風都第二タワーから溢れる緑の光を冴子と加頭は見つめていた。
「あれは
「どうやら、ガイアインパクトが始まってしまった様ですね。
こうなってしまったらもう止める事は不可能でしょう。」
「加頭さんそれはどういう意味?」
冴子の問いに加頭が答える。
「あの光は地球に直接穴を空けることで発生させています。
つまり、このまま放置すれば穴から亀裂が広がり地球が破壊されてしまう。
それを止めるには若菜さんが来人さんと融合し地球を修復させる以外、方法がありません。
その過程で地球にあの光が広がり人類は種を越えた進化を行うんです。」
「そう....なのね。
これがお父様が言っていたガイアインパクトの真実。」
「ショックですか?冴子さん。」
「いいえ、あの人が本当に愛して認めていたのは私ではなく若菜だったもの....」
「冴子さん.....」
父親に"認められる為"愛される為"に自分の全てを捧げた園咲冴子。
彼女にとってあの光は自分が手に入れられなかった愛の象徴の様にも見えた。
(結局、全部手に入れるのは貴女なのね若菜。)
改めて突き付けられた現実に彼女の心は急激に冷めていった。
昔ならば若菜への嫉妬心で計画を邪魔しようとしたかもしれない。
でも今はこの光景を見ても何の感情の変化も起きなかった。
そうしていると冴子の懐からタブーメモリが落ちる。
ずっと疑問だった....何で私がタブーのメモリを選んだのか?
私が悪に手を染めたから?.....いや違うもっと根本的な理由だ。
私は母が父の手で傷つけられ園咲家から追い出された時も何も感じなかった。
寧ろ、それがあってから、尚更父のために働いた。
そして、父に愛される若菜を見る度に苛立ちが募っていった。
あぁ.....やっと分かったわ。
私は...父を....園咲 琉兵衛を家族ではなく"一人の女として愛してしまっていた"のだと
(だから、
私のメモリは......)
私は加頭さんを見つめる。
(私の為に命を懸けて全てを捧げてくれる人.....きっと霧彦さんもそうだったのだろう。
だからこそ、満たされないのだ。
井坂先生に惹かれたのもそれで父を嫉妬させたかったからなのかもしれない。
ミュージアムの総帥になりたかったのも父の全てを手に入れたかったから....あぁ、何て浅ましいのかしら私は)
私にとってはあの家族そのものが歪な集まりだった。
何故なら私自身が歪でありながらあの場所に収まろうとしたのだから.....
私はタブーメモリを拾い上げた。
思い出すのは若菜が生まれる前の父との記憶.....
優しい人だった....幼い私を膝に乗せて絵本を読んでくれた。
頭に乗せてくれた手の温もりがとても心地よかった。
そして、思ったのだ。
この温もりを"一人占め"にしたいと.....
だが、若菜と来人が生まれた時から立場が変わった。
私は二人を守る姉の立場に変えられた。
そして、来人が泉に落ちて父がガイアメモリを産み出すと私への関心がもっと減っていった。
私は父に振り向いて欲しくてミュージアムの幹部として働き有能さを見せた。
全てはもう一度、父に愛される為......
だけど、結局全部失敗した。
私は何も手に入れずに終わったのだ.....終わった?
本当に?
まだチャンスはあるのではないか?
消えかけていた私の心に炎が灯る。
何が出来る?ガイアインパクトが始まった以上、運命は変えられない....本当に?
父は人類を進化させる為、若菜を器に選んだ。
それはきっとクレイドールメモリの再生能力が力の受け皿として都合が良かったからだ。
父は若菜を道具としてでしか見ていない。
そこに愛は無い....本人は愛していると言うかもしれないが道具に向ける愛と人に向ける愛は別物だ。
それは私自身が良く分かっている。
結婚はしていても霧彦さんに向けていた愛はミュージアムの幹部として相応しい存在にするために....父に認められる為に向けていた愛でしかない。
(なら....奪える....私が父の愛を.....)
歪んでいるが故に辿り着く真実と間違った答え....だがそれを指摘できる者はいない。
何故なら、誰にも話したことがない感情だからである。
或いは人を見慣れている左 翔太郎ならば気付いたかも知れないが目の前にいるのは人との触れ合いを無視してきた加頭だ。
(今ならまた騙せそうだ。)
故に冴子は残酷な手段を考えついてしまう。
「加頭さん....私をタワーに連れていってくれないかしら?」
「何故ですか?
