もう一人の悪魔   作:多趣味の男

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第二百二十三話 絶望のD/死者の煉獄

ゴエティアの手により突如現れた存在に翔太郎は動揺を隠せなかった。

 

何故なら目の前にいるのはこれまで救えなかったメモリ犯罪者ばかりだったからだ。

(戸川(マグマ)真里奈(Tレックス)鷹村(アノマロカリス)伊刈(コックローチ)倉田(アームズ).....それに後ろにいる奴等はメモリブレイクが完成していない時に倒した奴等じゃねぇか。)

 

呆然とする翔太郎よりも先に正気に戻ったフィリップが激を飛ばす。

『しっかりしろ翔太郎!

彼らはゴエティアが能力で作り出した偽物だ!』

その言葉を受けた真里奈が悲しく呟く。

 

「翔ちゃん....この街の人は誰も泣かせないんじゃなかったの?」

「!?どうしてそれを......」

 

動揺する翔太郎にゴエティアが種明かしを始めた。

「彼等は私が作り出した本人そっくりに作った複製体だ。

だが、彼等には死ぬ前まで歩んできた記憶がある。

故に死んだ本人と何ら遜色はない人間が出来上がったと言うわけだ。」

『何て事を.....』

 

「絶望するのはこれからだ。」

ゴエティアがそう言って指を弾くと蘇った者達が苦しみ始める。

「何が起こってるんだ!」

「彼等が生前使っていたメモリの力を身体に注ぎ込んだのだ。

まぁ、メモリやコネクターを使わない方法だ。

力が人の身体に収まらず肉体が勝手に変化し始めるだろうね。」

 

『そんなバカな事を!?』

ゴエティアの言う通り、苦しみ出した者達の身体から変異し変わっていくのが分かった。

骨が変形し皮膚が破れ肉が弾ける。

聞くも耐えがたい拷問の様な音を流れ更に彼等の絶叫や慟哭が加えられ変異が完成していく。

 

『翔太郎!見るな!』

フィリップの助言も虚しく翔太郎は真里奈が人間の姿からTレックスの怪物へ血を肉を吹き出しながら変異する姿を......

呆然とする翔太郎の姿を見てゴエティアは笑う。

 

ふははははは!!良いぞ左 翔太郎。

その表情だ!

目の前で親友が怪物へと変わっていく姿を呆然と見ることしか出来ない無力な姿。

それこそ君に相応しい。」

翔太郎の姿を見て笑うゴエティアにフィリップの怒りが増す。

 

『こんな事をして一体お前に何のメリットがあるんだ!!』

「メリット?....そんなの簡単だ。

"私が笑顔"になっただろう?」

 

『この...悪魔め!』

「ふはは!君に言われるのなら寧ろ褒め言葉だね。

さぁ、準備は整った。

仮面ライダーよ怪物に成り下がった彼等を助けたまえ!

方法は簡単だ!殺せ!

彼等が人間に戻る手段はない!

あぁ、そうだ一つ言い忘れていたが奴等を殺すにはヒートメタルしか無いぞ?

そう言う風に作ったからな。」

 

「テメぇぇぇ!!」

 

限界を向かえた翔太郎は怒りのままメタルシャフトを振るったヒートメタルへと変身していたWの攻撃がゴエティアに当たり前に目の前にTレックスと真里奈を混ぜた怪物が現れて翔太郎のメタルシャフトを受ける。

 

渾身の力で振るわれた一撃は真里奈の頭を陥没させる。

「真...里..奈!?」

「翔ちゃん?どうして?痛いよ翔ちゃん。」

 

「違...う..俺は....」

メタルシャフトを持ったまま後退る翔太郎をフィリップは何とか支えようとする。

『気をしっかり持て!翔太郎!!

ゴエティアの罠だ!まともに取り合うな!』

「でも...よ..フィ...リップ。

俺は....真里奈を.....」

 

『大丈夫だ!今検索を終えた!

この空間は"幻覚"....その全てが偽物だ。』

「偽...物?」

フィリップが翔太郎にこの空間が幻覚だと告げた時には全てが遅かった。

 

「ダメじゃないですか?

敵を前にして油断したら....」

そうゴエティアがWの耳元で囁くと一瞬で風景が変わり蘇った人間も痛々しい怪物もいなくなっていた。

代わりにゴエティアはWのメモリに手を触れた。

 

「しまっ!?」

自分達が嵌められた事に気付いた時には既にゴエティアにサイクロンとジョーカーを覗く全てのメモリが無効化された後だった。

 

ゴエティアの放った黒炎がWの身体を焼く。

「ぐ.....あ....」

「やはり、人間は弱い。

ちょっと恐怖を見せるだけで正常な判断が出来なくなる。

.....だが、その脆弱さも含めてコスモスは人類を愛したのだが」

 

そう話しているとWを覆っていた黒炎が空へと巻き上がった。

 

CYCLONE,JOKER

 

