もう一人の悪魔   作:多趣味の男

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「遅れてしまったかな文音?」

表面上は冷静に対応しようとしている夫を見て私の顔は微笑む。
研究者だったからか時間にルーズな彼がデートをすっぽかしそうになることは馴れていた。

毎回、数分の遅刻をする。

だが、その数分は遅刻を取り戻すためだけじゃなく私を想って焦りながら準備をするからかかる時間だ。

遅れたお詫びに花を買い急いで乱れた髪と呼吸を落ち着ける。
それに必要な数分なのだ。

それを知っているから私は笑い言った。
「ふふっ....そうね。
また数分遅れたわね貴方.....」


第二百六話 2つのA/愛の行方

琉兵衛は申し訳なさそうに持っていた花を文音に渡した。

「遅れてすまいね。

何せ急に呼ばれた者だから....」

 

琉兵衛が文音の存在を感じたのはガイアメモリのお陰だった。

テラーメモリの根元である恐怖.....過去に文音を傷付けた自分の力は文音の中に残っている。

 

その力が彼女の居場所や感情をメモリを通して教えてくれるのだ。

彼女から何時も感じていたのは私への"憎しみ、怒り、悲しみ"だけだった。

 

だからこそ今日、彼女を知覚した時も同じだと思っていた。

だが、違った。

 

彼女から流れてきた感情は愛.....単純に私に会いたいと願う意思だった。

(何故だ?何故、文音は私に.....)

 

こんな感情は私達が結婚する前の時のようだった。

お互いを想い歩み寄ろうとする感情......

 

それに触れてしまった私は狂った(バグった)

テラーの力で失っていた筈の感情が吹き出した。

(文音に会わないと.....)

 

私は風都第二タワーにある部屋から急いで飛び出した。

横にいた天十郎君が不思議な顔をしていたがそんな事はどうでも良い。

 

私はテラーメモリを使い彼女の感情に集中する。

その場所は二人でよくデートをした喫茶店だった。

(少し遠いな....準備もしないといけない。)

 

琉兵衛はテラーメモリを使い急いで喫茶店近くの花屋に転移した。

そして、花屋で一輪の花を注文した。

 

"ゴテチア"の花".....口下手な私が何度も助けられた花であり彼女が最も好きな花でもある。

その花を見て文音も笑う

 

「変わってないわね...安心して待たされた事は怒ってないわ。

それよりもこっちに座って.....」

その言葉を聞いて私は安堵すると席に座った。

座った私に文音は言う。

 

「懐かしいでしょう?

ここは貴方と始めて出会った場所....

私が研究所に勤めていた時、息抜きでここに来ていた。

そんな私を貴方は遠くから見ていた。」

「はっ...はは...そんなストーカーみたいにした覚えは無いのだがなぁ。」

 

「あら?話の口実に態々目の前でハンカチを何度も落としてきたのに?」

「うっ....そっそれはだね...」

 

過去を掘り返され琉兵衛は分かりやすく慌てる。

「けど、そのお陰で私達は愛し合って子供を作り家族になれた。」

「....そうだね。」

 

「冴子は気が強くてお父さんが大好きだったわね。」

「あれは君の血が強く出たからだよ。」

 

「若菜はお転婆で泣き虫だったわ。」

「あぁ、何度も夜泣きして起こされたな。」

 

「ミックが来た時は皆、喜んでいたわね。」

「誰が名前を決めるかで喧嘩になった....あぁ、懐かしいなぁ。」

 

「そして来人が生まれた....始めての男の子だった。

誰にでも優しいあの性格はきっと貴方に似たのね?」

「いや、二人の性格だよ.....」

 

二人はそうやって思い出を振り返っていく。

大切な宝物を一つ一つ丁寧に出して眺めるように....

