もう一人の悪魔   作:多趣味の男

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第百八十二話 Fの捜査/三つの噂

授業が一区切りつき昼休みとなるとフィリップは無名の元へ訪れた。

「何で君がいるのか説明してくれないか無名。」

「えぇ、良いですよ....と言っても貴方と目的はほぼ変わりませんが」

 

「僕の目的はここにいる生徒を守る事です。

ここにガイアメモリを生徒に回している奴がいましてそれを止めるために来ました。」

「となると君の行動は完全にミュージアムと敵対すると考えて良いんだね?」

 

「はい、僕は僕の部下や大切な者を守るために行動します。

それにゴエティアとの一件にもケリを付けないといけないですから....」

「フィリップ君の目的は僕と同じと解釈しても?」

「あぁ、セブンスの幹部がここでメモリの売買をしている可能性が出て僕はこの学校に潜入したんだ。

翔太郎は別で調査をしてくれているよ。」

 

「では、共闘しませんか?

お互い利害が一致している以上、敵対するのか非効率的だ....違いますか?」

無名の言葉にフィリップは黙る。

「僕は....まだ君のことが分からない。

敵なのか味方なのかそれとも別の存在なのか。

こういう時、翔太郎なら自分の直感を信じるだろう。

だから今回は僕もそうする。

良いだろう。

この事件解決の為に一時的な共闘を受けるよ。」

 

フィリップの決断を受けて無名は微笑む。

「ありがとうございます。

では此方の知っている情報を渡します。

先ず、セブンスを指揮しているのは獅子神です。

ここまでは貴方も知っている事でしょう?

ですのでここから先は主義について話します。」

「主義?」

「僕たちはミュージアムの幹部でしたがそれぞれが考えている主義には違いがあります。

例えば僕はメモリを売る際、その"人物の持つ復讐心や怒り"を見ていました。

相手の心を知りメモリを使ってでも復讐させるべきと判断した時のみメモリを売りました。

サラの主義は"過去の痛み"ですね

彼女は元々、人によって売り買いされた過去があります。

故にそれに手を貸している存在には明確な敵意を持っていて自分で手を下すことも厭いません。

逆に言えばそれ以外の悪事にはノータッチです。

どんなに残虐な殺人をしてもそれに子供が関わっていなければメモリを売るでしょう。

そして問題の獅子神ですか彼の指標は"力"です。」

 

「力?」

「えぇ、力を欲している者ならば誰でもメモリを売ります。

そこにどんな犯罪をしてても問題はありません。

だからこそ、彼の下についているセブンスは危険なんです。

子供も大人も関係ない。

どんな犯罪に使われても気にもしない。

力を求めていて金を出すのならどんなメモリをでも彼は売ります。」

 

無名の話を聞いたフィリップは冷や汗を流す。

「それが、本当なら獅子神は危険すぎるね。」

「えぇ、ミュージアムとしてメモリを売り利益を出せれば問題はないので諌められません。

だからこそ、獅子神の一派がミュージアムで最も危険だと言えますね。」

 

「.....この学校に獅子神の手下がいるってことだね?」

「えぇ、残念ながら僕もその正体までは知りません。

ですから貴方と一緒に捜査を.....」

 

そう二人で話しているの茜と楓が二人の側に現れた。

「やっぱりアンタ、あの時助けてくれた探偵の相棒だね。」

茜はそう言ってフィリップを見つめる。

楓は無名を見つめて少し驚いていた。

「無名さん....どうしてここに?」

その問いに茜が反応する。

「楓、知り合いなのか?」

 

「うん、私とお母さんの恩人。

ほら、前に話したでしょ?

私達、家族を救ってくれた人がいたって....」

 

「アンタがその人だって言うのか...成る程ね。」

そう言うと茜は無名に頭を下げる。

「それはどういう事ですか?」

「見ての通り感謝だよ。

アタシが楓と会えたのもアンタのお陰だ。

親友と呼べる友達の恩人ならアタシも感謝するべきだろ。」

 

さも当然の様に言う茜に無名はキョトンとした顔をする。

全く予想してなかった答えに戸惑っていると楓が話してくれた。

「茜ちゃんは真っ直ぐな子なんですよ。

そして、人一倍正義感に熱くて....この前の老けさせ屋の一件だって一歩間違えれば傷害事件スレスレの事をしてでも子供を救おうとして」

「あっ...あれはちゃんと怪しい奴を見分けて攻撃していたぞ!

現に万引き犯とかも捕まえたし....」

「けど、それで来人さんの相棒に殴りかかったんでしょう?」

 

「うっ....」

「少しは頭を使って冷静に考えないと危険なことになるよ?」

「わ....分かってるよ。」

「全く....来人さん、茜が貴方の相棒に攻撃してごめんなさい。」

 

「楓が謝ることじゃないよ。

元々、私がやらかした事なんだから....」

「茜が言ってたでしょ?

