もう一人の悪魔   作:多趣味の男

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第二百二十四話 Fとの対話/逆転の一手

「何処よ!何処にいるの来人!?」

 

若菜はフィリップの行方を探しているが中々、見つからない。

ゴエティアも消えて計画が破綻する可能性を感じた若菜には余裕がなかった。

 

その間に翔太郎はボロボロの身体に渇を入れて無理矢理立ち上がる。

「そんなに....焦って...どうした若菜姫?

焦ったって...良いことねぇぞ?」

「五月蝿いわね!私に指図するんじゃないわよ!

どうして?何でいないのよ!」

 

「アンタがフィリップを案じているのは計画の為か?

それとも本人の身を案じてるのか?」

「そんなの決まっているでしょう!私は....!?」

 

計画の為と言いたかったのに若菜は頭を抑える。

 

「私は?どうして?....何で?

違う!違う違う!私は宇宙の巫女よ!それが私の存在理由で全てなのよ!」

「違うぜ。

そんなのが存在理由な訳がねぇ。

思い出してくれ若菜姫!俺達と....フィリップと初めて会った時の貴女を....」

 

 

何故、若菜が錯乱しているのか?

それはゴエティアが仕込んだ洗脳が一部分解けているからだった。

無名が最後に若菜に放った一撃は黒炎の力を使い洗脳された若菜の記憶の制限を消したのだ。

 

今の彼女には家族や来人を大切に思い愛する心と道具として使い計画を実行しようとする造られた性格が反発しあいバグを起こしていた。

 

頭を抑えながら若菜は考えを整理しようとするが、思考が落ちつかず平静さを失っていた。

 

黒炎の力により若菜の洗脳を解くことは無名の計画の一端でありゴエティアと無名が地球の本棚の世界に行くことも想定していた。

 

(ここまでは無名の計画通り....後は俺が頑張る番だ。)

 

翔太郎は懐から"デモンドライバー"を取り出すと腰につけた。

このドライバーは翔太郎にとってのトラウマだ。

ゴエティアに操られたとは言え、おやっさんから受け継いだ教えを捨てて殺し屋に成り下がろうとした悪魔のドライバー。

 

だからと言ってこのまま諦めたくはなかった。

(俺も俺の罪と向き合う!

この力を使って今度は殺すのではなく....救う!)

 

翔太郎は覚悟を決めて帽子を被り直し目線を隠すように唾を下げるとメモリを起動した。

 

「JOKER」

 

起動したジョーカーメモリをドライバーに装填するとゆっくりと拳を握り構えた。

「.....変身。」

 

静かな掛け声とと共にドライバーを展開すると翔太郎の身体をメモリの力により変化した生体装甲が覆い仮面ライダージョーカーの姿へと変わる。

 

そして、変身が終わると両目の下にラインが入りそこが赤く輝いた。

それはまるでピエロや血涙を流している様にも見えた。

変身が終わると全身をジョーカーのエネルギーが溢れ出し翔太郎を覆うとボロボロだった肉体を完璧に回復させた。

 

そして、ゆっくりと若菜を指差し告げる。

「さぁ、お前()の罪を....数えろ。」

 

悪魔により与えられた殺す為の力を今度は救う為に使う。

その覚悟のもと宣告された言葉は今の若菜の心に深々と刺さるのだった。

 

 

 

 

Another side

 

ゴエティアにより無名を地球の本棚へ転送された頃....孤島での戦闘は佳境を迎えていた。

研究所のあらゆる防衛施設を破壊され警護していたミュージアムの構成員も全員、倒される。

 

周囲への危険を取り除いたレイカと京水はメイカー前に辿り着いていた。

「久し振りねメイカー元気だった?」

『お久し振りですねレイカ様、京水様。

私は自立思考AIです。

機械の私に体調の変化はありません。』

 

レイカの問いに淡々と答えると今度は京水が話す。

「相変わらず真面目ねメイカー。

ガイアインパクトが始まったのにまだミュージアムの操り人形でいるつもりなの?」

『そもそも私は園咲家の願いを叶える為に作られました。

創造主に従うのは自然な事です。

私の目的はミュージアムの利益となるメモリを生産すること....例えガイアインパクトによって私が消滅したとしてもそれは私が用済みになったと言う事実でしかありません。』

 

「用済み.....ね。

メイカーはもう、自分に用は無いと思ってるのかしら?」

『琉兵衛様は仰られました。

ガイアインパクトを開始したと.....

