しかし、その学校を見つめる者達の顔は暗い。
「「...........」」
サラの部下である緑塚と青谷は手にメモリを持ちながら苦い表情をする。
その光景を紫米島が見て笑う。
「どうしたよそんな浮かない顔して?
やることは何時もと変わらねぇ。
ドーパントになって暴れれば良いだけだ。」
紫米島の言葉に青谷が怒る。
「何の罪も無い子供を襲うなんて.....何を考えているんですか!」
「罪が無い?....下らないな。
罪があろうと無かろうと仕事は仕事だ。
それにお前らに振り分けられているのは侵入者の排除だ。
直接殺るのは俺達や中にいる仲間だ。
あんまり、我が儘言ってんじゃねぇよ。
それに文句があるなら協力しなくても良いんだぜ?
だが、そうしたらお前らの
紫米島の挑発を受けて青谷の顔は暗くなり緑塚は怒りで歯を鳴らす。
美頭からサラが獅子神に敗れて捕まったことを聞いた。
そして、彼女を助けたいのなら獅子神の駒として動くしかないとも告げられた。
本音を言えば二人は今すぐにでもサラを助けに行きたいが居場所が分からずサラの命は獅子神に握られている。
下手な行動をしてサラが死ぬことだけは何としても避けたかった。
そして、それは美頭も同じであり今彼は、サラを助ける為に獅子神から受けた命令を行い別行動している。
故にサラの安否を知る手段を二人は持たなかった。
そんな二人を紫米島は嘲り笑う。
「まぁ、安心しろ獅子神は有用な存在には寛大だ。
お前らがちゃんと働けば問題は無い。
サラが心配なら黙って従っていろ。」
「覚えていろ我が女神を侮辱した罪は必ず購わせてやる。」
「それはとても楽しみだな。
仕事が終わればお前らは自由だ。
俺を殺したいのならそうすれば良い。
寧ろそうしてくれるのなら俺も戦えて楽しいがな。」
そう言うと紫米島はその場を後にした。
そんな彼の背中を二人は睨み付けるしか出来なかった。
フィリップは悩んでいた。
無名の集めた情報と翔太郎の直感、そして僕の検索を使い導きだした真実。
それはフィリップが信じられない答えであった。
だからこそ、どうすれば良いのか悩む。
(染丘さんが僕にコンタクトを取ったのは偶然じゃない。
きっと彼の狙いは....)
そんな事を考えているとフィリップは生徒会役員に呼ばれた。
話を聞くと会長から僕に話があるらしく屋上で待っているそうだ。
検索を終えたフィリップにとってそれが罠だと分かっていた。
(でも、僕は真実を知りたい。)
フィリップは授業終わり一人で屋上へと向かうのだった。
ところ変わって無名はこの日感じた違和感を確かめる為、周りの捜索をしていた。
何時も通りの学校の筈なのに何処か空気がヒリつく。
まるで何か事件が起こる前触れを身体が感じているかの様に.....
そうして探索していると学校近くの道で"青谷"を見つけた。
その顔は暗く何かを悩んでいるように見えた。
無名はバレない様に隠れながら青谷へと電話した。
着信画面を見て青谷は驚くと建物の影に隠れながら電話に出た。
「.....はい。」
「無名です。
一体こんな所にどうして来たんですか青谷さん?」
青谷 千鶴はサラの部下だ。
故に獅子神の管理する場所の近くにいる事は違和感がある。
そう考えていると青谷が答えた。
「今、私達は獅子神の命令で動いています。」
「....それはサラの指示ですか?」
「........」
「成る程、分かりました。」
青谷の沈黙で無名は察した。
(サラの周りの部下はサラを崇拝し従っている者ばかりだ。
サラの命令無しで獅子神につくことは考えづらい。
だとすれば答えは一つ。
獅子神によってサラが人質に取られている。
そして、獅子神の勢力にサラの勢力が加わった。
.....まずいな。
獅子神の勢力だけでもキツいのにサラの仲間まで加わられたら勝ち目が無い.....)
この風都において園咲家を除いて単独として組織を運営出来る者は少ない。
獅子神やサラ、過去の僕、それに井坂や万灯だけだろう。
(目的はフィリップの身柄でしょうね。
獅子神は一度、失敗している。
同じ轍は踏まない男だ....万全を期す為にサラの部下を奪ったんだろう。
獅子神はここで決めるつもりだ。)
無名の思考はその真実に辿り着くと自分の取るべき行動を考えながら青谷に話し始めた。
「事情は分かりました。
サラの事はこちらでも何とかしてみます。
貴女達は獅子神の命令に従ってください。
業腹かも知れませんが今はサラの安全を優先に....
