先に目を覚ましたのはフィリップだった。
隣で倒れている翔太郎に触れようと手を伸ばし気付く。
自分の指先が"データの粒子"になり掛けている事に...
(加頭の攻撃が僕の身体に致命傷を与えていたのか。)
フィリップは頭が良い。
だからこそ、この状況がどんな意味を持つのか理解してしまう。
(僕は....消えてしまうんだな。)
不思議と自分が消えることに悲しみは感じなかった。
一つ心残りがあるとすれば翔太郎だ。
相棒を一人残して自分が消えてしまうことに対する申し訳無さと悲しさが心をざわめかす。
(伝えないと....大切な相棒だから)
覚悟を決めて声をかけようとした瞬間、聞き馴染みのある声が響く。
「フィリップ君!翔太郎君!無事?」
「....亜樹ちゃん。」
「あっ!良かったフィリップ君!
無事みたいだ。
そこで倒れているのは翔太郎君だよね?
彼は大丈夫なの?」
「問題ない。
気を失っているだけだ。」
「じゃあ、即効起こさないとねっ!」
「ん?亜樹ちゃん!ちょっと待!?」
フィリップの静止を聞かず亜樹は持っていたマイスリッパで翔太郎の頭を思いっきり叩くのだった。
「テメェ亜樹子!!起こすにしたってもうちょっと考えろや!」
痛む頭を抑えながら翔太郎が亜樹子に言う。
「そんな事言ったって時間無いんだから仕方ないでしょう?」
「まぁ、そうだけどよ。
フィリップ、若菜姫は?」
尋ねられたフィリップが答える。
「いなかった。
加頭が連れていったんだろう。」
「そっか......でもよ。
若菜姫を拐ってどうやって人を生き返らせるつもりなんだ?」
「恐らくはゴエティアがやろうとしたことを再現するつもりなんだ。
精神だけを肉体に転送させる。
だが、こんな計画が成功する筈がない。」
「どうしてそう言えるんだ?」
「ゴエティアが成功する可能性があったのは移動する精神が"超越者の物"だったからだ。
地球の本棚は膨大なデータの塊だ。
完全にデータとして分解されれば意識や記憶も消失する。」
「お前みたいな奇跡が起こるかも知れねぇだろ?」
「かもね.....でもその確率は限りなく低い。
もし、そんな事が簡単に出来ているのならもっと地球に僕と同じデータ人間がいる筈だからね。」
「そうだな。
どう考えても若菜姫が危険だ。
早く彼女を探さないと」
そう言って焦る翔太郎にフィリップは待ったをかける。
「行き先は分かってる。
それよりも....二人にこれを見て欲しい。」
そう言うとフィリップは自分の掌を見せた。
すると、手から緑色の粒子が空へと上っていくのが見えた。
「「!?」」
「どうやら、僕の身体はもう持たないらしい。」
「おい、どう言うことだフィリップ....説明しろよ。」
「.....加頭の一撃をエクストリームメモリで受けただろう?
その時にメモリに保管されていた僕の身体のデータに致命的なダメージを負ってしまった様なんだ。
.....明日僕が生きれる保証はない。
恐らく、データの粒子となって消えるだろう。」
「そんな!?....フィリップ君。」
「嘘だろ....フィリップ。」
「残念だが真実だ。
僕は今日.....この世界から消える。」
フィリップから告げられた真実に二人は愕然とする。
特に翔太郎は相棒であるフィリップを生かす為に頑張っていたのでショックが大きかった。
呆然とする翔太郎にフィリップは手を置く。
「ねぇ、翔太郎.....僕の依頼を受けてくれないかい?
最初で最後の....依頼を」
今はもう誰もいない園咲邸を加頭は若菜を抱えながら進んでいた。
「はぁ...はぁ...何処だ?