本計画を私は聞かされています。

その中身から推察した結果、

計画が成功した場合、私の役目は無くなります。

ガイアメモリの製造も若菜様が地球の本棚から知識を得ることで行えるからです。』

 

「んじゃ、アンタはどうなるのよ?

用済みになったら捨てられるの?

それとも壊されるの?」

『......それを決めるのは園咲家の方のみです。

貴女ではありません。』

 

その言葉を聞くと京水は笑う。

「そう....なら、園咲家の者が命令すれば貴方は言うことを聞くのね。

良かったわ無名の考えが間違えてなくて」

 

そう言うと京水は背負っていた金属製の箱を操作すると中が開きそこからフィリップが現れた。

 

フィリップは頭を抑えながら京水に文句を言った。

「確かに僕の意識がWに転送されている間は痛みを伴わないがだからと言って僕の身体を軽く扱って欲しい訳じゃ無いんだが....」

「あら?貴方は男の子でしょ?

これぐらいの傷は勲章よ勲章.....」

 

ケースから出て来たフィリップはメイカーに目を向ける。

「これが無名の言っていたメイカーか。

興味深いね。」

『......データ検索完了。

お初にお目にかかります"園咲 来人"様。』

 

「やはり、父は僕を家族として登録していた様だね。」

『えぇ、貴方は園咲 琉兵衛様のご子息としてデータ登録されています。』

 

「なら、僕の命令は聞いてくれるかな?」

『......命令権限を確認しています。

確認結果を通知....貴方が持つ命令クリアランスは園咲若菜様よりも下に登録されています。』

 

「それはどう言うことだい?」

『現状、命令クリアランス最上位は琉兵衛様が若菜様へと書き換えております。

その次のクリアランスにおられるのが来人様と冴子様です。』

(まさか、こうなることを父さんは予想していたのか?)

 

『最上位クリアランスをお持ちの若菜様が命令許可を受諾していない以上、来人様に権限はありません。』

「何よそれ....ふざけんな!」

レイカがその言葉を聞いて怒りから椅子を蹴りあげた。

「レイカ落ち着きなさい!」

 

「でも、こんな所で止まったら克己は何の為にっ!」

「レイカっ!....分かってるからその事は黙ってて....お願いよ。」

レイカと京水は堂本と克己が消滅した事を聞いていた。

だからこそこの作戦だけは成功させようと意気込んでいたのだ。

 

しかし、フィリップは口を抑えながら考え事をしている。

そして、考えが纏まるとメイカーに問い掛けた。

「メイカー、僕が君に命令するには若菜姉さんから許可...若しくは若菜姉さんが最上位クリアランスに違反している証拠を提示できれば良いかな?」

『命令クリアランスの要項を確認中.......

確認結果、両方とも是。

来人様が提示した2つの何れかをクリアしていれば来人様のクリアランスは上がり命令の受諾が可能です。』

 

「良かった。

もう一つ確認だけど若菜姉さんを園咲家の家族と認定しているのはあくまで入力されたデータ状の定義?

