染丘からヒントを受けたフィリップは風城高校のセキュリティルームへと赴いていた。
ここは白熱するサーバーを冷やす為、冷房設備が置かれている。
そのせいで監視カメラ等のバッテリーを使う機械との相性が悪くこの学校で唯一監視カメラが無いフロアとなっていた。
そしてここに入るには教職員のカードとパスワードが必要だった。
(メモリガジェットがあれば入れるだろうが持ち込めない以上、既存の道具で何とかするしかないか。)
そう思い、フィリップが手に持っている道具を確認しようとしているとそこに無名が現れる。
「苦戦しているみたいですねフィリップ。」
「....あぁ、あのセキュリティルームに入りたいんだがその道具がない。
メモリガジェットか使えれば簡単なんだが....」
そうフィリップが話していると無名が懐から教職員のカードを取り出した。
「何処で手に入れたんだい?」
「貴方よりもここでは友達が多いみたいで手に入れられましたよ。」
そう無名が答えた。
種明かしをすると教職員のカードは無名が盗みパスワードは楓が調べていてくれた。(命の恩人であり家族を助けてくれたこともあり協力してくれた。)
無名がカードを機械に通しパスワードを打ち込むと扉が開いた。
そしてフィリップと無名は中に入る。
その中は大量のサーバーが収められており中を冷やす為
クーラーが付いており寒かった。
「ここの何処かにシステムの穴を付く何かが仕掛けられている筈だ。」
「では調べてみましょう。」
無名がそう言うとスマホを取り出してコードを付けるとサーバーに接続した。
「直接、調べるのか?
逆探知されるかもしれないぞ。」
フィリップの疑問に無名が答える。
「問題ありませんよ。
ハッキングするのは僕が信頼する
そうしてコードをサーバーに取り付けると遠隔操作でリーゼがサーバーからデータを読み出す。
システムのプロトコルが起動しようとするが
そして、セキュリティプログラムの中身がスマホに表示される。
それをフィリップと見つめる。
「特に変わったプロクラムは見当たらないね。」
「えぇ、データを書き換えた痕跡も見当たりません。
つまり、システム自体はちゃんと機能している。」
「ならば、一体どうすればこの学園にガイアメモリを持ち込めるんだ?」
「システムに問題がないならメモリに細工をしてあるのかも知れませんね?」
「メモリに細工?」
そう言うと無名はスマホの画面を指差す。
「このファイルには学園内で使われた学校指定のスマホの通信履歴が書かれています。
恐らくですが内部に識別するチップがあるんだと思います。
そのチップが入っていればシステムの干渉を受けなくなる。」
「成る程、それならシステムをハックするより遥かに効率的で確実だ。
システムに弄った形跡を残したら照井が見つけるだろうが穴が存在しないのならそもそも調べようがない。」
「えぇ、しかもセブンスが学校内部にまで入り込んでいるのならその細工も容易に出来るでしょう。
後は目的が分かれば......!!隠れて」
気配を感じ取った無名はフィリップと共にサーバーの間に隠れた。
すると、セキュリティルームの扉が開き中に誰か入ってくる。
足音の数からして複数人いるのだろう。
顔を見る事は出来ないが会話を聞くことは出来た。
「あー、やっぱりタバコを吸えないのはキツいよなぁ...」
「仕方ありませんよ。
ここはセキュリティの厳しさは風都の学校でも随一です。
"ここの事"だって整備業者の人が来てタバコを吸っていたのを見て偶然分かったんですから....」
そう言うとライターを着火するカチカチと言う音が鳴り暫くの沈黙が起こる。
「ふーっ、それにしても何たってこんなセキュリティを厳しくしてるんだ?
そりゃ、風都で噂になってる
「ですよねぇ.....内の生徒が風城高校の怪談事件もその怪物の仕業だって言って盛り上がってて困ったものですよ。」
「でも、実際何なんでしょうねあの怪談は.....
