意識を取り戻した照井が辺りを見渡す。
照井の周りは真っ暗な空間で何もない。
だが、この空間が普通じゃないことは照井でも理解することが出来た。
「俺は.....井坂と戦って....そして....」
照井は自分の身に起こった事を思い出そうとすると近くから声が聞こえてきた。
「お兄ちゃん、何してるの?」
その声に照井が振り向くとそこには死んだ筈の両親と妹がいた。
「もう、なにやってるの?
今日は警察学校の卒業式でしょ?
寝坊したら怒られるよ。」
そう言われ照井は自分の身体を見るとそれは何時もの赤いライダースではなく警察学校の訓練生の制服だった。
「もう、早く行くよお兄ちゃん!」
妹が照井の手を引き家の扉を開けて警察学校へと向かうのだった。
風都第二タワーに転移した文音は倒れている照井を見つけた。
「照井 竜!」
文音は彼の状態を確認する。
腹部に大きな穴が開き、瞳孔が開いていた。
そして、近くには破壊されたエンジンブレードとブーストメモリが転がっていた。
「まさか、ブーストメモリを使っても負けてしまうなんて.....何処まで強くなったの井坂は」
そんな事を思いながらも文音は照井を死なせない方法を考えていた。
(ドーパントから受けた傷は自然治癒でしか回復できない。
回復能力があるドーパントの能力なら傷の治癒も可能だけど美頭はサラと共に風都を離れた。
それにこの重症じゃ回復しても厳しい筈.....
やはり、あの方法しかない。)
文音はネメシスメモリを起動し身体に挿した。
紫色の炎が身体を包みネメシスドーパントへと変身する。
そして、腰についた砂時計を取り触れた。
すると、照井の身体が浮き上がりネメシスドーパントも紫色の炎から現れた巨大な秤の上に乗せられる。
ネメシスメモリの能力は対象と自分の罪の量を計りそれに応じた能力を発揮することが出来る。
照井の人生を利用し家族を奪った為かネメシスドーパントの秤が重く地面についていた。
「これだけの罪があれば.....罪の清算を行うわ。
私の願いは彼の全てのダメージを私の身体が移し返ること....」
そう願った瞬間、秤が勢い良く動き始め照井の傷が消えていく。
そして、その代わりにネメシスドーパントの身体が傷付き始めた。
凄まじい痛みが身体に広がっている筈なのに文音は声も漏らさずひたすら耐えた。
自らの罪を清算する様に.....
そして、全ての傷が移し返え終わると秤が消滅した。
文音は穴の開いた腹部を抑えながら這って照井の元へ向かう。
「はぁ...はぁ....何故、目を覚まさないの?」
眠るように目を瞑る照井に文音は触れる。
(呼吸や体温は安定している....もしかして再生した身体と意識が噛み合っていない?
だとしたら早く意識を取り戻させないと....)
消えていく命を感じながら文音は最後の力を振り絞るようにメモリに力を込めると身体から排出されたメモリを照井の腕に突き挿した。
井坂はもぬけの殻となった風都第二タワーの内部を呆然と見つめていた。
その横では傷付き倒れている
「ここにもいないとは.....まさか逃げたのか?」
ミックの事など歯牙にも掛けてないのか見向きすら起こさない井坂にミックは憤慨し立ち上がると高速で翻弄しながら攻撃を行おうとする。
しかし、その攻撃は井坂は出現させた氷壁に遮られ逆に火球の攻撃を受ける。
それをミックは回避するがその場所に井坂の赤い雷が落とされミックに直撃してしまう。
ダメージからミックは吹き飛ばされてしまう。
その姿を見て井坂はミックを哀れむ。
「ミュージアムの処刑人でしたか?