それとも遺伝子情報等の確定された情報から選定するのかい?」

『確認......後者です。

当初に登録された遺伝子データを元にクリアランスの選定を行いました。』

 

「その登録を行ったのは何時だい?」

『確認......来人様が塔で研究をなさっていた時の遺伝子データです。』

 

「良し、なら若菜姉さんの"今の遺伝子データ"を確認してくれ。

ミュージアムの医療データに入っている筈だ。」

『.....それは何故ですか?』

 

「僕の予想が正しければ若菜姉さんの遺伝子データが書き換わっている可能性がある。

もしそうだとしたらクリアランスの見直しが必要だ。

少なくともそれを終えるまで園咲家の使うAIメイカーとしての用がある筈だ違うかな?」

『......来人様の提案を受諾します。

ここ最近の若菜様の遺伝子データを確認します。

暫くお待ち下さい。』

 

そう言って黙り込んだメイカーを見つめながらレイカがフィリップに尋ねる。

「ねぇ、遺伝子データってどう言うこと?

私にも説明してくんない?」

「良いだろう。

どうせ、確認するまでは動けないからね。」

 

「ゴエティアは若菜姉さんを宇宙の巫女として作り替える段階で恐らくエクストリームの力と僕らから奪い取ったクリスタルサーバーの力を使っている筈だ。

そこから更に遺伝子レベルでの改造を加えて洗脳をかけている。

 

だからこそ、若菜姉さんの洗脳を僕に解くことは出来ない。

エクストリームとプリズムの力を使おうにも細胞と完全に融合してしまっている。

切り離そうとすればそれこそ命を奪うしかなくなる。

 

だからこそ、余計にエクストリームを使えなかったんだ。

万が一にでも僕らの攻撃が当たってしまったら致命傷になりかねないからね。

 

じゃあ、どうするか?

僕と無名は意図的に融合を進める。

そして、そこで僕はメイカーと協力して若菜姉さんの洗脳を解いて融合を解除する。

 

そして、無名がゴエティアに勝てば両方から地球の亀裂を修復する。

それが僕らの立てた計画なんだ。

その為に何が何でもメイカーの協力が必要なんだ。」

「つまり、その遺伝子がゴエティアのせいで変な手が加えられている事が分かればメイカーを仲間に加えられるのね。」

 

「かいつまんで言うとそう言うことだ。

おっと、どうやらメイカーが答えを出した様だよ。」

フィリップがそう言うとメイカーが結果を伝える。

『調査結果を報告致します。

園咲 若菜様の遺伝子データの共通レベルは"48%"と確認出来ました。

以下の事からクリアランス評価に誤りがあると発覚。

現段階よりクリアランス変更を承認。

最上位クリアランスを来人様に移行します。』

 

「流石ね!これでメイカーは来人ちゃんの物よ!」

喜ぶ京水とレイカだがところ変わって今度はフィリップの顔が曇る。

「どうしたの?」

 

「メイカー.....もう一度確認させてくれ。

今の若菜姉さんの遺伝子データの共通レベルは48%で間違ってないのかい?」

『はい、1週間前のデータを元に確認致しました。

48%で間違いありません。』

 

「つまり....姉さんは"半分以上"自分の物ではない遺伝子に置き換わっているのかい?」

『その通りです。』

 

「「!?」」

 

その言葉を聞いてフィリップの危惧していることがレイカと京水にも理解できた。

半分以上、自分の遺伝子では無い何かに置き換わっている。

それがゴエティアの手によるものだとは理解しているがだからこそ、今の彼女の身体がどうなっているのはフィリップの不安が加速した。

 

(急がないと不味い!)

 

そんな話をしていると研究室の警報ブザーが鳴り響く。

「どうしたの?」

『確認....島にミュージアムの構成員が集まっています。』

「どう言うこと?

私達が制圧したのを嗅ぎ付けるにしても早すぎる。」

 

『島からミュージアムへの援護要請は行っていません。

構成員の装備からガイアメモリの周波数を確認致しました。』

「....ってことは考えたくないけど」

「えぇ、恐らくは"クーデター"でしょうね。

裏切られると分かったからこそ孤島のメイカーを抑えようとしているのね。」

 

「くっ、メイカー!

