もう一人の悪魔   作:多趣味の男

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「信じてくださいお願いします。」

若かりし頃の灯夜が警察に頭を下げる。
しかし、下げられた警官は笑うだけだった。

「あれは不幸な事故だよ。
事件性はない....それに品行方正な貴方のお父様が殺人なんてするわけ無いじゃないか。
君も大変だとは思うが父親を悪く言うのは感心しないな。」

そう言って灯夜の話に取り合おうとしなかった。
きっかけは灯夜と母親が巻き込まれた事故。
夜に起きた交通事故で動けなくなった車に火が上がり当時の父の秘書が灯夜を助けてくれたが母は間に合わず燃え続ける車内の中で生きたまま焼け死んだ。

灯夜にはまだ焼けていく母親の声と音と光景が離れなかった。
そして、灯夜には疑問があった。
何故、秘書は灯夜だけを助けたのか?
まるで示し合わせたかのように灯夜を救出してから火の勢いが強くなった。

何かがおかしいと考えた灯夜は事件について調べた結果、これが計画的な殺人だと分かったのだ。
犯行を指示したのは秘書であり車がわざと事故を起こすように細工していた。
そして、母が座る席の下に可燃物を仕込み灯夜が座る場所には非可燃の材質で作られていた。

動機は秘書が父に好意を寄せており母が死ねば後釜に自分がなれると思っていたからだ。
それを知った灯夜はその事実を父と警察に説明した。

その時の刑事は灯夜に言った。
「お任せください。
この事件を必ず解決して見せます。」と .....
父も珍しくその時だけは灯夜を抱き締めて
「辛かったな....良く真実を見つけてくれた。」
と誉めてくれた。

母や灯夜に厳しい人だったがそれでもちゃんと親子の愛があるとその時は思っていたのだ。

事件が発覚して秘書が自殺する結末を見るまでは.....
秘書はホテルで首を吊っていた。
机には遺書が置かれており"母を殺したのは自分でありその理由は父と結ばれる為に母と子が邪魔だった"と書かれていた。

それを見た灯夜は疑問が起こった。
何故、灯夜も邪魔だと思っていたのなら助けたのだろう?
遺書の通りなら灯夜も巻き込んで殺せば良かった筈なのだから......

そう考えているとマスコミから一つの映像がリークされた。
それは父と警察に灯夜が事件について話している映像だった。
それが流れたことで灯夜は母親の為に事件の真相を追った英雄でありそんな自分を抱き締め誉めた父は息子を愛する有望な政治家のイメージを手に入れたのだ。

灯夜は拭えぬ違和感の中、自分が英雄視されるのが不快となって更に事件を調べあげた。
そして、灯夜は見つけたのだ事件の真実を.....

それは家にあった秘書の部屋に隠されていたレコーダーだった。
灯夜はそれを聞いた。

事件の本当の黒幕は父だった。
雇われていた秘書の目的は"母と灯夜の監視"、その為に部屋に監視カメラとレコーダーを設置していたのだ。
父が不正をしているのを知った母は父に自首を促した。

だから、父は秘書を誘惑し母を殺せば妻にすると約束したのだ。
そして、事件が起こると今度は秘書を切り捨てにかかった。
そのタイミングで灯夜が事件を調べているのを知り利用しようと決めたのだ。

自分の名声を高める為わざと証拠を灯夜に渡し解決のために動かした。
そして、その光景を録画して最も良いタイミングでマスコミにリークしたのだ。

つまり、灯夜と母親、そして秘書は父.....いや"天十郎の名声"の為に犠牲となった。


それを知った灯夜は警察に全ての事情をレコーダーと共に話したが全て揉み消されてしまった。
この時の灯夜には分からなかったが最初から天十郎は警察ともグルだったのだ。

それ以降、灯夜は全てを信用しなくなった。
天十郎は勿論の事、警察も......

所詮は金と権力に靡くのが警察と言う国家権力だと理解したからだ。
そして、灯夜は決意した。
母を殺した天十郎に復讐する。

その為にこの手を汚そうと.......


