萩谷 千晴が交通事故に遇い死亡したと伝えられたのだ。
ドーパントとして最も疑っていた人物の死亡にフィリップはこの事件の真犯人への警戒心を強めていくのだった。
「やられたよ翔太郎まさかこんなに早く先手を打たれるなんて......」
フィリップは電話で翔太郎にそう言う。(因みにこの電話は昼休みに学校の外に公衆電話から掛けている。)
「仕方ねぇよフィリップ。
俺もそこまでは読みきれなかった。」
「それで僕達が助けた生徒は何と言っていたんだい?」
「"全く身に覚えが無い"だとよ。
俺の方でも調べてみたがあの生徒に黒い噂は無かった。」
「だとしたら偶然に狙われた....と言うことになるが」
「あぁ、その理由が分からねぇ。
同じ学生を襲って敵に何のメリットがあるって言うんだ?」
「それは僕も分からない....でもきっとその答えがこの事件を紐解く鍵になると思うんだ。」
「だな....そう言えば無名はどうなんだ?」
「母さんに聞いた話だと大道 克己の治療でかなり無茶をしたらしくて暫く動けそうに無いらしい。」
「まさか、克己が狙われるなんてな。
相手については分かってるのか?」
「いや.....だが相当危険な相手らしい。
母さんがあれ程、警戒しているのは始めてみたよ。」
「そうか、まぁ今はこの事件の解決に全力を注ごうぜ!
フィリップはこれからどう捜査するんだ?」
「先ず、この一件には学校関係者が一枚噛んでいる。
それを見つける必要があるだろう。
その関係者と今回の犯人は繋がっている。
そして、その犯人は恐らくあのコンクリートの攻撃を行ってきたドーパントだ。」
「てことはメモリについては分かっているのか?」
「確定はしてないが恐らく"オイルメモリ"と"コンクリートメモリ"だろう。
相手は上手く隠したつもりだろうが操作した形跡が残り過ぎていた。
恐らくこの一件はコンクリートメモリの使用者にとっても予想外だったんだろう。」
「その一件って言うのは?」
「ドーパントが校門を通り抜けられた事実だよ。
あのドーパントは校門を通り抜けてもサイレンは鳴らなかった。
変身解除してメモリを持っていた僕ですら鳴ったのにね。」
「つまり、その事実を隠したかったわけか。」
「あぁ、そうなるね。」
「フィリップこれからどうする?
この学校が完全に敵の手に落ちているのならお前の身が危険だ。
面倒ならWになって学校に....」
「いや、それは止めた方が良い。
僕達は風都を守る存在だ....そんな暴力的な解決をしても問題が残る。
僕がこの事件を解決するよ。」
そう言って電話を切るとフィリップは茜に会いに言った。
「生徒会長に会いたい?」
「あぁ、萩谷一派と君が争った時、彼が介入してくれたんだろう?
話を聞いておきたくてね。」
「まぁ、それぐらいなら良いけど.....」
茜はフィリップを生徒会室まで連れてきた。
ノックを二回すると「どうぞ。」と言う声が聞こえて二人は中に入っていく。
そこには四人の生徒と一人の教師がいた。
「芦原 茜さん、今日はどうして生徒会に?」
「新入生が生徒会長に言ってたんで連れてきたんです。」
そう言うと座っていた男がメガネを外し立ち上がる。
「そうなのか。
では改めまして風城高校で生徒会長をやっている
僕の隣にいるのが副会長の
本の整理をしてくれているのが会計の
頭貝がそう説明すると横にいた教師も話す。
「そして、私は生徒会の顧問をしている"野々村"です。
今は風城高校の1年生を教えています。」
全員の紹介が終わると頭貝がフィリップに尋ねる。
「君は新しく入学した三年の左君だよね?
ここにはどう言った用件で?」
「亡くなった萩谷 千晴が過去に茜さんと揉めた時、その仲裁に生徒会長が入ったと聞いて詳しく話を聞こうと思ったんです。」
「あぁ、あのカースト制度についてか。
僕達が入学する前から存在していた悪しき習慣だよ。
本当は僕が正したかったが、力が無くてね。
茜さんが萩谷君とトラブルを起こしたと聞いて便乗する形でその制度を壊したんだ。」
「その後の反発は無かったんですか?
