克己の危機を感じて飛び出したミーナを探しに行く為だ。
街には人が一人もいない。
風都署が厳戒態勢を敷き市民を一時的にこの街から隔離した為だ。
残っているのは疎開が間に合わなかった市民と警察官そしてミュージアムと仮面ライダーのメンバーだけ.....
車椅子を走らせていると地面にしゃがみこむミーナを見つけた。
「ミーナ!!」
マリアは彼女に近付く。
彼女の手には克己が着ていたNEVERのジャケットが握られていた。
「克己は?」
マリアの問いにミーナは涙を浮かべた目で首を横に降った。
「....そう。
ミーナ、悲しいのは分かるわ。
でも、貴女が死んではダメ。
お腹の子の為にも.....」
そうしてマリアは泣いているミーナを立たせるとセーフハウスへと戻るのだった。
時同じく氷川はボロボロな装甲を纏いながらも瓦礫に埋もれている灯夜を助けようとしていた。
「灯夜さん!しっかり....死んではダメです!」
何故、灯夜と氷川が無事だったのか?
それは灯夜がチェスメモリの最後の力を使ったからだ。
爆発しようとするクイーンドーパントを見た氷川はどうにかしようとあがいていた。
だが、先程の戦闘でアギトシステムは愚かG3Xも戦闘続行が不可能な程のダメージを受けていたのだ。
もう駄目だ。
そう感じた瞬間、灯夜が立ち上がった。
「灯夜さん...」
「氷川さんでしたよね?
貴方は
「
その言葉を発した灯夜の身体か"ビショップのエネルギーシールド"が現れると氷川と爆発しそうなクイーンドーパントを覆った。
そして、空中に"ナイトの槍"を浮かべると"ルークのミサイル"を取り付けて放つ。
その槍はシールドごとクイーンドーパントに当たるとその推進力でクイーンを遠くへ弾き飛ばした。
そして、爆発の瞬間に灯夜は"クイーンの衝撃波"を自分も放ち氷川の身を守りきったのだ。
チェスメモリの最後の駒である"キングの能力"....それは全ての駒の力を使いこなせる事だった。
この能力により灯夜は爆発から氷川を守ることが出来た。
しかし彼を守ることを優先した為、自分の身体へのダメージはもろに受けてしまい灯夜はメモリブレイクしてしまった。
そのまま、崩壊する工場の下敷きになり氷川は彼を助ける為に倒壊した工場の瓦礫を退かしていたのだ。
何とか灯夜の右手と顔が見える隙間が空くと氷川は手を伸ばす。
「灯夜さん!捕まってください!」
しかし、灯夜は手を伸ばさない。
「氷...川..さん?生きてて...良かった。
早く...逃げて」
「ダメです!貴方も一緒に」
「"身体が...動かない"ん...です。」
「!?」
チェスメモリのキングの力は強力だがデメリットがありそれは一度に多くの力を使うと身体能力が著しく下がってしまうのだ。
今の灯夜は全身の感覚が一切無かった。
「そんな.....!?」
ここで氷川の身体にも異変が起きる。
氷川の全身が重くなり動きづらくなる。
(G3Xの活動限界が来たのか...)
氷川はベルトの上部にあるスイッチを押すと纏われていた装甲が外れた。
だが、生身の氷川では大量の瓦礫に埋もれた灯夜を助けることは不可能だった。
だが、それが分かっても氷川は止まらない。
生身のまま瓦礫を退かそうと努力する。
「もう....いい....貴方...だけ...でも....」
「ダメです!
貴方は事件の重要参考人だ!
そして、私は刑事です!貴方を見捨てる訳には行かない。」
懸命に氷川は灯夜に呼び掛けるが彼の声が聞こえなくなってくる。
(まずい....このままじゃ!?)
焦る氷川の前で驚くべきことが起きた。
積み上げられた瓦礫が突如として浮かび上がり倒れている灯夜への道が出来たのだ。
「これは?」
「早く行った方が良い。
この力を使うのは初めてだからイメージが固めづらいんだ。
余り長くは持たない。」
背後から聞こえた声に目を向けるとそこには
氷川は状況を鑑みて灯夜に一直線に向かうと彼を背負い瓦礫の山から救出した。
それを見終えナスカドーパントは地面から手を離すと瓦礫が落下した。
「助かりました....貴方は?」
氷川に尋ねられたナスカドーパントは答える。
「風都の仮面ライダーに憧れる一般人さ.....