「予想通り、サイクロンジョーカーで炎を巻き上げたか。

後はエクストリームを警戒するだけだが他のメモリを使えなくした以上、プリズムを使った多重マキシマムは使えない。

これで詰みだ仮面ライダー。」

冷静に現状を説明され黒炎のダメージにより地面に膝を下ろしていたWは気合いで立ち上がる。

 

「ま....だだ...俺は折れてねぇぞ!」

「....テラーよりも強い精神攻撃を与えたつもりなのだがジョーカーメモリの力が君の精神を守ったのか?」

 

「....違う。」

「違う?では何が君を立ち上がらせるんだ?」

 

ゴエティアの問いに今度は翔太郎が笑って答えた。

「プライドだよ....この街を愛し守る仮面ライダーであり親っさんから受け継いだ探偵としてのプライドだ!」

「....流石は仮面ライダー。

これまで巨悪を討ち滅ぼしてきた系譜を受け継いでいる事はある。

なら、私も敬意を持って君達を仕留めるとしよう。」

 

ゴエティアは掌に黒炎を集めると凝縮させて振り抜いた。

すると、炎が巻き上がり一本の槍を形作られていく。

三又の刃を持つ黒炎の槍はゴエティアが触れると炎が消えその黒い姿を現した。

 

「デーモンメモリの力を凝縮させて作り出した槍だ。

槍でありながらその性質は黒炎でありこの攻撃は回避する術はない。

この一撃を持って君達の仮面ライダーの歴史に終止符をうつ。」

 

槍を構えたゴエティアを見た翔太郎は直感で理解する。

「ありゃ、まともに受けたらアウトだな。」

『あぁ、検索しても打開策が見当たらない。

恐らく受けたら最後、Wの生体装甲ごと黒炎に焼き尽くされるだろうね。』

 

「どうするフィリップ?

使えるメモリも少ねぇ.....このまま殺られるつもりじゃないなら何かしないとヤバイぞ。」

『.....なら受けずにいなそう。

黒炎の槍ならばこの異空間も破壊出来る筈だ。

Wに向けられた攻撃をいなして異空間にぶつけてここから脱出する。

そして、そこから無名と合流する。

勝率は無いに等しいが少なくとも現状よりかは幾分マシにはなる。』

 

「OK決まりだ。

問題はあの黒炎の槍をどういなすかだな。

態々掴んで投げ返す訳にも行かねぇし.....」

『それなら、一つ方法がある。

サイクロンとジョーカーのマキシマムを使うんだ。

タイミング良く発動できれば槍の軌道をずらせる筈だ。』

 

「良し俺は相棒であるお前を信じるぜフィリップ。」

そう言うと翔太郎がサイクロンメモリを抜きマキシマムスロットに装填する。

 

「CYCLONE MAXIMUMDRIVE」

 

Wの全身を緑の風のエネルギーが包む。

それを見計らった様にゴエティアは黒炎の槍を投げつけた。

Wはその攻撃を両手で受け止める。

黒炎がWを焼こうとするが纏ったサイクロンの風が一時的に黒炎を吹き飛ばし無効化していた。

 

「うぐっ、重てぇ!少しでも気を抜けば全身が持ってかれる。」

『時間がない!僕がこの槍を止めるから翔太郎は早くジョーカーを....』

 

「おう!...こなくそっ!」

は右手に風の力を集めて槍を止めると左手で翔太郎がジョーカーメモリを抜きサイクロンと交換する形でジョーカーメモリをマキシマムスロットに装填した。

 

「JOKER MAXIMUMDRIVE」

 

ジョーカーメモリを装填したことでWの全身をジョーカーの力が溢れ出す。

翔太郎はその力を左手に集束させると投げられた槍を無理矢理、握った。

 

「この...槍を....吹っ飛ばす!」

 

翔太郎の願いにジョーカーメモリが答える。

溢れ出したメモリの力が黒炎を押さえ付けるとそのまま、槍を投げ返した。

 

投げられた槍はゴエティアの頬を掠り壁に激突する。

トレインメモリの力で隔絶されていた空間が黒炎によって焼かれヒビ割れていく。

 

「よっしゃあ!」

翔太郎はガッツポーズを決めるがゴエティアの表情は何時もの余裕を持った顔ではなく怒りに包まれていた。

 

「また、彼女(コスモス)の力を使ったか.....それもメモリが君の心に従って...気に入らないな。」

一瞬の内にゴエティアがWの目の前に現れる。

 

「なっ!?」

『翔太郎!』

 

"Shock"(衝撃)..."連続多重起動"。」

ゴエティアの拳がWの腹部に当たる。

トンと軽い音と共にWを覆っていたマキシマムのエネルギーが吹き飛び、空間がヒビ割れてしまう程の衝撃がWの身体を襲った。

 

肉体を吹き飛ばす無駄な力を使わずダイレクトに身体を襲う衝撃は凄まじくWはその場に倒れてしまう。

そして、このタイミングで空間が割れて現実世界に戻り目の前には無名を捕らえている若菜の姿があった。

 