例えば萩谷本人から....」
「それはあったけど生徒会の皆や茜さんが協力してくれたからね。
その尽力もあって今の学校の気風になったんだ。」
頭貝がそう言うと染丘が補足する。
「だが、実際は会長の手柄が大きい。
反発する生徒の元に自ら向かい頭を下げて納得させたり一番動いたのは頭貝会長だよ。」
「そんな事は無いよ染丘君。
これは、皆で勝ち取った勝利と結果だよ。」
「.......」
その話を聞いていたフィリップは黙って考える。
「萩谷本人からの嫌がらせは無かったんですか?」
「まぁ、無いことも無かったな。
何度も会長に会いに来ていたし....」
「また、暴力事件が起きるんじゃないかとヒヤヒヤしていたよ。」
「でも、頭貝会長は萩谷君に真摯に向き合った。
顧問の野々村先生と一緒に何度も話し合っているのを見たよ。」
「...では、萩谷が不良を集めてハングレの組織を作っていた事をお二人は知っていましたか?」
「....噂で聞いてはいたけど信じたくなかった。
僕は彼の心を信頼したかったから、でもそれが、結局この事態を引き起こしてしまったのかも知れない。」
「私も教師として恥ずかしいよ。
彼の心の闇を晴らして上げられなかった。」
そう言って俯く頭貝と野々村を他の生徒会員や茜が慰めた。
「ありがとう。
僕は約束するよ...僕が生徒会長の間にこの学校を平和にして安全にすると」
「私も微力ながら協力するよ。
生徒を導く先生として.....」
「今日はありがとうございました。
失礼します。」
フィリップはそう言うと部屋を出ていった。
(まるで"ドラマのワンシーン"みたいだな。
萩谷が死んだことが仕方がなかったと操作したいのが見え見えだ。)
フィリップは人の感情を読み取ることが苦手だ。
だが、翔太郎を失いかけた事があって以降、会話の動きや表情を見ることを重視してきた。
時には翔太郎から教えを受けつつ....だからこそ違和感に気づけた。
(生徒会の会話が頭貝会長と野々村先生の会話が中心に進み過ぎている。
トップが優秀だとしても異常だ。
あれでは宗教の教祖と変わらない。)
聖人君子の様な生徒会長と先生.....端から見ればそう感じるだろうがフィリップには別の見方が出来た。
(あの二人は萩谷の死に何の思い入れもなかった。
口では綺麗なことを言っていたがどうでも良いと言う感情が透けて見えた。
あの学校にはまだ秘密がある。
そして、その秘密の答えを知っているのがあの二人だ。)
「翔太郎に連絡してあの二人について調べてみよう。」
フィリップはそう決めると一人部屋を後にするのだった。
ベッドに寝かされていた克己が目を覚ます。
すると、それを見た京水とミーナが駆け寄ってくる。
「克己!大丈夫?」
「克己ちゃん!!良かったわ意識を取り戻したのね。
私皆を呼んでくるわ!」
京水はそう言うと部屋を出ていった。
「俺は......」
「貴方は水音町の路地裏でボロボロになって倒れていたのよ。
壊れたドライバーとメモリを持って.....」
「ドライバー....メモリ....そうだ。
俺はアイツにやられて....ミーナ頼みがある。
無名を呼んできてくれ。
二人きりで話がしたい。」
克己の言葉を聞いたミーナは不思議に思いながらも無名や他のメンバーにこの事を伝えた。
無名が部屋に入ると克己は上半身をベッドから起こしていた。
「起き上がれるようで安心しましたよ克己さん。」
「あぁ.......」
「貴方も僕に言いたいことがあるでしょうが、先ずは僕の話を聞いてください。
貴方の身体の事です。」
「........」
「克己さんが受けた攻撃は普通の攻撃とは違いました。
全ての力のベクトルが収束した力....分かりやすく言えば小型のビックバンを貴方は受けたんです。
メモリとドライバーによって命は助かりました....ですが」
続きを言いたくない無名の顔を見て克己が言う。
「無名....大丈夫だ。
俺も分かってる.....俺は後、"どれぐらい生きられる?"」
「......このまま治療を続けてくれるのなら"10年"は生きられます。
それ以上は身体の細胞が持ちません。
あの攻撃によって細胞核が破壊されていました。
こうなるともう酵素ではどうにもなりません。」
「そうか....もう一度変身したらどうなる?」
「......変身した瞬間に細胞の崩壊が始まり消えると思います。」
この事実を知った時、マリアさんは過呼吸に陥り文音さんが身体を支えていた。
当然だろうマリアさんは二度も息子を失う事を理解してしまったのだから......
