始めは目的の為に造り出された人形だった。
最愛の存在を甦らせる....その目的を果たせれば良かった。
だが、そんな考えとは裏腹にこの人形はこの世界で新たな選択を繰り返し今まで見たことの無い流れを見せ続けた。
だからこそ、私はその姿を見て希望を覚えた。
私の想像を越える彼ならばきっと彼女への道を見つけてくれると思ったからだ。
赤と黒で彩られた地球の本棚の深淵にある空間.....
その中には現在、二人の人がいる。
超越者として幾億の世界を繰り返してきた
そんな二人は地球の本棚と言う空間の中で相対していた。
『正直、驚いたよ。
まさか、ここまで私の想像を越える結果を見せてくれるとは思っていなかった。』
「僕の創造主である貴女からそんな評価を受けるとは....光栄だとでも言うべきですかね?」
ゴエティアの称賛に対して無名はそう皮肉った。
『そんな謙遜しなくとも良い。
どうせ、ここまで来れば後は結末まで進むしかない。
ブラフや言葉による牽制も最早、意味を為さない。
それはお前も分かっているのだろう?』
「.....えぇ、ここから先は外にいる
その結果で私達のどちらが勝つか決まります。」
『そうだ。
ここから先、我々は観客も同然。
どうなるにしても私達の融合は不可欠であり融合した後に行うことも変わらない。
ならば......少し位、語らっても問題ないだろう?
"Time"起動。』
ゴエティアがそう言うと本棚の上空に大きな時計が現れた。
『時間を一時的に止めた。
余り長くは止められないが二人で語るには十分だろう。』
そう言うゴエティアの目の前に机と椅子が2つ現れる。
机の上にポットと茶菓子も置かれている。
「語りたいのなら座ってしませんか?」
『もう、私の力を完全に使いこなしているとは....流石は無名と言っておこうか。』
そう言って二人は席に着くと無名がポットを取り二人のカップに飲み物を注いだ。
『ありがとう.....あぁ、良い匂いだ。
人間は今まで色々な物を作り上げてきたがティータイムの発明はその中でも傑作の一つだな。』
「えぇ、敵同士ですら語らい会える空間を作れますから」
『そうだな....お前を造り出した時はこうなるだなんて想像もしてなかった。』
「僕を造り出したのは僕の身体を使って現実世界.....貴方が言う所の箱庭に降り立つのが目的だったのですか?」
『それもあるがもう一つの目的は君の身体が超越者の意識を宿しても箱庭で生存できるのかの確認もある。
知っての通り、超越者の肉体のままでは力が強すぎて箱庭で生きることが出来なかったからねぇ。』
「それで生きられるのならコスモスを甦らせる事も可能だと?」
『あぁ、コスモスもそうだが地球の記憶になった超越者達も甦らせることが出来る。
精神さえ復元出来れば後は箱庭に入られる肉体を用意するだけで良いのだからね。』
「その始めがコスモスと言う訳ですね?
.....僕はここでコスモスの意思に触れました。
そこで、超越者の記憶を見た....その最後も」
『やはり、コスモスが君に力を貸したのか。
彼女は今もここにいるのか?』
「....分かりません。
僕も会えたのはその一瞬だけですから」
『そうか.....彼女はどうだった?
元気にしていたかい?』
「....泣いていました。
貴方の所業を見て....元に戻って欲しいとずっと願っていました。」
『.....相変わらず彼女は優しいな。
私や地球に生きる人間をまだ心配してくれるとは...』
「コスモスさんの考えを知ってどうして?
.....どうしてガイアインパクトを起こしたんですか?
それで仮に甦れたとしても彼女が喜ぶとは僕は思えません。」
無名の指摘にゴエティアはカップに注がれた飲み物を飲むとゆっくり答える。
『"そうだろうね"。
優しい彼女の事だ。
きっと悲しむだろう。
私を侮蔑し変わる世界に絶望するかもしれない。』
「それが分かるならどうして....」
『でも、彼女の命は生き返らせられる。
タナハと私の望みは叶えられる。
これから先の彼女の笑顔は守れる。
今は悲しくとも何れ彼女は笑顔になれる。』
「そんなの....貴方達の勝手な妄想じゃないですか!