第二百十六話 Gの意味/氷川の信念

自分を見つめている氷川を見て灯夜は苛立つ。

市民を守る為に悪と戦う。

 

若い頃、求めた警察がそこにはいたからだ。

(僕が求めた時は現れなかったのに....僕が悪になれば出てくるのか....そんなの認められるかぁ!!)

 

怒りのまま灯夜はルークとナイトに指示を与える。

「目の前の(氷川)を確実に殺せ!」

ルークとナイトはその言葉に従い動き始める。

 

ルークは右手をマシンガン左手をバズーカに変えると氷川に向けてマシンガンを放つ。

氷川はそれをローリングしなから回避するとスコーピオンで狙うが側面から突撃してきたナイトの槍をかわす為、撃つのを止めた。

 

氷川のその攻防の中で灯夜に向けてスコーピオンを発砲するが弾はビショップのシールドに防がれてしまう。

 

そして突撃してくるナイトを攻撃を飛んで回避するがそこにルークが放ったバズーカの弾が迫る。

(まずい!)

命の危険を関知したアギトシステムはこのバズーカが回避不能だと分かるとスコーピオンでバズーカの弾を撃ち抜いた。

 

氷川の身体に当たる前に爆発したがその威力は高く、氷川は吹き飛ばされてしまう。

「うぐっ!」

『正面装甲と腕部装甲に被弾。

装甲耐久値20%ダウン.....!?氷川さん避けてください次の攻撃が来ます!』

 

北條の声で気を持ち直した氷川は敵を見つめる。

すると、ルークドーパントが氷川に照準を合わせたガトリングを放ってきた。

吹き飛ばされた場所には遮蔽物は無い。

どうすれば良いか考えているとルークドーパントはいきなり照準を変えて発砲した。

その弾はルークに向かって放たれたミサイルに着弾に爆発する。

 

その隙に氷川は天井に向けてスコーピオンを放ち崩落させると敵から視線を切った。

隠れながら北條に連絡を取る。

「北條さん」

『氷川さん...良かった無事でしたか。』

 

「はい、G2からの援護のお陰です。

ありがとうございます。」

 

 

北條は氷川へのサポートを行いながらG2を使い遠隔操作でクイーンと戦闘を繰り広げていた。

そして氷川のピンチを理解した北條は彼を助ける為、G2に搭載されたミサイルを使った。

 

しかし、それが明確な隙となってしまったのだ。

ミサイルを放った直後、クイーンの衝撃波がG2に直撃した。

『クイーンからの一撃でG2のシステムがダウンしてしまいました。

ダメージは与えましたがクイーンが合流してしまったら勝ち目はありません。

アギトシステムを使って戦線から離脱してください。』

 

しかし、氷川は北條の意見を却下する。

「それは出来ません。

ここで逃げたら彼は市民や"警官"を襲う危険があります。」

『!?それはどう言うことですか?』

 

氷川は自分が調べた真実を話した。

「照井くんから雨ヶ崎家について報告を受けてから個人でも調べていたんです。

そうしたらあの家の闇が見えてきました。

雨ヶ崎天十郎は妻である"雨ヶ崎 おと"の殺害に協力した疑いがあります。」

『自分の妻を殺したんですか!?』

 

「えぇ、そして息子である雨ヶ崎 灯夜もその事件に巻き込まれ天十郎のキャリアの為に利用されたそうです。」

『事情は分かりましたがそれで何故、雨ヶ崎灯夜は警察を恨むんですか?』

 

北條の質問に氷川は苦々しく答える。

「天十郎の事件の隠蔽に協力していたのが"風都署の前署長"だったからです。」

『!?』

「本人からも確認を取りました。

警察が殺人の隠蔽に協力したんです。」

『そんな....バカな....』

 

余談だがその際、前署長の尋問には照井と氷川が加わっており余りに自己中心的な証言から照井が本気で切れて前署長の顔面を思いっきり殴り倒したが、氷川達は"偶然、他所を向いており"問題にならなかった。

 

「灯夜が憎んでいるのは父と警察です。

だからこそ、私は逃げては行けないと思っています。

彼を救う為にも.....」

『救う?』

 

