もう一人の悪魔   作:多趣味の男

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第二百八話 灯すB/白炎の先

「うぉぉぉぉぉ!!」

 

「はぁぁぁぁぁ!!」

 

井坂と照井の拳がぶつかる。

凄まじい威力とエネルギーの余波により付近が爆発するが当人達はお構い無く殴りあっていた。

 

両者の強さは拮抗しておりこの殴り合いでお互いにダメージを受ける。

「うぐっ!ははっ素晴らしい!死の淵に立って更に進化しましたか!

これも私への復讐心が成せる技ですか?」

「違う!...俺はもう復讐には囚われてはいない!」

 

「では何の為、私と戦うのですか?

風都の仮面ライダーの意地ですか?

だとしたら、ガッカリですねぇ。

他者の為、何ぞという下らない動機で私と戦うなど...」

「それも.....違う!」

 

そう言って照井は井坂に蹴りを放ち距離を作った。

「井坂....俺はお前に、家族を皆殺しにされてから復讐のみを心の支えに生きてきた。

お前を憎みガイアメモリを憎み、犯罪者を憎んだ。

そして、ドライバーを手に入れアクセルになると俺は風都で仮面ライダーと呼ばれる存在になった。

そこで左やフィリップ....そして所長と出会って俺は学んだ。

ガイアメモリを使う人間の事を....そして俺が本当に許せなかった事を....」

 

「俺は....井坂、お前が許せなかっただけじゃない。

ドーパントに大切な存在を奪われることがもっと許せなかったんだ。」

「では、大切な者を殺させない為に私を殺すのですか?」

 

「いいや、俺は大切な者にとって誇れる存在でありたい。

この思いを伝えても後悔しない存在でいたい。

その為にお前を倒す.....それが俺の覚悟だ。

それを証明してやる。」

 

照井はそう言うとブーストメモリを取り出しアクセルメモリを装填するとドライバーに挿し込みスロットルを思いっきり回した。

 

「BOOST」

 

そして、ブーストフォームになるとクラッチを連続で握った。

 

「BOOST,BOOST.BOOST」

「「「MAXIMUMDRIVE」」」

 

すると、照井の全身からエネルギーが大量に溢れだし、装甲を破壊し始める。

ぐっ!がぁぁぁぁぁ!!

「愚かなそんなに連続でマキシマムを発動すればいくら貴方でも耐えられませんよ。」

 

そう言っていると照井の身体から紫色の炎(文音の意思)が現れ放出されるエネルギーが安定し始める。

ばっ...バカなっ!その炎はシュラウド貴女ですね?

彼の自殺に付き合って共に死ぬつもりですか!?」

 

しかし、照井は井坂を見つめ言う。

「俺は....死なん!俺は.....この街を守る刑事で仮面ライダーで...そして....」

 

「人間だぁ!!」

 

二人の願いが届いたのかドライバーのブーストメモリの挙動が変わる。

照井が思いっきりスロットルを回す。

 

BOOSTACCEL(ブーストアクセル)

 

ドライバーからガイアウィスパーでそう告げられるとブーストフォームの装甲が外れていき中から通常のアクセルが姿を現す。

 

しかし、身体の色味が変わっており紅蓮の炎の様に赤かった姿から白く光輝く白金の姿へと変わっていた。

全身が白く輝くその姿を見て井坂は驚愕する。

 

井坂はその色を見たことがあった。

それは獅子神がレオメモリで変身して作り出す"人工太陽の中心核の放つ全てを消し去る白き滅びの光その物だった。

それを見て井坂は悟ってしまった。

 

これは"勝てない"と......

