もう一人の悪魔   作:多趣味の男

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第百七十九話 Oの依頼/強き高校生

「老けさせ屋?」

「うん、アタシのいる学校で噂になってんのよ。」

 

翔太郎とフィリップにそう告げる頬に絆創膏を着けたポニーテールの女子高生。

そんな彼女との出会いは偶然だった。

 

事務所に老婆と女性が現れて俺たちに言った。

「娘をどうか元に戻してくれ」と.....

後藤 良枝(ごとう よしえ)は老婆となってしまった娘である後藤 みゆを元に戻して欲しい。

そう依頼された。

10歳の娘がある日突然、老婆になったと言われ俺達は早速、調査に向かった。

 

その途中で翔太郎達は不審な動きをする女子高生を見つけたのだ。

怪しさを感じた翔太郎は彼女を裏路地に誘いこんだ。

 

そして、一瞬気配を消すと背後に回り込み肩を叩いた。

「俺を探してんのかお嬢ちゃん?」

その言葉を受けた女子高生は背後の翔太郎に向かって蹴りを打ち込む。

胴の入ったその蹴りは素早く翔太郎は狙われた頭部を腕でガードすると間合いを取った。

「テメェ!一体何すんだよ!」

その問いに女子高生が答える。

 

「お前が"老けさせ屋"か?」

「老けさせ屋?」

「"みゆ"と母親がお前らと会っていたことは知っている。

顔面陥没されたくないならみゆを元に戻せ。」

 

「お前....後藤みゆと知り合いなのか?」

「彼女の名前を知っているのなら問答無用だ!」

女子高生は拳を向けて構えると翔太郎の顔に向かって正拳突きを行う。

翔太郎が回避すると左足を軸に回転して鳩尾を狙い蹴りを放った。

ギリギリで回避するが蹴りをかすった翔太郎の服が軽く破ける。

(こりゃ、空手か!

しかも、相当腕が良い....じっとしてたら俺がやられる。)

 

翔太郎はそう考えると帽子を取り両手を上げた。

「分かった降参だ降参。

お前に危害を加えるつもりはねぇ。

俺の名前は左 翔太郎....鳴海探偵事務所って所で探偵してんだ。

俺も母親からの依頼でみゆちゃんを元に戻す方法を探してる。

目的は君と同じだ。」

 

「それを証明できる証拠はあるのか?」

「あぁ、事務所に詳しい依頼の資料もある。

それにその老けさせ屋について聞きたい....頼む話を聞いてくれ。」

翔太郎の目を真っ直ぐと見つめる女子高生はその言葉が嘘ではないと理解すると構えを解いた。

 

そして、事務所についてきて詳しい話をした。

「どうやら、本当に探偵みたいだな。

.....すまない、勘違いして貴方に暴力を奮ってしまった。」

翔太郎に向けて女子高生が頭を下げて謝罪する。

「良いって気にすんな....それよりその老けさせ屋について教えてもらえるか?」

 

「アタシの学校で噂になってんのよ。

金さえ払えばどんな人間でも老けさせられる....それを商売にしている奴の話。」

「老けさせると言うのは文字通り老化させると言うことか?」

 

フィリップが女子高生に尋ねる。

「うん、噂じゃ内の学校でも被害者が出たらしくて学校に来なくなった生徒がいるって聞いたことがある。」

「成る程、それで君はどうして老けさせ屋を追っているんだ?

後藤みゆと関係がありそうな話をしていたそうだが....」

 

「みゆちゃんは家の近くに住んでてな。

家族ぐるみで仲が良かったんだ。

私もみゆを妹の様に思ってる....だからみゆが老人に変えられていてもたってもいられなくなって.....」

「それで自分で探偵紛いの事を....」

 

「成る程な事情は分かった。

それじゃ、どうして俺が老けさせ屋だと思ったんだ?

まさか、後藤の家族と会ってたからなんて理由だけじゃねぇだろ?」

「実は老けさせ屋に会ったことがあるって奴がいてそいつから話を聞いたんだ。

その見た目が"黒スーツに灰色のシャツを着たオッサン"だって聞いて.....」

 

「オッサン!?」

「ぶふっ!」

オッサンと言う言葉を聞き亜樹子は明らかに吹き出す。

そして愕然としている翔太郎に代わりフィリップが答えた。

「成る程.....確かに衣服に関しては今の翔太郎と共通点が多いね。」

「だっ...だな!オッサン以外は全部合致してたな。

オッサン以外は!」

 

