もう一人の悪魔   作:多趣味の男

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白爪は潜伏しながら傷を確認する。
いくらリザードメモリで強化された再生能力でも回復に体力を使うことは変わりない。

それが強力な攻撃なら尚更だ。
(早く、紫米島を回収しないと行けないんですがね。)

紫米島は今、アクセルと戦っている。
思えばアクセルとは風都に来る前から因縁がある。
それも紫米島にとっては自分に傷を付けた相手として余計にのめり込んでいた。

("悪い癖"が出なければ良いのですが.....貴方は曲がりなりにも獅子神の"お気に入り"なのですから)

そう思った白爪は体力が戻るまで身体を休めるのだった。



第百九十六話 Lの来襲/人斬りの過去

体育館に連れてこられた紫米島は怒るどころか喜んでいた。

「あぁ、嬉しいぞアクセル!!

漸くあの時の決着がつけられると言うものだ。」

「そうか....だが俺は負ける訳には行かない。

仮面ライダーとして....そして"警察官"として!」

 

警察官と言われ紫米島の動きは止まる。

「調べたのか?」

「あぁ....署長室の隠されていた機密ファイルを見つけた時にな。」

 

 

 

照井は獅子神の部下について調べていたが全く情報が出てこなかった。

特に紫米島に対して照井は違和感を覚えていた。

(あれだけの剣術を収めていて名が広まっていないのはおかしい。

それに紫米島と言う名前....明らかに実名な筈なのに風都署のデータベースに全くヒットしなかった。

不自然な程に、情報が出てこない.....何故だ?)

 

そして、その答えは風都署の汚職事件を摘発し署長室を調査した時に見つかった。

 

ご丁寧に署長室にある本棚を動かしていると中から隠し金庫が見つかった。

そして、署長を尋問して聞き出したパスワードを使って開けると中には一冊のファイルが入っていた。

 

 

そこにはおぞましい事件が書かれていた。

「紫米島家は先祖代々、武家の家系で風都署でも剣術指南を行っていた。

だが10年前、何者かにより一家と門弟を含めた"35名"が道場内で斬殺され生き残ったのは当主の子供だった紫米島 甲斐(しめじま かい)だけだったが....彼も交通事故で亡くなった。

資料にはそう書いてあったが詳しく調べてみると死んだ筈の紫米島 甲斐の遺体は何処にも無かった。」

 

「成る程、そこで分かった訳か。

答え合わせが必要か?」

「あぁ.....紫米島 甲斐。

お前は事件当日、何をしたんだ?」

 

照井の問いに甲斐は心底つまらないと言う口調で答える。

 

「単なる"死合い"だよ。

まぁ、弱すぎてただの斬殺現場でしか無かったがね。

.....父から何時も言われていた。

"力には責任が伴われる。

だからこそ、我々はこの力をよく考えて振るわないといけない"とね。

だが、そんなのおかしいだろ?

力とは刀とは暴力を振るう手段だ。

そして、それを突き詰めて余計な成分を排除したのが武術の筈だ。

 

人を効率良く殺す技を学び腕を磨いている俺が何故、そんな自制をしないといけない?

最初は大人しく従っていたが、時が経ち、刀と技の練度が増せば増す程、この自制が邪魔になった。

そして、決めたんだ。

"自らを自制して得た刀と技....そしてそれを捨てた俺の刀と技、どちらが強いのか決めよう"とね。

 

門弟が全員いる日を狙ったのもわざとだ。

父の教えで強くなった刀を味わうには一人では足りないからな。

 

そして、答えが出た。

俺が"門弟を全て殺し父と母の首を斬り飛ばした"時にな。

それからは父の剣を習った警察官を狙った。

そんな折に俺は獅子神と出会い奴はメモリをくれた。

 

奴は俺にこう言ったよ。

"人を斬って斬り続けた先の未来(武術)を俺に見せてくれ"。

その言葉に惹かれて俺は獅子神についた。」

 

真実を聞いた照井は握っているエンジンブレードが震える。

「何故だ....何故そこまで非情になれる!

両親を殺してまでお前は何を手に入れたかったんだ!」

 

「俺が求めるのは最強の刀と技....そしてそれを振るう環境だ!

ガイアメモリを使おうが変わることはない。

寧ろ、ガイアメモリの力で俺の技は更に進化した。

獅子神には本当に感謝している。

 

俺をこの安穏とした世界から見つけ出してくれたのだからな。」

「何っ!」

 

「お前なら分かるだろう?

俺は"普通じゃない"(イカレてる)

まぁ、俺からすれば他の全てが異常なんだが......

そんな俺の願いはこの平和な世界じゃ叶わない。

理解者がいない孤独な道は人の可能性を狭める。

武士も数々の仲間や敵と戦うことで今の武術へと昇華させてきた。

だが、現代でそれが出来るか?

仮に出来たとしてソイツらを殺せば俺は強くなれるのか?

断言しよう無理だ。

この世界は平和に慣れ過ぎた。

平和は人を堕落させる。

直感を鈍らせて人本来の強さを弱めた。

そんな奴らが世界の支配者を気取っている。

愚かだと思わないか?