本人の感情を無視した...エゴですよ。」
『エゴ.....か。
だが、この世界は"エゴまみれ"だ。
園咲 琉兵衛も"家族を愛したいエゴ"で悪の道へ堕ち
風都の悪を...."罪を清算し街を守りたいと言うエゴ"で鳴海 荘吉は仮面ライダーとなりそれを弟子である左 翔太郎も受け継いだ。
"復讐と言うエゴを満たす"為に園咲 文音や照井 竜も行動した。
"エゴ"とは欲望であり願いだ。
それを否定すると言うことはこの世界の生きると言う現象を否定することに繋がる。』
「だから....許されると?」
『お前もそのエゴでこれまで行動してきただろう?
予め持っていた知識を利用し生かしたい者を選別しお前が求める結果を得続けた。
生かしたい者生かし殺したり者を殺す。
これをエゴと呼ばずに何と呼ぶ?
お前に私のエゴを否定する資格はない。』
ゴエティアの言葉を受けて無名は黙ってしまう。
自分のエゴでこれまで生きてきたその事実を無名は否定出来なかったからだ。
『お前も私も自分のエゴを通すだけの力があった。
そのエゴを貫いて生きてきただけに過ぎない。
だから、私もお前を否定しない。
良くぞ貫いた。
超越者たるこの私を相手に....称賛に値するよ。
どんな結果になったとしても私は君を忘れない。
造られた身でありながら私を出し抜き張り合った君の存在を.....そして誇りに思う。』
「やはり、貴方は上に立つ存在なのですね。
そのカリスマ性....正直敵でなければ着いていきたいと思ってしまいます。」
『そう言われるとは光栄だな。』
「教えて下さい。
超越者とは一体何なのですか?
何故、貴方達の様な存在が産まれたのですか?」
『.....その答えだけは私も分からない。
あらゆる生物や物体、事象の祖でありながら我々の存在理由は私達自身も分からない。
もしかしたら、我々も造られた存在なのかも知れないがそれを示す物もない。
これだけの力を有しながら何も分からない。
それが我々、超越者だ。』
「.......」
『だが、敢えて言葉で現すのなら我々は君達、人間よりも圧倒的に愚かな種と言えるかもな。』
「愚かですか?」
『知識のみを知り全てを知ったつもりになり、感情の赴くままに行動した。
人と違い我々は失敗を知らなかった。
故に.....滅びた。
最初はその失敗は仕形がないと思っていた。
だが、お前達、人間の所業を見て理解した。
我々が愚かだったのが失敗の原因なのだと.....』
「ゴエティア.....」
そう話している二人の上に何か強い光が起きた。
『どうやら、彼方の融合も始まったようだ。
此方もそろそろ始めようか?』
そう言ってゴエティアが予め用意していた融合の為に作った力を発動させようとするがここで違和感に気付く。
『何だ......この不快感は?
我々じゃない....上での融合が進んでない?
どういう事だ!?』
「ゴエティア....貴方の思いは理解しました。
感情を手に入れた故に今でもコスモスを想い取り戻そうとする覚悟を....でもだからこそ、僕も譲れない。
この世界を守りたい!
それが、僕自信の意思です。」
無名はデモンドライバーを着けるとデーモンメモリを装填した。
『私と戦っても意味など無いぞ?』
「いいえ、意味はあります。
この戦いの決着が僕の打てる"最後の一手"だからです。」
『どういう意味だ?』
「先程の疑問について答えましょう。
上で何が起こったのか?
単純な答えです。
フィリップとの融合が止まった。
故に本来起こるべきガイアインパクトが起こらずシステムにバグが生じているんです。」
『バグ?....バカな。
そんな事をどうやって起こすんだ?』
「このガイアインパクトを止める為、僕はフィリップにある存在を味方につけるよう頼みました。
それが上手くいったのでしょう。」
『味方?....
彼等がお前達に味方したと言うのか?』
「いいえ、違います。
いるじゃありませんか?
ミュージアムの為に造られた.....いや、僕が造らせた最高の役者が」
『......まさか!?』
気付いたゴエティアに無名が告げる。
「えぇ、"メイカー"です。
今彼はフィリップと共に地球の本棚にいます。」
『そんな事は不可能だ。
あれは所詮、機械だぞ?
機械が何故、本棚に.....』
「メイカーの開発コンセプトは擬似的に地球の本棚を作り出す事、言い換えればメイカーの中には小型の本棚がありそれをずっと使ってきた。
つまり、大量のデータを選別し自我を保てるAIなのです。
そして、ミュージアムにより多数のメモリを造り出した今のメイカーならば地球の本棚に入れると読んでいました。」
『.....だからこそ、フィリップは風都にいなかったのか?