 

「良く家族で旅行にも出掛けたわね。

まぁ、半分は貴方の仕事関係だったけどそれでも楽しかった。

あの時の想い出は私にとってかけ替えの無い宝物よ。」

「それは私も同じだよ。」

 

「だからこそ、"貴方は失うことを恐れた"のね?」

「!?」

 

文音にそう言われた琉兵衛の顔が歪む。

「ずっと、不思議だった。

何故、貴方はそこまで来人を道具のようにしたかったのか....最初は分からなくて怒りや復讐に呑まれたけどゴエティアのリセットのお陰でやっと分かったわ。」

 

「貴方は来人を.....いえ"フィリップを恐れている"のね?」

「.........」

 

「来人が地球の記憶が流れる泉に落ちてデータ人間となった。

頭では息子として接したかったのに彼の特異性...."地球の記憶を閲覧できるという人間離れした力"に恐れてしまった。

同じ家族として見れなくなってしまいそうになるほどに.....」

「..........」

 

「だから貴方はテラーメモリに依存した。

そして、テラーメモリはその想いに答えて貴方から家族への愛を奪った。

でも、貴方の愛はそんなものでは無くならない。

だから貴方は"イーヴィルテイル"を....」

 

「止めてくれ文音!」

琉兵衛は文音の言葉を遮るように机を叩いた。

 

「......ごめんなさい貴方を責めたい訳じゃないの。

自分の子供が怪物に見える程の力を手に入れた。

そんな事、到底受け入れられるものじゃないわ。

だから、貴方はガイアインパクトを起こそうと決めたんでしょう?

人類が新たなステージへ進化すれば来人は異常じゃなくなる。

普通になると考えたから....」

「....例えどんな姿になろうと来人は園咲家の家族だ。

だが、そんな事で周りは納得するか?

地球の記憶を閲覧できる存在だぞ?

もっと酷い利用手段を考える奴も出てくる。

それこそ、来人の命を使い潰して....だが、我々ならそうはならない。

ガイアインパクトが済めば来人と若菜を分離させてまた幸せな家族を.....」

 

「いいえ、それは出来ない....出来ないのよ貴方。」

「何故だ?....どうして?」

 

「私達は来人を"私達の考える幸せ"の為に沢山の人を犠牲にした。

それはとても罪深い事よ....償わないといけない。」

「何故だ?人類が進化すればきっと新たな恩恵が....」

 

「そんな恩恵は誰も望んでいないのよ。

貴方、私達は沢山の人を不幸にした....いえし過ぎたのよ。

もう取り返せない程の罪を犯したの....」

「...そんな事はない。」

 

「私は井坂と言う怪物にメモリを与えて沢山の犠牲を出した。

そして、彼の犠牲者になった男(照井 竜)を復讐の道具にしようとした。

貴方はこの風都に悪意の種をばら蒔いた。

大切な家族すら利用して....」

「.....だが、全ては家族の為だ。」

 

「貴方、もういい加減大人になりましょう。

フィリップは左 翔太郎と人生を歩んだことで十分成長したわ。

もう私達の手を離れて生きられるのよ。

そして、それは冴子や若菜も同じなのよ。」

「.......」

 

そこまで話して文音のスタッグフォンに連絡が来た。

文音がそれを見ると立ち上がる。

「どうしたんだ文音?」

「罪の清算をする時が来たみたい...."さようなら貴方"。」

そうして去ろうとする文音の腕を琉兵衛は掴む。

 

その顔は先程までの情けない顔ではない。

「何故、さようならを言うんだ?

それに罪の清算とは....文音、一体何をするつもりなんだ?」

「私は私の罪を償う....例えこの身を犠牲にしても...それが私の覚悟よ。」

 

文音は優しく琉兵衛の手を引き剥がすと懐からネメシスメモリを取り出した。

その姿を見て嫌な予感がした琉兵衛はドライバーを付けるとメモリを指した。

 

テラードーパントになった琉兵衛は文音の周りにテラーフィールドを形成する。

「ダメだ文音....行かないでくれ。

私は....君がいないと.....」

しかし、文音は展開されたテラーフィールドに向けて歩み琉兵衛に近付く。

 

「止めろ!触れたら命はないぞ!」

琉兵衛がそう忠告するがテラーフィールドに触れた文音の身体には何の変化も起きない。

文音も琉兵衛に恐怖を感じること無く近付くと彼の頬へ触れる。

 

