雪絵はサラの元へ到達すると彼女の容態を確認した。
(呼吸と脈も正常....寝ているのと変わらないわね。)
そうして近くにいた美頭に言った。
「彼女は意識を失っているけど身体に外傷は無い。
これ以上、治療するなら専門の道具がいるわ。
これは無名が貴方達にと外傷関係に効く薬よ。
取り敢えず、貴方は彼女を担いで安全な場所に隠れてて....」
「貴女はどうするのですか?」
「お兄.....兄貴の手助けに行ってくる。
どっち道あのドーパントを倒さないとここからは抜け出せない。」
「危険だ。
生身で灯夜と戦えば!」
相違って心配する美頭に雪絵は笑う。
「大丈夫、私にはこれをあるし....それにもう"スイッチ"は盗んでおいたから」
そう言うと雪絵は銀色のガイアメモリと霧彦が持っていた装置を取り出す。
「レイカに聞いといて良かったわ。
"スリ"のコツを...」
そう言っていると灯夜がルークドーパントを召喚したのが見えた。
「あれはヤバそうね。
それじゃあ、行こうかしら」
雪絵はドライバーを着けると安全装置を外してメモリを起動する。
「
「.....へぇ、蠍ね。
それじゃあ何れだけのメモリか試してみましょうか。」
雪絵はそう呟きメモリをドライバーに装填すると肉体が変化しドーパントの姿へと変わる。
そして、敵にバレないように天井に飛び上がると貼り付いた。
そして、頭部に御下げの様に付いている蠍の尾を操作すると毒の針をルークドーパントと灯夜へ撃ち込んだ。
その直後、ルークドーパントの砲撃がナスカドーパントへ命中し煙が上がる。
煙が晴れてダメージを受けているナスカへ追撃を灯夜は命ずるがルークドーパントは動かない。
いや、正確には身体に回っている毒のせいで動けなくなっていた。
そして、暫くしてその効果は灯夜の身体にも現れる。
その光景を不思議に思っている兄の元へ降りていく。
「お前は....まさか雪絵か?」
「当たり、流石はお兄ちゃんね。」
「何故、メモリを使っている?
安全装置は確かに私が.....!?....無い。」
「今度からは油断しちゃダメだよ。
敵にも私にもね。」
そう言って雪絵が安全装置を見せて来る。
霧彦は頭を抱えながら言う。
「妹が悪の道に.....」
「今更何言ってるんだが.....それよりその男、早く無効化した方が良いよ。」
雪絵は灯夜を指差して言う。
「雪絵の毒で動けなくなってるじゃないか?」
「正確には毒で"神経が限界まで研ぎ澄まされて"身体が追いつけなくなってるだけ....ほっといたらまた直ぐに動いちゃうわ。」
「そのメモリにはまだ秘密がありそうだな。
分かった何とかしよう。」
霧彦はそう言うとメモリの能力を変える。
「"超拘束"」
すると、ナスカドーパントの体色が黒く変わり背中に六本の蜘蛛の足の様なパーツが現れる。
そして灯夜に向けてナスカブレードを振るうと紫色の蜘蛛の糸が現れて灯夜を拘束した。
すると、メモリが排出されて人間の姿に戻る。
「へぇ、便利な能力ね。」
「恐らくナスカメモリは"全能の力"はあるが融通が聞かないのだろうね?
欲しい力を限定して望めば使いこなせるが、少しでも多く望んでしまえばメモリの力に飲み込まれてしまう。
でも逆に言えば限定さえすれば普通のゴールドメモリを越える力を得られる訳だ。
この超拘束は敵を拘束した瞬間にメモリのエネルギーすら無効化する。
私達がこの場から離れない限りこの力は継続する。」
「なら安心して逃げられそうね。」
「今のところはな.....さぁ、早くこんなところから抜け出そう。
美頭と言ったね?
私の能力でこの場から移動するから全員で固まってくれ。」
美頭はその言葉に従う。
そして、全員を固めた霧彦は能力を使い瞬間移動するのだった。
霧彦達によりサラが救出された事を聞いた獅子神の怒りは限界を超えていた。
だが、それでも思考を途切れさす事はしなかった。
(サラが奪われた以上、奴の部下達はもう使えない。
灯夜も無力化されている以上、駒を増やすことは難しいだろう。
現状、学校にいる部下に任せるしかねぇ.....
