「うらぁ!」
先に動いたのは
握り混んだ拳を
それを琉兵衛は首を傾けて回避する。
回避した空間に衝撃が走り突風が走った。
「何っ!」
「凄まじい威力だ。
まともに喰らったらひとたまりも無さそうだ。」
翔太郎は構え直して最後、拳と蹴りのコンビネーションを行うが、琉兵衛はその攻撃を弾いていなしたり回避することでダメージを完全に防いでいた。
「はぁはぁ....」
「もう終わりかね?
なら今度は私から行こうかっ!」
琉兵衛は強く地面を踏み締めると正拳突きを放った。
回避の遅れた翔太郎はその拳をクロスした腕で受ける。
ドン!
重たい音と共に翔太郎は吹き飛び地面を転がった。
急いで立ち上がるが受けた手は拳の重さにより痺れていた。
「重く鋭い拳.....!!空手か!」
翔太郎の結論に琉兵衛は感心する。
「一度、受けただけで分かるとは中々の推理力だ。
その通り、私は考古学者として世界を渡り歩いていたお陰でスラム街や、治安の悪い場所にも何度も行った。
荒事も多くてね....自分の身を守る為に習ったがまだ腕は落ちていないようだ。」
「くっ!」
「さて、続きを始めようかっ!」
また、琉兵衛が踏み込む。
「しっ!」
掛け声と共に回し蹴りが放たれたが翔太郎はその蹴りをしゃがんで避ける。
「ほぉ!」
「こちとら探偵だ!
荒事も多いんだよ!」
お返しとばかりに翔太郎も琉兵衛よ背後に周り蹴りを放った。
それを受けた琉兵衛は大きく吹き飛ぶ。
しかし、蹴った本人は不満そうに言った。
「蹴った瞬間に"飛びやがった"。
本当に考古学者かよアンタ。」
「あっはっは、そう誉められるのも悪い気はしないな。」
琉兵衛は何ともない風に立ち上がるが背中に鈍痛が走っていた。
(威力を殺してもこれ程のダメージがあるとは.....まともに受けたら持たないな。
全く、私らしくない戦い方だ。)
通常の琉兵衛は周囲にテラーフィールドを展開し遠距離から敵を倒す戦法を取っていた。
だが、今の琉兵衛は自ら拳を振るい戦っている。
まるでガイアメモリを持たなかった若い頃の私がヤンチャしていた時代の戦い方。
今の自分に合っていない...そんなのは分かっている。
しかし、それでも変えるつもりはなかった。
(私に真っ直ぐ向かってくる男から逃げるわけにはいかない。)
今の琉兵衛はミュージアムの頭目としてではなく園咲家の家長、園咲 琉兵衛として立っている。
その私が逃げたら一体、誰が家族を守るんだ?
強く拳を握った琉兵衛は翔太郎に向けて構える。
(私は逃げないぞ。
正面から君を粉砕する。
それが私の覚悟だ。)
「はぁはぁ....痛ぇな。」
翔太郎は琉兵衛に殴られた部分に触れる。
ドーパントの力を使った闇雲な一撃じゃない。
芯が乗り内部まで浸透する拳のダメージは確実に身体を蝕んでいた。
(まともに喰らえば俺が殺られる。
だが、逃げようとするだけ無駄だな。)
状況は悪いがそれでも翔太郎は笑う。
「へっ!対策なんて動いてから立てりゃ良い。
向こうもやる気なんだ。
悪い賭けじゃねぇ!」
翔太郎は探偵で培われた持ち前の観察眼で琉兵衛を見る。
(下手な小細工は通じねぇだろうな。
やるなら相手の意表を突けて克つ有効なダメージを与えられる"何か"じゃねぇと......)
そして、翔太郎は警戒しつつ一つのアイデアが浮かぶ。
(成功すれば御の字位だがやらないよりマシだな!)
翔太郎はジョーカーメモリを抜くとマキシマムスロットへ装填する。
「JOKER MAXIMUMDRIVE」
ジョーカーメモリのエネルギーが全身に巡っていくと覚悟を決めた翔太郎は琉兵衛に向かって真っ直ぐに突っ込んだ。
琉兵衛は翔太郎の前にテラーフィールドの壁を展開するが翔太郎はそれを無視して突進すると恐怖の壁を破った。
「成る程、テラーの攻撃をジョーカーのマキシマムで無効化したか....だが!」
琉兵衛は突進してきた翔太郎に敢えて近付き頭を足を払い転ばせた。
「ぐっ!」
「何か狙っているようだがそう簡単に引っ掛かってはやらんよ。」
翔太郎は立ち上がると琉兵衛へ近付き徒手空拳を行う。
琉兵衛はそれを払いいなしながら避け続けた。
「意味の無い攻撃だな。」
「うるせぇ何でもやってみなきゃわかんねぇだろうが!」
「一理あるがそろそろ飽きてきた。
決めさせて貰おう!」
琉兵衛が両手で翔太郎の攻撃を払うと一瞬で正拳の構えを取る。
そのままの勢いで拳を振るった。
ガツン!