人本来が持つ暴力性に極められた武術が加われば人は本当の意味で最強となる。」

 

「そんな事の為に....お前は両親を手にかけたのか!」

「そうだ。

邪魔をすれば死ぬ。

当然の摂理だ。」

 

「何にも思わなかったのか!死ぬ直前までお前の両親は何を願っていた!」

「知るか。

興味もない....さぁ、早く始めよう。」

 

そう言う紫米島に照井は決心する。

「お前を必ず逮捕する。

そして、お前の両親が最後に残したかった意思と誇りは....俺が守る。」

 

照井は握りしめたエンジンブレードを両手で持ち構えた。

それは剣道で使う両手持ちの構えであった。

「行くぞ!」

「あぁ、来い!」

 

照井はトライアルの高速移動で瞬時に間合いを詰めるとブレードを振り下ろす。

それを紫米島は左手の刀で捌き右手の刀で反撃する。

 

照井はその刃を鍔迫り合いさせながら重心をかけて横に半回転することで回避した。

「やるなぁ、"戻り太刀"を回避するか。」

「お前の家を調べている時に紫米島家の資料を見つけてな。

ある程度、分析させてもらった。

お前の技は相手の攻撃を見て行動するカウンタータイプがほとんどだった。」

 

「ほぉ、ならこの技はどうかなっ!」

紫米島は両手の刀を重ねると手を伸ばして突進した。」

それを照井は避けると懐まで一気に加速した。

「甘いなっ!」

しかし、紫米島はそれを待ってたかのように刀を逆手に持ち照井の背中を刺しにかかる。

 

だが、照井はその攻撃を目を向けずにエンジンブレードを背中につける事で刀がブレードに当たり回避する。

「何っ!」

「確か"突き太刀"だったか?

映像で見たがお前の父親の方がもっと鋭かったぞ?」

そう言って拳で紫米島の腹部を殴る。

 

「うぐっ!....ほぉ、見ただけで防げるようになるとは優秀だな。

ならばこれはどうだ?」

紫米島は肩に刀を担ぐとアクセルへと突進する。

「"首狩り太刀".....父が試合で使うことを禁止した技だ。」

そのまま両サイドから刀を首に向かって振るう。

 

しかし、照井はその刀の間にエンジンブレードを押し当てて攻撃を止めた。

「それを待ってた!」

しかし、紫米島は刀を返して押し込むと照井の首に刃が迫る。

エンジンブレードで抑えたいがそれを紫米島は許さない。

 

一気に両方の刀を外側へ引き斬ろうとする。

「くっ!」

 

「JET」

 

照井はとっさにエンジンブレードを起動しジェットのエネルギー弾を紫米島に当てることで何とか距離をとる。

そのお陰で刀の刃は照井の皮膚一枚を切り裂いて終わった。

 

一分にも満たない攻防の中だがこの戦いは照井の精神を消耗させた。

「はぁはぁはぁ」

だが、紫米島は歓喜する。

「あぁ、良いね良いね良いねぇ!

これこそ殺し合いだ!

1つの判断ミスが死に繋がる....あぁ、何て楽しいんだ!」

 

紫米島は両手の刀を地面に突き立てた。

「ここまでは紫米島家の技だ....だがここから先は俺が編み出した俺の技を使わせて貰おう。」

紫米島の両手から煙が発生すると突き刺した刀を包み飲み込んだ。

そして、その煙は紫米島の両手に集まる。

 

「スモッグギジメモリは元々、俺の武器だけを煙にするために手に入れたメモリだ。

これまでは調整が上手くいかなくてなぁ。

最初にお前と戦った時は不甲斐ない姿を見せた。

だが、メモリと完全に適合したお陰で俺の望む力へと変わった。

さぁ、これこそが俺の考えるガイアメモリと武術が融合した1つの形だぁ!」

 

右手の煙を照井に向かって放つ。

トライアルの速度でそれを回避して背後から攻撃しようとするが直感で危険を感じた照井は後方に一気に飛び退けた。

突如、照井がいる筈だった場所の地面に無数の巨大な斬撃が現れる。

 

「"呼び太刀".....煙になった刀を敵の回避に流れる様に進ませることで自動迎撃する技だったんだが....まぁ、お前なら回避するか。

だが、良いのかじっとしていて?

そこはもう俺の間合いだぞ?」

 

「しまっ!」

突如、照井の正面と背後を挟む様に斬撃が起きた。

「ぐあっ!」

「"重ね太刀"....煙となった刀は薄く広げれば目で見ることは出来ない。

そして、斬りたい時に煙を集めれば刀が斬撃を浴びせる。」

 

「なら、固めてしまえば良い。」

「STEAM」

 

照井は煙を実体に戻そうと周囲に蒸気を撒くがその蒸気が煙に触れた瞬間、斬られ分断されてしまった。

「何っ!」

「言ったろう?この煙は"刀であり斬撃"だ。

俺の身体ならまだしも斬撃を戻せば斬れるのは当たり前だろう。

さぁ、これで仕舞いとしよう。

お前がバカみたいにタフなのは知っている。

恐らく、一刀では斬り殺せないだろう。

だから、限界が来るまで斬り続けてやる。」

 

