もう一人の悪魔   作:多趣味の男

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第百七十八話 Nの憩い/目覚める巫女

 

園咲邸の大広間.....

現在そこには無名を除いたミュージアムの幹部と井坂に加えて天十郎、そして財団Xの加頭が集められていた。

 

そこに琉兵衛が布に包まれた巨大な物体を連れて現れた。

皆を見ながら琉兵衛は言う。

 

「良く集まってくれた我がミュージアムと運命を共にする者達よ。」

その言葉に加頭が答える。

「琉兵衛さん....今日は一体どうして我々を集めたのですか?」

 

「それはね、今日は記念すべき日だからだよ。

ミュージアムの最終目標であるガイアインパクト....

それを可能にする大切な存在..."地球の巫女"となる若菜が目覚めるのだからね。」

「「!?」」

 

琉兵衛が合図を出すと背後の布が外れ中から白い糸で包まれた巨大な繭が姿を現す。

「これは......」

「この中で若菜は地球と繋がる準備をしていた。

そして、今....それが"完了"する。」

 

琉兵衛の言葉に呼応するように繭にヒビが入る。

そして、そのヒビが全体に広がると繭は崩壊し中から全裸の姿の若菜が地面に倒れるように現れた。

 

その姿を琉兵衛は優しく見つめその身体をゆっくりと抱き抱えた。

ゆっくりと目を開けた若菜は琉兵衛を見て言う。

 

「あなたはだぁれ?」

その話し方は何時もの若菜の話し方ではなくまるで言葉を覚えたての子供のような話し方だった。

 

「私は園咲 琉兵衛....そして君は園咲 若菜。

我々は....家族だ。」

「....か...ぞく?」

家族の言葉を聞いた若菜は首をかしげる。

 

「そう、家族だ。

家族とは私が最も大切にしている存在だ。

私の大切な若菜....君の目覚めを歓迎するよ。」

琉兵衛の言葉に疑問を持ちながら若菜は周りを見て自分の身体を見つめる。

そして、琉兵衛の服を指して若菜が言った。

 

「みんな....なに...つけてる?」

「これは服だよ若菜。

我々はこれを着て生きているんだ。」

 

「そう...なの....わたしも"欲しい"。」

若菜がそう言うと若菜の瞳が光り若菜の身体を琉兵衛の着ている服と同じ物で包まれた。

「!?」

その光景を琉兵衛以外の皆が驚く。

(あれは一体何なの?

若菜の目が光ったと思ったら急にお父様と同じ服を着ているなんて.....)

 

冴子の疑問を真っ先に尋ねたのは本人ではなく井坂だった。

「失礼、琉兵衛さん。

若菜さんのその能力は一体どう言うこと何ですか?

見たところガイアメモリの力とも思えませんが....」

 

そう言う井坂に琉兵衛が答える。

「気になるのなら君の"やり方"で確かめて見たまえ。」

「.....分かりました。」

 

自分のやり方と言われた井坂は笑うとウェザーメモリを取り出し耳に挿した。

ウェザードーパントへと変身した井坂は若菜へ雷を落とす。

 

その攻撃を琉兵衛は止めようとしない。

「井坂先生!」

その攻撃を見て焦る冴子を尻目に攻撃された若菜は雷を見て言った。

 

「ピカピカして....きれい!

もっと"見たい"。」

その声に反応するように瞳が光ると雷は若菜に落ちること無く空中で制止した。

 

その姿を見た井坂は驚く。

「バカな!...雷を止めた?....いや、"空間ごと切り取った"のか!

ならばこれならどうです!」

井坂は両手に竜巻を生み出すと手を重ねて若菜に向けて放った。

 

建物など簡単に倒壊させるレベルの竜巻が若菜に迫るがそれも彼女の目の前で止まる。

しかも、巻き上げた破片すら空中で制止させたのだ。

 

その光景を見て井坂は驚くが対する若菜は手を叩きながら喜んでいた。

「ぐあーってしてばーんってなってぐるぐるぅ....たのしい!

わたしも"やる!"」

 

そう若菜が言うと井坂の攻撃が消失し井坂の上から落雷と目の前に竜巻が現れて井坂を襲った。

 

井坂はそれを防御しようとするが自分の作り出した雷と竜巻の"数倍の威力がある攻撃を受けて耐えられなくなり強化アダプターを取り出すとウェザーメモリに装着しメモリを突き刺して強化ウェザードーパントへ変わる。

そして、気合いの声と共に二つの攻撃を欠き消した。

 

ダメージの大きさから片膝をつく井坂に冴子が寄り添う。

その姿を見て若菜は疑問の表情を浮かべ代わりに琉兵衛は満足そうに笑った。

 

「あっはっは....凄いじゃないか若菜。

もうそんなに強くなったのかい?」

「つよい?....つよいってなに?」

 

「強いとは.... 自分の欲望を叶えるのに最も必要な物だ。

さぁ、今の若菜の力をもっと見せてくれ。」

「......うん!」

 