僕の心にもとてつもない喪失感があった。
僕が始めて助けると決めた存在...そんな人物の終わりを知った。
そしてその事はとても受け入れがたいものだった。
「他の皆には?」
「この事を知っているのは僕とマリアさん、そして文音さんの三人だけです。」
「分かった。
.....無名頼みがある。」
真剣な顔をして克己が言う。
「俺の命の事は他の奴等には黙っていてくれ。
お袋からは俺から言うがお前には予め言っておきたい。」
「それは!....分かりました黙っていると約束します。」
「ありがとう無名。
俺からの情報を話す前に取引をしてくれないか?」
「取引ですか?」
「あぁ、この事実を知ればお前はそいつを助けたくなると思ったからな。」
「.....その内容次第ですかね。」
そう無名がはぐらかすと克己が言った。
「俺を襲ったのは園咲 若菜だ。」
「!?...まさか!....そんな....」
「残念だが事実だ。
俺と戦う時、クレイドールメモリを使ったからな。
だが、俺の知っていた姿とは変わっていた。」
「姿が変わった?もしかしてエクストリームに到達したのですか?」
「それは分からない。
だが、あの女の戦い方が似ていたんだ。
お前がゴエティアに操られていた時と....」
「!?」
「クレイドールメモリではない複数の力を完全にコントロールして操っていた。
俺が手も足も出なかった。」
克己から真実を聞いた無名は動揺していた。
(克己さんの話から考えても今の若菜さんの状態は原作のクレイドールエクストリームとは全く違う。
ゴエティアが彼女に何か細工をしたのか?
もしそうなのだとしたら今の若菜さんはゴエティアクラスの強敵になった可能性がある。)
(ビッグバンと同質のエネルギーを持った攻撃を使える....そんな事が可能だとしたらゴエティアが力を与えた可能性が高い。
まさか、彼女も地球の本棚から力を引き出せるのか?)
疑問に答えが出ないまま克己は話を続ける。
「園咲 若菜と言う女はフィリップの姉なんだろう?
文音さんから話は聞いている。
今の彼女は洗脳されている様子だった。
俺は....彼女も助けたい。
そこで、取引だ無名。
もう一度エターナルメモリとドライバーを作って俺に渡してくれ。」
「.....僕の言っていたことが聞こえてなかったんですか?
もう一度、変身したら貴方は消滅するんですよ?」
「分かってる。」
「分かってない!!消滅は僕でも止められないんです!
僕は貴方に死んで欲しくない....もし死ぬにしたって穏やかに看取られて欲しい。
そう思っている僕に.....貴方を殺すドライバーとメモリを作れと言うんですか?
貴方が死ぬ手助けをしろと?ふざけるなっ!
そんな事、やりませんよ。」
激昂する無名に克己は言った。
「無名.....俺はお前に感謝している。
無論、それは俺だけじゃない。
NEVERの仲間やミーナ....お袋だってそうだ。
記憶を取り戻してくれたこと....孤島での一件....エターナルだってお前が手を貸してくれたからなれた。
そのお陰で死者だった俺に夢が出来た。
俺達みたいな化物が安心して過ごせる世界を作る。
....だけど俺にはもう一つ叶えたい夢が出来てたらしい。」
「夢?」
「"フィリップの兄"になりたい。
アイツと何度も話して分かった。
ヤツと俺は似ている考えも境遇も....もしかしたら立場が反対だったからも知れない。
そう思える程、俺はアイツが気に入っちまったんだ。
だからこそ、ヤツの家族の話を聞いて"何とかしたい"と本気で思っちまった。
フィリップの事だ。
俺を殺そうとしたのが姉だと知ればショックを受けるだろう?」
「だからこそ、そうなる前に決着をつけたいと言うんですか?」
「別にそこまで出来ると思う程、自惚れていない。
.....ただ、もしその時が来て俺に守る力が無かったら死ぬ程、後悔していくんだろうと思うだけだ。
俺はそんな事はしたくない。」
そう言う克己の目には覚悟が写っていた。
死ぬ覚悟....救う覚悟....そして生きる覚悟が...
そうだ、この目だ...この覚悟だ。
これを知っていたからこそ僕は大道 克己を助けたかったんだ。
仮面ライダーWに登場する単なる悪役としてではなく一人の人間として彼を救った先に何があるのか知りたかった。
(他者の為に例え傷ついてでも救いたい心がある。
やはり貴方も仮面ライダーなんですね大道 克己。)
「一つ条件があります。」
僕は克己にメモリとドライバーを作る条件を出した。
「貴女の身体の事を皆さんに話してください。」
「それは.....」
「大切な存在に伝えたくない気持ちは分かります。
でもこれまで貴方についてきてくれた人達に話さないのは違います。
大切な存在だからこそ話すんです。」
「....分かった。
これで契約成立だな。」
「はい、貴方のドライバーとメモリは僕が責任を持って作ります。」
そう言うと無名は扉を開けて部屋を出ていった。
外ではリーゼが無名が出てくるのを待っていた。
無名の顔色が悪いことに気づいたリーゼは彼を気遣う様に肩に乗り寄り添う。
「心配してくれるのですかリーゼ。
ありがとう....ねぇリーゼ僕はちゃんとこの世界を生きれているのでしょうか?」
その問いにリーゼは首をかしげる。
ゴエティアにより原作の知識を知りながらこの世界に作られた
それが自分の願いだと思っていたからだ。
だけどゴエティアの存在と自分の出自を知り、分からなくなった。
自分とは何か?....自分は何の為にいるのか?.....