何処にある?」
加頭が探しているのは園咲邸にある地下空間への入口。
過去に琉兵衛が話していた地球の本棚へと繋がる穴。
(そこを見つければ
冴子の精神を地球の本棚から呼び戻すことだけを目的として園咲邸を探していく。
「無い....無い無い無い....何故だぁ!!」
穴へ繋がる道が見つからず加頭は怒りを発散するように力を発動する。
部屋の壁が砕け家具が破壊されていく。
台風の中心の様に加頭の周りにある物か破壊されていく。
力を使う度、加頭の身体の粒子化は加速していくが本人は構うことはしない。
「お前らしくないな加頭 順。」
そう言いながら彼の元へ会いに来たのは信彦だった。
「貴...方...は」
「力が暴走しているな....その影響で肉体が粒子化しているのか。
それ以上、暴れるとお前は消えて無くなるぞ?」
「そんな事....は...覚悟の上...ですよ。」
「覚悟の上...か。
最初の計画では冴子とお前の魂を
「計画なんて...変わるものでしょう?
私はそれに対応しただけですよ...」
「本当か?
俺はお前の事は知らないが仕事振りについては聞いている。
あらゆる可能性やトラブルを想定し二の手三の手を使い必ず成果を挙げる敏腕エージェントだと聞いていたが?」
「何が....言いたいのです?」
「"冷静な何時ものお前ならば目的はとうに達していたんじゃないか?"と言うことだ。」
「私が冷静じゃないと?...バカな」
「今のお前を見ていると....過去の自分を思い出す。
思い出と期待にしがみつき、自分を見て欲しいだけの為に考えを変える。
....結果、俺はなにも手に出来ずそれどころか全部失ってしまった。
お前も俺と同じ道を歩むのか?
全てを失っても尚、過去を取り戻そうとして足掻く時代に取り残された愚かな怪物である俺と....」
信彦はそう尋ねると加頭はメモリを抜いて人間の姿に戻り信彦の目を見つめる。
「.....貴方の言う通りですね。
冴子さんを愛してから私はおかしくなった。
財団のエージェントとして失格な行動をとり続け冴子さんの為に財団の技術すら利用した。
過去に私が愚かと断じた人間と同じ行動を取っている。
それも愛なんて言う不確定な物の為に.....
ですが、それでも私は欲しいのです。
手に入れられないと分かっているからこそ欲しくなるんですよ。」
「手に入れられないと理解しながら求めるのは拷問だぞ?
仮にお前の作戦が成功し彼女が生き返ったとしても彼女はお前に感謝などしないしお前に心を委ねることはない。
それはお前自身がよく分かっている筈だろう。」
「えぇ.....」
加頭は、財団のエージェント抜きにしても優秀な人間だ。
本当ならその程度の答えはとっくに辿り着いている筈だった。
だが、愛は生き物を狂わせる。
琉兵衛も文男も冴子も....皆、他者への愛から狂っていった。
人類を越えた超越者であるゴエティアですら愛の持つ魔力には逆らえなかった。
しかし、例え理解していたとしても加頭の答えは変わらない。
「例え....どんな結末になったとしても
私は冴子さんを救います。
それが消え行く私に出来る最後の事ですから....」
その覚悟を聞いた信彦は静かに目を瞑る。
それはまるで旅立つ死者を送る祈りをしているようにも見えた。
「そうか.....お前の探している穴はここの下にある。
お前の能力で掘り進めろ。
その方が早い。」
そう言いながら信彦は懐に入れていた眼魂を加頭に放り投げた。
「ありがとうございます。」
加頭を信彦に例を言うと能力を使い地面を破壊すると地下へと進んでいくのだった。
「ありがとう.......か。
お前の選択を最後まで見定めよう加頭 順。」
信彦はそう言うと園咲邸を後にしたそのタイミングで翔太郎達は園咲邸へと到着するのだった。
バイクに乗って園咲邸に到着したフィリップと翔太郎はバイクから降りる。
「フィリップ、エクストリームメモリの調子はどうだ?」
「移動中に自己修復プログラムが起動したから動かせるとは思う。