俺達は無名と
獅子神は無名に攻撃を放ちながら
(ドライバーを使わず生身で戦っている?
奴が仮面ライダーになれば形勢は完全に無名に傾くのにそれをしねぇ.....いや、出来ないのか?
そう言えば若菜様と最近、戦ったと言っていたな。
それで弱ってるなら、"利用"できそうだ。)
そして、次は相対する無名に目を向ける。
(見た目は変わってはいるが能力はデーモンメモリと変わりねぇ....黒炎の生成、それとゲートによる移動。
いや、そう結論づけるのは早計か?
どちらにしろ今の弱点は大道克己だと言うことだ....なら)
そう考えていると無名が牽制のつもりで放った蹴りを獅子神はわざと受けた。
「!?」
「ぐっ!」
衝撃により吹き飛んだ獅子神はそのまま克己の元へ向かう。
獅子神の意図に気付いた無名が援護に向かおうとするが
「水島!無名を止めろ!」
そう指示された水島は無名の前に立ちはだかり攻撃を加えてくる。
「邪魔ですよ!」
水島の攻撃を回避しながら無名が回し蹴りを当てる。
その攻撃により首の真横に曲がってしまうが水島は自分の頭を掴むと無理矢理戻した。
ゴリッ!
嫌な音と共に戻った頭を気にすることなく無名へと近付き、攻撃を当てていった。
そうして無名が足止めを喰らっている間に獅子神は握った拳を克己の腹部へ打ち据えた。
「ぐはっ!」
あまりの衝撃に克己は吹き飛び壁に激突する。
「やはり、変身出来ないみたいだな。
"丁度良い"。」
獅子神は指を動かして近くに止められていたトラックを克己の頭上に持ち上げると勢い良く落下させた。
しかし、落下するトラックは克己に当たりはせず目の前に現れた無名がトラックを両手で支えていた。
「ゲートで飛んだか。
だが、それは不味いんじゃねぇのか?」
獅子神は笑いながら手を地面につける。
すると、無名と克己にかかる重力が一気に強くなる。
「あ....がっ...」
地面に倒れ伏す克己を無名は助けようと黒い炎の無効化能力を使おうとするとトラックの重量が増した。
「余計なことはするな。
安心しろ
お前の黒炎の力は同時に二つ以上の事象には干渉できない。
男にかかっている重力を止めようとするならトラックを落とす。
そうなりたくなければじっとしてるんだな。」
獅子神にそう言われた無名はトラックを持ちながら言った。
「貴方....の目的...は...時間稼ぎ...です...ね?」
「あぁ、本当ならお前らを潰して学校に向かいたいがテメェ等がそんなに甘くねぇって事は痛い程分かってる。
なら、殺さず足止めするのが正しい選択だ。
だが....それも"お前の目論見通りなんだろ"無名?
ムカつくが頭の出来はお前の方が上だ。
だから、井坂を巻き込んだ。」
「!?....貴方はあの人について理解しているでしょう!
それを!.....ぐっ!」
「喚くな....俺としてもかなり危ない橋を渡っている自覚はある。
だが、それをする価値があると分かっているからだ。
全ては園咲家....いやミュージアムの為に」
そうしていると獅子神のスマホに着信が入った。
「噂をすれば....あぁ、俺だ。
....何っ!どう言うことだ?
何故、そこに財団の者が?.....クソッ!何の為にお前を雇ったと思っている?
...後悔するなよ井坂...」
獅子神はそう言ってスマホを地面へと投げつけた。
「クソッ....クソクソクソガァォァ!
これも貴様の仕業か無名!」
そう言って獅子神は無名を睨み付ける。
「何の...」
「惚けるなっ!.....ならば何故井坂の元に加頭が現れる?」
獅子神の言葉から無名は推測する。
「なる...ほど...助力を頼んでいた井坂を加頭が止めた。
それにその言い分だと井坂は逃げたみたいですね。
どうしますか?