もう言っても出来ることはないと思いますが....」
「見たいのよ....妹が巫女になる姿を...それだけが姉として出来る最後の事だと思うから....お願い加頭さん。」
「....分かりました。
少し準備をしますので待っていてください。」
そう言って加頭が出ていくと冴子も準備を始めた。
幸いなことに冴子はミュージアムの幹部だったのでガイアインパクトの全容だけは聞いていた。
(来人との融合は私には難しい....でも融合した後の力を私が使えれば"巫女の力を奪える"筈よ。
お父様ならきっとミュージアムのデータに詳しい物を保存しているわ。)
冴子は止まらない。
自分の愛を知ったが為、それを叶えるために自らの命すら掛ける。
その余りにも無謀で純粋な願いを持つからこそ彼女は禁断の名を持つメモリを手に入れたのだろう。
全ては愛の為.....例えその愛が報われないと内心では分かっていたとしても
Another side
自室へと戻った加頭は机に置いてある写真に目を止める。
そこにはドレス姿の冴子と黒スーツを着こなした
気分転換の為に連れていった写真館で冴子さんが着たいと言ったドレスを身に付けて私の前に現れた時、まるで女神が降りてきたのかと錯覚した。
家族と井坂に裏切られた冴子さんは限界だった。
何時、命を絶つかも分からない状況だった彼女が人並みの欲を口に出した時、私は安堵した。
欲とは生きる原動力だ。
とある会長と会食した時も言っていた。
"この世界のあらゆる欲望は全て生きることに帰結する。
金持ちになりたい寿命を長くしたい権力が欲しい。
どれもこれも全ては自分が生きる為に必要な物だ。
だからこそ、人は生きないと生きようとしないといけない。
それこそが人類を進化足らしめた欲望への礼儀だからね。"
それを聞いていたからこそ私は気付いてしまった。
(冴子さんは私に嘘をついている。)
妹が巫女になる姿を見たい?
冴子さんにとって妹の存在は自分が平穏に生きる上である種、邪魔な存在だ。
父親は妹を溺愛しその他の負債は姉である冴子さんが支払う。
歪に曲がってしまった家族の形をギリギリでも為し得ていたのは冴子さんの欲望によるものだろう。
だからこそ、分かってしまう。
冴子さんは妹を殺すつもりだ。
だが、これは財団の利益に反するかもしれない。
ガイアインパクトの計画を根底から否定する行為だ。
本当ならば力付くでも止めないといけない。
だが、私にはその決断が出来ないでいた。
自分もまた欲望に支配されていたのだ。
(冴子さんとの時間をもっと長く過ごしていたい。)
井坂との戦いで私の寿命は決められてしまっている。
残り少ない人生を冴子さんと生きるか財団に戻り冴子さんを見捨てるか....命への欲望と冴子さんとの欲望。
私は冴子さんを取ろうとしている。
端から見れば愚かな選択だろう。
そんな事は自分でも分かっている....でもそれでも考えてしまうのだ。
もし、冴子さんの目論見が成功すれば全てを手にいれた冴子さんと私は一緒になれる。
その蜜のように甘い欲望に私は溺れそうになっていた。
生まれて始めて感じる財団への利益を忘れた自分への欲望....その味を知ってしまったのだ。
私は無意識の内に握っていたユートピアメモリを見つめる。
(ユートピア....理想郷。
私にとっての"理想郷は冴子さんがいる世界"だ。
それを叶える為だったら私はどんな事もして見せる。)
ワタシは覚悟を決めると机の下に隠すように置いていたアタッシュケースを取り出すと中を開く。
中には"N.B"と書かれたラベルが貼り付けられた薬品が入っているインジェクターが三本収められていた。
(例え、私の命を全て使い果たす結果になったとしても....)