私達は親友だって....なら親友の失敗も一緒に謝らせてよ。」

 

そう言って謝ってくる楓にフィリップは言った。

「謝罪は不要だよ。

あの一件のお陰で事件解決が早まったんだ。

....そうだ、もしその事で負い目に感じているのなら少し話を聞いてくれないか?」

「話?」

 

そこでフィリップは二人にこの学校で怪しいことが無いか尋ねた。

二人は少し悩むと同じ答えを言った。

「怪しいと言うのならあの"風城怪談"かしら?」

「風城怪談?」

 

「風城高校で噂になっている怪談の事よ。

全部で三つあってそれも最近、流行り出したの....」

「詳しく聞かせて貰えないか?」

「えぇ、一つ目は学校の帰り道に毎回、事故に遭う交差点があるんです。

しかも、事故に遭うのは風城高校の生徒ばかり....そして全員足に油のような物が付いてたんです。」

 

「誰かが故意に油を撒いた可能性は?」

「そりゃ、最初はそう疑われたけど事故の起こった交差点には油の類いは一つも発見できなかったらしくてな。

警察は事故として片付けたって先生からは聞いた。」

「それ以降、その交差点を通る学生が減って怪談話になったんです。

勉強を苦に自殺した生徒の怨念が交差点にいるとか言われて.....」

 

確かに普通じゃあり得ない事故だ。

何もない交差点から油の様な物が現れた...だが、ガイアメモリの力を使えば可能だ。

 

「それで....次の怪談は?」

「次は美術室で起きる石像が増えるって言う怪談だ。

夜になると美術室の倉庫に置いてある石像が動き出し仲間を求めて彷徨う。

そいつらに捕まると自分も石像にされちまうって話だ。

確かにあの倉庫の石像って薄気味悪いんだよなぁ...」

 

そう言う茜の言葉を聞いて無名は思考する。

それを察してフィリップが話す。

「それで最後の一つは何なのかな?」

 

「最後の一つは....ちょっと特殊な怪談なの」

話そうとする楓と茜はお互いに渋い顔をする。

「そんなに酷い怪談なのかい?」

「酷いと言うより"不可解"って言葉の方が正しいな。

最後の怪談は"正義のかまいたち"って呼ばれてる。」

 

「昔、この学校を無理矢理、奪い取ろうとした土地の業者がいたのよ。

しかも、裏でヤクザと手を組んで....そんな奴等がある日学校に来て先生を脅していったのよ。

そして、終わるって彼等が校門を通ろうとした時....」

 

「"全員の首"が飛んだんだ。

呆気ない程、あっさりと.....」

「警察で調べても何も分からなくて....ドーパントの可能性があるのではと言われて捜査されたんだけど...」

「この学校のシステムに何も反応が無かったと?」

 

「そう、それで事件はそのまま迷宮入りしたって話。

まぁ、あくまで先輩に聞いた話だけど...」

話終えた二人に無名は優しく微笑み告げた。

 

「ありがとう。

お陰で色々と分かったよ....そうだ!

学校の近くにカフェとかあるかな?

あるなら教えて欲しいんだけど....」

「あぁ、良いぜ。

んじゃ、今日行くか?」

 

「良いね。

それじゃ、学校終わりに」

そう言うと二人はフィリップと無名から離れていった。

近くにいなくなるとフィリップが話し始める。

「それで....何が分かったんだい?」

フィリップの問いに無名は先程の笑顔とは打って変わり真面目な表情で話し始める。

 

「油の様な物質の生成.....人を石像に変える能力......人の首を遠くから切断する能力....僕の記憶から考えてもこれは一つのメモリでは賄える物じゃありません。

ゴールドクラスのメモリなら可能性はあるかもしれませんがだとしたらこの学校で使う意味が無い。

複数のメモリユーザーが居ることは確定でしょう。

......そして、その者達はこの学校の"システムを掻い潜り"メモリを使う方法を持っている。」

 

「だとすればやはり....」

「えぇ、組織ぐるみの犯行....セブンスの幹部でなければ出来ない芸当です。」

元ミュージアムの幹部である無名の言葉を受けてこの学校に巣食う病魔が根深いことをフィリップは理解するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Another side

 

それは正に偶然のような出会いだったが相手にとっては必然の接触だったのだと後になり俺は理解した。

 

俺は私服に身を包み水音町の探索を行っていた。

もし今後、この街で戦う時の事に備えての行動だった。

 

そんな時が路地を抜けた俺の目の前にあの女が立っていた。

「あ....いたぁ!」

俺を見つけたことを嬉しそうに指差しながら女は言った片手に持っている熊のぬいぐるみが本人の年齢と見合ってない。

 

「俺を探して一体何の様だ"園咲 若菜"。」

そう尋ねると若菜は嬉しそうに告げる。

「おとうさんがね!あなたとあそんできなさいって、いってたの.....だから」

 

 

 

「いっしょにあそば!おにぃちゃん!」

 

そう言うと熊の中から一本のメモリが飛び出す。

「Clay doll」

 