もう誤魔化すことは出来ない。
「僕もそろそろ向き合わないといけないですね。」
そう言うと無名は文音の元へと足を進めるのだった。
Another side
先程まで衰弱していたマリアを支えていた文音は克己がメンバーとマリアを部屋に呼んだことで一人になっていた。
そこに無名が現れる。
「文音さん、お願いがあります。」
そう言う無名の顔は何時もと違い覚悟が籠ったものになっている。
「何かしら?」
文音がそう尋ねる。
「僕が貴方に残した計画書は何処まで進んでいるのですか?」
計画書とは無名がこれから先のバタフライエフェクトに備えて作っていた強化プラン....所謂、テコ入れの策だった。
「3つとも完成して其々が使っているわ。」
無名が作ったのは自分と文音、そして仮面ライダーアクセルの計画書だった。
無名が、自分用に用意したプランは"デーモンメモリを純化してそれに合わせたドライバーを作り上げる事"....そしてこの計画の為に作られたのが"デモンドライバー"だった。
文音にはネメシスメモリの副作用を軽減し精神安定をさせるブレスレット型のリミッターを用意しこれは今も文音が装着している。
そして、アクセルに関しては強化された井坂に勝つ為の新たなメモリ。
"ブーストメモリ"を用意しこれは今、照井の手に渡っていた。
「デモンドライバーは今も左 翔太郎の手にあるのですか?」
「恐らくはね。
来人は受け取っていないと言っていたから....」
「では、僕は翔太郎さんからドライバーを貰ってきます。
文音さんはドライバーに付いていたリミッターを解除してください。
それと純化したデーモンメモリの準備も.....」
「!?....貴方、それがどういう意味なのか分かっているのよね?」
無名がデモンドライバーに付けていたリミッターはメモリからの干渉を防ぐプログラムだった。
メモリとの適合率を限界まで上げるデモンドライバーをこれ以上強化するにはメモリとのリンクを強固にする必要があるがこれは無名にとってゴエティアとの繋がりを強くしより精神に作用されやすくなると言うデメリットも抱えていた。
だからこそ、過去の自分はリミッターをドライバーに搭載していたのだ。
「今の貴方の適合率でリミッターを解除してドライバーを使えば先ず間違いなくゴエティアが現れる筈よ。
何故、そんなリスクを負う必要があるの?」
「.......克己さんを瀕死に追い込んだのは若菜さんです。
本人から聞きました。」
「え?....」
想像してない答えに文音は呆けてしまう。
「一緒に克己さんの身体を検査した僕達なら分かるでしょう?
今の若菜さんがどうなっているのか。」
(あの規格外の攻撃を与えたのが若菜?
そんな事、普通の人間では先ず不可能.....
仮に琉兵衛の言っていた計画通りに若菜がエクストリームに覚醒してもこれだけの力は使えない。
.....つまり)
「ゴエティアが若菜に何かしたのね?」
「僕はそう考えています。
そして克己さんを襲った。」
「そんな.....」
文音にとってマリアはただの仲間ではない。
復讐にとり憑かれていた私を救ってくれた大切な存在である。
そして克己は来人と向き合う勇気をくれた恩人だ。
そんな二人を自分の娘が悲しませ命を奪いかけた。
その事実が文音の心を罪悪感で締め付けた。
そんな文音の表情を察したのか無名は続ける。
「僕も貴女も罪を数える時が来たと言うことです。
克己さんは来人君を弟のように思っています。
彼は若菜さんを助けたいと思っている。
僕にドライバーとメモリの開発を頼んできました。
もう一度、変身したら消滅してしまうことを知りながら.....」
「克己さんを止めることは僕にもマリアさんにも出来ないと思います。
それこそ他の誰にも....だからこそ僕も覚悟を決めました。
ゴエティアとの決着を着けて若菜さんを正気に戻しガイアインパクトを止めます。
貴女はどうしますか?」
無名にそう尋ねられた文音は悩みながら話す。
「私は復讐に身を委ねてしまった愚か者よ。
その為に沢山の人の人生や来人の運命を変えてしまった。
本当なら私は刑務所に置かれる身の上....それは貴方も同じね無名。
でも、もし許されるのならこれ以上私達の被害者を増やしたくない。
私もこの戦いを止める為に協力するわ。
琉兵衛.....いえ"夫"を倒すのではなくガイアインパクトを止めるために」
「ドライバーの事は分かったわ。
持ってきてくれたら私が改良する。」
「お願いします。
じゃあ、翔太郎さんの所に行ってきますね。」
無名はそう言うとその場を後にする。
文音は大きく深呼吸し落ち着きを取り戻すとラボを稼働させるのだった
外伝 続編の投稿に関して
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