「あら?そちらも終わりましたの?」

「えぇ、後は仮面ライダーWを変身解除させれば此方の勝利です。」

 

そう言うゴエティアの手にはサイクロンメモリが握られている。

「メモリの機能を完全停止してしまったら融合に支障を来す可能性がありますから一時的に無効化して変身解除させます。

その後に若菜様は来人様の肉体を此方に転移させて現実世界で融合を果たしてください。

私と無名は地球の本棚に戻り内側から融合を果たします。」

「そして、内と外から力を使い安定した道を繋げる。

そうすれば地球は崩壊を止め人類の進化と共に地球の修復が始まる....そう言うことね?」

 

「えぇ、その通りです。

取り敢えず、私たちが戻る扉を開けます。

この身体(天十郎)を使えば開けるでしょう。」

そう言うとゴエティアは胸のクリスタルサーバーに爪を突き立てて引き千切るとクリスタルサーバーが赤黒い光をあげて消えると背後に黒い門が出現する。

 

扉が開くと中は赤黒い本棚へと繋がっており、ゴエティアがいた空間だと分かる。

そこから鎖が伸びると無名を縛り上げながら彼を門へと引きずり込み中に入ると扉が閉じて門は姿を消した。

 

それと同時にゴエティアの身体も粒子となって消え始める。

「私の精神と無名が本棚に戻り融合を始める。

そうすれば全てが終わる。

漸くだ....実に永かった。

何時終わるとも知れない地獄の様な繰り返し、それもやっと終わる。

私が求めた結末へと遂に続いていんだこの世界がっ!」

 

 

そのタイミングでWは目を覚ます。

「う....あ....」

『翔.....太郎.....』

 

「ほぉ?並列多重起動したマキシマムを受けてもう目を覚ますか。

故に惜しいな。

お前達ならばもっと良い結末を手に入れられたのに....愚かな選択をしたものだ。

 

その結果がこれだ。

大事な仲間を失い、計画も止められずお前達は地べたを這いつくばることしか出来ない。

 

己が弱さを憎め...決意の無さを憎め...選択の間違いを憎み....結果を受け入れろ。」

 

そう言うとゴエティアの身体がブレていき消える速度が上がっていく。

 

「もう、持たないか......

では始めよう...Death起動。」

 

そう言うとWの変身が解除され残ったのは倒れている翔太郎となる。

 

「相棒は風都にいるだろう。

若菜様....捜索関連のメモリで彼を探してください。」

「....分かったわ。」

 

若菜が地球の本棚からメモリの力を発動してフィリップの姿を探す。

そうしている中、小さいながら笑う声が聞こえる。

目を向けると翔太郎が笑っていた。

 

「何がおかしい?」

「あぁ、おかしいぜ。

何が己の弱さだ何が決意の無さだ....何も知らないで勝ちを確信しているお前が哀れで仕方ねぇぜ。」

 

「哀れだと?

それは貴様だろう?

もう逆転の目はない。

融合も止められずお前達は何も出来な....」

「それが違ぇんだよ....お前は無名の罠に嵌まったんだ。

無名の本当の目的はお前と自分を本棚に誘い込むことだった....それをお前自身がやってくれるとは今頃、無名は笑ってるだろうぜ。」

 

「どういうことだ?何故、無名が私と....」

そこまで話していると若菜が発狂した。

 

「どうして!?どうしてなの?」

「どうした?何があった?」

 

「いないのよ!"来人が風都にいない"何処を探しても見当たらないのよ!」

「何っ!?そんな事あり得な....」

 

ここにいてゴエティアは最初からあった疑問が再度、頭を流れてきた。

「おい、何故お前達はエクストリームのメモリを使わなかった?

あのメモリを使えば勝率は少しは上がった筈だ。」

「漸く気付いたか....俺たちはエクストリームの力を"わざと使わなかった"んだ。」

 

「何故だ?何故わざと...!?」

そこまで尋ねかけてゴエティアは理解した。

 

「エクストリームは両者の肉体を融合する必要がある。

だが、ノーマルの状態ならば精神をメモリに移すだけで良い.....まさか!?」

「やっぱりお前はバカだぜゴエティア!!

人間なめすぎて騙されることを考えてない!」

 

「くっ!若菜っ!今すぐ捜索範囲を広げろ!

フィリップは風都じゃない別の場所にいる!」

「まさか!?でも何でそんな真似を...」

 

「それは....くっ!もう身体が...」

そこまで良いかけた所でゴエティアの身体は限界を迎えて消失し彼は本棚の世界へと戻されてしまう。

そこには帰って来たゴエティアを笑って迎える変身解除した無名の姿があった。

 

「お帰りなさい。

随分と怒っていますが何かありましたか?」

「どういうつもりだ?

一体何を仕掛けた!」

 

「そんな事、話す訳が無い。

やっとここに来れた....さぁ、これで本当に最後です。

貴方をここで倒しますゴエティア。」

 

そう言う無名の目は自身と覚悟に溢れていた。

本棚の深淵にある空間で"二人の悪魔"の戦いが始まる。

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