「文....音....」

「貴方、例えどんな結末になったとしても私は家族と....貴方を愛しているわ琉兵衛。」

 

「....待っ!」

琉兵衛は文音は離さないように手を伸ばすが文音は身体が炎へと変わるとその場から消えてしまった。

 

琉兵衛はメモリを抜くと触れられる筈だった手を見つめる。

その手は弱々しく震えておりミュージアム総帥としての姿は無かった。

 

ドーパントになった事で喫茶店には誰もいない。

机には二人で飲んだコーヒーが残されている。

呆然としながら席に着き残ったコーヒーを飲む。

コーヒーから苦味を感じることで琉兵衛は改めて文音が消えたことを認識した。

 

愛する妻が消えた。

それも復讐に飲まれてではなく私に愛の言葉を残して....

 

その現実を受け入れる度に身体が震える。

それを抑える様に文音が飲んでいたコーヒーを無くなるまで飲み続けるのだった。

 

 

 

照井が井坂に殺された瞬間を赤矢は見つめていた。

(これが見せたかった物なのか?)

倒れている照井の身体からは出血が止まらない。

その光景を見たことで赤矢は過去の記憶を思い出す。

 

 

(ふぅ....講義が長引いてしまったな。)

赤矢は何時も通り水音町の大学で授業を終えて家に帰ろうとしていた。

授業が長引いてしまったせいで帰りが遅れてしまっている。

(鈴花は待っているだろうな....漸く安定期に入ったのだから無理はさせたくない。)

 

赤矢の妻は妊娠していた。

だからこそ一人にさせておくのは赤矢も心配だったが本人が気丈に振る舞っていた。

(家に帰ったら様子を確認して必要は物を揃えないと....)

自分が親になる....今一想像できないがそれでも赤矢は嬉しかった。

 

これから先の人生は大変なことも多いだろうがきっと楽しいこともあるだろう。

生まれる子供の名前も決めたいしな....

 

そう考えながら家に帰ると妻だった存在が倒れていた。

(鈴花?....)

赤矢は倒れている存在を持ち上げて顔を確認した。

全身の水分が吸い取られてミイラの様になっていたが着ている服からそれが妻だったのだと分かってしまった。

 

そんな妻はお腹を抑えながら死んでいた。

お腹の子供だけは守りたい...そう思っての行動だと分かった。

 

(部屋に何の問題もない。

それなのに妻だけ異常な死を遂げている....どう言うことだ?)

 

赤矢は死んだ妻を気に掛けること無く部屋の見聞をした。

今思えばこれは現実逃避の行動だったのだろう。

妻と子の死を....理解したくない。

 

だからこそ、赤矢は心を閉ざした。

警察が来て調査が始まったが人が短時間でミイラになって死んだ。

そんな非現実的な事実に捜査は難航し迷宮入りしてしまった。

 

妻と子の葬式を終えて手元に残ったのは妻と子の遺骨だけだった。

それを見ても赤矢の心は動かなかった。

(人が死んだ.....それだけの事だ。

私が知るべきなのは何故、こんな死に方をしたのか?

それと誰がどんな目的で殺したのかだ。)

 

そう考えていると赤矢はふと考えた。

(あれ?....私は何をするために家に帰ってきたんだ?

それより....死んだ妻の仲間は何だったんだ?

相談してた子供の名前は?

どうして....思い出せないんだ?)

 

妻と子の事を考えようとすると心がざわついた。

だからこそ、赤矢は殺した犯人について集中した。

幸い彼の本文は犯罪心理学だった為、それを考えている時だけは心のざわつきが止められた。

 

そして、ガイアメモリについて知り風都に向かった。

自分の妻と子を殺したのは間違いなくガイアメモリを使っている。

風都大学で教鞭を取れば調べる時間も増えると考えた。

その過程で無名と出会い、私は事件の犯人を見つける事を条件に部下となった。

 

犯人は直ぐに分かった。

井坂 深紅朗、ガイアメモリ専門の医者を名乗る狂人でありウェザーメモリを使うドーパントだった。

 

それを教えてくれた無名が尋ねる。

「真実を知った貴方はどうしますか?