「はい、幼い頃の彼が出会いたかった本当の警察官の姿を見せるためにも逃げません。

彼のメモリを破壊して逮捕します。」

その覚悟を聞いた北條は深呼吸すると氷川に伝える。

『本当ならば貴方を止めるべきなのでしょうが。

私も警察官の端くれです。

汚点を汚点のままにしておきたくはない。

分かりました。

ならば、最短の解決策を使いましょう。』

 

「最短ですか?」

『はい、召喚者の排除です。

本当なら使役しているドーパントを全員排除してから行いたかったですが、そんな時間もありません。

勝利への最短距離を走り抜けます。

良いですか氷川さん目下の問題はビショップドーパントが発生させるエネルギーフィールドです。

周囲を囲っているあの防壁を何とかしない限り、攻撃は通りません。

しかも、そのシールドも強力です。

ケルベロスの掃射では破壊できないでしょう。』

 

「それなら、アギトシステムで提示された作戦を使おうと思っています。」

そう言うと氷川は内容を話した。

それを聞いた北條は絶句する。

 

『全く、なんて無茶な作戦を提案するんですかこのAIは.....作った"人間の顔"(ほぼ小沢)が見てみたい。

ですが、それしか可能性が無いのも事実ですね。

ではその作戦を主軸にして話を進めます。

その作戦を実行するにはルークとナイトドーパントが邪魔です。

G2の与えたダメージのお陰でクイーンは直ぐには合流できないでしょう。

合流する前にルークとナイトを倒してください。』

「分かりました。

無茶を言ってすみません北條さん。」

 

『ふっ、気にしないでください。

"元上司"(小沢)のお陰で馴れてます.....ご武運を』

そう言って北條が氷川への連絡を切ると御室に顔を向けた。

「尾室さん。

G2の再起動をします手伝ってください。」

 

「うえっ!ちょっと北條さんいくらなんでも無茶ですよ。

俺、G3マイルドの指示やってるんですよ!?」

 

北條がG2の操縦や氷川のサポートをしていた間、尾室はただ心の中で祈っていただけではない。

北條からG3マイルドの指揮と復旧の仕事を請け負っていたのだ。

「尾室さんは私が指示した内容を伝えているだけじゃないですか。

それに氷川さんが戦っている以上、我々も最善を尽くすべきです。」

 

「でも、G2はさっきの一撃でデータが完全にクラッシュしてるんですよ。

どうやって、復旧させるつもりなんですか。」

「完全な復旧を目指してはいません。

走るだけで良いんです。

G2には大量の武装が積まれていて重量がある。

動くだけでも使い道はあります。」

 

「えぇ!?でもそのデータだってクラッシュして....」

「貴方は何の為に小沢さんの元にいたんですか?

G2の再開発で構成プログラムについて説明を受けたでしょう。

ならば、"移動プログラムだけ"作り直せば良いだけです。」

 

小沢は北條をGユニットに招き入れることを決めた段階で北條と尾室にGユニットについて基礎から叩き込まれた。

それこそ、AIのプログラミングについても教えられた。

 

北條は警視庁きってのエリートであり頭脳明晰だった。

そんな人物が警視庁の超エリートであり怪物クラスの天才から指南を受ければどうなるか?

 

答えは小沢には劣るもののプログラムは超一流であり作戦指揮もそつなくこなす小沢とは別ベクトルの天才が誕生するのは当たり前と言うものだろう。

(なお、尾室は元から清々しく凡人だったが小沢と北條の指導のお陰で優秀なエリートと言えるレベルにはなれた。)

 

そんな二人がG2のプログラムを再構成していく。

大元は北條が行い御室はそのバックアップを行った。

 

氷川の覚悟と刑事としてのプライドをかけた北條のプログラミングは恐ろしく速く正確でありそれについていく尾室は心の中で悲鳴を上げながらもこなしていくのだった。

 

 

話を終えた氷川はスコーピオンのリロードが完了するとと前に氷川は出た。

(クイーンが此方に合流する前に決着を付ける。)

ルークに向かっていく氷川にルークは銃口を向けるがスコーピオンの精密射撃により発射体制が整う前に潰される。

 

