悲しみに暮れる中、工場からは絶えず爆発と破壊が行われていた。
その音を聞く度に二人の心には暗雲が立ち込めていた。
変えることが出来ない運命.....それはまるで鎖の様に人を縛り付けて進んでいく。
絶望も希望も等しく包み込み抗う術すら奪っていく。
そんな運命を変えるには並大抵の力では足りない。
それこそ全てを振り切る速さか力がいる。
そんな速さも力もハートや進之介は持っていなかった。
ただ一人を除いては......
「こんなところで何をしている仮面ライダードライブ....いや泊 進之介。」
「え?」
聞き馴染みのある声に目を向けるとそこにはメディックを担いでいる"アクセルトライアル"の姿があった。
「何で貴方が?」
「俺達、仮面ライダーは街の希望だ。
それはお前も同じだろう市民を守る仮面ライダーの筈だ。
ならば、絶望して足を止めるな。
お前が足掻いた先に救われる未来があるかもしれない。」
「だけど....俺は」
「お前が救えなかった苦しみは分かる。
俺も家族を救えなかったからな。
だが、今は違う。
お前には力があり仲間もいる。
もっと、彼等を頼れ。
お前が思っている程、お前の仲間は弱くは無い筈だ。
今回の事も蛮野の所に突撃する前に先ずは俺に一声かけて欲しかったが....まぁそこは良いだろう。」
そう言うとアクセルはメディックをハートとブレンの近くの地面に下ろした。
「まだ息はある。
怪我をしていることには変わり無いが死ぬことは無い筈だ。」
「貴方は....風都の仮面ライダーか?」
「俺を知っているのか?」
「お前の使っているガイアメモリを見たことがある。」
「....成る程、そう言うことか。」
アクセルは納得するとメモリをドライバーから抜いて変身解除した。
そこで照井の顔を見た進之介は驚きの声を上げる。
「てっててて照井課長!?」
「泊....私はここでは課長ではないぞ?」
「いや、そんな事どうでも良いですよ!
えっ?照井課長は仮面ライダーで風都を守っているアクセルだったんですか?」
「そうだ....因みにクリム・シュタインベルトは俺の事を知っている筈だが?」
そう言われ今度はベルトさんに白羽の矢が向く。
進之介はベルトを腰から外すと顔の前に向けて怒り始めた。
「何でそんな大事なことを隠してたんだよベルトさん!!」
『いや!?その.....ドライブもアクセルも表立って変身者を公表していない。
お互い隠していた方が良いと思って....』
「俺が風都に研修に行ったのは知ってるだろ!?照井課長の事も知ってるのに何で秘密にしてたんだよな!ん!で!』
進之介は怒りのままベルトさんを怒鳴っているのを無視して照井が話を続ける。
「俺が今回、ここに来たのは風都でメモリを売っていたセブンスの元幹部が警察官と癒着していると言う情報を受けたからだ。
結論、癒着していた犯人は仁良だった。」
「!?仁良がガイアメモリ犯罪と繋がってたんですか?」
「それだけじゃない。
通話記録を調べたら蛮野とも取引していることが分かった。
二人の逮捕は済んでいるからこれから余罪が明らかになるだろう。」
『それにしても、良く我々がピンチだと分かりましたね?
何の連絡も行ってなかったでしょう?』
「あぁ、仁良達を牢に入れるのに手間がかかってしまってな。
終わった時には工場が爆破していた。
万が一の事もあると思い中に入ったらこの状況だったと言う訳だ。」
『そう言うことか....だが超重加速の空間で良く動けましたね。』
「俺の使っているトライアルメモリはパワーが落ちる代わりに速さを限界まで強化してくれる。確かに工場に近付いたら身体が重くなる違和感があったがメモリの出力を上げて何とかなった。」
『成る程、ではあの爆発の中、どうやって工場を脱出したのか教えて貰っても良いですか?』
「.......」
『あぁ、失礼照井警視が質問を嫌うのは知っていますが今後のドライブの改善の為にも聞いておきたいのです。』
「別に大したことはしていない。」
「ただ、"爆発の衝撃が此方に来る前に蹴り飛ばしただけだ"。」
『.........』
照井から聞いた答えを受けてベルトさんは絶句してしまう。
その光景を見て進之介が不思議に思う。
「どうしたんだベルトさん?」
『すすすすまないがももももう一度ど言ってくれるかね?』
動揺を隠し切れてないベルトさんから再度尋ねられ照井は答えた。
「だから、爆発が来る前にこの衝撃を蹴って退かしただけだ。」
『........』
絶句。
余りにも単純で驚くべき真実にベルトさんの口調まで崩れる。
『いや、ちょっと意味が分からないな。
君は....その....人間だよね?