私は三本のインジェクターを懐に仕舞うとドライバーを腰につける。
そして、冴子さんのいる部屋へと戻った。
「戻ってきたのね加頭さん。」
冴子の作り笑いが加頭を見つめる。
「....えぇ、遅くなり申し訳ありません。
準備が出来ました。
ではどうやってタワーまで向かいますか?」
「これを見て」
冴子が一枚の図面をパソコンに写し出す。
「風都第二タワーの設計図よ。
このタワーは掘り出した地球のエネルギーを大量のエネルギーを供給する手前、効率良くエネルギーを循環するルートが作られている。
無論、ルートを作っても整備をしなければまともに動かなくなるわ。
だからこそ、"外から見たら分からない点検用の扉"がタワーには幾つも作られている。
その扉を経由していけば若菜に気付かれずにタワーの中心部にまで登っていけるわ。」
「成る程、確かにこれなら"誰にも気付かれず"にタワーを登ることが出来そうですね。」
「えぇ、幸いなことにミュージアムの構成員はメインタワーから離された位置に展開しているわ。
.....いえ、意図的にでしょうけど」
「それはどうしてなのですか?」
「今の若菜はお父様の忠実な操り人形よ。
ガイアインパクトは園咲家の者が行わなくてはならない神聖な儀式として教え込まれている。
その儀式にミュージアムの構成員を入れたらお父様の意思に反する。
精々、時間稼ぎの駒がいる程度でしょうけどガイアインパクトが始まれば来人や無名が止めに掛かるに決まっている。
邪魔物は彼等に排除して貰いましょう。」
「そうして、邪魔物が消えて若菜さんが融合するのを見届ける訳ですね?」
「.....えぇ、そうよ。
私達は家族なんだもの」
精巧に作られた笑顔を加頭へ向ける。
(つまり、融合してから冴子さんは動くと....)
ずっと見てきたからこそ理解できる冴子の嘘。
だからこそ、加頭は彼女の計画の流れを理解できた。
加頭も笑顔で告げる。
「では、私は冴子さんが若菜さんと会えるのをお手伝いしましょう。
仮面ライダーもいるのなら恐らく邪魔をしてくるでしょうから....」
加頭は冴子の為に無名と取引したことを黙っていた。
(今、無名とのことを冴子さんに言えば余計な警戒をさせてしまう。
だが、やはり無名と取引しておいて良かった。
彼が求めた装置の設計図.....あれを手にすればどんな策を無名が出すのかは予想できる。
後は冴子さんの計画だけだがそこも問題はない。
共にタワーに行けるのなら彼女が目的を達成するために必ず私の力が必要になる。
後は此方に都合が言いようにコントロールするだけだ。)
財団Xのエージェントである加頭の主な仕事は新たな技術への出資を決める以外に暗躍する事もある。
例えば新開発された兵器を使おうにも大っぴらには実験は出来ないだろう。
だが、兵器開発が行われている国でクーデターが起きれば?
その鎮圧の為に兵器を使わないと行けなくなる。
財団Xはこれまで名前を変えながら暗躍してきた。
当然、エージェントの中でもトップクラスの加頭も得意とする事柄だ。
(手に入れて見せましょう。
この戦いで私と冴子さんの理想郷を.....)
お互いに利用し利用されながらそれを己の為にひた隠す二人の怪物。
全ては自分の目的の為に....例え誰を犠牲にしようと手に入れる。
自分の求める
Another side
財団が管理する隔絶された空間の一つ....その扉が開けられると傷だらけになりながら部屋に入る
「はぁはぁ....全く骨が折れる。
財団の最高戦力をほぼ全滅させて漸くか。」
信彦の手には掌に収まるサイズの時計が握られていた。
ライドウォッチと呼ばれるこのアイテムを手に入れる為に信彦を含めた財団の戦力は全滅し掛ける被害を受けたのだ。
この世界の信彦はブラックサンの世界から連れてこられた。
光太郎との決戦が終わり気絶した二人の空間がねじ曲がると信彦だけ財団の保有する空間へと連れてこられたのだ。
呼んだ存在は"自分が財団Xを作り出した"と言っていた。
そして、自分の目的の為に信彦の力が必要だと言うのだ。
そこで超越者の存在を知り取引をした。
財団Xに所属し働く代わりに時が来れば元の世界に戻すと....
