もう一人の悪魔   作:多趣味の男

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風城高校の教室は騒然としていた。
今まで同じ様に学校で学んでいた生徒がガイアメモリを取り出すと身体に挿してドーパントへ変わっていく。

そして変わったドーパントは周りの人間を手当たり次第、襲い始めた。
その表情からはその行為を心底楽しんでいるのが伝わってくる。

昔のB級映画の様な状況.....
怪物が学校に現れ生徒を惨殺していく。
本当ならそうなる筈だったが...その運命を変えたのは奇しくも怪物と同じくこの世に生きていてはならない死者だった。


第百九十話 Mの一手/死者のパレード

仮面ライダーデモンへと変身した無名は翔太郎に話し掛ける。

「無事ですか?」

「何とかな....それよりお前、その姿は」

 

「それについては追々、今から僕の力で貴方をフィリップの所まで飛ばします。

着いたら彼からヒートとルナのメモリを受け取ってください。

そして貴方のメタルとトリガーも合わせて空中に放り投げてください。」

「理由を聞いても良いか?」

 

「僕がこの学校に援軍を送りましたもうそろそろ到着している筈です。

彼等を助けるために"メモリ"が必要なんです....お願いします。」

翔太郎は一瞬考えると決断した。

 

「分かった。

相棒のところへ俺を運んでくれ。」

その言葉を受けて無名は指で円を描くとその指に合わせて黒炎が上がりゲートが出現する。

翔太郎は何の躊躇いもなくその中へ入っていくのだった。

 

その行為を見て獅子神は怒る。

「貴様っ!一体何をした?」

「ゲートを作り翔太郎さんをフィリップのいる所に届けただけですよ。

それにしても随分と思い切った策を取りましたね。

サラを人質にして部下を掌握するなんて......ミュージアムは何時からヤクザ物の手口を行うようになったのですか?」

 

無名の言葉が獅子神の感情を逆撫でる。

「黙れっ!組織の裏切り者がっ!

貴様にどうこう言われる筋合いは無い。

また俺の計画を邪魔しようとするなら今度こそ殺してやる。

この学校の生徒も道連れにな。」

「道連れですか。」

 

「あぁ、この学校には俺が育てた部下の実験動物(生徒)がいる。

彼等が暴れてこの学校の生徒は全員死ぬ。

そして、俺は来人様の身柄を手土産にミュージアムでの地位は磐石のものとなる。

そして、ここでお前を殺せば....俺は本当の意味で解放される訳だ。

さぁ、どうする無名?

お前が呑気に俺と喋っている間に人がどんどんと死んでいくぞ!」

 

獅子神はそう言って笑うが無名はその顔を見て溜め息をつく。

「獅子神、貴方は二つ程、勘違いをしています。

1つ目は僕はこの学校の生徒に何の思い入れもありません。

大事な存在(黒岩と芦原の娘)以外はどうなろうと知ったことじゃない。

そこに関しては僕を脅す材料にはならない。

 

もう1つは貴方の見積もりの甘さです。

僕が何の備えもなくいたと思いますか?

いえ、それ以上に...."高々二つの勢力を足した程度"の武力で敵うと?

随分と安く見られたものですね。」

 

「どういう意味だ?」

そう尋ねる獅子神に無名は答える。

「大変なんですよ?

"全員分のドライバー"を用意するのは.....」

 

 

 

Another side

 

生徒会の宮根と根本、そして野々村によって選ばれた数十名の生徒は全能感に酔いしれていた。

漸く与えられたメモリを使って好き勝手に暴れることが出来るからだ。

 

メモリを持つ生徒達は興奮を高める為に野々村から貰った(エンゼルビゼラ)を服用する。

薬を飲むと直ぐに身体が熱くなり精神は冷静でありながら興奮状態になる不思議な感覚を覚える。

 

この感覚が癖になって堪らない。

そしてここにメモリを挿してドーパントになればこの感覚は更に強くなる。

 

(もう限界だ....耐えられない。)

そんな空腹の猛獣の飼い主から連絡が届く。

スマホを確認すると笑った。

"狩りを始めて良い"......それだけ書かれていたショートメールを見ると全員動き始めた。

 

其々の部屋に別れて向かっていく。

宮根が向かったのは3年の教室だった。

中に入ろうとすると担任の教師に呼び止められる。

宮根を見ると言った。

「おぉ遅刻か宮根、君にしては珍しいな。」

 

そう言って私の肩に手を置く。

(あぁ、嫌だこの人間は.....)

