その光景を見た者の心にあったのは恐怖の感情だけとなっていた。
世界を簡単に滅ぼせてしまう地獄の力.....それを備えた女神は血の涙を流し吠え続ける。
俺はこの時、始めて本当の絶望を知ったんだ。
『『あぁぁあああぁああぁああ!!!』』
冴子が若菜の力に触れた瞬間、彼女の口から複数の人間の叫び声が発せられた。
男とも女とも取れる声による慟哭の絶叫は宛ら世界の終わりを知らせる合唱の様にも聞こえた。
そんな声を発する
そこで更に絶叫を上げる人物がいた。
「きゃあぁぁ!あっ..熱い!!腕がっ!」
若菜の身体に手を突っ込んだ冴子が苦しみ出す。
その手からは煙が上がりまるで熔鉱炉に腕を突っ込んだ様に苦しんでいた。
「冴子さん!」
その姿を見て焦った加頭が彼女に駆け寄ろうとするが、その前に加頭の身体が強大な力に抑え付けられてしまう。
「ぐおっ!こ...れは!?」
突如、クレイドールドーパントの口が開き小さな赤い光球が現れると赤いビームが発射され加頭の心臓を貫いた。
一瞬の結末に呆気に取られるが動かなくなった加頭を抑え付けていた力が無くなり地面に倒れて込んだ。
「加頭さん!?....何なの?これは.....
若菜、貴女一体!?...《xbig》あぁあぁぁ!!」
事態が誰も読めない中、タワーに残るのは悲痛な叫びだけとなっていた。
冴子とゴエティアのてにより若菜の力が暴走すると地球の本棚にいた若菜とフィリップにも異変が起きていた。
「あぁぁあぁあぁぁぁぁあ!!」
「姉...さん!?ぐっ!....身体がっ!?」
暴走するエネルギーにより叫ぶ若菜をフィリップは助けようとするが繋がりを持ってしまったフィリップの身体にも少なからずダメージを与えていた。
(一体何が起こったんだ!?
急に姉さんが苦しみ出したと思ったら僕の身体にも痛みが....早く原因を検索しないと!?)
フィリップは身体に襲い掛かる痛みに耐えながら両手を広げて検索の体制を取る。
「検索する...項目は...若菜姉さんの助け方...キー..ワー....ド.....は」
「"超越者のエネルギー"...."若菜さんの細胞"...それと"コスモス"」
倒れそうなフィリップの肩を後ろから現れた無名が支える。
「無名.....」
「ゴエティアから目的を聞いて無理矢理、この階層まで戻ってきました。
奴は若菜さんの身体を使ってコスモスの精神を呼び寄せようとしています。」
「でも、だとしたらこんなに若菜姉さんが苦しむ理由が分からない。
ゴエティアは姉さんの細胞に細工をしていた筈だろう?」
「知っていたのですか?」
「姉さんの細胞が半分以上、別の何かに置き換わっていた。
そして今の無名の話を聞いて推理しただけ....ぐっ!?」
「フィリップ!?
....恐らくこれはゴエティアにとっても想定外な事態の筈だ。
ここで問題が発見できないないのなら原因は
ならば.....見つけた。
"Zone"起動....ぐっ!?流石に身体に効きますね....でも!止めるわけには行かない!」
無名はフィリップをゾーンの力で現実世界に飛ばそうとする。
その力で現実世界に戻ろうとしているフィリップに無名が告げた。
「僕はここで若菜さんを助ける手立てを考えます。
貴方は翔太郎と共にこの暴走の原因を見つけてください!」
「分かった.....姉さんを頼む。」
そうして、フィリップが地球の本棚から消えると無名は若菜へ近付く。
「若菜さん!気を確り持って!」
無名が地球の本棚の力を使い若菜を落ち着けようとするが発動した力ごと無名の身体を弾き飛ばす。
後方に吹き飛んだ無名は本棚に激突する事で地面に落ちた。
無名の口から血が流れる。
「地球の本棚の力を使っても弾かれるなんて.....」
驚いている無名に若菜から発生したエネルギーが牙を剥く。
若菜の身体から放出された赤いエネルギーが形を変え、ビームとなり無名を襲う。
間一髪で回避するが背後の本棚は真っ二つに切断されてしまった。
「この攻撃は一種の自己防衛システムの様な物か。
若菜さんの精神に働きかける力を使って逆に警戒されたか。」
そう分析する無名だが若菜からの攻撃が止まる気配はない。
何とか攻撃を止めようと無名は負担にならない程度に本棚の力を使うがその程度の力では若菜の攻撃を捌くことすら出来ない。
「やっぱり、根本的な原因を解決しないとこっちじゃ対処のしようがない.....時間は稼ぎますが急いでください。」
ここにいないフィリップにそう告げると無名は時間を稼ぐ手段を考えるのだった。
「........まえ」
(んだ?この声は?)