若菜は手を空へ広げる。

すると空間が裂けそこに星が映る空間が現れる。

その光景に皆、絶句している。

何故なら写し出していた空間は地球そのものだったからだ。

 

それを見て琉兵衛は言う。

「これが...."超越者"の本当の力か!」

しかし、その裂けた空間は直ぐに閉じてしまう。

若菜を見ると目を擦っている。

 

「どうしたんだい若菜?」

「なんか....つかれた...ねむい。」

 

「あっはっは目覚めて直ぐに力を使いすぎたか。

ゆっくりとお眠り....若菜。」

「.....うん。」

若菜は返事をするとそのまま意識を失い眠りについた。

 

 

その光景を見てやっと現実に戻った冴子が尋ねる。

「一体これは....若菜に何をしたのですか?」

その問いに琉兵衛は答える。

「私は悪魔と取引をした。

そして、遂に手に入れたのだよ。

"地球の巫女"等、霞む程の存在を.....

今の若菜はこの世界を創造した存在と同じになりつつある。

さしずめ"宇宙の巫女"(そらのみこ)と言ったところか。」

 

「今の若菜が本気で力を使えばこの世界を簡単に変えられる....文字通り全ての森羅万象を作り替えられる程にね。」

「バカな!...それではこの女(若菜)は人を越えたと言うのか?」

井坂がメモリを抜き人の姿に戻ると琉兵衛に尋ねる。

 

「陳腐な言葉だが...そうだ。

今の若菜は"超越者"の名に相応しい存在へと変わった。

これでガイアインパクトは更に進化する。

創造したまえ....今の若菜と来人の力、二つが掛け合わされたらどうなるか?」

 

そんな事は考えなくても理解できる。

ガイアメモリを使わず人を越えた力を使える若菜、地球の本棚にアクセス出来る来人が揃えばそれこそ神にすらなれてしまう。

 

 

「今回集まってもらったのは今後の計画について話すためだ。

天十郎君....風都第二タワーについてはどうかね?」

琉兵衛に尋ねられた天十郎は答える。

 

「順調です。

メインタワーとそれを囲うように建てられるサブタワー...それを建てる土地も抑えました。

機材や道具も運び込みが終わりサブタワーはほぼ完成していて残るはメインタワーと貴方様から渡された"あの装置"を設置するだけとなっております。」

 

「素晴らしい...では天十郎君。

そこに関しては任せるよ。

それと"君のガイアメモリ"も使いこなせるようにしておいてくれ。」

「分かりました。」

 

「一つ懸念点があります。」

獅子神は琉兵衛に向かい言った。

「それは何かね?」

「ミュージアムを裏切った無名の存在です。

奴が今後、どう動くか読めません。

即刻、排除すべきです。」

 

その提案にサラが異論を唱える。

「私は反対だわ。

今、彼等と事を構えるのはね.....」

「何だと?」

 

「今の彼にはNEVERがついている。

NEVERにいる仮面ライダーである大道克己....

彼のメモリの能力は危険です。

下手に手を出せばこちらの損害が大きくなります。」

 

ガイアメモリの機能を停止できるエターナルメモリ、それを使いこなす仮面ライダーエターナルでもある大道克己は無名と共に姿を消した。

恐らくは無名と協力関係にある。

そんな彼等を今敵として排除するには危険が大きいと判断していた。

 

「そんな気弱な事でガイアインパクトが失敗したらどうする!」

「勿論、無名達には裏切りの代償は支払わせるべきだわ。

でも、今行って計画が狂う方が恐ろしい。

先ずは第二タワーを完全に完成させてから....」

 

「それでは遅い!奴らを....いや"無名"を即刻消すべきだ!」

珍しく焦っている獅子神にサラは尋ねる。

「どうしたの獅子神?

何時もの貴方らしくないわ。

まるで無名を"恐れている"みたい.....」

 

「俺が.....恐れるだと?」

その言葉が引き金となり獅子神は怒るとサラの顔を平手打ちする。

その瞬間、傍にいた美頭や部下が前に立ち塞がりメモリを取り出す。

それに合わせて獅子神の部下や灯夜も前に出るとメモリを構えた。

 

「どういうつもりだ?

獅子神様に歯向かうつもりなのか?」

「それはこっちの台詞だ....サラ様に危害を加える者は誰であれ容赦しない。

幹部だろうと許さない.....」

 

一触即発....そんな空気の中で一つのメモリが起動する。

 

「Terror」

 

琉兵衛がテラーメモリを起動しドライバーに挿すとテラードーパントへ姿を変える。

そして、恐怖のエネルギーを発動し獅子神とサラのいる地面を囲った。

 

「随分と元気が良いね....獅子神君。

だが、もう少し冷静さをもって欲しいものだ。」

「も....申し訳ございません。

決して琉兵衛様に危害を加えるつもりは....」

 

「サラも部下の暴走は止めるべきだ。

我々は仲間だ.....争う存在ではない。

そうだろう?」

「はい....申し訳ございません。

直ぐに部下を下がらせます。」

 

