『.....さん』
『......川さん』
『氷川さん!応答してください。』
突如、聞こえてきた声に氷川は目を覚ました。
「こ....こは?」
『貴方はあのドーパントか産み出したクイーンの攻撃を受けて気を失っていたんです。
起きてください!まだ戦闘は続いています。』
その言葉を受けて正気に戻った氷川は勢い良く立ち上がると周りを確認する。
「あの攻撃による負傷者はいるんですか!?」
『落ち着いてください氷川さん。
大丈夫です。
最新システムのお陰で死傷者はいません。』
「最新システム?」
『それよりも今はあのドーパントを止めないと.....クイーンは現在も活動を続けています。
ケルベロスは近くにありますか?』
北條の問いに氷川はケルベロスを探すと足元に転がっていた。
「ありました。」
『良かった....では聞いてください。
現状、戦闘活動できるのは氷川さんとG2ユニットだけです。
G3マイルドの部隊は吹き飛ばされた警官の救助にあたって貰っています。
この状況で最悪の選択はこの場で戦闘行為を行うことです。』
「被害者を出してしまうからですね。」
『はい、ですから今いる敵の戦力を彼等が安全になるまで誘導する必要があります。』
「でも、彼は大量のドーパントを召喚できるのでは?」
『えぇ、ですがだからと言って万能ではないみたいです。
氷川さん覚えていますか?
クイーンがあの衝撃波を放った時、召喚した彼は自分の体をビショップと呼ぶ個体のシールドで守っていたんです。
それで吹き飛ばされた直後、スキャンしてみれば先ほどまで出現していたポーンの個体はクイーンの衝撃波を受けて消滅していました。』
「つまり、クイーンの攻撃は味方すらも巻き込んでしまう訳ですか。」
『えぇ、だからこそ彼はクイーンを使いたがらなかったのでしょう。
折角、召喚した手駒を態々、減らす行為ですから.....
それをしたと言うことは彼自身、焦っているんです。』
「焦っている?.....早く我々を倒したいと思っていると言うことですか?」
『恐らくは.....ですからそれを利用します。
相手をクイーンごと、この場から遠ざけるんです。
ポーンは残るかもしれませんがそいつらはG3マイルドでも対処できます。
我々であのドーパントと戦うんです。』
「....分かりました。
それで作戦は?」
そう言うと氷川は北條から作戦を聞きそれを実行するのだった。
クイーンの衝撃波により警察の部隊を壊滅させた灯夜は片膝をついた。
「くっ....はぁはぁはぁ。」
チェスメモリは召喚する駒の強さによりエネルギーを消費する。
彼の持つ駒の中で二番目に強いクイーンの範囲攻撃を発動した灯夜の身体にもダメージが残っていた。
(若菜様のご助力でまだ余裕はあるがそれでもこれだけのダメージ.....だがこれで決着はついた。
いくらあの装備が優秀でも生きてはいないだろう。)
クイーンの衝撃波により起こった土煙が晴れていくとそこには驚くべき光景が映っていた。
空中で吹き飛びながらも制止している警官達が目に映ったからだ。
「なっ!?....これはどう言うことだ。」
驚きながらも飛んでいる警官を良く見るとそいつらは停止しているのではなくゆっくりとだが後方へと吹き飛んでいっていた。
そして、その周りには飛んでいる警官を救おうとするG3マイルドの集団が見える。
彼等の後ろには救われたであろう警官も見受けられた。
「くっ!.....ならばもう一度、クイーン、敵を....」
灯夜がクイーンに命令を下そうとすると此方に高速で突進してくるG2を見つけた。
「なっ!ビショップ、今すぐシールドを張れ!」
命令を受けたビショップか灯夜の前にシールドを張る事でそのシールドにG2は激突する。
だがぶつかった瞬間、G2の背部が展開し巨大なブースターが展開すると火を灯し更に加速していった。
その衝撃によりビショップのシールドにヒビが入る。
「ビショップのシールドを破る気か!