獅子神は自分の利益になる間は約束は守る男です。
怪しまれてもいけないので電話を切りますね。」
そう言って無名が電話を切るとリーゼにメールを打った。
『獅子神の勢力が風城高校に現れます。
目的は恐らくフィリップの確保。
それを今動ける全員に連絡してください。
それが終わったらリーゼ貴方は"僕のドライバーとメモリ"を持って来て下さい。』
端的に用件を書き終えると無名は翔太郎に連絡をつける。
コール音が数回すると翔太郎と繋がった。
「無名か?」
「はい、翔太郎さん緊急事態です。
獅子神が風城高校に現れます。
他の皆さんにこの事を連絡してください。」
「何っ!それは一体どういう......いや大丈夫だ。
大体察した。」
急に冷静になった翔太郎に無名は尋ねる。
「どうしましたか?」
「フィリップからの呼び出しが来た。
どうやらWの出番が必要らしい。」
そう言うと翔太郎は足早に電話を切った。
(フィリップが変身した?
.....つまり犯人が分かったのか。)
自分が思うよりも早く事態が動いていることを理解した無名は急いで学校に戻るのだった。
屋上へと入ってきたフィリップを生徒会長の頭貝と副会長の染丘が迎える。
「やぁ、来てくれて嬉しいよ来人君。」
「僕を呼び出して何か用ですか生徒会長?」
その問いに頭貝はメモリを見せて答えた。
「.....やはり貴方がもう1つのメモリの所有者でしたか頭貝会長。」
「あぁ、だけど僕自信も驚いているよ。
まさか、君が"あの人"に狙われているなんてね。」
「あの人....会長にメモリを渡した人物の事ですか?」
「あぁ、さて無駄話は終わりにしてさっさと済ませてしまおうか。」
そう言う頭貝にフィリップは待ったをかける。
「待ってください。
貴方の狙いが僕なのならせめて事件の答え合わせだけでもさせてくれませんか?」
「答えも何も僕がドーパントとしてこの学校を支配....」
「"違いますよね?"
貴方の目的は"学校の秩序を保ち平和を維持する事"ですよね。
もっと言えば......」
「"他の生徒がメモリの実験台にならない様にする事が貴方の目的だった"んじゃないですか?」
「.........」
フィリップの言葉に頭貝は動きが止まる。
そして推理が続きフィリップの口から話されていく。
「きっかけは萩谷と芦原の衝突からですね?
問題解決の為に調べていく内に貴方はこの学校の裏の部分を知ってしまった。
この学校が生徒をガイアメモリの実験台にしている事実に....そして貴方は独自で調査を始めた。
その過程で貴方は黒幕の元に辿り着いた。
だけど相手の悪辣さは貴方の想像を遥かに越える者だった。」
「僕はこれまでずっと風城高校の中での事件ばかりに固執していました。
怪談の影響もありましたから...だけど相棒の閃きが僕に新たな視点をくれたんです。」
フィリップが事務所で翔太郎と事件について話している時、僕は彼にこの仮説を伝えるとこう返してきた。
「なぁ、相棒。
お前の考えが真実ならこの事件はもっと根深い者なんじゃねぇのか?
ミュージアムの幹部が学校でのガイアメモリ実験程度で満足するか?」
そう言われた僕は地球の本棚に入るとキーワードを更に付け足した。
そして、辿り着いた真実は
「ガイアメモリを使用していた疑いのある生徒は学校外で犯罪行為に及んでいたんだ。
少なくとも五年間は行っていた証拠もある。」
これまで、解決出来なかった不自然な事件や事故....そこに風城高校のキーワードを入れると必ずその場にその生徒が存在していた。
「そして、このガイアメモリの実験台を選ぶ基準に過去にあったカースト制度が使われていた。
"カースト上位で傲慢だった生徒"、"カースト下位で復讐を望む生徒"....そう言った存在を意図的に選んでメモリを渡していたんだ。
しかも、本格的な事件として登録されているのは学校とは関係ない場所での事件や学校を卒業した後だった。
巧妙に隠されていて普通に捜査した位じゃ気付けない。
そして、ここまで調べ終わって僕は確信した。
貴方はこの学校を変える為に黒幕と手を組んだのだと...」
「萩谷の一件以降、この学校でのカースト制度は無くなった。
だが、それを納得できる生徒ばかりじゃない。
前のように傍若無人に動きたい者もいた筈だ。
貴方はそんな生徒を粛清した。
美術室にある石像は反目した生徒達なんでしょう?」
「そこまでお見通しか.....そうだ。
彼処に保管されているのは新たなルールに納得できずに暴走した生徒達だ。」
染丘がそう答える。
「染丘.....」
「もう良いだろう頭貝。
彼はもう真実に辿り着いている。
それに答え合わせをしても"時間はまだ残っている"筈だ。」
そう言うと染丘が話し始めた。
「俺達がこの学校の真実を知ったのは入学したての頃だ。
親しかった先輩が急に学校を休んでそのままいなくなった不思議に思った俺達はそれを調べていく内にこの学校が生徒をメモリの実験台にしてると知ったんだ。
そして、その事を知られて俺達が殺されそうになった時、頭貝が組織のボスと取引をした。
"自分達が犠牲になる代わりにメモリの犠牲者をこれ以上増やさないでくれと"頼んだんだ。」
「だが、それは認められなかった....そうですね?」
「あぁ、だから頭貝は手段を変えた。
犠牲者を断てないのなら選べる様になれば良いとね。
俺と頭貝はボスから与えられたメモリを全て使った。
そして、自分達の有用性を認めさせ更に取引をした。
今後のメモリの使用者を俺達が決めると言う契約だ。」
「その横暴な契約を貴方達のボスは聞いてくれたんですか?」
「あぁ、俺達はどうやら過剰適合者と呼ばれる存在だったらしくてな。
それで手に入った新しい能力がこの学校を陰から運営していく上で必要だったらしくてな。
俺達の望みは叶えられた。
そして、カースト制を廃止すると俺達はメモリの犠牲者の選別を行いメモリを与えて使わせた。」
「萩谷もその犠牲者の一人だ。
だが、奴はルールを破って好き勝手にメモリを使い始めた。
だから...始末した。」
二人の告白を聞き終わったフィリップは静かに尋ねる。
その声には怒りと悲しみが籠る。
「何故.....警察に連絡しなかったんですか?
