もう一人の悪魔   作:多趣味の男

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何時も若菜が一番だった。

私の方が優秀なのに.......

お父様の一番役に立っているのに.....

どんなに頑張っても若菜はお父様の愛を受けられる。

私が欲しい物を全部、彼女は持っていた。

全てを手に入れているのに我が儘を言う子供。

そしてお父様はそんな我が儘を許していた。

私にはそんな優しさをくれなかったのに......

私は若菜を憎んでいるそしてこれからも憎しみ続けるだろう。

彼女の持つ全てを手にいれるまで......


第二百三十話 別たれるT/無償の愛

冴子の元へ走る加頭だが、彼女の前へと到達する前に放たれる無数の赤いビームにより阻まれてしまう。

 

投与したネビュラバグスターの力で肉体を細切れにされても再生することは出来るが冴子の元には向かえない。

目の前では腕を抑えながら苦しんでいる冴子が見える。

(このままでは冴子さんの作戦通りの融合は不可能だ。

寧ろ彼女の命に危険がある。

冴子さんが若菜の身体に触れてから彼女の周りに緑色のエネルギーが溢れ始めた。

 

あれが、地球の本棚から来るエネルギーなのだとしたらあれに長時間、晒されれば肉体がデータ化し消滅してしまう。

 

やむを得ない。

冴子さんの命が優先だ。

若菜さんを"殺して"でも冴子さんを救わないと.....)

 

加頭は冴子の命を第一に考え行動を開始する。

手に持っていた理想郷の杖を地面につけるとそこから重力波が発生し砕けたコンクリートの破片が空中に浮かぶ。

 

それを若菜の放つビームにぶつけながら強引に近付いていく。

(良し....これなら冴子さんの元に辿り着ける。)

そう考えている加頭の横を金色のエネルギー弾が通るとビームを放つ球体に直撃した。

 

後ろを見るとそこには加頭とは別の目的で近付く琉兵衛とW(ルナトリガー)の姿があった。(若菜にメモリの力を封印されていたが暴走したことで使えるようになった。)

「君達もとことんしつこいですね。」

呆れる加頭に翔太郎が答える。

 

「そりゃ、お前もだろ財団X!」

『僕達は若菜姉さんを救う。

邪魔をしないで貰おう。』

 

「私が助けたいのは冴子さんです。

若菜さんの事などどうでも良い。」

 

『.....やっぱり、冴子姉さんを救う為に若菜姉さんを始末する気だね?』

「何だと!?んなことさせねぇぞ財団X!!」

 

「さっきから財団財団と....私の名前は加頭です。

そして、貴方達に私の邪魔はさせない。」

 

睨み合う二人だがそれを状況は許してはくれなかった。

二人を狙う様にビームが放たれる。

加頭は瓦礫で防御しWはルナジョーカーにメモリを変えて伸ばした腕で柱を掴み戻る反動で回避した。

 

『悠長に話している暇は無さそうだね。』

「みてぇだな。

.....琉兵衛さんは何処に行ったんだ?」

 

Wが琉兵衛の姿を探すともう若菜達の目の前に来ていた。

苦しむ二人の娘を見つめる琉兵衛の顔は暗い。

「冴子、若菜....すまない。

今助けるからね。」

 

琉兵衛は二人と隔てている緑色のエネルギーに身体を突っ込ませた。

『なっ!?無茶だ!

身体がデータ化されて消えてしまう!』

 

エネルギーの渦に身体を突っ込ませた琉兵衛は苦しみながらも笑う。

「大丈夫....だ....ここは私と..."文音"に任せなさい。

行こうか...文...音。」

(えぇ、貴方....)

 

琉兵衛の身体から紫の炎が吹き出すと彼の身体を守る様に包み込んだ。

「次は、私の力だ。」

そう言うと琉兵衛は両手を掲げる。

すると、地面から小さなテラーフィールドが発生しそこから発生したエネルギーが両手を覆った。

 

その姿を見て翔太郎は驚愕する。

「なっ!?....メモリ無しでも力が使えるのかよ。」

『メモリを長期間使い続けた結果だろうね。

あの紫の炎は母さんのメモリの力だ。

二人が姉さん達を救おうとしている。』

 

その光景を見ていた加頭は杖を握り直すと琉兵衛の元へ向かおうとした。

嫌な予感がした翔太郎は加頭の前に出る。

「待てよ。

お前何するつもりだ?」

「....冴子さんを助ける手伝いをするだけですよ。」

 

「嘘だな。

その目は人を殺そうとしてる奴の目だ。」

確信を持って言われた言葉に加頭は溜め息をつく。

「はぁ....流石は探偵だ。

その通り、私は若菜さんを殺します。」

『何故だ!父さんと僕が協力すれば二人を無傷で助けられるかもしれないんだぞ。』

 

「助けた結果、どうなると思います?