拳の届く距離まで近付けた氷川はアギトシステムにより洗練された徒手空拳でルークを圧倒する。

カウンター気味に拳を当てて怯んだところにゼロ距離スコーピオンを当てていく。

 

しかし、その戦いをナイトが傍観することはなく戦っている氷川の背後から槍をもって突進した。

その攻撃を氷川はナイトの四つ足の下に潜り込むことで回避する。

 

ナイトは加速した身体をルークにぶつけることで速度を落とすがそのタイミングで氷川の放ったスコーピオンにより槍を落としてしまう。

 

氷川は槍を落とすと左手に小型ナイフのユニコーンを握るとまた近距離戦を仕掛ける。

灯夜はその状況を苦々しく見ていた。

(くっ!ルークの長所である射撃を近付くことで潰してナイトから槍を奪うことで自分の得意の距離にした。

これならナイトは四足状態から二足に戻した方が良いな。)

 

ナイトの利点は四足状態による槍での突進攻撃....威力と速さに重点を置いており当たればどんな敵も葬れる威力を持っていた。

それにルークの射撃が加わればこれまでの相手は動くことも出来ずに仕留められていた。

 

しかし、氷川はアギトシステムによりナイトの攻撃を紙一重で回避しながらルークに近付きこれまでの作戦を破って見せたのだ。

 

だが、そんな成果を出した氷川も無傷と言うわけにはいかなかった。

度重なるドーパントとの衝突やダメージは確実にG3Xの装甲や関節に悲鳴を上げさせていた。

その事は灯夜も気付いていた。

(最初よりも動きが若干悪くなってきている。

あの強化スーツは所詮、人類の技術だけで作られた道具だ。

何れ、限界が来る。

クイーンの攻撃であの戦車もどき(G2)は動けなくなっている。

無論、ダメージは食らったが動けない程じゃない。

ルークとナイトで戦いを長引かせてクイーンの再大出力の衝撃波を当てればあのスーツはひとたまりも無いだろう......)

 

そう考えているとビショップのシールドが発動する。

それに気付いた灯夜が目を向けると氷川が少ない隙を利用してスコーピオンで発砲してきたのだ。

「無駄だ。

ビショップのシールドは私への攻撃に反応して自動展開する様に命じている。

そんな弾丸、いくらか当たっても私の元には届かない。」

 

だが、それでも氷川はスコーピオンで灯夜に弾丸を撃ち続けた。

「無駄だと言っているのが分からないのか?

そんなに此方に気を割いて勝てる程、ルークとナイトは甘くない!」

 

灯夜の言うとおりで灯夜に銃を発砲した結果、出来た隙をルークが見逃すことはなく生成した銃から放たれた弾丸が氷川の装甲に傷を付け背後からナイトが攻撃を仕掛けてきた。

 

しかし、ここで氷川は背後にいたナイトの攻撃を回避し掴みかかるとそのままルークのいる方へ押し出した。

ルークはナイトごと氷川を撃ち抜こうと銃を打ち続ける。

氷川はナイトの身体を盾にすることでダメージを最低限に抑えるとナイトの腕に関節技を決めながら身体の回転を加えると思いっきり投げ飛ばした。

 

ルークに向かって飛んでいくナイトは激突するがそれでも飛ばされた力が強くルークごと吹き飛ばされてしまう。

そして、二人が飛んだ方向は灯夜の目の前であった。

起き上がろうとする二体のドーパントに氷川は地面に置いたケルベロスに飛び付くと直ぐに銃へと変形させる。

 

そして、敵の態勢が整う前に発砲した。

ケルベロスから大量の薬莢が飛び出ながら二体のドーパントとの肉体に弾丸が突き刺さった結果、ダメージに耐えられなくなったルークとナイトドーパントは灯夜の前で爆発を起こすのだった。

 

爆発の煙が晴れるとビショップのシールドに守られて無傷の灯夜が現れた。

「まさか、ルークとナイトを倒すとは....正直、警察を侮っていましたよ。

貴殿方は所詮、仮面ライダーが現れるまでの前座....それ以上の価値は無いと思っていたのですが訂正します。

貴方は強かった。

並みのドーパントなら殺られていたでしょう。

しかし、それでも私の勝ちは揺るがない。」

 