起動したメモリが若菜の周りを回りながら空中にドライバーが浮かぶとメモリが装填されドライバーが若菜の背中に装着される。

 

すると、その姿が変わりクレイドールドーパントへと変わる。

しかしその瞬間、身体にヒビが入り砕けると中から新たな姿を現した。

 

その姿は元のクレイドールより大人びた姿となっておりスカートの様な装甲はドレスの形へと変わり頭には丸い円上の物体が浮かんでいた。

両手は人と同じ五指を保っている。

そして、割れた破片が形を変え球状になると若菜の周りを守るように旋回する。

 

その姿はまるで"天使"のように美しく"神"の様な神々しさを持っていた。

 

その姿を見て克己の直感が過去最高の危険を発している。

「何だか分からんが殺るつもりなら受けて立つ!」

 

克己はロストドライバーを着けるとメモリを起動する。

 

「ETERNAL」

 

「変身」

 

克己は仮面ライダーエターナルへと変身が完了するとエターナルエッジにエターナルメモリを装填する。

 

「ETERNAL MAXIMUMDRIVE」

 

「先手必勝だ....悪く思うなよ。」

 

克己がエターナルのマキシマムを発動すると若菜の身体に異変が生じる。

 

全てのメモリの機能を停止させられる最強のメモリであるエターナルの力がクレイドールメモリに牙を剥く。

 

だが、それを許さなかったのは"メモリ"ではなく"若菜"だった。

 

「それ......"嫌い"。」

 

たった一言そう発した瞬間、仮面ライダーエターナルは吹き飛ばされエターナルメモリがエターナルエッジから弾き飛ばされる。

 

「何ッ!」

克己は驚きながらエターナルメモリに触れる。

エターナルメモリはちゃんと機能している。

自分の変身も解除されていない....だがマキシマムの発動がいきなり停止した。

 

驚く克己に若菜は笑う。

 

「そんなつまらない遊びは嫌......だからもっと遊ぼうお兄ちゃん!」

 

若菜が手を上げると球状に変化した物体が平たくなり鏡の様にエターナルを写す。

 

突如、エターナルは水音町から姿を消した。

そして、真っ黒な世界の中に引きずり込まれる。

 

知覚できない程、一瞬の内に起こった現象に克己は驚くが直ぐに切り替える。

 

エターナルエッジを構えて周りを警戒する。

突如、目の前に若菜が現れるとエターナルを殴り付けた。

軽く振るわれたパンチ....しかしそれをガードした克己の身体は面白い程、簡単に浮き上がり吹き飛ばされる。

「グハッ!」

 

何もない真っ黒な空間を転げ回る克己。

起き上がりガードした腕を見つめる。

マントを使い防御した筈なのにガードした腕は痺れて震えていた。

(まるでマキシマムを受けた様な衝撃だ....あと一発でも喰らうのは不味い!)

 

意識を切り替えた克己は防御の体勢を取りながらこの空間から脱出し逃げる方向で作戦を考える。

克己は傭兵として生きてきた経験を生かし現実を現実として受け止めることに馴れていた。

 

(今の俺ではあの(若菜)には勝てない....それよりも早くこの場から逃げてこの情報を無名達に...)

 

しかし、その考えすら若菜に読まれてしまう。

「お兄さん....遊んでくれないの?

........"つまらないわね"。」

 

そう言うと目の前にクレイドールが三体現れ囲まれると強烈なエネルギーによる檻が作られそこに克己が閉じ込められる。

 

「あらゆるエネルギーの指向性を貴方の方向へ向けたわ。

重力も引力も熱も光も....全て貴方へ向かう。」

(マズイ!)

その危険性を正しく理解できてしまった克己はエターナルメモリをマキシマムスロットへ装填するとマキシマムを発動しがむしゃらにその檻から出ようとする。

 

身体を守っていたマントが焼け落ち破けていく。

「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

全ての力が一つの方向に集まり集束する.....宇宙を無に還す"ビッグバン"の力と同質のエネルギーを欠片でも受けてしまった克己の身体はエターナルで強化されていても悲鳴を上げる。

 

それは痛覚と言う痛みではなく消滅の痛みとして克己に襲い掛かる。

しかし、そんな危機を克己を認めたエターナルメモリが救う。

彼の身体を蒼炎が包むと檻から脱出できる。

次の瞬間、集束していた檻のエネルギーが崩壊し黒い空間が砕けると水音町の路地裏へと戻ってきた。

 

すると、エターナルメモリが限界を迎えて砕けてしまうとロストドライバーも崩壊してしまった。

 

その直後、克己は傷だらけの状態で地面に倒れると意識を失ってしまう。

その姿を冷たく若菜が眺めると頭を抑えて若菜も変身解除してしまう。

 

そして、痛みが治まると若菜は周りを見て言う。

 

「わたし...なにしてたんだっけ?

....まぁいいやおとうさんのところにかえろ!」

 

そう言うと若菜は克己を無視して一人路地裏を後にするのだった。

 

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