井坂へ復讐しますか?」

本当なら復讐を願うべきなのだろう。

だが、赤矢にその願いは無かった。

 

自分の事に関係すると驚く程、冷たく興味を失ってしまう。

(きっと、私は悪魔に心を奪われたのだろう。

そんな私が復讐など願う資格はない....だが)

 

赤矢はメモリを取り出す。

(こんな私でも救おうとしてくれている人を見捨てる程、心は失っていない。)

 

赤矢はアサガオドーパントに変身すると濃度を調整したTNTを照井の前で爆発させる。

爆発の煙を照井に吸わせながらスマホを取り出し無名へ連絡を取る。

 

だが、無名に連絡が繋がらず舌打ちすると文音にメールをした。

『照井が井坂に殺られた。

今彼は風都第二タワーにいる。

救ってくれ。』

 

そのメールを送ると赤矢は井坂が向かった場所へ目を向ける。

「これ以上....私や彼のような人を作るわけにはいかないな。

なぁ、鈴花.....私は君と子の事を思い出せるかな?

 

これは復讐じゃない。

井坂には怒りや憎しみもない。

だがこれ以上、井坂の好きにはさせたくない。

それだけはちゃんとした私の意思だ。」

 

赤矢は覚悟を決めると井坂を追いかける。

名と顔すら忘れてしまった妻の為、自分を助けようとしたのかもしれない刑事の為.....彼なりの復讐が始める。

 

 

 

 

突如、別の場所へ転移させられた無名とWは今の状況に困惑していた。

「はぁはぁ....一体どういうカラクリなんだ?」

『エクストリームでも能力を"検索"できない。

こんなことがあるなんて......』

 

「恐らくメモリ以外にあのサブタワーが関係しているのでしょうね。」

そう言って無名は近くに建てられていたサブタワーを見つめた。

 

「ふっふっふ.....仮に私のタワーメモリの秘密を知ったとしても貴方達にはどうにも出来ません。

それにもう全てが手遅れだ。

来人様と無名さん....お二人はガイアインパクトの為の犠牲になる運命は変わらない。」

天十郎は笑いながら告げる。

「あ?ふざけんじゃねぇぞコラっ!」

 

Wがプリズムソードを天十郎に向けて振るうがプリズムソードが天十郎に到達する前に弾かれWが吹き飛んでしまう。

「くっ!まただ!またわかんねぇ力で吹き飛ばされた。」

『恐らく彼を中心にしてエネルギーシールドが貼られているのだろう。

プリズムメモリで無効化すれば攻撃が到達する筈だ。』

 

「PRISM MAXIMUMDRIVE」

 

『「PRISM BREAK」』

 

メモリの力を無効化するプリズムソードの攻撃が天十郎を襲うも天十郎が指を弾く。

 

パチン!

 

その音と共に周囲の速度が一気に遅くなる。

それはWの動きに干渉し振るわれる筈のプリズムソードの速度が遅くなり止まってしまう。

「なん.....だ...こ.....れ.....」

 

「周囲の空間の速度を"操作"した。

今の私には何人たりとも触れることは許されない。」

そう言うと天十郎はプリズムソードを槍で弾くとWの顔を叩いた。

その瞬間、複数の爆発を起こしながらWが吹き飛ばされ変身解除されてしまう。

 

「う....く....」

「何なんだ....メモリの能力が分からないなんて...」

倒れている翔太郎とフィリップを天十郎が見下ろす。

 

「まぁ、計画に支障はないでしょうが今の内に来人様を捕まえておいて損はないでしょう。」

そうして天十郎がまた指を弾くと一瞬の内にフィリップが天十郎の手に捕らえられてしまう。

 

「なっ!テメェ、フィリップを離せ!」

「邪魔をしないでいただきましょう!」

天十郎が手を翳すと翔太郎の身体が浮き上がる。

足掻こうとするが動くことが出来ず天十郎が宙に浮く翔太郎に向かって槍を放った。

 