そんな役職に縛られてそんな素晴らしいメモリの力を無駄にしているとはなんと勿体無い。
私ならもっと有益にそのメモリを使えるのに.....」
起き上がったミックは目から光球を放つ。
「無駄です。」
井坂はそう言うとその攻撃を片手で握り投げ返す。
想定してない反撃を受けてミックは回避しようとするが突如、地面が凍り始め両足が使えなくなりミックのドライバーに光球が直撃してしまう。
ドライバーは火花を上げながらもまだミックの身体を怪人へと変身し続けてくれている。
「もう良いでしょう。
私は琉兵衛さんに会いたいだけだ。
邪魔をしないのなら命だけは助けます....どうでしょうか?」
ミックの井坂への返答は両手の爪を向けた戦闘の意思だった。
「残念だ。
ガイアメモリを使えても所詮は獣と言うことか.....
では貴方を殺しましょう。
あぁ、安心してください。
飼い主も直ぐに貴方の元へ送ってあげますから....」
ミックは痛む身体を無視して地面を蹴りあげた。
これまでと違いただ真っ直ぐ一直線に井坂へと突撃する。
狙うは井坂の頭.....ここを破壊されればドーパントだろうと無事ではすまない。
例え自分が死ぬことになっても
こんな姿を
ミュージアムの処刑人には相応しくない無様な攻撃....."相変わらず脳味噌が足りてないなクソ猫"と言われそうだ。
リーゼは獅子神の手により瀕死の重傷を負わされた。
最初の頃は良い気味だと思ったら時間が経つにつれて奴とケンカできない寂しさをミックは感じていた。
そうして気になったミックはリーゼが眠っている研究所を訪れた。
沢山の管に繋がれたリーゼを見てショックを受ける。
(アホの癖して無茶なことをやるからだ。)
悪態を思念波に乗せるが帰ってこない。
何時もならここからケンカの一つでも始まる筈なのに.....
(お前が寝ているせいで張り合いが無い早く起きろクソ猿。)
(狸寝入りもいい加減にしろお前は猿だろうが)
(最近、暴食が増えて肥ってしまった。
これもお前のせいだぞクソ猿。)
暇な時を見つけてはミックは寝ているリーゼに声をかけ続けていた。
だが、目覚めないリーゼにミックは最後にこう告げた。
(もし、お前が目を覚ましたらまた喧嘩してやる。
だから、早く目を覚ませ.....お前がいないとつまらないんだよ
(まさか、私が約束を破ることになるとはな。
......ふん、地獄でリーゼに笑われそうだ。)
そう感じながらもミックは後悔していなかった。
ミックにとって一番の幸せは園咲家の面々が平和に暮らすことなのだから......
ミックは井坂に突撃する刹那、光球を地面に当てて土煙を起こした。
(一瞬、視界を奪えれば良い。
私の鼻はお前の正確な位置を覚えている。)
ミックは土煙に突っ込むと更に加速しながら井坂の頭の場所へ片腕を突き立てた。
スミロドンの力を集約した一撃だ。
当たれば井坂と言えど確実に屠れるだろう。
......当たれば
ミックの速度により土煙が晴れると突き立てた腕は空を切っており逆に井坂はしゃがみこみ拳をミックのドライバーへも向けていた。
「貴方は鼻が良いですからねぇ....風を操作して匂いの囮を作るぐらいの対策はしますよ。」
井坂の言葉を聞きミックは自分の失策を悟る。
(くっ!回避を....いや間に合わない!)
「さようなら」
井坂の拳がドライバーを貫通しミックの胴体を貫こうとするが急に拳の軌道がズレてミックのドライバーを破壊すると本体は遠くへ吹き飛んでしまった。
「なっ!」
自分の意図しない事態に井坂は混乱する。
(私がトドメを仕損じた?
いや、角度とタイミングは完璧だった。
あのまま行けば胴体を貫き殺せた筈なのに何故だ?)
そう考えて井坂は殴った腕を見ると僅かながら左右に揺れている錯覚を覚えた。
(これは....幻覚か?
薬を盛られたのか?