「.....きた....まえ」
(俺に言ってんのか?)
「起きたまえ、左 翔太郎。」
その言葉を聞いて完全に目を覚ました翔太郎の目の前には"死んだ筈の琉兵衛"が翔太郎を見つめていた。
「あんた!?どうやって?」
「説明は後だ。
今は目の前の問題を解決しないとな。」
琉兵衛はそう言って指を指した方向には不気味なエネルギーを発している若菜とそのエネルギーでダメージを受けている
「一体これはどういう事なんだ?」
「恐らく、若菜が継承する筈だった宇宙の巫女の力を冴子が奪おうとしたのだろう。
それがバグとなりシステムが暴走している。
...だが、それにしてもこの力は異常だ。
システム暴走やメモリの拒否反応とも違う私の知らない現象だ。」
そう話していると翔太郎の隣の空間が歪むとフィリップが姿を現した。
「フィリップ!」
「大丈夫かい翔太郎!.....父さん!?どうしてここに?」
「ほぉ、まだ私を父と呼んでくれるのか。
嬉しい限りだが今は若菜を救うことを優先しようではないか?」
「貴方が味方だとは思えない。」
「当然だな。
だが、テラーメモリも無い私には君達を止める術等無い。
信用できないなら捨て駒として使って貰っても構わん。
私は家族を救いたいのだ。」
「........」
まだ信用できないフィリップが黙っているとそれを見ていた翔太郎が言う。
「分かったぜアンタの事を信用する。」
「翔太郎!」
「ここでいがみ合ってても意味がねぇ事ぐらいお前も分かってるだろフィリップ。
それに.....今のアンタからは恐怖を感じねぇ。
本当に家族の事を心配してる.....」
「そうか.....因みに根拠を聞いても?」
琉兵衛の問いに翔太郎は答える。
「"直感"だ。
今のアンタを見てそう感じた....それだけだ。」
自分の結論に迷いの無い真っ直ぐな目を見たフィリップは警戒を緩めた。
「相棒にそう言われたら....信じるしかないな。
父さん、僕も"姉さん達"を救いたい。
手を貸してくれ。」
「....勿論だ。
来人、君は無名と会った筈だ。
彼は何か言ってなかったかい?」
「そう言えば、ゴエティアは若菜姉さんの身体を使ってコスモスを甦らせると言っていた。」
「.....そう言うことか。
恐らく、若菜の身体にゴエティアの精神が移送される途中で冴子が若菜の精神の核に触れたのだろう。
超越者の力と精神は密接に絡み合っていた。
移送最中に冴子の精神が干渉したことで若菜の身体が拒否反応を起こしたのだろう。」
「そんな、じゃあどうすれば?」
「繋がろうとしている冴子を切り離して若菜に転送されようとしているコスモスの精神を説得するしかない。
ゴエティアの事だ。
無理矢理、彼女の魂を呼び出している筈だ。
コスモスの正気を取り戻せば若菜を救える筈だ。」
「来人、ゴエティアにこの事を教えて上げてくれ。
この計画には彼の協力が不可欠だ.....」
そう話していると倒れていた筈のユートピアドーパントがいきなり起き上がった。
胸には先程の攻撃で開けられた穴があったが一瞬、身体がバグる様に揺れると穴が塞がった。
「こんな所で....死ねるものかぁ!」
加頭の手から砕けたインジェクターが二本落ちる。
加頭が胸を貫かれた瞬間、隠し持っていた"ネビュラバグスター"の入ったインジェクターを身体に撃ち込んだ。
二本分のネビュラバグスターは瀕死の加頭を完全に再生させるがそれは逆にウイルスの汚染が進むことも示していた。
(身体がバラバラになりそうな程の痛み......やはり、危険な薬品だなネビュラバグスター。
だが、これがあれば私は一時的にでも無敵になれる。
冴子さんを救わないと....)