重たい音が起こるがその拳は翔太郎の額をとらえていた。
しかし、打った琉兵衛の顔は歪む。
「貴様!わざと額で受けたな?」
「へっ!いくらアンタの拳でもこれなら只じゃすまねぇだろ!
そして、隙を見せたな園咲 琉兵衛!」
翔太郎はマキシマムスロットのスイッチを押す。
溜められたジョーカーのエネルギーが右手に集約する。
「ライダーパンチッ!」
右拳を振り下ろす翔太郎を琉兵衛は左手で迎撃しようとする。
(あの右手の攻撃さえ捌けば奴に逆転の目は無い。)
しかし、そんな琉兵衛の思惑とは裏腹に振り下ろそうとした右手を止めると翔太郎は左手で額に当たっていた琉兵衛の右腕を掴む。
「!?」
「おりやぁぁ!」
翔太郎は琉兵衛の手を掴んだまま全身の体重を琉兵衛に乗せた。
それによりバランスを崩し隙を見せた胴体に翔太郎の右手の拳が炸裂した。
「ぐあっ!...ぬぉぉぉぉ!!」
琉兵衛は気合いで握られた腕を振りほどくと翔太郎と蹴飛ばした。
しかし、琉兵衛も打たれた胴体を抑えて踞る。
「くっ!..."身体の重心を崩す戦法"。
私の真似をしたかったのかね?
それにしては随分と不恰好だったが.....」
「うるせぇ...不恰好でも当たれば良いんだよ。」
翔太郎はこの一撃を与える為に徹底的に琉兵衛を観察した。
ボロボロに転がされても見続け隙を見つけ出したのだ。
そのお陰で"逆転に繋がる一撃"を与えられた。
「アンタは俺なんかよりもずっと頭が良い。
戦いながら冷静に戦略を建てられるおやっさんやフィリップみたいなタイプだ。
そんな奴に攻撃を当てるなら回避できないダメージを与えるしかねぇ....そうすることでやっと"本命の攻撃"が当てられる。」
翔太郎はそう言うとマキシマムスロットに挿していたジョーカーメモリを再度挿し直す。
「JOKER MAXIMUMDRIVE」
右足にエネルギーが集束しヨロヨロながらも翔太郎は立ち上がり構えた。
それを見た琉兵衛は笑う。
「ははっ....そんなボロボロな状態で当てられるのかね?」
「その為にアンタに拳を当てたんだ。」
「確かにあの一撃は凄まじかった。
並みのドーパントならメモリブレイクされただろう。
現にその攻撃を動いて回避することは不可能だ。
だが、"動かなくても避けられる術"なら持っている。」
「だろうな....ならその術ごと打ち破るそれだけだ!」
琉兵衛は翔太郎のその真っ直ぐな想いを受けて理解した。
(愚直な程、真っ直ぐな想い....そうか、私も恐れずに来人や文音に向き合っていれば良かったのか。
彼は真っ直ぐに向き合ったから私には出来なかった関係を来人と結べたのだな.....)
自分の中での答えに辿り着いた琉兵衛はこれまで歩んできた道を思い返す。
来人があの泉に落ちてから全てが始まった。
自分の恐れを見ないように生きてきた。
色んな者を傷付け利用しこの街を混乱に陥れた。
もう、
それはきっと家族全員そうだろう。
来人もそうだったかもしれない。
だが、彼がいた。
彼ならばきっと来人も正しい道へ戻してくれるだろう。
私では思い付かない愚直で真っ直ぐな方法で.....
(来人が彼のような人物と出会えて良かった。
これでもう、不安はない。)
どちらが勝ったとしても息子の人生は幸福だろう。
ならば、私は"私の道に決着"を着けるべきだ。
琉兵衛は手を広げて翔太郎に言う。
「良いだろうその挑発に乗ってやろう。
私も真っ正面から君を打ち破る。
どちらも想いが強いかハッキリさせようじゃないか。」
琉兵衛の言葉を受け翔太郎は気合いを入れる。
お互いが力を溜めて睨み合う。
口火を切ったのはほぼ同時だった。
「うぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「はぁぁぁぁぁ!!」
お互いに魂の乗った声で吠え合い翔太郎は走りながら勢い良く飛び上がると琉兵衛に向けて必殺の蹴りを放つ。
「ライダーキック!!」
翔太郎のキックが、琉兵衛に激突すると大きな爆発が起こり土煙が舞った。
暫くして土煙が収まると目の前には変身解除した琉兵衛が立っていた。
その後ろでは構えたまま動けないでいる翔太郎がいる。
すると、ガシャンと言う音共に琉兵衛の着けていたドライバーが破壊され地面に落ちた。
「はぁ..はぁ...はぁ...」
「認めよう.....左 翔太郎、いや仮面ライダー。
君はミュージアムの総帥である私を打ち倒した。
君の想いが私を上回ったのだ。
そんな君の元に来人がいることを嬉しく思うよ。」
「琉兵衛さん....アンタは」
「だが、どうやらまだ私は"罪を数え切れなていないらしい"。」
そう言って琉兵衛は手に取った"壊れていないテラーメモリ"を見せた。
「なっ!」
「では、私は行くとするよ。
今日はありがとう。
君と話せた事は私の人生の幸運の一つだった。」
そう言って琉兵衛笑うと身体を引きずるように歩き始める。
「待...て!?」
止めようとするがここで翔太郎の身体に限界が来たのか変身解除して地面に倒れてしまう。
身体を起こそうとしても言うことを効かない。
そんな翔太郎を見ないまま琉兵衛は話す。
「次に会う時はまた敵同士だ。
そして、最後にアドバイスだ。
"もう少しズルく"なりたまえ
あまり愚直過ぎては身体が持たんぞ?