でも、どのタイミングで.....まさか)
答えに行き着いた井坂は吹き飛ばしたミックへ目を向けるがそこには破壊されたドライバーとメモリのみ置かれていた。
「くっくっくっく.....あの土煙に幻覚剤を紛れ込ませた訳ですか。
しかし、獲物を横からかっさらうのはあまり誉められた行為とは言えませんねぇ。」
井坂はそう言って笑うとミックを奪った
赤矢は気絶したミックを抱えると井坂からタワーから脱出するため走っていた。
(幻覚剤の入った爆弾が上手く作用してくれたお陰でミックへの傷は浅い。
だが、放置できるレベルでもない一刻も早く治療しなければ.....)
そんな事を考えていると天井からコンクリートを砕く音が聞こえ身体を回避させた。
すると、回避した場所に風を纏ってコンクリートを砕きながら井坂が現れる。
「鬼ごっこはもう終わりですか?」
「通常のドーパントなら数時間は昏倒する濃度の幻覚剤なんだが....相変わらずの化物ですね。」
「貴方のメモリが生成する幻覚剤はガイアメモリの毒素を流用して作っている。
毒素に適合した私には真の意味で毒とはなり得ないと言うわけです。
さぁ、種明かしも終わりました。
そこの猫を渡していただけますか?
そうすれば貴方だけは見逃して差し上げますよ?」
井坂の提案に赤矢は答える。
「これでも私は犯罪心理が専門でね。
貴方のような典型的なサイコパスが自分の利益以外で約束を守ることが無いのを知っている。
この子を渡せば私を始末して終わりにする。
だから、渡す意味は無いな。」
「.....驚きました。
そう言えば貴方は犯罪心理学の教授でしたね。
そして、その考察ですが...医者である私の立場から見ても大正解ですよ!」
そう言いながら井坂は竜巻を生成すると赤矢に向かって放った。
すんでの所で回避して赤矢はTNTを生成すると井坂へ投げ付ける。
しかし、そのTNTを井坂は生成した火球を放ち焼却してしまう。
「貴方は他の幹部の部下と比べても特に能力に依存している。
幻覚の爆弾が使えなければさして驚異とならない雑魚ドーパントですよ!」
井坂は腰から"ウェザーマイン"を取り出すと赤矢に振るった。
高速で振るわれるウェザーマインを避ける術が無い赤矢は何発も攻撃を食らう。
ウェザーマインもメモリが強化されたことで多数の力が付与されており赤矢の身体に当たる毎に別のダメージが彼を襲った。
攻撃を受けて限界を感じた赤矢は地面に伏してしまう。
「無様ですねぇ....所詮、貴方は無名がいなければ私の驚異足り得ない存在と言うわけです。」
そう言われた赤矢は冷笑しながら告げる。
「元々....勝てると思って挑んでない。」
「では、何故私の邪魔をしたんですか?」
「何でだろうな.....ただ今動かないと一生思い出せないと思っただけだ。」
「思い出せない?.....それはなんですか?」
「なぁ、井坂 深紅朗。
君はこれまで殺してきた人を覚えているのか?」
「何を言うかと思えば....そんなのどうでも"良いことでしょう"。
覚える価値もない....」
「だろうな。
お前にとって重要なのはガイアメモリへの知的欲求を満たすこと....それだけだ。
その過程で何百人の犠牲が出ようと興味すら湧かないだろう。
だから、"お前は誰にも認められないんだ"。」
その言葉に井坂の表情が歪む。
「お前は自分の理論を認めさせるために無名と対立していた。
結果としてお前は毒素を克服しただろうが、賭けても良い。
例えこれからどんな実績を積もうとお前の考えは理解されない。
人は無名の理論を選ぶ。」
「負け惜しみを.....現に私と言う成功作がいるんですよ?