「翔太郎!」

「邪魔者はここで退場してもらいましょう。」

そう言って槍が心臓に向かっていると途中で止まり槍と翔太郎が地面に落下した。

 

その光景に天十郎が驚く。

「何っ!一体どうして....!?」

そう言って動揺しているところにファングメモリが現れて攻撃を行いフィリップを天十郎から引き離した。

 

そして、それを待っていた様に無名が空中から天十郎に斬りかかった。

すんでの所で回避した天十郎は距離を取った。

 

その姿を見て無名が言う。

「やはり、思っていた通りでしたか。

時間をかけすぎて間に合うか不安でしたがフィリップが捕らえられる前に成功してよかったです。」

 

そう言って無名は手に持っていた武器のトリガーを引く。

 

BOW()

 

すると、先程まで刀だった武器が変形し弓に変わる。

そして、弓を引き天十郎に狙いを定めると放った。

弓から黒い矢が放たれる。

 

「くっ!」

天十郎が落下した槍を手に取るとエネルギーが発生し矢の動きを止めようとする。

「無駄です。

その矢にはデーモンメモリの黒炎の力が付与されています。

タワーのトリックが使えなくなった貴方では止められませんよ。」

 

無名の言う通り黒い矢はエネルギーの壁を易々と突破すると天十郎の肩をカスった。

 

「ちっ!まさか、貴方にトリックが見破られるとは......元とは言え流石はミュージアムのメモリ開発者ですね。」

「貴方のメモリは身体能力が強化される物じゃない。

恐らく、特殊能力が付与される物だ。

だとしたら、後はメモリの謎を解けば良い。

エクストリームで検索できてないと言うことはさっきの転移やエネルギーシールドはタワーメモリ固有の能力じゃない。

 

それで仮定が一つ出来た。

だから、それを確かめたんだ。」

 

そう言うと無名がサブタワーを指差した。

すると、サブタワーの頂点が無名の黒炎に包まれていた。

「あのサブタワーにはメインタワーの余剰エネルギーを流して安定させる役目がある。

つまり、タワーメモリはそのサブタワーからのエネルギーを利用出来る力.....違いますか?

加えて、メモリがゴールドクラスなのがサブタワーに蓄積されたエネルギーが普通じゃないからだ。

地球の記憶へ繋がる力....今の若菜さんやゴエティアが使える力を扱うんだ。

半端なメモリじゃ力に耐えきれない。」

 

「成る程.....だからサブタワーに黒炎を当ててタワーからのエネルギーを遮断したのか。

エクストリームで能力が分からなかったのもあくまでサブタワーに蓄積された力なのであってタワーメモリの力じゃないから検索しても分からなかったのか。」

「おいおい、捕まりかけてたってのに分析してる場合かよフィリップ。」

 

呆れながらもフィリップと翔太郎が合流する。

形勢が逆転したと分かった天十郎は溜め息をつく。

「はぁ、やはり直接戦うなんて野蛮な行為は私には似合わないな。

その武器と黒炎がある限り、私の勝ち目は無さそうだ。」

「それじゃあ、計画について大人しく話してくれますか?」

 

無名が尋ねると天十郎は笑う。

「ふふっいえいえ、私はこのまま帰りますよ。

と言うより"貴殿方は私を倒せない"。」

「あん?倒せないってどう言うことだ?」

 

「私を倒せばこの世界が本当の意味で終わると言うことですよ。

今、風都第二タワーが地球の記憶に向かって空けている穴とサブタワーの役目は地球が耐えられるレベルを越えている。

ガイアインパクトの計画が進まなければ"地球は開けられた穴を中心に崩壊する"。

それを防ぐには来人様と無名さん....そしてタワーのエネルギーをコントロールする私のメモリが必要だと言うことです。」

「!?」

 

「嘘だと思うのなら私を倒せば良い。

サブタワーからのエネルギーが絶たれている今なら貴方の攻撃も通りますよ仮面ライダーW。」

 

