅ、やることが山積みですね。」

無名はそう言いながら机に大量の書類を並べて精査している。

 

今、彼等は孤島ではなく水音町のマンションに住んでいた。

ミュージアムへの明確な離反を告げてしまった無名とその部下を孤島に置いておくのは安全ではないと考え、ミュージアムとは関係なく個人的に手に入れていたマンションに身を潜めていた。

 

NEVERや屋敷にいた人達は皆、僕に着いてきてくれたがメイカーだけはミュージアムへ残る決断をした。

『私は園咲家に役立つ為に作られました。

その目的がある以上、無名様達についていくことは出来ません。』

「分かってます。

無理強いはしません....今までありがとうメイカー」

 

『はい、無名様もお元気で....』

 

合成音声であったがその声には何処か悲しみが隠っていた。

そんな事を思い出しているとエプロン姿の京水と霧彦が声をかけてくる。

「皆ぁ!ご飯の時間よぉ!」

「もう皆、席に着いている君も早く来たまえ無名君。」

 

「えぇ、分かりました。」

無名が部屋を出てリビングに行くとNEVERのメンバーと大道マリア、黒岩に赤矢、霧彦と雪絵....そしてシュラウドの仮面を捨てて包帯を取った"文音"が座っていた。

 

その提案はシュラウドからだった。

「無名、私は貴方についていくわ。」

「それは何故です?

今は来人君の傍にいてあげるべきでは?」

 

「来人と約束したの....罪を償うと....でも」

その言葉を否定したのは照井だった。

「すまないフィリップ....今、警察に行くのは止めた方が良い。」

「どうしてだい?母さんを信用していないというのなら僕が...」

「そう言うことじゃない信用してないのは"警察自体"だ。

今の警察はミュージアムと繋がっている者が多すぎる。

俺のいる風都署にもその可能性が高い奴がいるくらいだ。

今の警察にシュラウドを寄越したら下手をすればミュージアムに連れていかれる可能性がある。」

 

「私は構わないわ。

貴方達について話すつもりは一切無い。」

「悪いがそれは俺が困る。

俺は仮面ライダーであり刑事だ。

悪を裁き罪を償うまで犯罪者を生かす義務がある。

情けない話だが今の警察はその義務を果たせる場所じゃない。

超常犯罪課で匿うことも出来るが、上の奴等が文句を言えば離さざるを得ない。」

悔しさと怒りで拳を握りながら言う照井を見てそれが真実だと理解する。

 

「じゃあ、どうすれば?」

フィリップの悩みに翔太郎が意見を言った。

「なぁ....無名に頼むのはどうだ?」

「正気か左!奴はミュージアムの幹部だぞ!操られていたとは言え油断して良い存在じゃない。」

 

「普通ならな。

フィリップ、お前はどう思う?」

「……僕も今の無名なら信用できるよ。

とは言え何らかの連絡手段は欲しいけどね。」

 

「なら、私から頼んでみるわ。

それに条件もつけて……」

「条件?何だそれは?」

 

 

 

皆が並び終わりご飯を食べようとした時、文音が時計を見て無名に言った。

「ごめんなさい。

息子との連絡の時間なの...良いかしら?」

「えぇ、どうぞ。」

 

僕がそう言うと文音は携帯を持つと席を外して言った。

"定期的に息子と連絡を取ること"....それが文音の出した条件だった。

そして、その姿を他の者は微笑ましく眺めている。

 

「随分と嬉しそうですね克己さんとマリアさん。」

「....まぁな。」

「えぇ、同じ母親として息子との仲が良くなるのならこんなに嬉しいことは無いわ。」

 

そんな話をしていると霧彦が切り出す。

「それで無名君これからどうするつもりだい?

君はミュージアムを裏切った。

何れ処刑人が君や君の仲間を消しに来るだろう。

無論、僕もだろうが....」

「そうでしょうね。

獅子神か...サラか....それともミュージアムの誇る二大処刑人のどちらか....まぁ、でもそんな直ぐに攻めてくる危険性があるのは獅子神だけだと思いますよ?」

 

「どうしてそう思う?」

「これは悪い知らせでもありますが現在、ミュージアムの目的であったガイアインパクトに関して最後の詰めを残してほぼ終えているんですよ。

そして、ガイアメモリを生産できるメイカーは依然としてミュージアムの手の中にある。

琉兵衛の目的が完遂に近づいている以上、余計な不和は起こしたくないと本人は考えている筈です。」

 