それじゃ、私は行くよ。
彼の事を頼んだよ。」
そう言うとナスカドーパントは超高速でその場を後にした。
ある程度の距離まで離れると彼はメモリをドライバーから抜いた。
「ふぅ....慣れてきたと言ってもやはり負担が大きいな。」
メモリを抜いた霧彦は壁にもたれ掛かり休息を取る。
何故、彼が風都にいるのか?
それは無名からの依頼を受けたからだ。
「もし、ガイアインパクトが始まれば何の関係もない人にも被害が及びます。
ですから、霧彦さんにはそんな人達を助ける側に回って欲しいんです。」
「それは構わないが...
その間、雪絵はどうするつもりだ?
まさか、見捨てるつもりなのか?」
その問いに無名は答える。
「いえ、少し騙されて貰い風都から離れて貰います。」
その言葉を信用し霧彦は風都でガイアインパクトに巻き込まれた市民を人知れず助けていたのだ。
霧彦が上を見上げるとそこには巨大な光を放つ風都第二タワーが見える。
(街の象徴を世界を滅ぼす装置に変えるなんて許せない。)
霧彦は風都を愛している。
ミュージアムに所属していた時も無名に蘇生された今もそれは変わらない。
本当なら今すぐにでもタワーに乗り込み止めたい程に...
心を落ち着ける為、霧彦はナスカメモリを見つめる。
(俺があのタワーに行けば市民が犠牲になるかもしれない。
皆が街のために行動している
ならば、俺は俺に与えられた役目をこなす先ずはそこからだ。)
休憩を終えた霧彦はもう一度、ナスカドーパントになると風都の街を駆け抜ける。
溢れていく命を一つでも多く助ける為に....
後にこの一連の行動により助けられた風都市民からナスカドーパントの事を"風都の騎士"と呼ばれるようになるのはまだ先の話.......
Another side
「本当に良い性格してるわね
雪絵が苦々しい顔をして言った。
雪絵の目の前には芦原と黒岩の家族の姿があった。
何故、雪絵は彼女等と会っているのか?
理由は単純に無名の仕掛けた罠に引っ掛かったのだ。
冴子への復讐の為、無名達から離れた後、雪絵は冴子の居場所を探る為、情報屋を探した。
原作でも風都には街の情報に詳しい者が多数登場する。
ウォッチャマンやサンタちゃん等は翔太郎に事件の情報を売ってくれる情報屋の代表格だ。
そんな情報屋を探る中で雪絵が頼ったのは
情報の精度も高く裏の世界でも重宝されているらしい。
そんな彼への連絡手段はとあるネット掲示板に666の数字を刻むだけの簡単なものだった。
雪絵はネットカフェでそれを試した数日後に彼女の住んでいる仮のアジトに手紙が届いた。
中にはURLが入っておりそれをスマホに打ち込むと連絡がかかってきた。
その声はボイスチェンジャーがかかっており誰かは判別がつかない。
「アンタか僕の情報が欲しいのは?」
「えぇ、貴方が裏で有名な情報屋だと知ったからね。」
「それを知る為に暴力団の事務所をオシャカにして回ったららしいな?
随分と無茶をする女性のようだ。」
「そこまで分かっているのなら私の欲しい情報も分かるでしょう?」
「園咲 冴子の居場所....だろう?
勿論、その情報も掴んでいる。」
「流石ね....それでいくらかしら?」
「金は要らない....その代わりに一つ頼まれ事をしてくれるか?