宮根は端正な顔立ちと豊満な身体からセクハラや痴漢を受けることが多い人生を送っていた。

だからこそ、このメモリを手に入れた時決めていた。

(私に許可無く触れる奴は皆、"殺してやる"。)

 

宮根は笑顔でその担任の頭と肩をを掴むと無理矢理引きちぎった。

長期間のメモリ使用により宮根が手に入れた力は常人を優に越えた腕力。

 

そして、千切った担任の首を持って彼女は教室に入る。

その姿を見て呆けている生徒を尻目に宮根は笑顔でメモリを起動する。

 

Hammer(ハンマー)

胸のコネクターに挿すと宮根の身体が巨大化する。

150cm位だった身長が伸び2メートル近い大きさに変わると全身を四角いキューブの様な装甲が覆い背中に長い取っ手を持つハンマーが現れた。

 

変身が終わり最初に行動したのは茜だった。

茜が教室の机を宮根に向かって投げつける。

それを担任の頭を持った腕を使って思いっきり殴り付けた。

グシャ!と言う音と共に潰れると机が窓ガラスを割り外へ弾かれる。

 

「乱暴な事しないでよ茜ちゃん。」

宮根はそう笑いながら言うが茜はそれを無視して周りの生徒に大声で叫ぶ。

 

「逃げろっ!殺されるぞ!」

 

その声に呼応するように他の生徒は教室から出ていく。

「私を置いて逃げるなんて悲しいなっ!」

宮根はそう言って逃げる生徒を追おうとするが椅子を振り回して茜が阻止する。

 

「宮根、止めろ!皆を殺すつもりかっ!」

「そのつもりだからメモリを使ったのに分かってないの?」

止めようとする茜に向かって宮根は握った拳を振るう。

防御したらマズイと分かった茜は椅子を振るわれた拳に投げ付けて攻撃を回避する。

 

変わりに椅子が宮根の拳を受けてバラバラに砕けてしまった。

茜は空手の構えをして対峙する。

その光景を見ながら宮根は不敵に笑う。

「あれれ?良いのかな?

私の相手をしていて....私なら楽に殺して上げられたのになぁ。」

「どういう意味?」

 

「根本とか陰湿だからオモチャにされて死ぬかもしれないって事よ。」

「まさか、他にも!」

宮根の言葉を聞いて茜は逃がした楓の事を考えてしまった。

それが戦いの場では隙となる。

 

「油断しちゃダメでしょお!」

「しまっ!」

宮根の拳が茜の顔面に振るわれた。

咄嗟に腕を使ってガードするがドーパントの攻撃をもろに受けた腕から骨が折れる音が聞こえるとそのまま壁へと吹き飛ばされた。

 

「かはっ!」

壁に激突した影響で肺の息が口から吹き出す。

ダメージを回復できず起き上がれない茜に向かって宮根は背中のハンマーを掴むと頭に向かって振り下ろした。

「バイバーイ。」

そう言いながら振り下ろされるハンマーを見ながら茜は思う。

学校の事、楓の事、母の事....そして死んでしまった父の事を......

 

「パ....パ......」

そうしてハンマーは彼女の頭に振り下ろされそうになるが突如、宮根の身体は怯む。

その方向に目を向けると銃を発砲しながら此方に走ってくる誰かがいることが分かった。

頭が揺れて視界が安定せず顔は分からない。

 

その誰かは宮根を茜から引き剥がすと彼女を抱き抱えた。

「茜!しっかりしろ!死ぬな!」

その声に聞き覚えがあった。

母さんが何度も見せてくれた私が生まれた時の映像、そこに写っていた父の声とそっくりだったのだ。

 

そして安定してきた視界に捉えたのは、

茜を助けに来た父親()の顔であった。

 

 

 

気が付いたら身体が動いていた.....