そう言うと照井の周りを囲うように煙が発生する。

嫌な予感がした照井は走って回避しようとするが、煙に近付いた瞬間、斬られてしまう。

「高密度の煙の斬撃だ。

さぁ、死ぬまで踊れ...."踊り太刀"。」

 

紫米島の合図と共に煙が照井を包む。

 

「ぐぁぁぁぁぁ!」

 

止むことの無い無限の斬撃が照井を襲う。

トライアルの薄い装甲を斬撃は貫通に肉を斬られ骨にまで斬撃が及ぶ。

そして、斬撃はトライアルメモリに傷を与えると変身解除に追い込まれる。

 

しかし、それでも鈍い斬撃音は止まらない。

紫米島は煙を手に戻したと時、目の前には全身傷だらけで大量出血して意識を失う照井だけが残されていた。

地面は出血した血によって赤く染まっている。

 

普通なら死んでいる....そんな状態だが辛うじて息をする音が聞こえる。

「称賛に値するぞアクセル。

お前は俺の技を見事、受けきった....最後の情けだ。

一刀で楽にしてやる。」

 

紫米島はそう言い一本の刀を煙から具現化すると勢いのまま照井の首へ振り抜いた。

 

 

 

照井は朧気な意識の中、幻覚を見ていた。

それは過去の自分....両親と妹を殺され復讐に歪んだ顔をしている。

それは自分でも驚く程の憎しみと悲しみが写っていた。

 

何て酷い顔だ.....見ていられない。

 

そんな俺に誰かが手を差し伸べている。

 

思い出した....コイツは左 翔太郎。

ハーフボイルドと呼ばれる程の半端な存在.....だが俺にはコイツがとても眩しく見えた。

 

もし、復讐を決意する前に会っていたら....俺は....

 

次に写ったのがアクセルとして戦っている俺だ。

最初は復讐を目的としてたのに今となってはガイアメモリ犯罪を止め風都の市民を守る為に戦い傷付いている。

 

甘いな....さっさと復讐を進めれば良いのに.....

 

復讐を進めて.....終わらせて.....それから?

 

俺は.....復讐を終えたら何をするんだ?

 

俺には.....何が.....残るんだ?

 

 

 

そう考えた照井の前にこれまで一緒に戦ってきた仲間が映る。

(左....フィリップ....刃野...真倉....)

 

そして、最後に映ったのは鳴海 亜樹子......彼女は俺に向かって笑顔で話し掛ける。

 

「竜君!」

 

 

その声で俺は目を覚ました。

 

 

 

 

 

「.....バカなっ!」

紫米島は驚愕していた。

とっくに意識など無かった筈なのに...満身創痍の照井は俺が首へと放った刀を握って止めたのだ。

 

俺の刀の切れ味は高い....それこそ普通のドーパントなら易々と両断出来る。

それなのにこの男は刀を握りしめ両手でも動かせない程の力を発揮していた。

 

「俺は.....死なん。

俺には.....やることがある。」

「はん!そんなに復讐が大事か?」

 

「違う....俺には....復讐しか無かった.....そんな俺に.....アイツは....この...街は....仮面ライダーと言う....道を教えてくれた。

だから....俺は.....」

照井は刀を離すと拳を握り紫米島を殴り飛ばした。

 

「俺は.....仮面ライダーとして....この街を...悪から守る。

きっと、復讐だけの人生よりもずっとマシだ。

そして、俺の様な存在を生み出さないために....俺は....戦う!

 

そう決意すると照井は服の中にある何かが熱くなるのを感じた。

取り出すとそれはアクセルメモリとブーストメモリだった。

 

アクセルメモリが照井の意思に答える様に熱を持っている。

そして、ブーストメモリはそれに答える様に今までロックされていたトリガーの上部にあるケースが開いた。

 

「漸く....か。」

 

照井はアクセルメモリを起動する。

そして起動したアクセルメモリをブーストメモリの上部から差し込んだ。

 

ACCEL REIGNITION(アクセル リグニッション)

 

そしてケースを閉じたブーストメモリをアクセルドライバーへ装填する。

今までと違い二つのアイドリング音が流れ変身待機状態となる。

 

照井はハンドルに手を掛けると勢い良く回し手を離す。

 

「変.....身」

 

 

BOOST(ブースト)

 

変身音と同時に照井を中心に強い衝撃波が放たれる。

それは紫米島や照井の身体に付いていた血すらも吹き飛ばし振り切った。

 

今までのアクセルと違い顔に戦闘機のヘルメットの様なバイザーが付き、カラーリングが黄色とシルバーに変わり背中と胸部には戦闘機を思わせる翼と意匠が追加された。

 

この姿こそ無名が構想しシュラウドが完成させたアクセルの新たな形態。

 

"仮面ライダーアクセルブースト"であった。

 

 

そして、照井は地面に落ちていたエンジンブレードを掴むと肩にかつぎ倒れている紫米島に言った。

 

「さぁ、全て......振り切るぜ!」

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