ある家族の護衛をして欲しい。
君の事は護衛だと説明して置くから一度、会ってくれ」
その依頼を受けた雪絵は風都の中心地から離れた住宅街に来た。
そして、護衛対象である人物に接触した結果、今の状態となったのである。
詳しく話を聞くとどうやら、佐田と言う名は"無名"が使う偽名の一つらしく復讐相手を探している私に何れコンタクトを取るだろうと考えていたらしい。
だからこそ、初対面の筈なのに芦原と黒岩の家族は私について知っていた。
(佐田 南辺....ローマ字にすれば
....はぁ、少し考えれば分かることなのに失敗したわ。)
後悔したくなる感情を押し隠しながら二人の家族に事情を聴いた。
学校での事件の後、ずっと誰かに付け狙われている様に感じていた。
普通ならば気のせいで済むが両方の父親が無名に関わっている点から警戒を続けていた。
(一応、用心のために現在、黒岩と芦原家は大きめの家を借りて同居している。)
だが、一般人である自分達ではもし襲われたら何も出来ないと分かっていたので無名に相談をしていたのだ。
そこまで聞いた雪絵は取り敢えず1週間調査して何も無かったらこのまま帰ることを告げた。
いくら仕事とは言え彼女にとって優先順位が高いのが復讐だったからだ。
雪絵は兄について調べている時に培った調査スキルを使い探偵の真似事を始めた。
結論から言えば付け狙っている人物はいた。
それも複数。
一つはミュージアムの構成員。
しかし、構成員とは名ばかりの木っ端者ばかりだった。
ガイアインパクトが始まることを知りこのままでは自分達は捨てられてしまうと焦った一部が手柄を立てる為にこれまで無名に関わった部下について調べ上げたのだ。
そして、黒岩に辿り着き彼女等を襲い無名への人質にしようとしたらしい。
全く、三流の小悪党が考え付くような杜撰な作戦だ。
故に雪絵はさっさと片付ける道を選んだ。
奴等の使っているアジトを見つけ出すとスコーピオンドーパントになり強襲した。
相手も勿論、ガイアメモリを使っていたが奴等が使っているのは生産性の高いプロダクトメモリ。
シルバーメモリを操る雪絵の敵ではなくアジトにいた構成員は全員、雪絵の毒に侵され倒れ付した。
「ふぅ...これで全員かしらね?」
一息つく雪絵の顔を高速で通り抜けた。
一瞬で危険を感じた雪絵は遮蔽物に隠れる。
顔に触れると皮膚が切れていた。
ドーパントになり強化された皮膚が簡単に切られたのだ。
攻撃を放った相手が並みの存在では無いと理解する。
この狙撃をしてきたスナイパーがあの家族を狙っているもう一人の存在だ。
依頼を受けてから四日で雪絵はアジトを3つ強襲したがその全てに謎のスナイパーがいたのだ。
(ミュージアムの雑魚とは格が違う。
あのスナイパー、私の事をわざと逃がしている。)
それが何の為かは分からないが何度も戦ってきた経験からそう理解した。
そして、暫く隠れているとスナイパーの気配が薄くなるのを感じ外に出た。
雪絵はメモリを抜き舌打ちをする。
「ちっ!何度も現れては煙のように消えて....やりづらいわね。」
そう悪態をつくと携帯に着信が入っていた。
ショートメールで画面には楓の名が書かれていた。
雪絵は携帯を閉じると二人の住んでいる家へと戻るのだった。
家の扉を開けると茜と楓が出迎えてくれた。
「お帰りなさい雪絵さん。」
「ただいま....お母さん達は?」
「二人とも用事があって家を空けてる。
帰宅するのに時間がかかるから二人でご飯を食べててくれって言われた。」
「そうなの...」
「でも、それだと何時も守ってくれる雪絵さんに申し訳ないからせめてご飯だけでも食べて貰おうと思って二人で作ったんです。」
雪絵が来てから彼女等の顔には安心感が浮かんでいた。
茜は空手の全国大会を優勝した猛者でありある程度の不安にも耐えられるが楓はそうはいかなかった。
信頼していた父親の死亡が重なり精神的にもかなり不安になっていたのだ。
幼い頃、施設で育った雪絵には二人が不安を無理矢理おさえつけているのが分かり護衛の立場だったが良く話していた。
そのお陰もあり二人は雪絵をお姉さんの様に扱っていた。
「へぇ、それじゃあ昼御飯を頂こうかしら。」
「はい、茜。
雪絵さんを連れてリビングまで行ってて.....つまみ食いしちゃダメだからね。」
「しないよ。
私だって子供じゃないんだから....」
「この前、買ってきたイチゴを勝手に食べたのは何処の誰だったかしら?」
「うっ!.....仕方ないだろ?
イチゴは私の好物なんだ。」
「好物でも勝手に食べるのはルール違反だよ茜。」
「ふふっ!」
二人が言い争う場面を見て嘗ての兄妹喧嘩を見ているようで微笑ましかった。
「どうしたんですか雪絵さん?」
「別に....さっ、それよりも早くご飯にしましょう。
お腹が減って死にそうだし」
「そうですね。
それじゃあ準備しましょう茜。」
「OK任せて」
二人がご飯の準備をしているのを眺めながら考える。
(本当ならさっさとこの護衛を終わらせるべきだろうけど.....気が変わったわ。
彼女達の安全が保証されるまでは一緒にいよう。
最低でもあのスナイパーを倒すまでは......)