それが無理でも他の大人を頼れば少しは!」
「変わったとでも言いたいのか?
それは無い。
警察はこの学校を疑ってはいたが結局は捜査しなかった....いや出来なかった。
ガイアメモリの力を恐れて屈したんだ。」
「それに大人を頼って何になる?
真実を教えても結局、口封じをされるだけだ。
そうやってこの学校は偽りの平穏を謳歌してきたんだ。」
「だけど....それじゃあ、貴方達はこの学校の犠牲に.....」
「何かを手に入れたいなら何かを失うしかない。
僕達は"他の生徒の安全と引き換えに悪魔に魂を売った"んだ。
.....さぁ、無駄話はもう良いだろう?
そろそろ始めよう。」
頭貝がメモリを起動する。
「
メモリを首に挿すと頭貝の身体が変化し液状のコンクリートが覆うとドーパントの姿へと変貌した。
ドーパントが指をフィリップに向けると地面が隆起し液体に変わると彼へ襲いかかる。
それを避けると液状化した地面はフェンスに当たった。
その直後、フェンスの見た目がコンクリートの様に変化する。
「!?」
「本来のコンクリートメモリは地面のコンクリートを液状化して操るだけらしいが僕が使うと液状化したコンクリートに触れた物質をコンクリートに変換できる。
勿論これは生きた人間でも可能だ。」
そう言いながら頭貝はフィリップの周りを囲うように液状化したコンクリートを展開する。
「触れたら一瞬でコンクリートに変わるから痛みもない。
.......すまない君のような善良な生徒を巻き込みたくはなかった。
だけど、こうでもしないともっと犠牲者が.....」
「犠牲者?それは一体....」
「お別れだ。」
フィリップの問いに答える様子もなく頭貝はコンクリートを操作してフィリップの身体を包み込むがその行動は突如現れたファングメモリの噛みつき攻撃によって止められた。
「ぐあっ!」
いきなりの事に驚きながらも頭貝は噛み付いてきたファングメモリを突き放す。
「頭貝会長.....実は僕も謝らないといけません。
僕は普通の学生じゃない。
本職は探偵で....仮面ライダーです。」
そう言ってフィリップがブレザーのボタンを取ると腰にWドライバーが付いていた。
学校の仕掛けを解いたフィリップはWドライバーにセンサーが関知しなくなるマイクロチップを埋め込んでいたのだ。
翔太郎はリボルギャリーの中からドライバーを通してフィリップと同じく頭貝達の話を聞いていた。
無名との電話を切り一度心を落ち着ける。
フィリップと年の変わらない子供が他の生徒を守る為に
悪事に手を染めた....その事実に翔太郎は怒りを覚える。
(子供を利用してこんな辛い犯罪を行わせるなんて...
俺達は街を泣かせる悪党は許さねぇ.....だが悪事に加担させられた者をほっとく事は絶対出来ねぇ!
フィリップ....二人を救うぞ!)
Wドライバーを通して伝わる翔太郎の感情を感じてフィリップは小さく笑う。
「あぁ....行くよ。
来い!ファング!」
フィリップの命令にファングメモリは従い彼の手に収まるとそこからメモリの形へと変化させていく。
そして、完了するとメモリを起動した。
それを翔太郎は理解しつつリボルギャリー内でメモリを起動する。
「FANG」
「JOKER」
『「変身!!」』
メモリをWドライバーに装填すると勢い良く展開した。
「FANG,JOKER」
フィリップの身体が変化し白と黒の色を持った仮面ライダーWファンクジョーカーへと変身が完了すると頭貝に向けて指を指す。
『「さぁ、お前の罪を数えろ。」』
静かだが決意の籠った声で告げられた言葉を受けて頭貝は笑う。
「今さら数えた所で罪は消えないよ。」
何の感情も籠ってない声でそう答えると頭貝はWへと向かっていくのだった。
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