冴子さんにとって若菜さんは憎む対象でしかない。

彼女が生きているだけで冴子さんの笑顔は消えてしまうんです。

ならば、今の内に脅威は排除するべきだ。」

「そんな理由の為に人を殺させてたまるかよ!」

 

「人....はっ!人間とすら定義するのも怪しい程に身体を改造された若菜さんには似つかわしく無い言葉だ。」

『姉さんを侮辱するな!?』

 

「落ち着けフィリップ!

コイツをほっとくと危険だ。

琉兵衛さんも心配だが今はこっちを片付けるぞ。」

『あぁ、翔太郎。』

「初っぱなから全力だ。」

 

その意味を理解したフィリップはエクストリームメモリを呼び出すとドライバーに装填した。

 

「XTREAM」

 

『「プリズムビッカー」』

 

エクストリームに変身したWはプリズムビッカーを呼び出すと剣を抜いた。

対する加頭も杖を構える。

「良いでしょう。

相手をして差し上げますよ仮面ライダー。」

 

両者が走り出し一気に距離を詰めるとお互いの武器を振るう。

加頭の攻撃をWは盾で防ぎ、Wの攻撃は加頭が紙一重で回避していった。

 

そして、加頭はWの身体に触れる。

「少し力を頂きますよ。」

「ぐあっ!」

 

加頭に触れられた部分から力が抜かれている感覚を感じた翔太郎はプリズムソードを振るう。

「離せ!」

「おっと!」

 

そう言いながら加頭は攻撃を回避すると重力波を発生させ瓦礫を操作する。

「貴方達の強さはよく知っています。

私のメモリでも力を全て吸い取る事は出来ないでしょう。

ですが、全部で無ければ問題ない。」

 

加頭は浮かせた瓦礫に炎と風の力を与えた。

爆炎を上げる瓦礫を作り出すとそれをWに向かって放つ。

 

それをビッカーシールドを構えて何とか耐える。

「ぐっ!...クソッ!何だあの力?」

『僕達の力を吸い取った?

翔太郎!あの手に触られちゃダメだ。

Wのエネルギーが吸われる。

.....奴のメモリを閲覧した。

対抗するには吸収限界を超えるエネルギーを叩き込むしかない。』

 

「なら、ツインマキシマムで....一気に片を付けるぞ!」

そう言うとWはプリズムメモリをマキシマムスロットに装填する。

 

「PRISM MAXIMUMDRIVE」

 

そして、片手でシールドを持ちながら空いた手でエクストリームメモリを再展開する。

 

「XTREAM MAXIMUMDRIVE」

 

Wはシールドを前へ蹴り出すと飛び上がった。

一回転して両足を加頭に向けると急降下する。

 

『「W PRISM XTREAM(ダブルプリズムエクストリーム)」』

 

加頭は残った瓦礫を放つが全て砕かれてしまいWの両足が胸部に突き刺さる。

そこからダメ押しとばかりに両足の連打が加えられた。

 

大量のエネルギーが加頭に流れ込む。

「吸い切れ....な....ぐはっ!」

限界に達した加頭は爆発すると壁に吹き飛んだ。

 

地面に着地したWが土煙が舞う先を見つめる。

「倒した....のか?」

『恐らくは.....あれだけのエネルギーを受けたらいくらユートピアメモリでも耐えられない。』

 

原作と同じプリズムとエクストリームのツインマキシマムによる攻撃は凄まじいものだった。

運命により決定付けられた結末......

 

しかし、土煙が晴れた先にいたのはダメージを受けながらもドーパント体を維持している加頭の姿だった。

「嘘だろ?ツインマキシマムを喰らってメモリブレイク出来てねぇなんて.....」

『通常じゃあり得ない現象だ。

一体、どんなトリックを....』

 

Wは目の前で起きている事態を理解できていなかった。

理論的(フィリップ)にも感覚的(翔太郎)にもあり得ないこの事態。

 

そんな中でも加頭は笑う。

「流石は仮面ライダー....危うくメモリブレイクされる所でしたよ。

ですが、これで分かったでしょう?