「どうかな、あの人は利用価値がないと分かったら直ぐに消す筈だぞ。」

「それなら尚更、僕を殺す真似はしないでしょうね。」

「どう言うことだ?」

「言ってませんでしたが、僕の身体はフィリップと同じデータ人間です。

ですから、ガイアインパクトを起こすピースになる。

それに本気で僕を殺すにしてもそれは克己さんが止めてくれるでしょう?」

 

問われた克己はフォークに刺したプチトマトを口に入れながら言う。

「まぁ、一応は俺達の雇い主だからな。

勝手に殺させるつもりはない。」

「彼のメモリは強力です。

僕や仲間を殺すのであればそれこそ組織の大部分を失う覚悟と計画の中断、両方を考えないといけないでしょう。

後少しで計画が完成するのにそんなリスクは負いたくない筈です。」

 

「では何故、獅子神は例外なんだ。」

「僕に対して良い印象を抱いていないのもそうですが、ゴエティアが彼に相当な屈辱を与えています。

彼の性格上、それは損得を抜きにして動くのに十分な動機になる。

赤矢さんのプロファイリングでも同じ結果が出ています。」

 

「成る程、理解したよ。」

「えぇ、ですから霧彦さん、雪絵さん、くれぐれも勝手な真似や単独行動は控えてください。

特に、復讐に関しては今は止めてくださいね。」

 

その念押しを受けた雪絵の表情は苛立つ。

そして、ここで京水が話に入ってきた。

「今の現状は分かったわ。

次はこれからについて話しましょう。

無名ちゃんや私達はこれからこのマンションをアジトとして使っていくのよね?」

 

「えぇ、お金に関しては複数の口座に個別で用意していたのでミュージアムに発覚する前に数個は持ち出せました。

マンションを"一棟"買ったお陰でかなり減りましたが直ぐに無くなることはありませんよ。」

「本当に出鱈目よね貴方は....でもそれじゃ意味がないわ。

金の出所が分からない物程、人は調べたがるものよ。

だから、"表の職業"を何か選んでおいた方が良いわ。」

 

その言葉にレイカが反応する。

「はぁ?私達、ミュージアムから逃げながら仕事しないといけないの?

めんどくさいんだけど」

そう言うレイカの食事はぎこちない。

NEVERドライバーの副作用を受けた全身の痛みがまだ治って無いのだ。(因みに堂本は"また筋肉が大きくなる"と言ってその痛みを嬉しそうに受け入れていた。)

 

「我が儘、言うんじゃないわよレイカ。

良い?今、私達はぶっちゃけ"無職"なの!

傭兵を再開すればミュージアムにバレる。

非合法な仕事は全部アウトよ。

それに無名ちゃんの口座だって何時バレるか分からない。

安定した収入を得る基盤は作っておくべきだわ。」

 

「では、具体的に何をすれば良いのでしょうか?」

 

「無名ちゃんは機械に強そうだしプログラミングとか外部委託で受けたらどう?

金額はミュージアムにいた頃と比べたら微々たるものだろうけど隠れ蓑としてはピッタリよ。」

 

「成る程、では京水さんは何をするか決めているんですか?」

「そりゃ、勿論私の美しさを全面に売り出したセクシーダン....「却下で」って話し遮ってんじゃないわよレイカぁ!」

 

「だが、真面目な話どうする?

俺達の得意分野は戦闘だ....それ以外はあまり期待出来ないぞ。」

克己がそう言い悩んでいると無名の肩に重みが加わる。

その姿を見て無名は笑顔で言う。

 

「何か思い付いたのかい?"リーゼ"。」

 

 

時は遡り、救出されたリーゼの外傷は完全に完治されていた。

ミュージアムの技術を使って治療されたのだろう。

だが、それを見た無名の頭に疑問が浮かんだ。

(誰がリーゼを助けたんだ?

ゴエティアはリーゼが死んだと言っていた筈なのに...

まさか、ゴエティアもリーゼを死なせたくなかった?

でも一体何故?)

