吹き飛ばされた三人の中でハートが早く立ち上がった。
しかし、その顔は悔しさに歪んでいる。
「すまない泊 進之介。
お前の覚悟を俺は無駄にしてしまった。」
『折角のチャンスを不意にするとはなハート。
やはり、中途半端に人間を理解した影響か。』
ハートを嘲りながら立ち上がった蛮野の腹部の装甲には亀裂が内部にダメージは入っていなかった。
その理由は蛮野の攻撃から進之介を守るため咄嗟にワイルドの右肩にあるタイヤを殴り付けて蛮野の拳に当てて攻撃を防いだのだ。
二人のパワーを受けたタイヤは完全にひしゃげており進之介の変身も解除されていた。
そして、後を追う様にハートも人間態へと姿を変えた。
『どうやら、勝負はついたようだな。
お前らの反抗は全て無駄に終わるぞ?』
蛮野はそう言うと腹部の亀裂に手を当てるとそこからエネルギーが溢れ出し亀裂を完治させた。
そして、そのエネルギーを全身に行き渡らせることで身体につけられた細かい傷ですら回復させてしまった。
『メディックの力も既に私の物....もうお前たちに用はない。
ここで死ねハート、メディック。』
蛮野がゴルドロイミュードの残骸からドア銃を作り出すとハート達に向けた。
咄嗟にハートがメディックの盾になる。
まるで重加速を受けた様に周りの景色がゆっくりと見えていた。
進之介は重い身体を何とか起こす。
(間に合わねぇ!)
進之介はハート達に手を伸ばす。
それはグローバルフリーズの時、相棒を失いかけた光景と酷く似て見えた。
(俺は、またこの手で取り逃すのか?
相棒を助けてくれたハートを見殺しにするのか?
ダメだ!そんな事を許せるかっ!)
"もっと速く.....誰よりも速く"
メディックに覆い被さるハートの目に進之介の姿が移った。
自分達を助けようとボロボロの身体を起こして手を伸ばしている。
これまで何度も戦ってきて知った気になっていたが実際に話すと正義感溢れロイミュードでも差別せずに犯罪者と向き合う良い人間だった。
(お前に会えて....良かった。
やはりあの時に助けて正解だった。)
ハートが思い出すのはグローバルフリーズの最中、重加速で急に動けなくなった影響で相棒がいる場所に銃を発砲した時の進之介の顔だ。
今と同じく溢れ落ちてしまいそうになる命を助けようと懸命になっていた。
それは今でも変わらない。
きっと進之介は間に合うなら自分の身体を盾にしてでも蛮野の攻撃を止めるだろう。
(不甲斐ない....やっと信じれる人間に出会ったのにまだ何も出来てない。
戦ったことがあるだけだ。
俺がもっと強ければ.....)
"もっと力があれば......誰も寄せ付けない力が..."
これはある種の奇跡なのだろう。
原作のドライブでは交わることの無い感情だった筈だった。
((もっと
だが、この蛮野の行動が欠けていた
「「蛮野よりも....もっと!!」」
「「
急に蛮野により放たれた弾丸が弾かれると蛮野の身体に何かが衝突し仰け反った。
『ぐあっ!?』
そこには進之介が使っていた"シフトスピード"とハートのコアが内蔵された"スパイダーバイラルコア"が螺旋を描きながら両者を追いかけるように回転していた。
「これは....一体?」
二機の回転は小さくなっていき素早さをましていくとエネルギーが溢れだし一つのシフトカーへと変わると進之介の手元に収まった。
「俺とハートのシフトカーが融合した?」
『そんな事が起こるなんて完全に予想外だよ。』
新たに生み出されたシフトカーの形はメインはシフトスピードと変わらないが全面に二本の浮き出たラインと後方にブースターを思わせる四本の足が付いておりまるでシフトスピードに機械化された蜘蛛が覆い被さっているようにも見えた。
それに触れた進之介は感覚的に理解した。
これを使って変身が出来ると.....
進之介は立ち上がるとベルトのイグニッションキーを回した。
そして、手元のシフトカーを変形させるとシフトブレスに装填した。
深呼吸して覚悟を決めると進之介は叫ぶ。
「変身っ!!」
シフトブレスを思いっきり倒すとベルトがシフトカーを認識する。
進之介の身体が変身シークエンスに入ると倒れていたハートの身体が変形していきドライブの身体と融合していく。
シフトスピードの見た目をしながら両手足にブースターがつくと装甲が厚く強化され胸部にはシフトスピードの前面を思わせる装甲が付いた。
カラーリングは赤と金色で頭部のヘッドウイングは大型になるとハートの様な角へと形を変えた。
変身が終わった進之介は自分の身体の変化に驚く。
「さっきまでいつ倒れてもおかしくない程、ボロボロだったのにこのドライブになってから力が溢れて止まらねぇ....」
『全くの想定外、アメイジングな体験だ!