「うぉぉぉぉぉ!!」
加頭は自分を鼓舞するように声を張り上げながら若菜達の元へ走っていく。
暴走した若菜はそれを確認すると自動で彼への迎撃を始める。
赤いエネルギーで作り上げた球体が複数現れるとビームを放つ。
触れれば全てを消滅させる攻撃を翔太郎達は回避するが加頭は避けること無く前へと走っていく。
複数のビームが加頭を貫き肉と骨を切断するが直ぐにネビュラバグスターの再生能力で治してしまう。
「ありゃ、何だ?
あれもメモリの能力か?」
「恐らく違うだろう。
加頭君のメモリはユートピアの筈だ。
本来、あんな再生能力はない。
だがこれはチャンスだ。
奴が暴れている間に私が......危ない!?」
タワーから落下してきた落石を翔太郎を突き飛ばすことで琉兵衛は助ける。
代わりに琉兵衛の身体が落石の下敷きになってしまう。
「父さん!」
「安心しなさい。
今の私にこの程度の攻撃は効かない。」
琉兵衛は落石を受けておきながらも平気な顔で出てくる。
その顔半分は落石により潰れたがそこの部分から
その姿を見た二人は驚愕する。
「驚くことはない。
文音が最後に私に力をくれただけだ。」
それは翔太郎のメモリブレイクにより琉兵衛の心臓が止まった時だった。
《vib:1》(貴方....起き....て)
(その声は....文音か?)
忘れもしない最愛の者の声を聞いた琉兵衛は目を開く。
そこは先程までいたタワーではなく一面黒い空間に紫の炎を宿した文音が立っているだけだった。
(そうよ貴方....漸く繋がれたわ。)
(どういう意味だ?)
(貴方が私に与えたテラーのエネルギーを辿ってきたのよ。
ネメシスメモリが力を貸してくれたの)
(ここは....地獄か?)
(いいえ、ここは"天国の地獄の狭間の世界"。
魂の行き場が決まるまで待つ空間よ.....)
(ならば、私は死んだのだな。)
(そうね....."死にかけている"と言うのが正しいかしら?
このまま何もしなければ貴方の魂はここにたどり着くことになる。
でも、私が今それを"止めている"。)
(それは...何故?)
(貴方に若菜達を救って欲しいの
このままでは皆の命が失われてしまう)
(命が失われる?それはどういう事だ?)
(それ以上は言えない......
私に出来るのは選択肢を与えることだけよ)
(選択肢?)
(えぇ、私の残った力を全て使い貴方を一時的に甦らせる。
貴方には来人達の手助けをして欲しいの)
(手助けだと?....君は私が彼等の敵だったと知って言っているのか?)
(えぇ、でも貴方しかいない。
"ゴエティアの記憶"を持つ私と貴方でしか出来ない事なのよ。)
(ゴエティアの記憶.....まさか、奴が何かしでかすとでも言うのか文音。)
(.....私に出来るのは選択肢を与えるだけ
でも、貴方が現実世界に戻るには"代償(を払う必要がある。)
(代償?)
(えぇ先ず、現実世界に入られる時間は限られている....持って"10分"よ。
そして、それを過ぎると"貴方と私の魂"は完全に消滅する。)
(それは......)
(地球の本棚にも....残れない。
存在を示す全てが消失するわ。)
(そんなリスクが、ありながらも君は私を現実世界に甦らせたいと言うのかい?)
(そうよ....信じられないでしょうね?)
(いいや、信じるとも他でもない君の言葉だからね。
そのリスクを背負うだけの覚悟もある。)
(貴方....)
(一つ聞いても良いかね?
私のガイアインパクトは....これまで積み重ねてきた罪は意味があったと思うかね?)
琉兵衛の問いに文音は答える。
(それは分からないわ。
だって、それを決めるのは来人や罪の為に巻き込んだ風都に住む人でしょう?
私達が合っていると言ったとしても.....)
(そうか.....)
(でも一つだけ確かな事があるとすれば....来人は左 翔太郎と会い人として生きる意味や仮面ライダーとしての責任を得た。
これは私達の犯した罪の結果よ。)
(.....ふふ、そう考えれば...悪くないかもな。)
その答えに満足した琉兵衛に文音は言う。
(もう時間ね.....貴方を私の力を使って現実世界に戻すわ。)
(文音....)
(何?)
(......愛しているよ。)
(........私もよ。
家族を.....お願い....)
そうして、琉兵衛は文音の力を使い蘇った。
今度は家族を救う為に.......
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