 

助け出されたリーゼだが意識が戻ることはなくずっと眠りについていた。

リーゼの目を覚まさせたのは無名だ。

 

無名の声に反応して目覚めたみたいな奇跡ではなく地球の本棚を使いリーゼの魂を呼び出したのだ。

そして、復活したリーゼはネットビジネスや株の投資で資金を儲けていた。

 

タブレットで会話したが本人はまだ僕に借りを返しきれてないと思ってるらしく返すまで共にいると言ってくれた。

 

そんなリーゼが見せてくれたのはアジトであるマンションの近くにある一つの物件だった。

それを見せながらタブレットで文字を打って僕に考えを伝えてくる。

 

「成る程、面白いかもしれないですね。」

無名はリーゼの案を採用すると数日かけて準備を行うのだった。

 

 

 

水が常に流れる街、水音町。

この街に最近、新しい店が出来た。

小さくこじんまりとした外観のアンティーク彫の扉、その上には"Angebot"と書かれた看板がかけられていた。

 

"雑貨喫茶Angebot"(アンジェボット)車椅子に座る店長"マリア"と副店長の"霧彦"が営むこの店は異国の品や美味しい紅茶を提供する。

 

そして、悪魔との取引も......

 

 

 

リーゼの案を採用し喫茶店をオープンした無名はそこにマリアさんと霧彦を常駐させることにした。

復活したとは言えマリアさんの身体にダメージが残っている。

その護衛を霧彦に頼んだ。

彼はそれを二つ返事で了承した。

 

主な従業員として孤島から着いてきてくれた元クオークスやミーナが担当しそこにちょこちょこNEVERのメンバーが入る形を取った。

 

因みに無名の部下である二人は元の仕事に戻った。

赤矢は大学教授、黒岩は隠れ蓑として清掃会社を経営しているのでそれを再稼働した。

 

そして、僕は何をしているのかと言えば.....

 

 

「やっぱりここの地下に作るんですか?」

「えぇ、地下なら隠しやすいから緊急時にも対応できるわ。」

 

文音さんと共にマンションと喫茶店を繋ぐ地下施設を建設していた。

道具に関しては文音さんが提供してくれた試作ガジェット(ガンナーAの試験運用として作られた。)を使い僕は地下空間を作る上で必要な計算を行った。

 

ゴエティアに幽閉されたことで地球の本棚に何度も触れた結果、僕は原作のフィリップと同じように地球の本棚で検索が出来るようになっていた。

 

ゴエティアを封印したことで本の力に干渉して引き出すことは出来なくなったが十分に強力なので満足している。

そして、もう一つあった変化はゴエティアの名を聞いた事で断片的だが文音さんが記憶を取り戻したのだ。

 

僕の顔を見るなり最初は警戒したが、僕と共に地球の本棚に入って記憶を見たことで信用してくれた。

「ゴエティアを封印してくれてありがとう。

記憶も安定したから安心して良いわ。」

 

「良かったです。

それでお聞きしたいのですが貴方の記憶では何が残っていますか?」

「....私の残っている記憶は二つ。

一つは私の復讐が成功し(琉兵衛)を倒した後、ゴエティアが私のメモリを利用して操り家族全員を私が殺した未来。

もう一つはその過去を変える為に夫と和解してゴエティアを打倒しようとするけど負けた未来よ。」

 

「.....ごめんなさい。」

「貴方が気にすることじゃないわ。

器として生み出されたからと言って貴方はゴエティアじゃないわ。

それに....良い発見も出来た。」

「良い発見ですか?」

 

「記憶を読んでいく中でゴエティアを見たけど明らかに弱体化している。

勿論、私が記憶している力と比べるとだけど...」

「そうなのですか?」

「えぇ、私の知っているゴエティアはエクストリームに到達した(テラー)私が作り出したW(サイクロンアクセルエクストリーム)そして、その時のミュージアム"全勢力"で挑んで無傷だった。

寧ろ、"退屈だ"と煽られてしまったぐらいよ。」

 

エクストリームに到達したテラーとシュラウドが作り出した最強のW....そしてミュージアムの全勢力を使えば財団Xとも渡り合える筈だがそんな戦力を相手にしても退屈と言い切るゴエティアの力に無名は改めて戦慄を覚えた。

 

「でも今回の彼は来人と貴方にやり込められて地球の本棚の奥深くに封じられている。

これはチャンスよ。

いまならきっとゴエティアを倒すことだって出来るかもしれない。

だから諦めないでね無名。」

そう言って文音さんは僕の仲間の為に動いてくれている。

 

全ては皆が笑顔で迎える結末を手に入れるために....

僕は懐にあるデーモンメモリに触れる。

敵は僕の創造主....だが負けるつもりはない。

 

この手にある大事な仲間は誰一人奪わせはしない。

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