無名の毒素を廃する考えはドーパントを弱くする。
私の考えこそが.....」
「だが、"無名は使い手の安全を常に考えていた"。
それがお前との決定的な違いだ。
人は極論、自分の安全を第一に考える。
故にそれを保証される計画が常に優先されていた。
お前は自分の安全すら考えられない。
だから人の安全も分からない。
そんな理論が認められることは未来永劫無い。
お前は.....無名には...勝てない。」
赤矢がそう言い終わると井坂の握りしめた拳が震える。
「はぁ、全く貴方は無名に似ていますねぇ。
人の神経を逆撫でするのが上手い。
...お陰で思い出しましたよ。
赤矢....珍しい名前だと思いましたが、私が殺したあの女の関係者でしたか。」
「....覚えていたとは意外だな。」
「えぇ、死ぬ最後までお腹を守っていました。
妊娠していたのは分かりましたからね。
だから私は先ず、お腹の子から殺してあげたんですよ。
熱を調整してね。
それを知らずにお腹を守っている様は正しく滑稽でしたよ。」
仕返しとばかりに罵声を浴びせるがそれを受けた赤矢は起き上がると井坂を冷笑する。
「ふっ、論破された仕返しか?
存外、子供っぽいんだな。
生憎、俺に復讐を感じる心は残っていない。
だが、彼女は最後までお腹の子の命を守ろうとしたのか。
礼を言うよ井坂 深紅朗....最後に知りたかったことが知れた。」
「どういう....」
意味を尋ねようとした井坂を他所に赤矢の背中から爆発が起こり大量の煙で包まれた。
「限界まで煙の量を増やした。
逃げさせて貰うよ。」
「なっ!逃がすかっ!」
ガン!ガン!
井坂は聞こえた音の場所に向かって勢い良くウェザーマインを振るった。
すると、バリン!と言う音と共に一気に煙が晴れていく。
井坂が攻撃したのは風都第二タワーの外を展望出来る窓ガラスであり赤矢とミックはそこから身を投げ出したのであった。
ウェザーマインによる猛攻で立っていることすら出来なくなった赤矢の目的はミックを生きて逃がすことだけだった。
(メモリの性能や戦闘能力も負けている。
....何か逃げる切っ掛けを作らないと)
そこで赤矢はわざと井坂と無名の理論を比べ井坂をこけ下ろした。
典型的にサイコパスはプライドが高い。
自分の人生を賭けた研究をバカにされれば冷静さを欠くだろうと.....
その過程で赤矢は井坂から最も知りたかった自分の妻の死に様を聞くことが出来た。
聞いた時、溢れた感情は怒りではなく嬉しさだった。
(そうか....鈴花は最後まで子供を守って死んだのか。)
妻は化物を相手に絶望せず最後まで子供を助けようとして死んだ。
その真実が分かると赤矢の中で蓋をしていた感情が溢れだした。
(私ではこの化物には勝てない。
だけど、最後ぐらい吠え面をかかせてやる。)
そうして赤矢は目線で周りを確認する。
見えたのは外の展望用に付けられた大きな窓ガラスだ。
(これは使えそうだな。
最高の結果は井坂が攻撃して窓ガラスが割れそこから脱出すると言う感じだな。
それをするために必要なのは.....)
赤矢は起き上がりながら背中に大きめのTNTを生成する。
(威力は無くて良い。
必要なのは視界を全て奪う程の濃密な煙と井坂に直感的に攻撃させるタイミング。)
一度、深呼吸すると赤矢はTNTを起爆した。
突然の行動に驚く井坂を無視する様に窓ガラスへ向かうと強めに叩いた。
「なっ!逃がすかっ!」
そんな声と共に井坂のウェザーマインがこちらに向かってくる。
角度もバッチリでこのまま行けば確実に窓ガラスが割れるだろう。
誤算だったのはその攻撃が赤矢のメモリ付近を削りながら行われた攻撃だったことだ.....
「うぐぁ!」
赤矢は攻撃を受け仰け反りながらもミックを抱えて割れた窓ガラスから飛び出した。
風都タワーよりも高い第二タワーから落下しながら赤矢はメモリが体外へ排出される。
「くっ!だが、
赤矢はミックを抱えると地面を背にした。
ミックの生き残る可能性を少しでも上げるために....
目を瞑り思い出すのは長年、靄がかかっていた妻の顔だった。
(最悪な選択ばかりしてきたが....最後くらいはマシな方を選べたかな?)