生徒が何人も行方不明になっていますし」
「オイ、それ間違っても生徒には言うなよ。
確証のない可能性で生徒を混乱させるのは俺達の仕事じゃない。」
「でも、もし本当だったら.....」
「そんな事はあり得ない。
....良いな?あり得ないんだ。」
そう言い話し終わると二人はセキュリティルームを後にするのだった。
人がいなくなったのを確認すると二人はサーバーの間から出てくる。
「どうやら、この学校は怪談以外にも事件を抱えているみたいだね。」
「その様ですね.....確証ですか。
フィリップ、君はこの後どうしますか?」
「僕は一度、事務所に帰って整理するよ。
君は?」
「もう一つの謎について調べてみようと思います。
増える美術室の石像について....」
「そうか、何か分かったら連絡してくれ。」
そう言うとフィリップと無名は別れて事務所へと向 帰るのだった。
残った無名はセキュリティルームを出ると楓の元を尋ねた。
「無名さんどうしたんですか?」
疑問を投げ掛ける楓に無名は答える。
「実は美術室の倉庫に行きたいのですが力を貸してくれませんか?」
黒岩 楓は水彩画で多数のコンクールに出場しており沢山の賞を貰っていた。
そんな彼女がいれば美術室に入れると無名は思っていた。
「はい、良いですよ。
じゃあ、先生に鍵を貰ってきますね。」
楓は笑顔でそう言うと鍵を取りに行き無名渡してくれた。
「ありがとう楓さん。」
「いえ、それより美術室で何かするのならお手伝いしましょうか?」
「いえ、ただ石像を見たいだけですので....」
「石像....怪談に関係している物ですね?
だとしたら尚更、手伝いたいんです。
その怪談に巻き込まれて学校を辞めた先輩もいるんです。
お願いします。」
そう言って無名に頭を下げる楓。
無名はため息をつくと言った。
「仕方ありませんね。
何もないとは思いますが僕の隣から離れないようにしてください。」
無名はそう言って楓と共に美術室へと向かった。
美術室に入ると放課後と言うこともありその場には楓と無名以外誰もいなかった。
「作品を保管しているのはあの奥の扉です。」
楓が指差した扉を無名は開けようとするが鍵が閉まっていた。
(やっぱり閉まってますか。
まさか....ここで役に立つとは)
無名はポケットからクリップを取り出すと真っ直ぐにして長い針金を作ると鍵穴に差し込んだ。
無名は戦闘能力を上げる為に部下やNEVERのメンバーから色んな事を教わっていた。
黒岩と芦原からは"銃の技術"、堂本からは"棒術"、克己からは"ナイフを使った近接攻撃"、京水からは"関節技"、そしてレイカからは"足技と強盗時代のピッキング技術"を習っていた。
(確か針金があるなら一般の鍵は数秒で開けられないと論外と言われましたね。)
レイカが教えたピッキングは鍵穴を覗きながら行うものではなく立ちながら見た目に違和感が無い様に装って開ける方法だった。
故に楓に疑問を与えることなく鍵を開けることが出来た。
「開きましたね....行きましょうか楓さん。」
そう言うと無名は中に入っていった。
中には授業で使う道具と作品が置かれている。
しかし、無名は中を見て違和感を覚えた。
「随分と石像が多いですね。」
「そうなんです。
誰が作っているのかは分かりませんが私が始めてここを見た時から石像は多かったです。」
楓の言葉を受けて無名は大量の石像を観察していく。
「首を抑えていたり悲痛な表情をしている石像しかありませんね。
まるで"生きながら石像にされたかのような表情"だ。
それにこの服装....風城高校の物か?
いや、それだけじゃない警察官の様な服をした石像もありますね。」
(もし、僕の想像する能力を持ったドーパントの仕業なら....不味いですね。
しかもこの量、相手は能力を使い慣れている。)
そう観察し終わり無名が楓に顔を向けると楓は口を抑えてショックな表情をしている。
「どうしたんです楓さん?」
「この....石像....私の先輩です。」
楓はそう言って一つの石像に指を指した。
その石像は"頭が半分欠けている像だった"。
悲痛な顔をしながら手を伸ばしている。
その石像の精巧だった為、楓はそれを見てショックを受けてしまった。
楓は過去の事件の影響から凄惨な光景や物を見ると足が震えてその場から動けなくなってしまう。
そんな楓の肩に無名は触れる。
「落ち着いて....あれは石像です本人じゃない。
ここを出ましょうか長居をする場所じゃない。」
「.....はい。」
そう楓は言うと無名の助けを借りて部屋を出た。
教室に戻ると楓は落ち着きを取り戻す。
そして、無名を見つめて聞いてきた。
「無名さん....あれは"石像"じゃないんですよね?