だけどもう一度、同じ攻撃を受けたらメモリは砕けてしまうだろうね。」
「そうか.....じゃあ、どうする普通のWで戦うか?」
「いや、そんな甘い考えで勝てる程、今の彼は弱くない。
こちらも、最初から全力で行くべきだ。」
「そうだな.....フィリップ。」
「何だい翔太郎?」
「俺は最後まで....お前の相棒だ。
お前と言う悪魔と相乗りしたことを後悔したことは一度もねぇよ。」
「.....僕もだよ翔太郎。
僕と言う悪魔と相乗りしてくれて...ありがとう。」
これが最後だと分かっているからか翔太郎は自分の思いを伝えると顔を両手で叩いて気合いをいれる。
「っしゃ!相棒からの大切な依頼だ。
キッチリとこなしてやるぜ。」
「そうだね....今度こそ姉さんを救おう。」
二人は覚悟を決めると園咲邸の中へと入っていくのだった。
園咲邸の地下に作られた空間....そこには始めて琉兵衛が見つけた地球へと繋がる穴、ガイアゲートが鎮座していた。
今、そのガイアゲートの上に若菜が加頭が能力で作り出した石製の十字架に縛り付けられていた。
「さぁ、始めましょうか。
冴子さん....今迎えに行きます。」
加頭が眼魂を取り出すと能力を使い若菜へと向かわせる。
冴子と同じ様に眼魂と融合させるつもりなのだろう。
しかし、その眼魂はファングメモリの攻撃により弾かれてしまった。
「まさか!....もう来たとは」
「加頭.....お前の罪は僕達が止める。」
「罪だと?最愛の存在を甦らせるのが罪だと言うのですか?」
「その為に人の命を勝手に使うのは罪だ。
それにミュージアムはもう終わりだ。
それに冴子姉さんが生き返ったとしても彼女は警察に捕まるだけなんだぞ。」
「いいえ、そんな事は私がさせません。
彼女は財団が保護します。
貴殿方に、その邪魔はさせない。」
「Utopia」
加頭はユートピアドーパントへと変身する。
「そうか....もう、言葉での説得は不可能みたいだね。
行くよ翔太郎....."最後の"」
「.....あぁ....最後の!」
「CYCLONE」
「JOKER」
「「.....変身!!」」
二人は加頭に向けて走り出す。
加頭は発火能力で地面を爆破させながら迎え撃つ。
周囲が爆発しながらも前に走りながらドライバーを展開し仮面ライダーWサイクロンジョーカーに変身する。
しかし、それよりも早く加頭はWに手を向けると大爆発を起こした。
目の前が炎に包まれWが見えなくなる、
「XTREAM」
その音声が聞こえるとプリズムビッカーを持ちながら爆炎を突破してくる"Wサイクロンジョーカーエクストリーム"がシールドで加頭を殴り付ける。
強襲に近い攻撃を受けて加頭は後退る。
「くっ!舐めるなぁ!」
加頭は右手に力を込めてシールドの上から殴り付けようとするがWはそれを受けずに回避する。
『その攻撃は一度見た!
もう受ける気はない。』
「ならば、エネルギーを吸い取ってやる。」
「待ってたぜその攻撃を!」
翔太郎はそう言うとジョーカーメモリをマキシマムスロットに装填し加頭の左手を握り込む。
「JOKER MAXIMUMDRIVE」
「うぐっ!....捕まえたぜ。」
「まさか!?吸われるエネルギーをマキシマムで肩代わりしたのか!」
「そう言うことだ。
今だフィリップ!」
『あぁ!』
「XTREAM MAXIMUMDRIVE」
フィリップはドライバーを展開しエクストリームメモリの中心から緑色の竜巻を発生させると加頭の身体を飲み込んだ。
加頭の身体は浮き上がり自由を奪われる。
その瞬間にWはプリズムビッカーにメモリを装填する。
「PRISM.CYCLONE,HEAT.LUNA,JOKER」
『「BICKER CHAGEBREAK」』
Wは七色に輝くプリズムソードを引き抜くと加頭の胸部に投擲する。
「させるかぁ!」
加頭は自分のメモリの力とさっき奪ったジョーカーのエネルギーを使い幾重にも重なる建物の盾を造り出すとプリズムソードを止めようとする。
何枚も加頭の作った盾を切り裂いて行きながらも盾一枚を残してプリズムソードの動きは止まった。