天十郎は自信満々にそう告げる。

そして、それを受けたフィリップや翔太郎....そして無名は天十郎に攻撃が出来なくなっていた。

(この男はこんなところで安いハッタリか言わない。

嘘だとしても真実が混じっている可能性がある。

.....今、コイツを倒すのは早計になる。)

 

そう理解したのか無名は武器からメモリを抜いた。

すると武器が変化しグリップだけが残った。

無名の判断を見た翔太郎とフィリップは天十郎を睨む。

 

「どうやら結論が出たようですね。

それでは私はこれで....次、お会いするのはガイアインパクトが始まる時ですかね?」

天十郎はそう言うとその場を後にするのだった。

 

それを三人はただ見つめることしか出来なかった。




Another side

地球の本棚の深淵で一人座るゴエティアは計画が順調に進んでいる状況を見つめて笑う。
「ふふっ....さぁ、いよいよ物語が佳境に進んでいく。
最後に笑うのは誰なのだろうかなぁ?
私か?それとも仮面ライダーか?
それとも....あの男か。」

ゴエティアが提案したガイアインパクトは原作のガイアインパクトよりも安全かつ広範囲にまで影響を及ぼせる。
計画が発動すればその余波は計り知れないだろう。

「これだけの異変を起こせばコスモスのいる空間に繋げられる。
そこで彼女をこの世界に呼び寄せよう。
きっと、面白い世界になる。」

この世界は超越者の力を元に産み出されている。
仮面ライダーや怪人の力も元を正せば超越者の力が根幹に存在している。

だが、この世界にあるのは力だけで精神は消えてしまっている。
残っているのは恐らく私とコスモスだけだろう。

何度も何度も確かめたがこの地球に置いて他の超越者の意思は感じ取れなかった。

「もしかすれば他の次元や星にはいるのかもしれないが....まぁ、どうでも良いな。」

ゴエティアにとって重要なのはコスモスを完全な状態で甦らせることだ。
これは亡き同胞やタナハからの願いでもある。

ゴエティアは自らの胸に手を当てる。

「君のことを考えるだけで胸が締め付けられ釘を打ち付けられる様な痛みを感じる。
これが君のくれた感情なのだろう。
だが、私は感謝している。
これが無ければ私達、超越者は生きていると言えない物の様な存在だったろう。

タナハは失敗したと言っていたがこの地球は私から見れば常に私の予想を越えてくる素晴らしい世界だ。
そこに暮らす人間も怪人も......
そして、その物語も.....」


「だからこそ、君に見て欲しいんだ。
君が望み与えた力によって生まれた素晴らしい世界を...."この世界の生物を通して"....」

ゴエティアは地球の本棚を操作すると一冊の本を取り出した。
その本を開くと黒炎で中の文字を書き直そうとする。
しかし、途中で炎が途切れてゴエティアが苦しみ出す。

「うぐっ!.....やはり、そろそろ限界か。
何度も書き直してきたのだから当然だな。」

ゴエティアが地球の本棚で行う書き換えには超越者の力を切り取り使う必要がある。
分かりやすく言えば寿命を削り書き換えていたのだ。

これまで何千とも言える書き換えを行い続けた結果、ゴエティアの身体は限界を迎えていた。
これ以上無理をすれば彼の精神を残している力すら使いきりゴエティアの意思は消え去ってしまうだろう。

だが、そんな事はゴエティアは百も承知だった。
ゴエティアは心臓に向けて手を挿し込む。
皮膚を貫通しその手に生暖かい血肉を感じると引き抜いた。

そして、血にまみれた手から黒炎が発生すると本に文字を書き込みそっと閉じて本棚に戻した。
終わるとゴエティアは地面に倒れこむ。

「はぁ....はぁ....ふふっ、後は物語が進むのを待つだけだ。
漸くだ....漸く願いが叶う。
今から君に会うのが楽しみだよコスモス。」
血にまみれた胸と痛みを気にする素振りもないようにゴエティアはただ笑うのだった。

外伝 続編の投稿に関して

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