オッサンと言う言葉を強調する翔太郎を尻目に女子高生は立ち上がると翔太郎達に再度頭を下げた。

「老けさせ屋の話をしてバカにしなかったのはアンタらが初めてだ。

頼む....みゆを元に戻してあげてくれ。

こんなことアンタらにしか頼めない。」

 

「当たり前だ。

依頼だからもだが、街の人間が苦しんでるのにほおっては置けない。」

「翔太郎の言う通りだ。

この事件は必ず僕達が解決するよ。」

 

「ありがとう。

何か手伝いがいるのなら遠慮無く言ってくれ。

電話番号をここに置いておくから...」

そう言うと女子高生は事務所を出ていった。

 

「正義感の強い子だね。」

「あぁ、自分じゃない誰かの為に本気で怒って本気で心配している。

こんな子がまだいるってだけで未来に希望が持てるじゃねぇか。」

 

「あれれぇ?翔太郎君、その台詞随分とオッサン臭いぞぉ?」

「うるせぇぞ亜樹子。

....それにしても良いパンチと蹴りだったな。

ガードしてなかったら本気でヤバかったかもしんねぇ。」

 

翔太郎は蹴りをガードして腕を握る。

まだ、軽く痺れが残っている....つまりそれだけの破壊力があの蹴りにはあったのだ。

翔太郎の言葉にフィリップが答える。

 

「彼女の経歴を考えれば当然だよ。」

「経歴?また地球の本棚で調べたのか?」

「いいや、彼女はとある界隈では相当な有名人だ。

本棚を使わなくてもネットだけで正体に辿り着けたよ。」

そうフィリップが言うとタブレットを翔太郎に差し出す。

そこにはWeb記事が掲載されておりさっき会った女子高生がデカいトロフィーを持って写っていた。

 

「何々...."またまた優勝!!これで全国空手大会三連覇達成!"

成る程、道理で強かったわけだ。」

そうして記事を再度確認する。

 

風城高校(かぜしろこうこう)三年一組 芦原 (あかね)

記事には彼女の名前がデカデカと書いてあるのだった。

 

 

 

一方その頃、風都署の超常犯罪課では署長が照井から渡された資料を精査していた。

「これは....事実なのかね?」

「はい、この風都署に置いてガイアメモリ犯罪に関わる又は隠蔽に協力した可能性のある人員はこれで全てです。」

 

その名簿と数字を見て署長は頭を悩ませる。

「刑事課のベテランから若手のホープ....こんなにいたのなら不正が横行しても仕方がないな。

分かった....この件は此方で対応する。

照井君、ご苦労だった。」

「はい、では失礼致します。」

 

そう言って照井が離れたのを確認すると署長はスマホを取り出した。

「私だ....あぁ、どうやら照井警視に我々のことがバレそうだ。

....あぁ、ミュージアムに連絡して早めに処分しなければ....あぁ、分かっている。

その代わり、あの方に便宜を図ってくれ。

私は有能だと伝えてくれよ....それじゃあ」

 

そう言って署長が電話を切ると資料に目を向けた。

「全く愚かな男だよ照井 竜は....知らないフリを続けていれば長生き出来ただろうに」

この世界は平等ではない。

力を持つものが動かし弱者はそれに従い仮染めの平和を享受している。

 

出る杭は打たれる....そう言うことだ。

そうして部屋を出る署長を隠れていた照井が見つめる。

「やはり、署長もグルだったか....」

照井は最初から署長を疑っており超常犯罪課に呼んだ時も予め部屋にビートルフォンを置き自分が部屋を出た後の光景をイールチャンネルで監視していたのだ。

 

署長がミュージアムと繋がっている証拠映像は手に入った。

それにどうやら俺を襲う為に誰か刺客が送られるらしい。

(上等だ....敵が現れた瞬間、捕縛して情報を更に引き出してやる。)

 

照井は覚悟を決めて外に出ようとする。

「何処に行くんですか照井警視。」

そう言うと照井の前に刃野と真倉の二人だった。

 

「水臭いじゃないですか。

俺達を除け者にして捜査するなんて....」

「この一件は警察内部....更には風都署の署長も関わっている。

お前達にも危険が及ぶ....だからこれは俺、単独で捜査をする。」

 

照井の言葉に刃野が反論する。

「そりゃいくらなんでも道理が通りませんよ照井警視。

俺や真倉も曲がりなりにも刑事です。

目の前で犯罪が置きようとしてるのにそれを見過ごすことなんて出来ませんよ。」

「ダメだ....今回の一件はドーパントの関わってくるお前達がいると足手纒いだ。」

 

「ちょっと照井警視!!俺達をあんまり嘗めないで下さい!