聞こえる筈の無い妻に心で尋ねると身体に衝撃が走った。
しかし、それは地面に激突する感覚ではなく何者かに身体を抱えられる感触だった。
驚いて目を開けるとそこには死んだと思っていた"仮面ライダーアクセル"がいたのだった。
父と母....そして妹の春子がケーキを用意して俺を待っていた。
「お兄ちゃん!昇進おめでとう!」
そう言って喜びながら俺を席に着かせる。
「随分と活躍してるそうじゃないお父さんも嬉しがってたわよ。」
「コラコラ、あんまり煽てて調子に乗らせるものじゃない。」
父と母はそう言って俺が昇進したことを喜んでくれた。
(あぁ....懐かしいな。)
それは自分が本当に失いたくなかった景色だった。
一家団欒の幸せな家庭.....!?
何故、俺は目の前で祝ってくれている家族を過去として捉えているんだ?
目の前にいる筈の家族を....まるで死んだみたいに!?
何だこの心に残る違和感は?
照井は心と頭に残る違和感に疑問を覚える。
「どうしたのお兄ちゃん?」
「具合でも悪いのか竜?」
家族の声が嫌に虚しく聞こえる。
「違う.....違う!
そんな筈はない!俺の家族は死んでは...」
そこまで言いかけた時、照井の肩に誰かの手が触れた。
振り返るがそこには誰もいない。
ただ、感触だけ感じることが出来ていた。
その手を通して言葉が伝わる。
「行ってはダメ....目を覚ますのよ照井 竜」
「目を覚ますだと!?.....どういう意味だ?」
「ここは貴方の深層心理が作り出した空間......
現実じゃないわ。」
「現実じゃないだと!?ふざけるな!俺の家族は生きている!死んでなどいない!」
「いいえ、それは違うわ。
貴方も気付いている筈....でも真実を認めたくないだけ....」
「違う....そんな筈はない!
現にこうして触れれば分かる!」
そう言って照井は妹の肌に触れる。
暖かいその温度が生きていることを感じさせてくれるが一瞬でその感覚が変わりまるで氷に触れたかのように冷たくなり手を引いてしまう。
「そん....な.....」
「思い出し始めているのね。
現実を心が正しく認識しようとしている。」
「俺は....死んだのか?」
「いいえ、貴方はまだ生きている。
でも、精神は死んだと錯覚してしまった。
だから、私がここに来たのよ。」
「何故だ。
俺を生き返らせて今度は何をするつもりだ?
また、俺を復讐の道に駆り立てるのか?
俺の家族が目の前で死んだように今度は誰の命を奪うつもりなんだ!」
シュラウドがフィリップの母親である文音さんだと知って照井は何とか納得しようとしていた。
そうして生きていこうとしていたのに....死にかけて生きている家族の姿を見てしまった照井は蓋をしていた怒りが再燃する。
「お前達の勝手な争いに俺の家族を巻き込んでおいて....ふざけるな!...返せ!俺の家族を返せ!....返してくれよ。」
照井は涙を浮かべながら地面に膝を着く。
すると、目の前に蜃気楼が起きてシュラウドが現れた。
その姿はノイズが入ったようにブレている。
「貴方の家族を奪ってしまったのは井坂でもその井坂を産み出したのは私の罪。
貴方には謝っても償いきれない代償を背負わせてしまった。
そんな私の言葉なんて聞きたくないでしょう。
でも聞いて......
今の貴方は昔のように復讐に囚われた照井 竜ではない。
来人や左 翔太郎と出会いこの街を守る仮面ライダーになった。
貴方の存在はこの街に必要よ....こんな所で死んで良い訳がない。」
「詭弁だな。
要は俺をまだ利用したいだけだろう。」
「じゃあ、貴方はこのまま死んで後悔しないの?
生きていたいと思える存在はいないの?」
そう問われた照井はふと思い出した。
家族以外で自分の心を安らげてくれた記憶を....