そうはさせるかっ!クイーン!あの車に最大出力の衝撃波を....」
そう命令を下そうとした瞬間、ビショップの展開したシールドを抜けるようにガードチェイサーに乗った氷川が現れる。
氷川は此方に腕を向けるとそこからアンカーが飛び出し灯夜の身体に巻き付く。
「貴方の相手は別の場所で行います!」
氷川はそう言うとそのまま、ガードチェイサーを走らせて灯夜ごとその場を後にした。
主を守ろうとビショップとクイーンも連れ去られる灯夜を追う。
その後ろをG2も追うのだった。
その光景をG2のカメラ越しに見ていた北條が告げる。
『取り敢えずは成功ですね。
G3マイルドの皆さんは引き続き吹き飛んでいる警官の救護を....."救援システム"は起動していますか制限時間がありますので』
北條の言葉にG3マイルドの部隊が了承を伝えると救援が再開される。
アンノウン以降、度重なる怪人被害に対応する為、G3システムを再設計した。
その為に警視総監は極秘裏に研究開発チームを設立したのだ。
そこで重要視されたのは守りであった。
氷川の戦いを見ていた小沢は被害をなるべく防ぐ方法を考えた結果、外部の力に頼ることにした。
そこで声をかけられた一人がこの時にはもうベルトさんに、なっていた"クリム・シュタインベルト"だ。
彼と取引を行いG3の安全システムに手を貸す代わりにロイミュードの事件解決に置いての協力を取り付けたのだ。
その結果、完成したのが救援システムと呼ばれる装置だ。
これは"ガードレーサー"に搭載されており中身は簡易的な重加速発生装置であり起動すると限定的な範囲だが重加速を発生させて対象の動きを遅くさせられる。
そして、G3マイルドには重加速の空間でもある程度動ける様に作られていた。
クイーンドーパントが衝撃波を撃つ瞬間、嫌な予感がした北條は救援システムを起動し五台のガートレーサーから重加速を発生させ吹き飛ぶ警官を助けたのだ。
(パトカーにはそのシステムは重加速の範囲に適応させてなかったので吹き飛んだ。)
だが、デメリットもありこのシステムは三分しか発動できず使用すると暫くの間、ガードレーサーは使用不能になる。
その為、G3マイルドは迫るタイムリミットの中、吹き飛んでいる警察官を助けることに尽力していた。
「よっと!....これでほぼ回収は済んだな。」
警官を助けた刃野が周りを確認しながら言う。
助けられた警官は安全なところに退避しており動ける者は市民に被害が無いか確認にいっていた。
そうしていると真倉が此方を見つけて走ってきた。
「刃野さん!無事だったんですね。」
「おぅ、お前も無事みたいだな。」
「えぇ、でも驚きましたよ。
あの衝撃波を食らった瞬間、"身体が勝手に受け身を取ったんですから"....これが説明された"生命保護AI"の力って事ですか?」
「そうだろうな。
現にスーツを着ている連中は皆、体した怪我をしていない。
全く、最近のハイテク機械は凄いよなぁ。」
「そっすねぇ.....でも署長の援護に行かなくて本当に良いんですか?」
「真倉....気持ちは分かるが諦めろ。
それにこのスーツについて説明してくれた尾室さんも言ってただろう?」
「"G3マイルド"と"G3X"はコンセプトが違うんだってよ....」
研究開発チームがG3ユニットを再開発する際、目的の区分化を重視していた。
G3マイルドに求めたのは"安全性"と"敵の捕縛や逃走の阻止"....つまりは守りを重視しており逆にG3Xには"敵の撃滅"や"戦況の好転"を重視した改良が施された。
故にG3マイルドにはクリムのシステムが使われたのだ。
では、G3Xにはどんな改良が施されたのか?