貴方達では私に勝てないと?」

 

その姿を見て翔太郎とフィリップは戦慄を覚えるのだった。

 

 

 

加頭がWのツインマキシマムに耐えれた理由は簡単だった。

彼は最愛の存在を生かす為に未来を諦めたのだ。

 

ツインマキシマムを喰らい吹き飛ばされた加頭は何とか意識を保っていた。

(強い......ネビュラバグスターで再生能力が上がっている筈なのに....耐えられなかった。)

 

加頭は気付いていた今の攻撃でメモリに致命傷が出来た事を......

(このまま、ほおっておけば勝手にメモリは砕けてしまうでしょうね。

.....冴子さんを守れずに)

 

加頭は懐から最後のインジェクターを取り出した。

これ迄のネビュラバグスターと違い液体ではなく中身はゼリー状になっている。

 

財団でこれを最上から受け取った時、奴は言っていた。

「ほらよ。

ご注文通り、ネビュラバグスターが入った注射器だ。

合計で3つ入っている大事に使えよ?」

加頭は最上からアタッシュケースを開いて中の三本のインジェクターを見つめる。

 

「三本ですか。」

「あぁ、それが今のお前の身体がネビュラバグスターに耐えられる限界値だ。

それ以上、摂取したら本当に無事じゃ済まなくなる。

まぁ、それはそれでファンキーだがな!」

 

「それは分かりましたが....この一本だけ中身が違うように思えるのですが?」

「.....あーやっぱりバレちまうか?

それは新開発のネビュラバグスターだ。

液体だったネビュラバグスターを圧縮しゼリー状に加工されている。

効果は既存のネビュラバグスターの"10倍"だ。

どうだ?めっちゃファンキーだろ?」

 

「.....先程、貴方は私が耐えられる限界値はインジェクター三本分だと仰いましたよね?」

「言ったな。」

 

「この新しいネビュラバグスターをもし打ったらどうなりますか?」

「そりゃあ勿論、完全にアウトだろうな!

肉体が成分に耐えられなくなって自壊する。

ファンキーだろ?」

 

(やはり危険だな最上魁聖。)

きっと、加頭が聞かなければ彼は何もない顔でこのインジェクターを渡してきただろう。

彼にとって重要なのは、

ファンキーか?ファンキーじゃないか?

 

(財団にもマッドサイエンティストは大勢いますがその中でも一際、癖の強い男だ。

だが、それに比例して"腕も確か"だ。

彼の作る兵器に失敗はない。)

 

「分かりました。

こっちも貰っておきます。」

「おっ!流石は財団きってのエージェント!

思い切りが良いねぇファンキーだぜ!」

 

 

(これを射てば.....もう助からないでしょうね。

でも、この力があればこの状況を打破できる。

...良いでしょう。

私の屍が冴子さんの未来への道筋となるなら....)

加頭はインジェクターを迷わず首に刺すと中身を身体に注入した。

 

薬液が完全に身体に入ると変化が起きた。

(身体が熱い....燃えているみたいだ。)

加頭は立ち上がる。

全身にバグスターウイルス特有のノイズが走るが不思議と痛みはない。

 

立ち上がった加頭を見てWは動揺している。

(まさに、想定外と言った顔ですね。)

加頭は自分の掌を見つめる。

手から光の粒子が微量ながら放出されていた。

 

(これが最上の言っていた自壊ですか。

余り時間がない様だ。)

やることが山積みだ。

Wを倒して冴子さんの身柄を確保し若菜さんを殺す。

そして、残った冴子さんを新たなミュージアムのトップに据える。

 

私に残された時間で足りるか?

いいや違う。

間に合わせるんだ。

 

その為にこの命を捨てたのだから......

 

加頭は仮面ライダーを見つめる。

(さぁ、冴子さんの幸福のために....死んでください。)

全ては冴子への愛の為に.....