ここで僕達を足止めしてる暇はあるんですかね?」
無名の問いに獅子神は歯を食い縛る。
(井坂は無名が俺の計画に入ってきた時の保険だった。
今いる戦力はあくまで仮面ライダーのみに対応する奴等しかいねぇ。
人質も取られた以上、一刻も早く学校に向かわねぇと....だがコイツらをほおって置くことは危険すぎる。)
獅子神が無名達を追い詰めながらも決着をつけられないのには獅子神のトラウマが影響していた。
メモリを使っての敗北やジェイルメモリの盗難....この全てに無名が関わっている為、無名やデーモンメモリと対峙すると無意識の内に力が弱体化してしまっていたのだ。
普通の獅子神ならばトラックで押し向ける事はせず小型太陽を作り出して消せば良いが無名がいるとその力が使えない程、弱体化してしまっていたのだ。
(チッ....悩んでる暇はねぇ。
無名が学校に辿り着けば計画は終わる。
俺が学校で他の奴等を殲滅するまで時間を稼げれば俺の勝ちだ。)
獅子神は水島に顔を向ける。
「水島、"最終コード"の使用を許可する。」
獅子神にそう言われると水島は変身を解いた。
「最終コード....承認しました。
"最後のご命令を".....」
「無名を俺に近付けさせるな。
殺せなくても構わんお前の命が尽きるまで足止めをしろ。」
「了解しました。」
二人のやり取りが終わると無名の身体にかかっていた重さが一気に軽くなった。
そして、そのまま持っていたトラックを投げ捨てた。
「一体何をしたんですか?」
そう尋ねる無名に獅子神は答える。
「
まぁ、コストが見合わないって事で凍結されたがコイツはその実験体の中でも優秀な個体で命令の遂行やドーパントへの変身以外に最終コードと呼ばれる。
自滅指示が出来るんだよ。」
「自滅指示?」
「肉体の生存を捨てる代わりに使用するメモリの能力を限界まで高められる。
.コイツのメモリは"シープ"....そしてその力を限界まで高めるとどうなると思う?」
獅子神がそう尋ねるがその答えは直ぐに現れた。
人間に戻った筈なのに水島の身体が醜く歪み巨大化していく。
内部からは骨が突き出しその姿はもう人とは呼べなくなってくる。
「良い忘れたがこのコードを使うと体内にある酵素も暴走してな。
メモリを使わなくても肉体の変異が行われる。
元は財団の技術らしいがそんな事はどうでも良い。
さぁ、水島!命令を遂行しろ。」
獅子神の命令に従う様に水島は変異する身体を動かしてメモリを起動する。
「Sheep」
メモリを身体に挿すと何時もと違い隆起した肉体がメモリを包み変異していく。
その変異はもうドーパントへの変身とは似ても似つかない。
人の皮膚を破り蹄や角...そして羊特有の体毛が現れる。
肉体を突き破って出て来た為、体毛や角は血で赤く染まっていた。
「グアァァァッ!.....ギャァァァッ!」
悲鳴にも似た声を上げながら変異を続けていくそのおぞましい姿に科学の怪物と呼ばれた克己ですら目を背ける。
(何だこれは....これが、お袋が知っている科学なのか?)
余りの出来事に呆然とするしかない克己を守るように無名は前に出た。
もうこの怪物は無名の知る仮面ライダーWには存在しない。
だからこそ、自分が始末をつけなければならない。
この物語を狂わせた
後ろにいる克己に無名は言う。
「克己さん....僕がこの怪物と戦い始めたら真っ先に逃げてください。」
「それは....」
「貴方の気持ちも分かります....でも僕は貴方を失いたくない。
こんなところでその命を使わせたくない。
分かってください。」
克己は唇を噛む。
足手纏いだと言われた方が何れだけ良いだろう....だが無名は俺を失いたくないと言った。
それはもう俺が戦う側ではなく守られる側になっていると言う証だった。
悔しさを心に押し込めて克己は無名を見つめていった。
「気を付けろよ....無名。」
そう言うと克己はその場から走り去っていく。
その姿を無名は見送ると目の前の的に目を向けた。
人間の面影すらない羊ともドーパントとも言えない怪物は変異を終えて無名を見据えている。
(獅子神は二人の足止めを命じた....克己さんを追わないと言うことは僕を仕留めてから追う気なのか?