それに答える様に空間が変わり風都の夜空が現れた。
近くに見える風都タワーが折れているが周りの人の表情は暗くない。
辺りから聞こえる喧騒も笑い声に溢れており空中には無数の花火が上がっていた。
(これは....俺達が
そう思い照井は横を見た。
着物姿で花火を楽しむ女性を.....それを見て心が安らいでいる自分を知りそして分かった。
(所長....そうか、俺はずっと彼女のことが"好き"だったのか。)
「貴方にも大切にしたい人がいるのね。
なら、その人の為にも死んではダメ。
お願いよ....照....井....竜....」
そこまで言うと文音の身体はノイズに紛れて消えてしまった。
照井の隣には花火を眺める所長の横に両親と妹が立っていた。
三人は照井を見て笑っている。
「お袋、親父、春子......ごめん。
俺はまだそっちには行けそうにない。
俺、まだやらないといけないことを忘れてたんだ。
復讐にばっかり目がいって気付かなかった事をさ。
所長に...."亜樹子"に告白できてない。
だからさ、待っててよ。
どんな死に方するか分からないけど、きっと死ぬ時は幸せだったと笑える人生にするから....それまで...」
そう言うと両親と春子は笑いながら俺の背中を押した。
(行ってきなさい。)
そう言われた気がして俺は涙を浮かべながら走り出した。
そして、一瞬で世界が暗転すると俺は目を覚ました。
身体を起き上がらせ周りを確認する。
そこは井坂と激闘を繰り広げていた風都第二タワーの内部だった。
(戻ってきたのか?)
そうして俺は辺りを確認するが周りには誰もいない。
だが、驚くことに破壊された筈のブーストメモリが直っており照井の目の前に落ちていた。
俺はそれを拾い外を見上げると誰かが落下しているのが見えた。
(あれは....赤矢か?
どうして!?、いや四の五の考えるのは後だ!)
俺は近くにあった俺はエンジンブレードを持ち上げると窓ガラスへ投擲しそこに突っ込んだ。
窓ガラスはエンジンブレードの衝撃に耐えられず砕けて照井は外へ落下する。
そして、照井はアクセルメモリを起動するとドライバーに差し込みスロットルを思いっきり回した。
「変身!!」
高速で変身が完了するとバイク形態へと変形しタワーに車輪を乗せて走る。
そして、落下する赤矢に近付くと彼を左手で抱えた。
右手でスロットルを何度も回し貯めたエネルギーを地面に放出する。
爆発的な加速エネルギーにより落下エネルギーを打ち消すと地面に安全に着地することが出来た。
「おい、無事か!」
照井が赤矢にそう尋ねると赤矢は目を開けて答える。
「良かった....文音さんが何とかしてくれたか。」
「文音?.....やはりシュラウドが俺を助けたのか?」
「あぁ、彼女に君の事を託して俺は井坂からこの猫を助けた所だ。」
そう言って赤矢は抱えている猫を見せた。
「お前も猫も無事そうじゃないな。
待っていろ今すぐ病院に....」
「....何故生きている?」
そう告げて降りてきたのは照井が生きていることに動揺を隠せない井坂だった。
天候の力を使い地面に着地した井坂は尋ねる。
「あの攻撃は致命傷だった筈だ。
それなのに生きて私の前に現れるなんて....どんなトリックを使ったんですか?」
井坂に照井は答える。
「知らなかったのか?俺は不死身だ。
この街からガイアメモリを失くすまで俺は死なん。」
「......まぁ良いでしょう。
死んでないならもう一度殺せば良いだけだ。
こんどはじっくり時間をかけて殺して上げますよ。」
そう不敵に笑う井坂に照井は答える。
「悪いが俺にはやることが残っててな。
お前に構っている時間はない。
だから、さっさと振り切らせて貰う。」
そう言うと照井と井坂の第2ラウンドが始まるのだった。
外伝 続編の投稿に関して
-
このまま続きで見たい
-
新規投稿で見やすくしたい