このドライブになった事で進之介の肉体のダメージが完全に回復した様だ。』
『成る程、つまり俺と進之介が融合したことで新たな進化が起こったと言うことだな?』
『そう言う解釈も出来るだろうね。』
「......は?」
進之介は今感じた違和感をベルトさんに尋ねる。
「ベルトさん今誰と会話してたんだ?」
『ん?進之介に決まっているじゃないか。』
「いや、俺喋ってなかったんだけど.....」
『どうしたクリム?進之介?何を驚いて...』
『「ハッ..ハァ...ハートぉ!?」』
進之介とクリムはドライバーから聞こえるハートの声に驚愕する。
『急にデカい声を上げるな。』
「いやいや、驚くなって方が無理があるだろ!?
てか、ベルトさんなら分かってたんじゃないのか?」
『こんなイレギュラーな事態分かるわけがないだろう!?
ハートと進之介がお互いの意思を残したまま融合したんだぞ!
計算外にも程がある!』
『二人とも落ち着け。
今は変身できたと言う事実を受け入れれば良いだろう?』
「何かめちゃくちゃ冷静だなハート。」
『何故かパニックになっている私達の方が間違っていると思えてきたよ。』
「取り敢えず俺とベルトさん、そしてハートの三人でドライブになれた訳だ。
ハート、俺とひとっ走り付き合って貰うぜ。」
『ふっ、良いだろう。
たまにはこう言ったのも悪くはない。』
新たなドライブを蛮野は冷静に見つめながら言った。
『まさか、人間と融合する進化を果たすとは....興味深い変化だなハート。』
『随分と余裕があるな蛮野?』
『雑魚が何匹集まったところで雑魚は雑魚だ。
このゴルドロイミュードの前では.....』
蛮野が会話に集中した瞬間、ドライブが蛮野の目の前に現れていた。
『なら』「試してみるか?』
その言葉に反応する前に蛮野の身体がまるでピンボールみたいに吹き飛ばされると壁に激突した。
自分が何をされたのか分からないまま立ち上がると蛮野はハンドル剣を生成しドライブに向かって振り下ろすが刃をドライブは握り攻撃を止めると握り込んだ拳でハンドル剣ごと蛮野を殴り付けた。
振るわれた一撃はハンドル剣を砕き蛮野の胸部に当たると火花を上げながら吹き飛ぶ。
何とか立ち上がった蛮野はメディックから複製した回復能力を使いダメージを回復させるが動揺は収まらない。
『バカなッ!私のゴルドロイミュードの性能を上回っているだと!?
.....あり得ない。
所詮はハートとドライブが融合しただけだろう!
ドライブの力とハートのデッドゾーンを手に入れている私が負ける道理など有りはしな...』
それ以上の言葉を紡ぐ前に急接近してきたドライブの徒手空拳に蛮野は対応する。
『無駄だ!ゴルドロイミュードには戦闘パターンを学習する能力があるお前の攻撃などもう当たら!?』
そう言ってドライブの攻撃を防ごうとした右腕が吹き飛ばされ空いた腹部にドライブの拳が炸裂する。
『ぐぶっ!?』
ゴルドロイミュードの想定してないダメージに蛮野は後退りした。
『な...ぜだ?....ゴルドロイミュードは....お前の戦闘パターンは...解析出来た筈...』
何故、蛮野は今のドライブに勝てないのか?
それは"ドライブタイプハート"の性能が段違いに変わっていたからだ。
この形態のドライブはタイプスピードの
つまりこの形態のドライブはタイプスピードとデッドゾーンの力を100%解放できるのだ。
通常なら負荷で肉体にダメージがかかる100%をノーリスクで使える。
そして、ゴルドロイミュードがコピーしたのは"肉体の負荷を抑えながら戦っていた頃の力"なのだ。
だが、今その事を理解している者は誰もいない。
ドライブにとって重要なのは今のこの姿ならば蛮野に勝てるかもしれないと言う事実だけだ。
蛮野はダメージを回復させるためメディックの力を発動させる。
『蛮野はメディックの力でまた回復する気だな。』
「ったく、しつこいな。」
進之介は辟易して言うとハートが答える。
『問題ない。
メディックの力で回復しようとするなら...