今後の行動を再確認すると雪絵は二人が作ったカレーライスを頬張る。
甘口のカレーから感じる子供っぽい甘さが今は心地よかった。
復讐の道を一時的にも忘れられる二人との時間を雪絵は噛み締めて行くのだった。
スコープ越しにカレーを食べる三人を見つめていた芦原は笑う。
「仲良くやっているようで良かった。」
誰にも聞こえない声でそう呟く。
芦原はスコープから目を外すと時計を確認する。
(そろそろ酵素を投与する時間か.....)
芦原は黒岩の使っていたスナイパーライフルを机に下ろすと部屋に乱雑に置かれた装置に触れる。
無名が用意してくれた酵素の簡易生成機。
効能は同じだが簡易版と言うこともあり生成されて酵素の寿命が短く生成してから直ぐに射たないと効果を発揮しない。
芦原は装置についていたインジェクターを腕に刺すと酵素を注入した。
赤い酵素が全身に行き渡っていくのを感じると芦原は鏡に写った自分を見た。
無精髭を生やしほぼ徹夜に近い生活を送っているから隈が酷い。
(まるで、酵素切れしたみたいだな。)
そんな自分の姿を嘲笑しながらも芦原はスナイパーライフルに触れると掃除の為、分解を始めた。
NEVERを止めた芦原は家族との接触を限界まで減らした。
自分の家族や黒岩の家族を狙うミュージアムの残党がいることは調べがついていたからだ。
自分が家族の元に残り平凡な生活をしていたらきっと誰かが犠牲になる。
そう思った芦原は二人の借りた家の近くの建物を複数借りて黒岩のライフルを使い家族を守る決断をした。
無名から与えられたNEVERドライバーを使うのはこれで守れなくなった場合の最終手段。
それが来るまでは黒岩のライフルを使い家族達を守ろうと決めたのだ。
だが、昔のように家族を拒絶したりはしない。
そうする条件として月に一回、必ず家族と会い過ごすこと......そして娘とは常に連絡手段を取れる様にする。
この条件で家族には納得して貰った。
ライフルの掃除をしていると家族用の携帯(無名が電波で追えない様に改造した特注品)にメールが入る。
中を開くと茜と楓...そして雪絵か仲良くカレーライスを食べている写真と"私達は今日も元気にやっているよパパ.....次会う時にはパパにも私達の作ったカレーを食べて欲しいな。"と書かれていた。
それを見て芦原は安堵する。
(良かった....またちゃんと笑える様になったんだな茜。)
雪絵さんが来ない頃は増え続ける残党の始末に手こずっていた。
だが、彼女が来てから処理のスピードが上がったのだ。
彼女には娘と家族を守って貰い感謝しかない。
だからこそ、私が彼女にやっていることに少しばかり罪悪感が残る。
連日の襲撃で雪絵さんを狙撃したのは芦原だったからだ。
芦原は無名との会話を思い出す。
「本当に良いのか?
雪絵さんはお前が助け出した霧彦の妹なんだろう。」
「えぇ、ですが彼女は復讐に囚われている。
このままでは何れ命を失ってしまう。
そうならない為にも貴方に手を貸して欲しいのです。」
そう言われ引き受けた芦原だったが今はそれに感謝していた。
彼女は根っからの悪人ではない。
娘達とのやり取りを見れば分かる。
大事な家族を奪われその怒りを震う相手を探しているだけだ。
彼女は頭が良い適度にガス抜きが出来ればもっと冷静に考えられる筈だ。
芦原は無名の言葉を信じて家族の護衛を任せた。
動きを見る度にメモリに慣れ洗練されていっているのが分かった。
戦闘スタイルはレイカと似て蹴りが主体だがレイカは一撃一撃が必殺レベルの破壊力を持ち雪絵は威力ではなく付属している毒を使って相手を弱らせて倒す戦法を得意としていた。
これまでの経験から後少し実践を積めば彼女の戦闘スタイルは完成するだろう。
そうなった、彼女がどんな行動を取るか芦原には分からない。
だが願うなら後悔しない選択を選んで欲しい。
俺のように間違った選択をして大事な友を失うよりずっとマシな選択が出来る事を......
それから雪絵はガイアインパクトの後に護衛の仕事を終えて姿を消した。
家族の元を去る前に二人の娘に手紙を残して.....
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