ズルく生きるのも大人の特権だ。
それに溺れてもいけないが程好く騙すことも時には必要だ。
私の技を盗むみたいにね.....」
そう言って琉兵衛が見えなくなるまで翔太郎は彼に手を伸ばし続けたまま意識を失った。
傷付いて本邸へと帰って来た琉兵衛を見て若菜は動揺した。
「お父様!?どうしたのですその怪我は?」
「何でもないよ若菜。」
心配する若菜を落ち着けると琉兵衛は言った。
「若菜、ガイアインパクトの準備は終わっているのかね?」
「?えぇ、タワーの警護も万全です。
後は来人と無名をタワーに集めるだけですわ。」
「そうか.....若菜、"1週間"だ。
1週間後にガイアインパクトを行う。
部下達にもそう伝えるんだ。」
「わ....分かりましたわお父様。」
「良い子だ。頼んだよ若菜。」
琉兵衛の言葉に従う若菜はそのまま部屋を出ていった。
傷付いた身体を椅子に預ける。
「これが私なりの"罪の清算"だ。
風都の罪を一点に受けて君達を待とうじゃないか。
勝つのは私か君達か?
神と悪魔はどちらに微笑むのかな?
......後は」
決断を下した琉兵衛は壁にもたれ掛かりながら隣の書斎へと辿り着いた。
書斎に身体を預けようとしてバランスを崩し本棚にぶつかる。
その衝撃で本棚にあった写真立てが落ちてしまった。
ガシャンとガラスが割れる音がする。
そこにはかつて家族全員で撮った写真が飾られていた。
来人が泉に落ちる前に撮った思い出の写真。
触れようと手を伸ばすが琉兵衛は途中で止めてしまう。
(甘えるな....私は恐怖に負けたんだ。
そんな私が
琉兵衛は落ちた写真立てを無視して書斎に辿り着くと中から木製の箱を取り出した。
箱には"evil tail"と記されており中を開けるとそこには古びた一本のハケが入っていた。
そのハケには家族全員の名前が記されている。
"イーヴィルテイル"、私にとってこのハケは家族と残した最後の幸せの思い出であり、私を人として残してくれる最後のピースだった。
そこには私と文音、娘の冴子....そして幼かった若菜と来人の名前が記されている。
イーヴィルテイルを手に取った私の目から自然と涙が溢れてくる。
もう戻れない.....失ってしまってから気付いた愚かな私の手にはもうこれしか家族を想える物か残っていなかった。
私は机にあった卓上ライターを手に取ると分解し中のオイルを箱の中のイーヴィルテイルにかけた。
かけ終わり火種を探そうとポッケに触れるとそこから文音と会ったバーの紙マッチが出てきた。
馴れた仕草で火を着ける。
イーヴィルテイルの上にマッチを掲げると手が震え出した。
頭では納得しても心はそうではない。
そんな私の事を見透かすようにまた
(愚かだな....それを燃やして一体何になる?)
その言葉を聞いて私は笑う。
「何だ?私はてっきりこれを消すことを応援するものだと思っていたが?」
その言葉を聞いて幻影の顔が悲しく歪む。
(もう....戻れないぞ?)
「分かっている。
だからやるんだ。」
琉兵衛は紙マッチを落とした。
マッチの火がオイルに引火してイーヴィルテイルを燃やしていく。
(そうか.....決めてしまったんだな。)
「あぁ、例えその先が奈落だとしても私は止まらない。
全ての罪を背負い私は死ぬ。」
(全ての罪か.....まるで悪魔の様な所業だな。)
「悪魔....か....ふふっ!ははっ!あっはっはっはっは良いじゃないか!
それ位の代償で良いのなら悪魔にでもなってやろうじゃないか!
なぁ、ゴエティアよ!
こんな私を見て君は笑うかね?それとも怒るかね?
君との最後のゲームだ!
思いっきり楽しもうじゃないかふははははははははは!!」
琉兵衛は笑う。
"己"を"世界"を怒り悲しみ喜びが入り混じった感情を吐き出すように笑った。
落下した写真立ては琉兵衛を中心にガラスが割れて砕けていた。
まるでこれから先の未来を暗示するように........
外伝 続編の投稿に関して
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