無名のメモリの力で学校内に転移したNEVERの面々は学校で暴れているドーパントに対処するため別れていた。

 

銃を構えながらクリアリングをしている時、何かが衝突する音が聞こえてそこに急いで向かうとそこは娘がドーパントに殺されそうになっている場面だった。

 

俺は銃の安全装置を解除してドーパントに弾を当てつつ娘の元へ走っていった。

(走れ!間に合え!)

 

焦る心のままにドーパントに弾を当てつつ娘から離れさせると倒れている娘を抱いて安否を確認する。

 

「茜!しっかりしろ!死ぬな!」

 

俺の声を受けて娘である茜は反応する。

「....パ....パ?」

意識はハッキリしている。

見たところ腕が折れている以外は問題はなさそうだ。

 

俺は耳の無線を起動させる。

「此方、芦原....三階、教室前でドーパントを発見した。

負傷者を発見....名前は芦原 茜だ。」

その声に他の仲間が反応する。

 

「茜ちゃんが!....無事なの!?」

動揺する京水に堂本が言う。

「落ち着け京水!....賢が言うなら大丈夫だ。」

 

「命に別状はない....だがドーパントからの攻撃を受けて腕を負傷した。

恐らく、折れている.....」

「そんなっ!」

その言葉を受けて京水がショックを隠せない。

そんな中、レイカが尋ねる。

 

「心配ならこっちで保護しようか?

プロフェッサーや文音さんなら治せると思うし....」

しかし、その考えを芦原は却下する。

「いや、茜には普通に生きて貰いたい。

その為にも俺達とは関わらせたくない。」

 

「.....そうだなお前の言う通りだ。

賢、娘を一階にまで運べるか?

一階には(堂本)とレイカがいる。

他よりは安全な筈だ。」

「....何とかしてみる。

その前に目の前のドーパントの処理をしないと」

 

そこまで話すと京水が告げる。

「分かってるとは思うけど、殺しちゃダメよ。

茜ちゃんを傷つけられて怒っていても彼等はこの学校の生徒でセブンスに洗脳されているだけなんだから....」

「....分かっている。

克己の方はどうなんだ?」

 

「無名ちゃんと一緒に獅子神達の足止めをしてるわ。

そっちや仮面ライダーの援軍に行きたいけど....その前に学校内のドーパントを片付けなくっちゃね。」

 

 

 

NEVERの面々はここに来る前に無名と克己から事情を説明されていた。

 

黒岩と芦原の娘について.....そして"克己の身体"と選択についても.....

 

話を聞いた京水は無名を殴った。

殴られた無名は地面に倒れ込む。

それをレイカが諌める。

「ちょっと京水!アンタ...」

ふっざけんじゃないわよ!茜ちゃんの事もそうだけど今の克己ちゃんにドライバーとメモリを作るですって?

アンタそれでも人間なのかよ!」

 

京水は他のメンバーよりも芦原や黒岩の娘について話では知っていた。

娘の誕生日やお祝い等を買う時に相談に乗っていたからだ。

京水にとっても二人は大切な親友の娘として大事にしていた。

そんな子達が通う学校がドーパントの実験場になっていてそれを無名は見抜けなかった。

 

その事に怒っていた。

「克己ちゃんもよ!....何で自分から死のうとする道を選ぶのよ!

貴方にはミーナって言う恋人がいるんでしょ?

恋人を残して死ぬつもりなの?

ハッキリ答えなさいよ!

 

その言葉を受けて克己は覚悟を決めた様に言った。

「俺にとってミーナは大切な存在だ。

それはお前達も同じだそこに嘘はない。

だけど俺は後悔したくないんだ。

もしもあの時、変身していたら....そんな後悔をしながら残りの人生を生きて死んでいく。

そんなのは普通の死よりも後悔することになる。

それにミーナにはもう話してある。

そうしたらこう言われたよ。

"知ってたわ。.....だって貴方は仮面ライダー何だもの....だから、行ってきて自分が後悔しない様に"ってな。

お前達の言い分は痛い程分かる。

俺のことが気に食わないならそのままでも良い。

だから頼む....俺を最後まで仮面ライダーでいさせてくれ。」

 

そう言って頭を下げる克己を見て京水は我慢できず泣き出す。

「ズルいわよ....そんな....言い方....」

そう言いつつも京水はそうなると分かっていた。

だが、それでも自分の心に嘘はつけなかったのだ。

NEVERと言う仲間を愛している彼にとって....