 

 

 

 

地球の本棚に琉兵衛の意識が転送されると目の前に映っていたのは地獄だった。

本棚は破壊され地面には本が散らばり周りには熱により焦げた痕が付いていた。

 

「これは.....」

その光景に驚いていると爆発と共に無名が此方に吹き飛ばされてきた。

 

「ぐはっ!」

「無名!」

琉兵衛は無名に駆け寄る。

 

「貴方は!?...どうしてここに?」

「文音に頼まれたのでね。

"娘達"を救って欲しいと」

 

「それを....信用しろと?」

「それは君に任せるよ。

私は娘達を助けられればそれで良い。」

 

琉兵衛の目を見て彼の言葉が真実だと思った無名は話し始める。

「ゴエティアが若菜さんの身体を使って別の存在を呼びたそうとしています。

そこでトラブルが起きてこんな事態に....」

「成る程、若菜の身体に別の魂が転送されるタイミングで冴子が干渉したからバグが起こったのか。」

 

「まさか、冴子さんが!?」

「あぁ、若菜の力を欲してな。

どうする?

ガイアインパクトを止める前にこの暴走を何とかしないと危険だぞ?」

 

「....冴子さんの干渉はどのレベルまで若菜さんの身体に負荷をかけていますか?」

「冴子は若菜の力に"触れているだけ"で取り込めてはいない。

接続を断てば切り離すことは容易だ。」

 

「では、問題は若菜さんの方ですね。

.....どうすれば?」

そう二人が話していると二人の前に空中に浮かんだ若菜が現れた。

気絶しているのか意識はないが周囲を赤い球体が回っている。

 

「本当に意識が無いようだな。

このままではろくに会話も出来ないか。」

「えぇ、何度か試みていますが......」

 

「.....私達が行こう。

無名はあの攻撃を何とかしてくれ。」

「勝算は?」

 

「私達は家族だ。

それだけで十分だよ。」

そう言って笑う琉兵衛を見て無名も覚悟を決める。

「分かりました。

貴方達に賭けます。」

 

「では、行こうか。」

琉兵衛の言葉を合図に二人は走り出す。

途中で無名は地面に落ちている本を回収する。

 

耐えず狙ってくる若菜のビームを無名は本棚を使い巧みに回避していく。

 

琉兵衛はビームで身体を貫かれても文音の炎による回復を使い無視してい進んでいく。

 

すると、ビームを発射していた球体を一つに纏め始めた。

「成る程、一撃で全身を消し飛ばす気か。」

「そんな事はさせません。

Water....Miller...起動。」

 

魂胆が読めた無名は先程、地面から拾い上げた本の力を発動する。

発射されたビームにWaterで発生させた水を割り込ませる。

ビームが激突した水は一瞬で沸騰すると周囲に水蒸気爆発を発生させそれが煙幕の役割を果たした。

 

「こっちだ。」

琉兵衛の声に振り向くと若菜の手に触れようとしているのが分かる。

咄嗟にビームを放つがそのビームは見当違いの方向に飛んだ。

 

そのチャンスを琉兵衛が逃がすわけもなく若菜の手に触れる。

「さぁ、若菜。

目覚める時間だよ。」

 

琉兵衛は自分と文音の力を使い若菜を強制的に覚醒させた。

「うっ!?......お...父様?」

「気が付いた様だね若菜。」

 

精神世界で若菜が目覚めたことで現実世界にも影響が起きた。

冴子の手が弾かれるとエネルギーが発生していた空間から投げ出される。

 

加頭は先程までのWとの死闘が嘘の様に一目散に冴子の元へと駆け寄った。

「冴子さん!....冴子さん!」

「うっ....ここは」

 

目を覚ました冴子に安堵する加頭。

残されたのは気を失っている琉兵衛と若菜だけだった。

「どうなってるんだこれは?」

翔太郎の問いにエクストリームで検索したフィリップが答える。

『エネルギーが安定し始めている。

若菜姉さんが意識を取り戻したんだ。』

 

「なら、無名とお前の作戦が成功したってことか?」

『あぁ、これで姉さんは....!?』

 

若菜も救われパッピーエンドで終わるかと思われたがタワーに異変が起きる。

先程まで感じていた揺れが強くなり地面の亀裂が深くなり始めてきた。

「なっ!?タワーに亀裂が起きてんぞ!?」

『度重なる装置の起動と負荷にタワーが耐えられなかったのか!』

 

そうしてタワーの亀裂が限界に達すると崩落を始めていくのだった。

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