それ以上の力で叩き潰すだけだ。』
「そうだな。
良し、こっから本気で行くぞ二人とも!」
進之介が気合いをいれるとイグニッションキーを入れてシフトカーを三回展開した。
『HE,HE,HEART』
シフトアップが完了すると両手足のブースターから炎が溢れ出し身体から熱が放出される。
「うおっ!...凄い力だ!
抑えるのだけて精一杯だ。」
『どうやら、長い時間は使えないようだな。
ならば、動ける内に片をつけるぞ進之介!』
「分かったぜ....ハート、ベルトさん頼む!」
進之介が地面を蹴り蛮野に向かって走り出す。
その瞬間、溢れ出した力で踏みつけた地面が爆発した。
そして、一瞬の内に蛮野の元に辿り着くと顔を殴り付けた。
『なぐぁ!?』
「まだまだぁぁ!!」
進之介は吹き飛ぶ蛮野に一瞬で追い付くと殴り蹴りながら前へと進んでいく。
その過程で工場の機械に激突するがそれを蛮野ごと破壊していった。
正に、暴力の嵐と言っても良いドライブの攻撃が続いていく。
(回復が....追い付かない。)
指一つ動かせず荒れ狂う暴力に晒されながら蛮野の心にあったのは怒りだった。
私のゴルドロイミュードが壊されていく......
旧型の素体であるハートとクリムが作ったドライブの手によって.....ふざけるな!
私の作り出した傑作がこんな奴らに劣るだと!?
偶然の産物で生まれた融合程度に負ける等.......
認められるかぁぁぁぁ!!
蛮野は殴り付けるドライブの両手を掴み攻撃を止めた。
しかし、全身から火花が上がりゴルドロイミュードの装甲はボロボロで千切れた配線や内部が露出していた。
『認められるかぁ.....こんな事を認めてなるものガハッ!!』
ドライブが蛮野を蹴り上げると握っていた両腕が耐えられず千切れてしまいながら空へと飛び続け工場の壁を突き破り空へと飛び上がった。
「これでトドメだ。」
進之介はシフトブレスを操作し必殺技待機状態に移行する。
『ヒッサーツ』
進之介が地面を蹴り上げると空へ飛び上がり両手足のブースターで空へと昇っていく。
そのまま、蛮野を抜き去ると空中で制止した。
シフトブレスを展開し必殺技を発動する。
『FULL THROTTLE』
『HEART』
全身のブーストが更に炎を吹き出すと進之介は蛮野に向かって急降下しながらキックを放つ。
『ふざけるなぁぁぁ!!』
怒りに吠えた蛮野はジャスティスハンターの能力を発動すると自分の身体を使い牢の盾を作り出した。
何重にも厚く作った影響で蛮野の身体はコアのパーツを覗き殆どを消費した。
進之介のキックが蛮野の盾と激突する。
凄まじい火花が上がりながらも進之介の足が盾を貫いていく。
『バッ...バカな!?
何故だ!何故、こうなるのだ!
私は特別な存在だ!
なのにぃぃぃぃ!!』
「その驕りがお前を怪物に変えたんだ蛮野 天十郎。
本当に優秀な者は自分の技術を他人の為に使える。
ベルトさんだってそうだ。
だから、皆に認められている。
アンタは自分の為にしか使わなかった。
他人を家族をロイミュードを犠牲にして.....」
『黙れ黙れ黙れぇぇぇ!!
私こそが唯一無二の存在なのだぁ!』
『蛮野....何故だ...何故そこまで...』
『お前には分かるまいクリムぅ!!
誰からも称賛され敬われている貴様に分かる訳がない!
私の才能は他の凡人とは比べ物にならない!
お前ですらそう言った!
ならば、私こそが称賛されるべき存在なのだ!
なのに.....奴等は私の才能に嫉妬し傲慢にも非難した。
お前もそうだクリム!!
私の事を影で嘲笑っていたのだろう!』
『そんな......私は......』
『お前もだハート!!
私の創造物であるお前までも私を裏切った!』
『創造物であれば何でもして良いのか?
お前は俺の大事な友達を傷付け利用した。』
『私が....創ったんだぞぉお前達をぉぉ!!』
『.....もういい。
お前に奪われた友達は必ず取り戻す。
それだけだ。』
『どいつもこいつも、私を愚弄するなぁぁぁぁ!!』
「これで終わりだ。」
その一言と共に盾が砕けると進之介のキックが蛮野のコアへと激突する。
そのまま、工場へと落下し地面に到達すると蛮野の意識が入ったコアは完全に砕ける。
辺りに静寂が満ちそれはまるで戦いの終わりを告げるようだった。
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