それは"AI"である。
アンノウンと戦っていた時のG3Xは完璧過ぎるAIが反って装着者の負担になった結果、AIの思考レベルを落とすチップを搭載した。
再開発するに辺り小沢は人工知能開発に優れた企業である"飛電インテリジェンス"の社長である
余談ではあるが小沢の恩師であり彼女にAIの思考レベルを落とすチップを渡した
そんな彼と小沢が二人で出した結論はAIの行動プログラムの改良だった。
AIの思考レベルを下げる原因となったのは小沢の開発したAIが完璧すぎて装着者がAIのパーツとして動くようになってしまったからだ。
それを防ぐにはパーツとしてではなく装着者として動かせる人間による戦闘データが必要だった。
それを使い、プログラムを開発すれば今度こそ誰でも使えるAIに進化できると考えたのだ。
そして、小沢がその装着者を呼び出し事情を説明するとその人物は笑いながら快諾した。
「それで誰かの命が守られるならお安いご用ですよ。」
その人物の名は
津上の協力により完成したシステムには小沢のたっての希望により装着者であるその男が名前をつけた。
そうして完成したシステムの名前は"アギトシステム"....
そのシステムを簡易型にしたのがG3マイルドの"生命保護AI"でありG3Xにはそのオリジナルが搭載されていた。
システムが完成した後、津上は小沢に言った。
「もし、これが氷川さんの手に届くのなら彼の命を守ってくれると良いなぁ。
あの人、不器用だけど強くて優しい人ですから......」
その願いが叶ったのか今、氷川が津上の協力により完成したアギトシステムが搭載されたG3Xを使っていた。
津上の願い通り氷川の命を守るために.....
氷川は"GA-04アンタレス"により捕縛した灯夜を目的のポイントまで連れてくるとワイヤーのロックを解除したそれにより吹き飛ばされた灯夜の周りを守るようにビショップとクイーンが陣取った。
「ここはもう使われなくなった工場の跡地です。
ここでなら貴方と戦っても風都に被害は与えない。」
「成る程、それが目的か.....ならばここでお前を殺してやる。
ナイト!"ルーク"!前へ」
灯夜の声に従ってナイトドーパントとルークドーパントが現れた。
灯夜の命令より彼を囲う様にナイトが三体、ルークが一体現れる。
「また、新たなドーパントか。」
そう言っていると工場の壁を突き破ってG2が現れる。
『氷川さん風都の方は問題ありません。
我々はこちらの対処に集中して良さそうです。』
「分かりました。
相手も私達を殺すために本気のようです。」
『その様ですね。
此方は二人に対して相手は7人.....分が悪い。
氷川さん、作戦を説明します。
私はG2を使ってクイーンの相手を行います。
この中で最も戦力が強くて範囲攻撃も持っている野放しにするのは危険です。
氷川さんには残りの者との戦いをお願いしたい。
ですが、このままでは氷川さんが圧倒的に不利です。
ですから、氷川さんにはG3Xに搭載された新たなAIを使って貰いたいんです。』
AIと言われた氷川の頭に
『氷川さんにとってAIにトラウマがあるのは分かっています。
でも安心してください。
今のG3Xに搭載されているAIは完全に別物です。
小沢さんが新たに改良した物で意識を失う心配もありません。
私もこのシステムは自信を持って安全だと言えます。』
「.....分かりました。
北條さんを....新たなG3Xを信用します。」
『ありがとう....AIのシステムを起動します。』
北條がそう言うとG3XのAIの制限を解除する。
すると、氷川の画面にアギトのマークと"アギトシステム"の名が表示される。
「アギト.....まさか!」
氷川はこのシステムに関わった人物が誰だか分かる。
(津上さん....ありがとうございます。)
アギトシステムが起動した状態で氷川は身体を動かす。
あの時の様に意識を失うこともない。
身体の自由もきいている。
(良し....先ずは武器を取ろう。)
氷川がそう考えるとアギトシステムは氷川の思考を解析し最適な武器を選び出すと身体が動き武器の装備を行い始める。
(頭で考えただけなのに身体がそれを完璧に実行してる。
凄い.....これがアギトシステムの力なのか。)
"スコーピオン"、"ユニコーン"を太股にマウントすると左手に大型チェーンソーの"GS-03 デストロイヤー"を装備すると右手に折り畳んだケルベロスを持ちガードチェイサーから降りると敵に向かってゆっくりと歩いていく。
灯夜の前まで歩いていくとケルベロスを地面に置いた。
(空気が変わった?.....一体何をしたんだ。)
灯夜が氷川の変化に疑問を持ちつつもルークドーパントに命令を下す。
それを受けたルークドーパントが氷川に腕を向けるがその瞬間、スコーピオンを引き抜き向けた腕を撃ち抜いた。
撃ち抜かれ腕の向きがズレた瞬間、その腕から何かが発射され地面に着弾した。
「バカな!?どうして攻撃が分かった?