なら好都合だ....僕が長く時間を稼げればそれだけ仲間の死ぬ確率を下げられる。)
無名は覚悟を決めると怪物へと向かっていくのだった。
Another side
倒壊した車と建物...その中に二人が存在していた。
加頭は膝を付き肩で息をしている姿を井坂は悠然と眺めている。
「どうしましたか?まさかその程度で終わりとは言わないでしょう?」
「なめ....ないで...貰いましょうか!」
加頭は理想郷の杖を振るい井坂を引き寄せると手で首を掴む。
「私のメモリは相手の生きる希望を奪い....それを力に変えます。
.....!?何故、力を吸い取れない?
それに...この力は...うぐっ!」
加頭は井坂から奪い取った力を身に宿すと苦しみ手を離してしまう。
今度は逆に加頭の首を井坂が掴む。
「あ....が....」
「生きる希望....ですか?
残念ですが今の私に"人間"として生きる希望など1ミリもありませんよ。
私は人を超えた存在へと進化する。
それ以外、無いのですから.....」
加頭にとって予想外だった事は三つあった。
1つは今の井坂にはユートピアメモリの能力は通じず毒素の塊となったその力を吸い取る事は加頭にとってダメージにしかならないと言うこと.....
2つ目は既に井坂のメモリはシルバーメモリの器に収まらずゴールドクラスと同等以上の力を発することが出来る様になった事.....
そして最後の理由は井坂がメモリの力を完全に使いこなせていたからだ。
今までのウェザーメモリの戦い方は天候の力を使った中遠距離の攻撃と徒手空拳による近接戦を主にしていたが強化されたウェザーメモリとその力と毒素に完全に適合した事により戦闘スタイルが完全に変わっていた。
井坂は空いている手を握ると加頭を殴り付ける。
その瞬間、加頭の身体を巨大な台風が包み勢い良く壁に叩き付けられると身体が凍結し始めた。
「これ....は....ぐぉぉぉぉ!!」
完全に凍結することを防ぐ為、加頭は自身に発火の力を使うと凍結を防いだ。
「面白い能力だ....確かクオークスと言いましたかね?
ガイアメモリと超能力は融和性が高いようだ。
とても興味深い。」
そう言って感心する井坂に加頭は砕けたコンクリートを操ると井坂に向けて吹き飛ばした。
だが、その攻撃は井坂に当たることなく砕けるとその破片から雷が発生し加頭を襲った。
帯電する身体を重力を操作して無理矢理、外すが度重なるダメージにより加頭は動く事が出来なくなった。
「..........」
「そう言えば言ってませんでしたが私はメモリの毒素と完全に適合した影響でメモリの力が変質しましてね。
天候を操るのではなく"天候その物"になることが出来たんですよ。
今の私は竜巻や津波であり雷でもある。
そんな私に攻撃すればその攻撃に反応した力による反撃が自動で行われます。
そして、そんな私が拳を振るえばそれは"天候の攻撃".....いや神話に存在する神の裁きと同じ意味を持つ事になる。」
「理想郷とは所詮、人の枠組みから生まれる力....
その結論を出して上げましょう。」
井坂は握っていた拳を開き抜き手の形を取ると雷と風の力により一瞬で加頭の場所まで近付くとその手を加頭の身体に突き立てた。
狙われた場所は心臓....その手はドーパントになり強化された筈の肉体を簡単に貫きその力は心臓を完全に吹き飛ばしてしまった。
「あ........」
心臓を貫いた井坂はその腕事、振るい加頭を吹き飛ばすと地面に吹き飛ばされた。
「他愛もない....と言うのは少し傲慢ですかね?
しかし、これもまたガイアメモリの真理です。
さて、そろそろ学校に向かわないと獅子神君に怒られて...」
井坂はそう言い加頭に背を向けるとその背中に衝撃が走った。
ダメージにより背中から煙が上がるがそんな事を気にしないように攻撃された方向を見る。
するとそこには先程、心臓を貫いた筈の加頭が平然と立っていた。
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