 

京水は涙を拭くと無名に手を貸して起こした。

「殴ってごめんなさい無名ちゃん。」

「いえ、僕だって京水さんの立場なら殴ってます。

それに僕だって自分にムカついてたので助かりました。」

 

そう言い軽く笑うと無名は言った。

「それと勘違いして欲しくないのは僕は克己さんの命を諦めた訳じゃありません。

それはマリアさんや文音さんも同じです。

貴方が変身するその日まで足掻いて見せますよ。」

 

そう言うと無名は今度、芦原へと向いた。

「芦原さん....本当にすいません。

僕がもっとしっかりしていれば茜さんをこんな事に巻き込まずに済んだのに...」

「いや風都にいる限り、ドーパントとは強制的に関わることになる。

それにお前も大変だったんだ。

そんなに責められないよ。」

 

すると、堂本が芦原に告げる。

「安心しろ。

俺達はお前の娘や黒岩の娘を見捨てねぇ。

どんな奴が来ても守って見せる。」

「....すまない。

ありがとう。」

 

そうして冷静になると作戦を話し始めた。

「相手が何時、行動するか分からない以上、直ぐに動けるように策を練らないと行けません。

ですから僕もリスクを取ります。」

そう言うと無名はデモンドライバーと純化したデーモンメモリを取り出した。

 

「ねぇ、それで変身してアンタは平気なの?」

「またゴエティアに操られるのかと言うことですよね?

リミッターを解放しなければゴエティアが僕に干渉する事は不可能です。

それに解放しなくてもある程度の事は出来ます。

試してみましたが黒炎を使ったゲートの生成は可能でした。

これを使って皆さんを学校まで運びます。」

 

「そして、そこで獅子神の作戦を潰す。

しかし、作戦が分からない以上、臨機応変に対応する必要がある。

だから、これを皆さんにお渡ししておきます。」

そう言って取り出したのは"4つのNEVERドライバー"だった。

 

「これまでの戦闘データからデメリットの軽減と稼働時間の延長に成功しました。

1日中変身しても問題ありません。」

「メモリはどうすんの?」

レイカの問いに無名は答える。

 

「それは考えがあります。

だから安心していてください。」

そう言って無名はイタズラする子供のように笑うのだった。

 

 

芦原達は今の自分の位置を確認する。

「無名と克己は学校の外で獅子神達と交戦中だな?」

「えぇ、屋上にはWと敵が戦ってるらしいからそこは放置で良いと思うわ。

三階にはアンタ(芦原)と茜ちゃん....そしてドーパントね。

二階にはアタシ(京水)がいるわ。

隠れている生徒がいないか見回ってる。

それにドーパントも見つけたら倒しておくわ。」

 

(堂本)とレイカは一階で逃げてきた生徒や教師を保護している。

外を見る限り突然出来た河で分断されているが警察の連中がドーパントと戦ってるみたいだな。」

「加勢できれば状況は変わるか?」

「助けたとしても河で分断された道を繋げないとどっちにしろ逃げられないわ。

どうしようかしら?」

 

そんな話をしているとNEVERの目の前に小さな黒炎のゲートが現れて中からメモリが落ちてきた。

「良いタイミングで補給を送ってくれるなんて流石、無名ちゃん。」

「だな。

そろそろこっちを決めきりたかった所だ。」

 

そう言うと無線を終わらせてお互いにドライバーを装着する。

 

 

悲劇として終わる筈だった事件に悪魔と死者が介入する。

このパレード(戦い)の終わりに何が残るのか?

それはパレードを始めた者ですから分からない。




《現状説明》

学校(屋上)
仮面ライダーW vs マンティスドーパント

学校(三階)
芦原親子 vs ハンマードーパント

学校(二階)
京水 vs ???

学校(一階)
堂本、レイカ vs ???

校門前
照井+特殊部隊 vs シャークドーパント、クラブドーパント

学校外
仮面ライダーデモン、克己 vs レオドーパント、シープドーパント

加頭 vs 井坂(学校から一番離れている。)

居場所不明
黒岩、赤矢、紫米島、白爪

外伝 続編の投稿に関して

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