ルークを見るのは始めての筈だ。」
動揺する灯夜の隙を見逃さず氷川は灯夜に向かって走っていく。
それを防ぐようにルークドーパントの三体が氷川に向かって走っていく。
氷川は突進してくる三体のドーパントに牽制でスコーピオンを撃ちつつ放たれる槍の突撃を大型チェーンソーのデスロイヤーを使って側面に当てていなしていく。
いなされたナイトドーパントは再突撃しようと円を描く様に旋回してくるが氷川は顔を向けずにスコーピオンを発砲する。
その弾丸は的確にナイトドーパントの片足に連続で着弾しそれによってバランスを崩したナイトドーパントに振り向きながらデストロイヤーで胸を突き刺す。
デストロイヤーを抜き去るとそのままデスロイヤーを背後の二体目のナイトに投げ付けた。
その動きについていけなかった二体目のナイトに突き刺さると氷川はスコーピオンの弾丸をデスロイヤーに当てて爆発させる。
爆破により刺さっていたデスロイヤーの歯が胸に深々と刺さり二体目も機能を停止する。
「一瞬で二体のナイトドーパントを倒すだと!?
やはり、何かがおかしい。
クイーン、奴を殺せ!」
灯夜がそう命令を下しクイーンが従おうとするが真横から放たれた衝撃にクイーンは吹き飛ばされる。
そこを見ると車から上半身だけ人型の機械に変形したG2の砲から煙が上がっていた。
『"対戦車用のレールガン"ならあのドーパントにも効果があるみたいですね。
これは良いデータが取れました。
まだ武器は山程あります。
今後のためにも全て使わせて貰いますよ。』
北條はそう言うとG2の武器を全て展開しクイーンへ攻撃をし始める。
「あの威力は危険だな。
....クイーン、あの車を破壊しろ。
こちらはナイト、ルーク、ビショップで殺る。」
灯夜の命令に納得したクイーンがG2に接近する。
口を開いて衝撃波を放ちながらG2とその場を離れていった。
残った氷川に灯夜は最大限の注意を放つ。
(ナイト二体を簡単に倒しルークの攻撃を防いだ。
連携して殺すべきだな。)
灯夜は指示を出すとルークとナイトが氷川を挟む様に立ち塞がる。
ルークドーパントは全身から実弾を発射することが出来、その強靭な肉体は生半可な攻撃は通さない。
(ルークの弾丸で牽制しつつ隙をついたナイトの突撃で仕留める。)
そう考えていると氷川のスコーピオンが灯夜に向かって放たれたがその弾丸はビショップのエネルギーシールドにより防がれてしまう。
「いきなり、私を取ることはルール違反だろう?
だが、ビショップのシールドは無敵だ。
そんな弾丸では傷ひとつ付かない。」
そう言うと灯夜の周りを半円状のエネルギーで覆った。
それを見た氷川は思う。
(あのシールドを突き破るにはどうすれば良い?)
その思考を受けてアギトシステムは最適解を分析し検討していく。
そして、一つの答えを氷川に提示した。
(そんな事が.....私にも出来るのか?
いや、やってみせるこの風都を守るためにも)
決心を固めた氷川はスコーピオンを握り直す。
津上から託された力と共に......
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