私が昔に見た怪物の仕業なんですか?」
「!?....何時その怪物を見たんですか?」
驚く無名に楓は話す。
「私....事故の影響で意識を失ってたんですけど..."耳は聞こえていた"んです。
だから...色んな声を聞きました。
私達が事故に遭った理由....その後にお父さんが決めたこと....そして貴方がガイアメモリを売っている組織の人だってことも....」
「そこまで知っていて君はどうして僕を警察に売り渡さなかったんだ?」
「私とお母さんはお父さんに助けられました。
お父さんが諦めたら私達は当の昔に死んでいた。
そして、そのお父さんを助けてくれたのが無名さん貴方です。
例え貴方が犯罪者だとしても命の恩人です。
だから、貴方の役に立ちたいと思っていた。
でも、お父さんは貴方と必要以上会わせようとしませんでした。」
「それは当然です。
貴女を守ることもお父さんとの契約に入っていますから....」
「やっぱり....それがこの学校に来た理由ですか?」
「えぇ、貴女ともう一人の人物を助ける為に....」
「もう一人は....もしかして茜ですか?」
「どうしてそう思うんですか?」
「お父さんが良く気に掛けてて話を聞いたら"友達の娘"だと言ってました。」
「成る程....貴女が真実を知っている事を両親に伝えているのですか?」
「お父さんもお母さんも知りません。
無名さんに初めて話しました。」
「では、僕と契約しませんか楓さん。
貴女が僕に言った事実を両親に話さない。
代わりに僕は貴方の望むことを叶えます。」
「....理由を聞いても良いですか?」
「貴女がその真実を知っていると父親が知ったら悲しむだろうと思うのが一つ....もう一つは出来ることなら貴女にはこちらの世界と関わらない生き方をして欲しいんです。
ガイアメモリは力を与えますがそれと共に因果が憑き纏います。
そして、気がつけば大切な存在が傷つくことになる。
傷付くだけではなく命を失うかもしれない。
そんな事例を何度も見てきました。
心と力が入り乱れた街....それが今の狂った風都なんです。
そして、僕はこの風都を狂わせた責任を取らないと行けない。
だからこそ、貴女には....いえ貴方達家族には普通の人生を生きて欲しい。
そう思ってるんです。」
「....無名さんは身勝手ですね。
分かりましたじゃあ代わりに私の願いも叶えてください。」
「絶対に生きて下さい。
どんなに絶望的な状況でも生きてください。
貴方が生きている事が私の願いです無名さん。」
そう言うと楓はその場を去った。
"生きて欲しい"自分へ言われた優しい言葉に無名は少し歯がゆく思いながらも手に入れた情報をフィリップに送り事件の捜査を進めるのだった。
Another side
誰もいない教室で頭貝と染丘は自分達を従える存在から告げられた命令に困惑していた。
「そんな....こんな事をしたら他の生徒達の命が...」
染丘は顔を手で覆う。
今までも非道な命令は幾つもあった。
だけど、それは少数を犠牲にする事で平和が保たれる。
しかも、犠牲になるのは善人とは言いづらい人物だったことで何とか整理をつけていた。
だが、今回の命令はこれまでと全く違う。
下手すれば学校にいる全ての人が犠牲になりかねない危険なものだった。
「こんな命令を聞けるわけ無い。
頭貝、もう止めようこれ以上手を貸したら....」
そう言って止めようとする染丘に頭貝が告げる。
「それがこの学校の平和に繋がるのなら僕は命令を遂行する。」
「おい、頭貝正気か!
一体何人の生徒を犠牲に....」
「犠牲にしなければ良い。
命令は左 来人の確保....他の生徒を巻き込まないようにすれば良いだけだ。
屋上の監視カメラの停止と人払いを頼みたい....何時出来る?」
「....2日、いや1日くれ。
直ぐに準備する。」
「頼む....全てはこの学校の平和の為に」
そう言う頭貝の顔は何時もと違い曇っている様に染丘は見えた。
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