まかり間違ってロイミュードとは別のアンドロイドってオチは無いよね?』
「クリム、お前が何をそんなに驚いているのか分からないが俺が人間なのはお前も知っているだろう?
俺につまらない質問をするな。」
『いや....あの...えぇ....』
(あのベルトさんが困惑してる!?)
見たこと無い状況に驚きつつも進之介はハートの元へ向かった。
ハートとブレンは助かったメディックを見て涙を流している。
「メディック...本当に良かった!」
「貴方を助けられて良かったです...メディック。」
「ハート様....ブレン....ありがとう。」
「良かったなハート、ブレン。」
進之介の声を受けてハートは顔を上げる。
「改めてメディックを助けてくれてありがとう泊 進之介。
君には借りが出来たな。」
「気にすんなハート。
それに借りがあるのは俺の方だ。
これで少しでも返せたら良いんだがな。」
「そうか、だがそれでも感謝する。」
そう言って笑顔になっているハートに進之介は尋ねる。
「お前達はこれからどうするんだ?
蛮野がまだ生きている以上、お前達も安全とは言えないだろう?」
「まぁな。
だが、やることは変わらない。
蛮野に洗脳された仲間を解放するのが俺の役目だ。」
「そっか....なぁハート。
人類とロイミュードは共存できる道があるんじゃないか?
実際、蛮野に勝てたのもハートと俺が協力したからだろ?」
「これから先、共闘できるのかと言う意味でなら...."まだ無理"だろうな。」
「!?でもよハート....」
「勘違いするな問題があるのは人類側だけじゃない。
ロイミュードにもあるんだ。」
そこまで言うとブレンが補足する。
「現在、我々ロイミュードは"人類と中立の立場にいるハートの陣営"と人類と袂を別ち戦うべきと主張する"フリーズの陣営"がいます。
ハートが何とかしようと尽力しているのですが蛮野の洗脳もあって上手くいっていなくて.....」
「そうなのか。」
「俺個人としては人類と敵対するのは反対だ。
俺らロイミュードはまだ人間を知らなさすぎる。
蛮野の様な人間しか見てこなかった奴からすれば人類が害ある存在としか見れないが俺やブレン、メディックの様に色んな人間を見てくればそんな考えも変わる筈だ。
だが、先ずは蛮野に洗脳された仲間を解放しないと奴の行動は悪辣だ。
人類とロイミュード、両者が憎み会う様な行動を起こすに決まっている。
俺はそれを止めたい。
何れ、人類とロイミュードが手を合わせる未来の為に....」
ハートの夢を聞いたベルトさんが今度は話し出す。
『遅れてしまったが君達に改めて謝罪を.....
私は蛮野に騙されて彼にコア・ドライビアを提供し野望を叶える手助けをしてしまった。
それで君達が何れだけの損害を被ったか....本当にすまない。』
「俺は色んな人間を見てきてそして学んだ。
心からの謝罪を受けたのならそれなりの返礼をするべきだと.....他の奴等が許せるかは分からないが俺個人としてはアンタに恨みはない。
全ての現況は蛮野だからな。」
そう言うとハートはメディックを抱える。
「俺達は暫く消える。
身体の傷を癒し....強くなる為に」
「そうか....」
「一つ忠告しておく。
蛮野の策は卑劣だ。
人類とロイミュードを利用し必ず目的を達成しようとする。
だから、常に仲間の事を気に掛けておけ。
奴は必ずそこから狙ってくる。」
「分かった....ありがとうな。」
「それと、これは頼みなのだが出来ることなら仲間のコアは破壊せずにして貰いたい。
自ら手を貸してる奴なら兎も角、大抵のロイミュードは蛮野に洗脳されているだけだ。
勿論、人命優先なのは承知しているが....」
「安心しろよハート。
俺もベルトさんも敵対しないなら争いたくはない。」
『蛮野がロイミュードに掛けた洗脳も此方で対応策を考えておくよ。』
「助かる。」
そこまで話すと今度は照井がハート達に話し始める。
「そろそろここから離れた方が良い。
本隊が此方に合流する。
今お前達と会えば敵対する可能性がある。」
「そうだな.....俺達も争うのは本意じゃない。
では進之介、また会おう。」
そう言うとブレンが怪人態になるとハートとメディックを毒で包み込み姿を消した。
それを見終わった後、照井が進之介に話しかける。
「泊、さっきの話は本気なのか?