確かに俺はビビりですけどだからって目の前の犯罪から逃げ出す程、臆病でもありませんよ!」

「だが......」

 

「照井警視、今回の一件に署長が関わっているのならアンタの権限じゃこの事件を捜査するのは難しいんじゃないですか?

下手をすれば罪を着せられてアンタが犯罪者にされちまう危険性もある。」

「俺は問題ない。

大事なのは一刻も早く風都署の膿を吐き出させる事だ。」

 

「確かにアンタなら自分の全てを賭けてでも行うでしょうね。

でもね照井警視、俺はアンタと一緒に働くこの超常犯罪課が好きなんですよ。

だからたまには俺らにもアンタを守らせてはくれませんか?」

そう言う刃野に照井は尋ねる。

 

「何か策でもあるのか?」

「伊達に長いこと刑事やってませんよ。

とある駐在所で勤務していた時に仲良くなった同期が今、相当な地位にいるんですよ。

彼ならきっと手を貸してくれます。

それにアイツは正義感が強くて不器用なんで汚職や不正とは無縁の人物です。」

 

その刃野の言葉に真倉は驚く。

「うえっ!そんな人と同期なんですか刃野さん!」

「まぁな。

これでも交遊関係は結構広い方なんだ。

どうですかね照井警視?

彼に助力を頼むぐらいはしても良いでしょう?」

 

「.....分かった。

連絡を頼めるか?」

「勿論です照井警視。

ではちょっくら連絡してきます。」

そう言うと刃野は携帯を持ってその場を後にした。

 

その姿を見た真倉が言う。

「もしかして、刃野さんって凄い人なのかも知れないっすね。」

「さぁな....所でお前はどうする真倉?

逃げたいのなら逃げても良いぞ?」

 

「絶対嫌です!...俺、綾さんの墓の前で約束したんです。

"優秀で正義を貫ける警察官になる"って.....だからそれを叶えるためにも俺は照井警視を助けます。」

「....揃いも揃ってバカばかりだな。

良いだろう。

今後の作戦を立てる....署内では盗聴の危険性があるから刃野を連れて18:00にここで落ち合おう。」

 

そう言って離れていく照井の顔は嬉しそうだった。

今の彼は復讐者とは呼べない仲間に恵まれた刑事であり仮面ライダーなのだから....

 

 

 

警視庁の一角にあるフロア....そこで資料を見つめている男の元に電話が届く。

その男は電話に出た。

「はい」

「久し振りだな。」

 

「その声....幹夫(みきお)さんじゃないですか!

久し振りですね。」

「お前も相変わらず敬語になる癖が抜けてないな。

仮にも俺達は同期だぜ....少しぐらい砕けて話そう。」

 

「貴方も相変わらずそうで安心しましたよ。

そう言えば今日はどんな要件で?」

「今お前のパソコンに送ったデータは見たか?」

 

「.....はい、風都署で行われている不正のデータですね?

それに署長も関係していると.....」

「あぁ、俺達もそれに困ってる。

何とかしたいんだが俺や照井警視の階級じゃどうにもならねぇ....」

 

刃野がそう言うと男は間髪入れずに答える。

「分かりました協力します。

僕はどうすれば良いですか?」

「まだ手伝ってくれとも言ってないのに....良いのか?

お前のキャリアに傷が付くかもしれないぞ?」

 

「元々、この役職だって僕には身に余る者です。

少しぐらい下がったって気にしません。

....それに僕達は市民の味方であるべき存在です。

今ここでこの一件を正しく裁き潰しておかなければ一体誰が警察を信じてくれるんですか?」

「本当にバカ正直で真っ直ぐだな。

お前は昔から.....」

 

「まぁ、そのせいで良く失敗もしますけどね。

でも周りの部下や先輩が優秀なので助けて貰っています。」

「そうか....んじゃ頼むわ。

取り敢えずこの事を照井警視に話してくるわ。」

 

「分かりました。

連絡を待ってます。」

 

 

「あぁ、ありがとうな"誠"。」

そう言うと刃野は電話を切った。

電話を戻した氷川は気合いを入れる。

 

(僕は昔から変わらない"只の人間"だ。

でも只の人間だからこそ出来ることが必ずある。

"津上さん".....僕も貴方のように頑張ります。)

 

そう思う男が座る椅子には自分の役職と名前が書かれたプレートが置かれていた。

 

 

"氷川 誠(ひかわ まこと)警視長".....

彼は何時でも動けるように部下に指示を出し始めるのだった。

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