 

いくら、毒素を吸収し強化したウェザーメモリの力でもそれはあくまで地球レベルの規模で出せるエネルギーを越えない。

天災がどれだけ残酷な破壊力を持っていてもそれはあくまで地球の中で通じるものだったからだ。

 

だが、だからと言って井坂は引く訳にはいかない。

自分の人生の全てを賭けた研究成果が劣っているなど考えたくはなかった。

 

だからこそ、井坂も覚悟を決めた。

 

うぐおぉぉぉぉぉ!!」

全身のエネルギーを解放し天災の力を顕現させる。

地球を焼き尽くさんばかりの"赤い炎"、地上を全て水没させ凍らせる絶対零度の"青い水"、あらゆる万物を破壊する"緑の風"、文明に滅びをもたらす"黄色い雷"。

四つの力が混ざり合い反発を繰り返しながら融合していく。

 

そして、その色は"黒く染まり"純粋な破壊の力へと昇華した。

その力を井坂は自ら取り込む。

身体が限界の悲鳴を上げるがそれを無視して取り込み続けると井坂の身体は完全な黒色へと姿を変えた。

 

「認めましょう照井 竜。

貴方を殺すには私も死ぬ覚悟をしなければならない。

ですが、勝つのは私だ!

この力を持って貴方にトドメを指して上げましょう。」

 

「いいや、勝つのは俺だ。

これで終わりにする。」

 

"破壊の黒で覆われた怪物(井坂)"と"滅びの白を纏ったヒーロー(照井)"

 

両者が一瞬で近付くとお互いの拳同士がぶつかった。

両者のエネルギーの強さからぶつかった衝撃で空間が歪み辺りにプラズマが発生する。

 

お互いの拳が上空へ弾かれ打ち出されたエネルギーが雲を割る。

それを分かっていた両者は示し合わせたかのように身体を回転させると回し蹴りを相手に向けて放った。

 

 

 

 

トン!.....そこまで強くない音と共に両者のエネルギーが空へと散る。

 

 

 

井坂の蹴りは照井の頭部へと放たれその一撃はアクセルの頭部にあるアンテナを削り取った。

 

そして、照井の蹴りは井坂の攻撃を掻い潜り井坂の脇腹へと深々と突き刺さっていた。

 

「ぐぁ......かっ.....」

 

そのまま、照井は突き刺さった足で井坂を軽く押し出す。

先程までとは違い簡単に後ろへと下がった井坂は蹴られた脇腹を抑えている。

 

「絶望が....お前の.....ゴールだ。」

 

そう告げると勝敗を決するように井坂の体内からメモリが弾き出され爆発を起こした。

 

「ぐおぉああぁぁぁぁぁぁ!!」

 

巨大な断末魔と共に井坂は人間の姿に戻るとウェザーメモリと強化アダプターは粉々に砕け散った。

倒れ伏す井坂を見つめながら照井もブーストメモリを抜き変身解除する。

すると、照井のブーストメモリもひび割れ砕け散り残ったのは色が抜けて白くなった"アクセルメモリ"だけだった。

 

倒れている自分を井坂は冷笑する。

「ははっ....まさか、私が負けるとは.......

これが復讐によって強くなった仮面ライダーの力.....いえ違いますね。

"誰かの為に生きることを覚悟した男の力"ですか。」

 

「井坂....」

 

「これでも医者として何人も死の淵に立つ人間を見てきました。

その中で多く生き残ったのは"誰かを想う人の方が多かった".....だから貴方もそうなのだと思っただけです。」

そう言う井坂の身体は末端からゆっくりと黒い粉末となって崩壊していった。

 

「!?」

「あぁ、毒素を完璧に克服したと言ってもメモリブレイクされれば毒素に犯された細胞がただで済む筈がありません。

こうなることは予想できてましたよ。」

 

そう言う井坂の顔は少し不満げであった。

それに気付いた照井が尋ねる。

「何が気に食わない井坂?

俺に負けたことか?」

 

「いいえ、それに関しては自分でも驚く程、後悔無くスッキリとした感情でいます。

.....ただ、何故か死ぬ間際になって"ある女性"の姿が頭から離れないんですよ。」

 

意外な井坂の回答に照井は驚く。

「お前にもそんな感情があったんだな。」

「えぇ.....自分でも驚いています。

自分の目的の為に捨てた筈の女性を思い出すなんて....