ソイツはその約束を守ると言うと信彦の身体を改造した。
曰く、
そこで財団が手にいれた技術を駆使した肉体改造と遺伝子改造を行い最後に
その結果、信彦の身体に変化が起きた。
二つの同質の石が放つエネルギーが信彦の身体を満たしていくと"三段階目の変身した姿"を獲得した。
力を手にいれた信彦は財団Xの名前のもと沢山の時間や世界に介入した。
時には正義や悪と言う勢力に肩入れし仕事をこなしていた。
今回頼まれた仕事も財団を作った奴からの依頼だった。
信彦が持っているライドウォッチは"未来に最低最悪の魔王と呼ばれる若き仮面ライダーが手に入れた力"だった。
これを手に入れるのには苦労した。
何せ信彦達は戦いに介入する形でライドウォッチを奪ったのだ。
"クォーツァーと呼ばれる未来からの刺客"と戦う
彼等との戦いが佳境に差し迫った時に信彦ら財団のメンバーが介入しライドウォッチを奪いに掛かったのだ。
此方のかなりの被害が出たが目的は達成することが出来た。
そうしていると目の前にフードを被った子供が現れる。
信彦はその子供に驚くこと無く言った。
「相変わらずノックの概念が無いのか"ロノス"。」
「はは、ごめんね!
あらゆる空間を束ねていた僕にとっては何処の世界にいてもそこは僕の家みたいな物だからさ。
君もわざわざ自分の家をノックしたりしないでしょ?
....それにしても良く手に入れられたね。」
「簡単じゃなかった。
奥の手の3つ目の変身をして漸くと言ったレベルだ。」
「あはは、だろうね!
何せ、僕の力の根元が使われちゃってるから強いのは仕方ないよ。
じゃあ、貰うね!」
ロノスは信彦からライドウォッチを受け取るとライドウォッチはエネルギーの粒子へと変わりロノスへと吸収された。
それを見て信彦が尋ねる。
「その力...やはり、魔王と破壊者はお前の力から作られたのか?」
「....まぁ、バレちゃうよね。
その通りだよ。
時と空間を操るのが本来の僕の力だった。
まぁ、それがあっても同胞の運命すら変えられなかったんだから皮肉だよね!
"ゴエティアもタナハ"も頑張ってはいたけど.....滅びる運命だったともう諦めてるよ。」
超越者の名前を出したロノスの瞳は何処か寂しく空を見つめていた。
そして、思い返したようにロノスは何処からか取り出したケースを渡しながら信彦に告げるのだった。
「あっそうだ!これ加頭君から君にって......どうやら助けて欲しいみたいだよ。」
「俺に助けを?.....どう言うことだ?」
「さぁね。
でも、これを持って風都に入ってくれた方が僕にも都合が良いかな。
そろそろ一つの運命が終わりを迎えそうだからさ。」
「...ロノス、お前は何を知っているんだ?」
「さぁね。
全部知っているかもしれないし何も知らないかもしれない。
一つ言えるとしたら物語に関わっていない役者が登場するには時間がもう足りないってこと
行けるのは君だけだ秋月信彦.....
何、戦えと言う訳じゃない。
"見届けて"使ってこい"と言っているだけだ。」
ロノスは意味不明な事を言うと信彦に笑い掛ける。
「さぁ、行ってきてよ。
繰り返され停滞した時間がやっと動き出したんだ。
どんな結末でさえ見届けたい。
........頼んだよ。」
ロノスはそう言うとこの空間から一瞬で姿を消した。
「相変わらず勝手な種族だな超越者は.....」
信彦は渡されたケースを開ける。
その中には"眼球の形をした謎の装置"が入っていたのだった。
信彦は身体の傷を癒す間も無くロノスに言われた通り、風都へと向かうのだった。
【解説】
財団Xに在籍する信彦はBlackSunの世界から連れてこられた。
因みにこの世界線では信彦は光太郎にキングストーンを託す前に連れ去られたので次の創世王が誕生する事は無くなった。
その後、信彦の身体は色々な世界線の技術を使い改造され原点の月の石を埋め込まれた結果、進化し第三の変身形態を獲得した。
財団Xを創設したのはロノスと名乗る少年だった。
ゴエティアやタナハを知ることから分かる様に彼も超越者だった。
彼の司る力は"時と空間".....故にディケイドドライバーやジクウドライバーにロノスの力が使われている。
信彦がジオウ達から奪ったのは"オーマライドウォッチ"であり理由はロノス曰く「これから先の運命の流れから考えて"最高最善の力"は幼い魔王に託すには早い。」と考えた為.......
信彦がオーマライドウォッチを奪えたのはゲイツが不完全(マジェスティ覚醒前)だったのとバールクスとの決戦が終わり疲弊していた為.....
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