今から僕の計画を説明する君は僕に協力してくれ。」

『承知致しました来人様。』

「レイカさん!京水さん!...申し訳ないが」

 

「奴らの足止めね?

分かっているわ。

あんなブサイク共も来人ちゃんに近付ける訳無いから安心して」

「あたし達は元々、傭兵よ。

寧ろ、やっと本領発揮できるって感じ.....だからアンタも頑張りなよ。

まだまだやることあるんだからさ。」

 

そう言うとレイカと京水は部屋から出ていくのだった。

 

 

 

 

Another side

 

「おい、本当にやるのかよ?」

「今更、怖じ気づいたのか?

だけどここで動かねぇと俺達は本当に終わりだぞ?」

 

ミュージアムに所属している構成員の中で今のガイアインパクトを不安視している一派がゴムボートに乗り孤島へと向かっていた。

 

「お前らも本当は分かってるんだろ?

ガイアインパクトが起こればミュージアムは俺達を用済みとして始末するってよ。」

 

きっかけは対ガイアメモリ部隊が発足されてからだ。

昔までは大きな失敗をしなければ見逃された組織の風潮が代わりメモリブレイクされたらその場でミュージアムの処刑人に始末された。

 

まるで使い捨ての道具の様にアッサリと俺達の命を切り捨てたのだ。

そして、井坂の反乱を抑えようとした仲間が死んだ時も若菜様や琉兵衛様は何もしなかった。

 

俺達を見る目すら変わった。

前までは建前でも笑顔や信頼の目を向けていたが今は冷たく冷酷な目を向けられる。

まるで汚物やゴミを見る目だ。

それで理解した。

 

俺達は用済みのゴミなのだと.....

だが、俺達だって死にたくねぇ。

組織に用済みとして殺されるぐらいなら少ないチャンスに手を伸ばす。

元幹部だった無名が作ったガイアメモリ生成施設がち図に乗らない孤島にあると言う噂を聞いていた俺は同士を集めてその場所を調べあげた。

 

そして、ガイアインパクトが起こるタイミングで謀反を起こしたのだ。

謀反に参加したのは総勢50人の構成員。

全員、ガイアメモリを所持し複数のゴムボートで孤島へと向かったのだ。

 

孤島に到着すると先ずはその風景に驚いた。

「何だこれ....もう壊滅してんじゃねぇのか?」

島を守る為に置かれていた砲台やトラップらしき物体が破壊され黒煙を上げていた。

 

「おい!どうする?」

「どうするもねぇよ。

兎に角、上陸して奪える物を探すぞ!」

 

そう言って構成員が上陸していくと空が急に明るくなった。

「何だ....!?逃げろぉ!」

男が上陸した構成員に叫ぶがそれが届く前に空中から落ちてきた炎の塊に構成員が巻き込まれてしまう。

「何なんだよ!?これは!?」

「ボサッとせずにメモリを挿せっ!」

 

男の言葉に合わせて残った構成員はメモリを起動すると身体に挿した。

 

「BAT」

 

構成員のリーダーとなっていた男はバットメモリを首に挿すとバットドーパントに変わり空へと飛び上がった。

(空中から炎が落ちてくるなんてあり得ない。

何かいる筈....)

そうして、空中を偵察しようとしていたリーダーは急速接近してきた赤いライダーの蹴りを受けて落下していく。

 

(何....だ...?あの....ライ...ダー...は?)

落下しながら男は身体を動かそうとするが力が入らない。

俺を蹴った仮面ライダーは落ちていく俺を見ながら言った。

 

「悪いけどここは戦場だからね。

油断した奴から死んでいくのよ。」

そう言われて俺は理解した。

(あぁ、クソッやっぱり俺はしくじったのか。)

 

そう考え後悔しながら胸に大きな穴を空けてメモリブレイクされた男は落下しながら絶命するのだった。

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