灯夜がそう言う理由は彼にとって切り札であるクイーンドーパントが工場に戻ったのを見たからだ。

「貴方に敬意を評して再高出力で消し飛ばして上げます。

クイーンその力で敵を穿て!」

灯夜の命令を受けたクイーンは口を開くとエネルギーを充電する。

 

氷川はケルベロスを肩に担ぐと左手でスコーピオンを構えると撃ち続けた。

しかし、その弾はビショップのシールドに阻まれる。

「言っただろう何度やっても.....」

灯夜がそう言おうとするとシールドの一部にヒビが入る。

 

「何っ!?一体どうして?」

驚いた灯夜がヒビの入った部分を見つめるとそこには氷川が持っていた小型ナイフのユニコーンが突き刺さっており、氷川の放ったスコーピオンの弾丸がユニコーンに当たりその衝撃で少しずつではあるがナイフの刃が進んでいた。

 

それを見て氷川の作戦を灯夜は理解した。

「まさか!?ビショップのシールドに闇雲に撃っていたのはこのナイフを刺す為の準備だったのか。」

 

アギトシステムが用意した作戦はビショップドーパントのシールドを破壊するものだった。

その為にはビショップドーパントの作り出すシールドを調査する必要があった。

だからこそ、スコーピオンを撃ち込みシールドの強度を調べ上げナイフが刺さる位置を特定した。

そして、ルークとナイトを投げ飛ばした瞬間、二体のドーパントで身体を隠しながらナイフを投てきしシールドへ突き刺すとケルベロスの掃射で爆発したドーパントの衝撃を利用してナイフをシールドへ差し込んだのだ。

 

しかし、これだけの策を使ってもビショップのシールドを破壊することは出来なかった。

だが、このままでは破壊される危険があるので灯夜は残しておいた力をクイーンドーパントへ注ぎ込む。

 

そのお陰でエネルギーを溜めきったクイーンは口を開けるとその砲口を氷川へ向ける。

 

しかし、これもまた"アギトシステムが想定していた未来"だった。

衝撃波を発射する直前、クイーンドーパントへ遠隔操作で動いていたガードチェイサーが激突した。

その影響で態勢を崩したクイーンドーパントから放たれた衝撃波はナイフが刺さったビショップのシールドを巻き込むように放たれた。

 

衝撃波は氷川に直撃すると全身の装甲が悲鳴を上げながら地面を削るように転がる。

そして、衝撃波によりシールドに刺さっていたナイフは貫通すると灯夜の腹部を貫通しそのままビショップドーパントの胴体を貫くと爆発を起こした。

 

その影響で灯夜も地面に転がる。

ダメージにより命令を受け付けなくなったクイーンは糸を切られた人形の様に動かなくなってしまった。

 

 

北條との通信が無くなりアキドシステムの人工音声が現在の氷川の状況を告げる。

装甲耐久値....15%を切りました

これ以上の戦闘継続は装着者の生命維持を脅かします

G3Xの解除....及び戦線の離脱を提案します

 

しかし、氷川はそれを無視して立ち上がった。

衝撃波の影響でG3Xのヘルメットが、破損したのか視界が安定しない。

 

氷川はヘルメットを外すと周りを確認した。

(雨ヶ崎 灯夜は....無事なのか?)

そうして探していると腹部を抑えながら此方に目を向けるチェスドーパント(灯夜)がいた。

 

「良かった生きていたんですね。」

「それは...どういう意味ですか?」

 

氷川の言ったことに疑問を覚えた灯夜が尋ねる。

「貴方には生きて罪を償う必要があります。

......そして、"貴方が受けてしまった罪"も晴らさないと行けません。

灯夜さん.....貴方の母親の事件で警察が行った不正行為、改めて謝罪いたします。

申し訳ありません。

その一件で貴方が犯罪者へと堕ちてしまったのは紛れもなく警察の責任です。」

 

頭を下げながら言った氷川の言葉に灯夜は驚く。

「何故だ.....私はお前達の敵なんだぞ?