メイカーを手中に置く為に』
「えぇ、園咲家の者以外メイカーに命令できない。
そうプログラムされていましたから....」
『だが、仮に入れたとしても意味など無い。
所詮はただの時間稼ぎだ。
若菜により消去され融合が再開される。
お前のやったことは無駄だ無名。』
「本当に無駄かどうかはフィリップにかかってます。
言ったでしょう貴方とここで戦うのが僕の最後の一手だと....僕の策は成りました。
ここから先は関係ない。
貴方との決着だけです。」
『決着?』
「えぇ、全ての決着です。
此方の言葉を借りるなら"罪を数える時間"が来たのですよゴエティア。
この世界を繰り返し悲劇を生み続けた貴方の罪は重い。
それに荷担した僕も同罪です。
だから、一緒に数えましょう....罪を」
『それが私達の戦いだと?
.......良いだろう。
何を企んだ所で結末は変わらない。
ガイアインパクトは成功しコスモスは甦る。
それを見る前に死にたいのなら望み通りにしてやる。』
ゴエティアがそう言うと腹部にガイアドライバーⅡが現れる。
それを見た無名はベルトを展開した。
「「DEMON」」
「変身」
二人の変身音が被りながらお互い姿を変えていく。
無名は仮面ライダー、ゴエティアはドーパントへと変わると両者は武器を持った。
無名はアームライザーを刀の形に変え、ゴエティアは黒炎で刀を生成する。
両者が、睨み合いながら機会を伺う。
互いの想いが高ぶった瞬間、両者の刃がぶつかった。
「ゴエティアぁぁぁぁぁ!!」
『無名ぃぃぃぃ!!』
刃がぶつかる度に火花を放ちながら切り結んでいく。
互いに防御を捨てた攻撃をの連鎖はお互いの肉を傷付けていくが止まらない。
「この地球は絶対に守る。」
『コスモスを生き返せるのは私だ。』
その想いが刀に力を、加えていく。
ゴエティアは距離を離そうと空いた左手に発生させた黒炎を放つが無名の身体に触れた瞬間、黒炎は欠き消えてしまう。
「僕達のメモリは同じ....つまりそんな弱々しい黒炎は効きません。」
『その様だな。
黒炎を集約した武器でなければ意味が無さそうだっ!』
ゴエティアは背後から鎖を召喚すると無名の腕に絡み付かせる。
しかし、そんな攻撃では無名の隙すら作れない。
『
アームライザーが槍へと変わると逆に鎖を巻き付けゴエティアの右腕に絡ませると地面に槍を刺した。
右腕の自由を失い刀を振るえなくなったゴエティアの顔面を無名は殴る。
『ぐっ!』
「まだまだぁ!」
無名は追撃を行おうとするが鎖と刀を黒炎へ戻したゴエティアの自由になった右手で攻撃を止めると腹部に蹴りを加える。
「うっ!」
『そう上手くはいきませんよ無名。』
「なら、これはどうだっ!」
無名はゴエティアの右腕を巻き込むようにして身体を持ち上げて背負い投げるとその勢いを利用して刺さっている槍に向かい抜き取った。
距離が出来た事でお互い仕切り直しとなる。
『随分、強くなりましたね。
最初の頃なんて格闘はからっきしだったのに....』
「伊達にNEVERの皆さんに鍛えられていませんよ。」
『.....やはり、現実世界で痛めつけておくべきでしたね。
ここに来てしまったらエクストリームの力も意味を為さない。』
エクストリームの力は本棚と繋ぎ直接力を引き出せる。
だが、本棚にいるこの状況では使う力に触れないといけない。
エクストリームはあくまで現実世界では強力だが本棚での使用は想定されていないのだ。
(本棚に向かう隙を無名は見逃さないだろう。
やはり、デーモンメモリの力で倒すしかないか。)
『はぁ....まさか二度使うことになるとは』
溜め息をついたゴエティアは右手に黒炎を集約させるとWを倒した槍を生成する。
「それは?」
『私のお気に入りです。
戦うのならば使い慣れた武器が一番ですから....』
対する無名はアームライザーを刀のモードに戻す。
『貴方の得意武器は刀ですか。』
「これまで何度も使ってますからね。」
生成した武器を構える両者は一呼吸置くと走り出す。
互いの武器の刃が交わった瞬間、火花を発する。
『ここで貴方を倒しガイアインパクトは完成する。』
「させません。
僕達、仮面ライダーが止めます。」
互いの決意を言い放ちながらも長い戦いが今、始まるのだった。
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