人類とロイミュードの共存が本気で出来ると思っているのか?」
「それはどういう意味ですか照井警視?」
「彼等はロイミュード側に人類と敵対する陣営があると言っていたがそれは人類側でも変わらない。
それに仁良の様に己の欲望の為に蛮野に手を貸す連中もいる。
そう言う奴等がいると共存の道は危ぶまれる。」
「それはそうですが....でもハートは他の奴等とは」
「それを他の人間が分かるのか?
共闘したお前達とは違ってロイミュードの差など誰も気にしない。
....だから、お前も"考えろ"。
本気でこの状況を変えたいと願うなら俺達、人類側もロイミュードについて知る必要がある。
そして、お前自身が示し続けろ。
人類とロイミュードが共存できると....
"罪を憎んでも人は憎まない"....風都のルールを作った
「.....はい!俺頑張ります照井警視!」
「いい顔だ。
これからも頑張れ泊....いや、仮面ライダードライブ。」
そう言い終わると照井は無線で指示を飛ばす。
「これから先は警察の仕事だ。
泊も特状課の刑事として手伝ってくれ。」
「分かりました!」
こうして、蛮野の起こした事件は幕を閉じた。
主犯を逃がすことにはなってしまったがそれでも俺は無駄な事だったとは思わない。
人類とロイミュードが共存できる可能性が見えた。
そして、俺の仮面ライダーとしての意味を知ることが出来たのだから......
Another side
照井と離れトライドロンに戻った進之介はベルトさんに尋ねる。
「そう言えばベルトさんはさっき、照井さんと話して何をそんなに驚いていたんだ?」
『ん?....あぁ、あの事か。
彼のやったことが机上の空論レベルだったからな。』
「机上の空論って....そんな大袈裟な。」
そうやって笑う進之介にベルトさんは説明を始めた。
『爆発が到達する速度は"爆破する物体の密度"、"爆破の威力"、それに"周囲の温度"によって変化する。
単純計算だがあのゴルドロイミュードが起こした爆発はTNTの10倍程度...そして、超重加速によって物体にかかる密度は上がり更に火災によって周囲の温度も上がっていた。
つまりは爆発の速度が速くなる条件が揃っていた。
あの場において爆発が到達する速度は"ほぼ光速"に近い速度だった。』
「はぁ!?..こっ.....光速ぅ!?
光速ってあの光の速さって事だろ?」
『そうだ更に言えば到達時に発生する衝撃はゴルドロイミュードの装甲すら破壊する....つまりドライブの装甲ですら耐えられない威力であった。』
「それを.....蹴り飛ばしたってことは....」
『"光速と同程度の速度"で"ドライブの装甲すら破壊する威力を持った蹴り"を照井警視は放ったと言う事になる。
しかもメディックを救出する為、恐らく何度も爆発があった筈だ。
それを全て無効化したとすれば.....』
「.....一応聞くけど今のドライブでそれは可能なのか?」
『仮にゴルドロイミュードがドライブに変身したとしても蹴りを放とうとした瞬間、脚部が崩壊して爆発の餌食になるだろうな。』
「えぇ....ってことは今の照井警視ってゴルドロイミュード以上の頑丈さがあるってことか?」
『そう言うことになるが....そうなるとあらゆる科学分野の学問に喧嘩を売るレベルの結論となってしまってね。
目の前に事実があると言うのに私としたことが混乱してしまったと言う訳だ。』
「昔から思ってたけどヤバイ人だよなぁ照井警視って....本当に味方で良かったよ。」
『それに関しては私も同意見だ。
そう言えば進之介、ハートと融合して身体に変化は無かったか?』
「ん?....まぁ、身体が何時もより重くは感じるがそれだけだな。」
『そうか....』
ハートとの融合はベルトさんからしても予想できないイレギュラーな事態だった。
(想定外のバイラルコアとシフトカーの融合。
あの変身自体、ドライブシステムが想定していない行動だった筈なのに変身することが出来ていた。
技術的特異点.....これも一種のシンギュラリティと言えるのだろうな。
.....だが、お陰で此方も"良いデータ"が取れた。
これを使えば"シフトデッドヒート"の開発も進むだろう。
"ハーレー・ヘンドリクソン博士"の話ではネクストシステムの完成も間近らしい。
今後の事も考えて開発しておいた方が良いかもしれない。)
(
原作にあり得なかった事件が起きたことによりベルトさんが開発した新たなシステムが物語の結末に影響するのかはまた別の話.....
外伝 続編の投稿に関して
-
このまま続きで見たい
-
新規投稿で見やすくしたい