今は人類に仇なす敵に何故、頭を下げるんだ?」

 

「それに関しては許すつもりはありません。

ですが、それよりも我々、警察が貴方の正義を利用し貴方を悪の道へ進ませてしまったことも正さなければいけない真実です。

でなければ貴方を捕らえる資格が我々に無くなってしまう。

例えそれが警察の汚点になっても私は.....この罪から目を背ける気はありません。

だから、貴方には雨ヶ崎天十郎が起こした殺人教唆の証言者になって欲しい。

お願いします....もう一度、我々警察を信じてくれませんか?」

 

愚直な程、真っ直ぐであり裏の無い言葉を受けて灯夜は笑ってしまう。

「ふふっ、あはは!まさか、私が犯罪者になってから本当に求めた警察官に出会えるなんて.....皮肉だな。」

 

その言葉を受けて氷川はきょとんとしている。

(もしも、あの時、彼と会って事件について話すことが出来ていたのなら.....私の未来は変わっていたのかな?)

そう思いながら灯夜が氷川に手を差し出そうとした瞬間、天十郎の声が響いた。

 

『あぁ、やはりお前は母親とにて役立たずだな灯夜』

「「!?」」

 

その言葉に驚いて目を向けるとそこには先程まで動かなくなっていたクイーンドーパントが二人に向けて話していた。

それを見て灯夜が驚く。

 

「バカなっ!?召喚したドーパントの支配権は私にある筈.....」

『タワーに蓄積されたエネルギーを使えばこの程度は造作もない。

お前が私に復讐しようとしてるのを分かっていたのに何の対策もしない訳が無いだろう?

まぁ良い。

お前に用は無い....用があるのは貴方だ氷川署長。』

 

「私に何の用が?」

『そんなに警戒しないでください。

用件は単純です。

私達の協力者になりませんか?

地位、名誉、金....全てを用意できますよ。

貴方の望む全てを差し上げましょう。

私に従えばどんな事も叶います。

どうですか?』

「それは....買収を認めると言うことですね。

貴方が風都署で起こした不正行為については調べがついています。

私達、警察は貴方を絶対に捕まえます。」

 

その目を見た天十郎は溜め息をつく。

『はぁ....やはり駄目ですか。

並ば仕方がないここで愚息ごと消えて貰いましょう。』

 

その瞬間、氷川と灯夜の身体が地面に押し付けられた。

「う.....身体が...」

「く....そ.....」

『ここからのシナリオはこうです。

二人は死闘の末、灯夜が残したクイーンドーパントの"衝撃波の自爆"により工場ごと消滅してしまう。

その事に悲しみを覚えた私は今一度、世界の平和の為に涙を流しながら哀悼のスピーチを行う。

少しわざとらしいですが...それぐらいの方が民衆は好みますからね。

ではさようなら氷川署長....それに灯夜、最後まで私の道具としての働きご苦労だった。

 

もう、お前は用済みだ。

新たな風都と人類の進化の礎になることを喜びながら死んでいけ。』

 

そう言い終わるとクイーンドーパントが全身にエネルギーを蓄えていきながら二人に近付いていく。

 

そして、爆発を起こし工場の建物は破壊されてしまうのだった。




Another side

クイーンドーパントの操作を終えて目を開けた天十郎は今いるタワーに意識を向ける。

タワーの頂上に向けて登ってくる2人を知覚すると舌打ちをする。

「ちっ!予想よりもしぶとい様ですね。
やはり私が直接、相手をしなければいけないようだ。」

漸く手に入れたこの力を手放してなるものか.....

天十郎は立ち上がると侵入者を狩る為に動き出す。

メインである風都第二タワーに目を向ける。

内部から大量のエネルギーを感じる。
戦闘が行われているのは明白だった。
相手は仮面ライダーと若菜様だろう。

彼方も戦いを始めたのなら此方も始末をつけなければな......

天十郎はタワーからエネルギーを肉体に供給する。
メモリとの適合率も上がりタワーメモリの力をより強く引き出せる様になっているのを感じ全能感に包まれた。

「さぁ、上がってこい。
王が直々にネズミ(侵入者)を始末してやろう。」

天十郎はそう言い笑うと登ってくる敵が来るのを待つのであった。

外伝 続編の投稿に関して

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