サラがアイコンタクトを送ると美頭や部下が獅子神達を睨み付けながら後ろに下がった。

それに合わせて獅子神の部下も後ろに下がる。

 

 

「では、今後についての話し合いをしようじゃないか。」

そうして琉兵衛は皆に笑いかけるのだった。

 

倒れている井坂を冴子は介抱しつつ現状を理解しようとしていた。

(あの若菜の力.....どう見てもガイアメモリやそれに類するものの筈、でも強すぎる。

もし、メモリの力だとしてもあれだけの力を内包できるメモリなんて存在しないわ。

それに最後に見せたあの地球...あれは桁違い過ぎる。

幻覚を見せる力じゃない、あれは本物の地球...一体どうしたらそんな力を手に入れられるの?)

 

冴子の隣には呆然としている井坂がいた。

強化アダプターによりゴールドクラスのメモリとも戦える力を得た筈なのに若菜に手も足もでなかった。

それもメモリすら使っていない若菜に.....

ガイアメモリを信奉している井坂にとってこれ程の屈辱はないだろう。

 

(ここにいては井坂先生の心が壊れてしまう。)

そう危惧した冴子は井坂を連れて部屋を出ていく。

腕を引きながら冴子は井坂に言う。

「井坂先生、大丈夫です。

私がもっと強くなれば若菜にだってきっと...」

 

"勝てる"....確証のない言葉で井坂を元気づけようとした時、井坂の足が止まる。

「井坂先生?」

「冴子君....どうやら君は勘違いしているようだね。

私の力が彼女....いや宇宙の巫女に通じなくて絶望していると....バカバカしい!逆だよ。

私はねあの力を見て"感動"していたんだ。

ガイアメモリの力を超越したあの姿と力こそ私が求めていた姿だ!」

 

狂気により濁った井坂の目は若菜の力に触れた事で変化を及ぼした。

「私は若菜さんの力が欲しい!!」

「でも....それは人を捨てることですよ!

分かっているんですか井坂先生?」

 

「冴子君、それの何が問題なのかね?

神にも越えるあの力を手に入れられるのならこんな肉体、捨ててしまっても構わない。

あぁ、テラーのメモリを手に入れる計画でしたが大幅に変更する必要がありそうですねぇ...」

そう言って笑う井坂を冴子は抱き締める。

 

「ダメです!...井坂先生....お願いです。

若菜の元に.....向かわないで」

その言葉は組織の幹部としてではない。

人を愛する一人の女性、園咲 冴子としての願いだった。

 

今までずっと優遇されてきた妹に勝つ為に頑張ってきた。

父の打倒も元を正せば認められたいのに認められず妹ばかり優遇される嫉妬からだ。

 

もう、そんな彼女の理解者は井坂しかいない。

その井坂が今、若菜に奪われようとしている。

それだけは許せない.....失いたくない。

 

その感情が冴子を女に戻したのだ。

 

 

......だが、井坂にその思いは通じない。

 

「冴子君、本当に残念です。

貴女なら私の考えに理解を示してくれると思っていたのですが....貴女の考えは理解出来ました。

感情的な貴女も面白かったですがあの力には敵いません。

貴女との協力関係は"これまで"です。」

 

「そん....な....い...さ...か....せん....せい?」

「では、私はこれで....これからやらねばならないことが山積みですので」

 

冴子の手を払い井坂は一人、去っていく。

その背中に冴子は手を伸ばすが届かない。

"自分は捨てられた"....その事実を知った冴子は地面にうずくまることしか出来なかった。

 

 

 

それは突然の出来事でした。

琉兵衛様との階段が終わり部屋を出た私は井坂さんと冴子さんを見つけました。

 

言い争いから察するに井坂さんが冴子さんを切ろうとしてるのは直ぐに分かりました。

(これは....チャンスでしょうか?)

井坂さんを失った冴子さんには後ろ楯がない。

そんな彼女を私が支える....そうすれば彼女の心は私に傾くかもしれない。

 

(ならば、今は冴子さんをほおっておいて時期を見計らい接触を....)

そんな事を考えて私は冴子さんを見ました。

地面にうずくまり静かに涙を流す。

少しでも見逃してしまったら消えてしまいそうな冴子さん。

 

気が付いたら私はただ彼女を抱き締めていました。

さっきまでの打算が完全に吹き飛び私はただ彼女を抱き締めた。

消えないように....溢れてしまわないように優しく強く。

そんな姿に驚いた冴子さんが私に言いました。

「加頭....さん?」

「もう大丈夫です。

貴女の事は私が命を懸けて守ります。

貴女を傷付ける者は何人たりとも貴女の前には進ませません。

これは財団ではなく...."私の意思"です。」

 

私は抱き締めながら今後どうやって冴子さんを守るのか.......そして

 

 

 

彼女を泣かせた"井坂"をどう苦しめて殺すか?

 

 

私の頭の中にはそれしかありませんでした。

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