貴方にもこんな感情はありますか照井 竜?」

 

「あぁ、俺にも守りたい存在がいる。」

「ならば...失わないように精々守ることだ。

私のように失ってから気付いては遅いですからねぇ。」

 

そこまで話すと井坂の肉体の崩壊が加速する。

「そろそろ時間のようです。

先に地獄で待っていますよ....貴方が死んで来るのをね。」

そう言って笑うと井坂は黒い塵となって消えた。

 

それを見て安心した照井はそのまま地面に倒れ気を失ってしまうのだった。

 

 

 

井坂と照井の戦闘が終わりを迎えた時、冴子と雪絵の戦いも終局に向かおうとしていた。

 

スコーピオンとセンチピートメモリの複合技により与えられた毒の影響で冴子は地面に突っ伏して動けないでいた。

「いい加減死になさいよ園咲冴子!」

 

雪絵の毒を纏った攻撃が冴子を襲うがそれを加頭のユートピアメモリの重力操作で無効化する。

「冴子さんに触れようとするなぁ!」

 

加頭の発火攻撃が雪絵に向かうがそれを"黄緑色のナスカ"が手に持った盾で防御する。

「"超防御".....雪絵を傷つけようとするのは止めて貰おうか。」

そう言って加頭の攻撃を防御するとその隙に冴子を狙った雪絵のムカデの尾の攻撃も止めた。

 

「!?」

「雪絵....お前もだ。

俺の目が届く限り、お前に殺しはさせない。」

 

「なんでよ....何で私の邪魔をするのよお兄ちゃん!」

「人を殺したら元の人生に戻れなくなる....お前にはその道を歩んで欲しくない。」

 

「そんなのとっくに覚悟は出来てるわ!

園咲 冴子を殺せるなら悪魔に魂を売ったって良い!!」

「ふざけたことを言うなっ!

そんな事は誰も望んでいない!」

 

そうして二人が口喧嘩をしている隙に加頭は冴子に近寄る。

「冴子さん今の内に逃げましょう!」

加頭にとって大切なのは井坂を仕留めることではなく冴子の身の安全だった。

 

冴子に触れそうとする加頭の手を彼女は払う。

「冴子さん?」

「もう....い....いわ....」

毒の影響が少なくなり何とか話す事が出来るようになった冴子が言った。

 

「もう良いとはどういう意味なんですか?」

「どう...せ...いき...て...たって....つら...い...だけ....だか..ら...ここ...で...死ね...ば」

 

「そんな事を言わないでください!」

 

加頭は激情のまま大声を出す。

その声に霧彦達の言い合いも止まる。

 

「組織に見捨てられ愛した男(井坂)の殺害を命令された貴女の心情は考えるだけで辛いでしょう。

でも、死んではいけない。

貴女は生きるべきなんだ!

何も手に入れず不幸のまま死ぬなんてそんなのはこの私が認めない!」

そう言うと加頭は自分の心臓に手を当てる。

 

「私のこの心臓は前の井坂との戦闘で失いました。

財団の新技術で復活はしましたが....この心臓は永くは持たないでしょう。」

「!?」

 

愛する女性にだけは気付かれたくないと思っていた自らの心臓の寿命を加頭は告げた。

「それでも私は生きることを諦めてはいません。

それは財団や自分の為だけではない.....貴女と共に生きていきたいからだ!

貴女の人生が辛いものなら残りの人生を私に下さい。

その人生をこれまで以上の幸福にすると約束します。

だから.....死ぬなんて事は言わないでください。」

 

普通の加頭が言わない真っ直ぐな言葉を受けて冴子の動きは止まってしまう。

そんな冴子を抱き抱えると霧彦達を見据えた。

「今日はこれまでにしましょう。

そちらの女性の復讐にも色々と言いたいことがあるでしょうし....この借りはまた何れお返しします。」

「!?....待ちなさい!逃げるなんて許さないわっ!」

 

雪絵がムカデの尾を加頭に向かって振るうと地面が割れ土煙が上がった。

煙が晴れるとそこに二人の姿はなかった。

「能力を使って逃げた....か。」

「......クソッ!」

 

雪絵が荒々しく言うとメモリを抜いた。

霧彦も同じようにメモリを抜くと雪絵に話し掛ける。

「雪絵.....」

「お兄ちゃん.....私は私で園咲冴子を追うわ。

何処に隠れていても見つけ出して復讐を遂げて見せる。」

 

「いいや、それは叶わない。

例え、何処にいようと止めて見せる。」

その真っ直ぐな霧彦の目を見た雪絵は笑う。

 

「変わってないなぁお兄ちゃんは.....

何時も頑固で真っ直ぐで....ミュージアムに入って変わったと思ったけど何も変わってない。

ずっと風都と言う街を愛している。」

「お前のことも愛しているんだがな?」

 

「なら、復讐ぐらい許してよ。」

「それは無理だ。」

 

「本当に頑固.....」

 

そう言うと雪絵は霧彦に背を向けて歩きその場を去った。

見送った霧彦は携帯を取り出すと無名に連絡をかけた。

 

「どうかしましたか霧彦さん。」

「雪絵が冴子を殺そうとしたのを止めた。

これから雪絵は単独行動で冴子を狙うそうだ。」

 

「そうですか.....」

「君には感謝している無名。

私の命や雪絵の無謀な復讐を止めてくれた。

だが、君は雪絵にメモリを....."冴子を殺せるメモリ"を渡したな?」

 

霧彦は元々ミュージアムでメモリのセールスマンをしていた。

その為、顧客に対してメモリの特性や相性を説明する以上、研究者クラスとはいかなくてもある程度の知識を持っていた。

 

「君が雪絵にスコーピオンメモリを渡した時、私は君が雪絵の安全を考えて渡したのだと思っていた。

だが、その後に渡したセンチピートメモリを見てそれが違うのだと分かった。

両者に共通するのは強固な装甲と"神経に作用する毒"。

いくらタブーがゴールドクラスのメモリでも毒を撃ち込まれたら動くことが出来なくなる。」

「.....やはり分かっていましたか。」

 

「雪絵は賢い.....渡されたメモリを使ってタブーを無効化できる方法を直ぐに見つけ出しただろう。

私が止めなかったら雪絵は冴子を殺していたかもしれない。」

「でも、貴方は止めた。」

 

「それは結果論だ。」

「では、雪絵さんの復讐を僕が止めるべきだったと言うのですか?

......雪絵さんの復讐心は重く深い。

両親を無くしたった1人の家族だった貴方を失った。

それも本来ならば守るべき妻の手によって......

怒りや憎しみを抱くなと言う方が無理な話です。

雪絵さんは貴方が目覚めてからもずっと悩んでいました。

自分の心にある怒りと憎しみ....復讐への想いを捨てるのか果たすのか?

そして、彼女は果たす道を選んだ。」

 

「だから、メモリを渡したと言うのか?」

「僕は一度、交わした契約は必ず守ります。

園咲冴子に勝てるメモリを渡すと約束したんです。

それを破ることは出来ません。」

 

恐らくこの契約に殉ずる考えもゴエティアの影響を受けているのだろう。

だが、それでも無名は雪絵の求める物を渡した。

 

「復讐を否定出来るのはその復讐で殺された被害者だけです。

だから、貴方にもメモリとドライバーを渡した。」

「.....ならこの後に私の言う言葉も予測できているのだろう無名?」

 

「えぇ、ここでお別れです霧彦さん。

風都を陰ながら守ると言いう貴方の道に僕はいません。」

「.........」

 

霧彦はゆっくりと電話を切るとナスカメモリとドライバーを見つめた。

雪絵に復讐の道具を与えたように自分にはそれを止める力を無名は与えた。

 

真逆の事をしている筈なのに霧彦はその理由を何となくだが察することが出来た。

(私達の事を最後まで否定しないとは.....お人好しな男だ。)

 

霧彦も分かっていた雪絵が止まらないことを....

例え無名がメモリを渡さなくても自分でメモリを手に入れて冴子に挑んでいただろう。

 

無名は雪絵の生存率を上げただけだ。

だが、それでも兄としての矜持が無名の行動を否定したがっている。

(儘ならないな....私自身も....

だが、もう戻ることは出来ない。

私は私の道を歩むだけだ.....)

 

霧彦は覚悟を決めると1人暗闇の道を歩んでいくのだった。

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