「止めたぞ。
これで終わりだ。」
そう言う加頭に翔太郎が答える。
「違うぜ加頭....言っただろうこれが最後だってな!」
「METAL,TRIGGER」
「「MAXIMUMDRIVE」」
「何っ!?」
攻撃を止めた加頭に向かってメタルメモリとトリガーメモリを装填したスタッグフォンとバットショットか向かっていく。
プリズムソードの周りを螺旋状に周りながら突撃し最後の壁を破壊した。
「トドメだぜフィリップ!」
『あぁ、来い!ファング!』
フィリップがファングメモリを呼び出すと素早く変形させマキシマムスロットに装填する。
「FANG MAXIMUMDRIVE」
ファングメモリのマキシマムが発動すると
そして、Wがドライバーに手を掛けた瞬間、フィリップが翔太郎に伝える。
『翔太郎。』
「どうしたフィリップ。」
『....."ありがとう"』
「....へっ!ハードボイルドに決めるぜフィリップ!」
Wは飛び上がるとドライバーを展開した。
「XTREAM MAXIMUMDRIVE」
そして、そのまま一回転し両足をプリズムソードへ向ける。エクストリームの竜巻を破り、Wのキックがプリズムソードを押し出す形で加頭の胸部に突き刺さる。
「があっ!....まだだ.....まだだぁ!!」
加頭は残った力を使い胸部のダメージを回復させつつWを殺す為、右手の破壊のエネルギーをWに放出した。
『「
Wの持つ全てのメモリの力が両足からプリズムソードへと流れファングの牙がWの身体を剣に変えていく。
虹色の光を放つ必殺の剣は加頭の身体を貫かんと進んでいく。
Wに向けた破壊のエネルギーすら切り裂きながら.....
(ダメだ....こんなところでは終われない。
貴女を生き返らせるまで私はっ!)
その瞬間、加頭は溢れ出るメモリのエネルギーの中から一筋の光を見つけた。
その光の中には探し求めていた冴子の姿が見える。
加頭は、懸命に手を伸ばす。
そして、加頭の手が冴子の手に触れた。
「あ....」
加頭の口からその声が漏れた瞬間、全てが終わりを迎えた。
Wの攻撃により身体を貫かれたと同時に爆発を起こす。
煙が晴れる頃にはWの後ろで倒れる加頭だけだった。
メモリブレイクされ人の姿に戻った瞬間、身体の粒子化が加速する。
しかし、彼の顔は晴れやかだった。
「やはり、負けましたか。」
そう言う加頭にフィリップが聞く。
『君はこうなることが分かっていたのか?』
「そうですね....勿論、本気で冴子さんを甦らせたいとは思ってましたよ。
ですが、同時に思っていました。
これじゃあ、冴子さんを甦らせるのが不可能だと....
ですが、認めたくなかった。
冴子さんの死を……消滅をね。」
「加頭.....」
「貴方達と戦っている最中、私は冴子さんに会いました。
それが地球の記憶が見せた幻なのか現実なのかは分かりませんが......でも彼女と私の手が触れた瞬間、彼女は笑ったんです。
その優しい笑顔を見て満足してしまったのでしょうね。
結局、私は冴子さんに"笑顔でいて欲しかった"。
私はそれが叶う理想郷を求めていただけだった。
簡単な答えだったんです。」
独白する加頭を見て翔太郎が告げた。
「加頭、お前が若菜姫を利用してフィリップの姉さんを蘇らそうとしたこと....そしてその為にこの街や大勢の人間を泣かせようとしたことは罪だ。
決して許される者じゃねぇ......でも
"人を愛したその想いは罪じゃない"。
そこだけはアンタは間違ってなかったと俺は思う。」
「........」
「つまりは....その....あれだ。
あぁ、クソッ何て言ったら良いかわかんねぇ。」
その台詞を聞きフィリップが補足する。
『相棒が言いたいのは君の行動は間違っていたかもしれないが想いや考えは否定はしない。
そう言うことだろう?』
「そうだ....いやそうなのか?
ダアッ!分かんねぇ!やっぱり苦手だぜこう言うのは....」
その二人のやり取りを見た加頭は笑った。
「ふふ....最後の最後に笑わせられるとは変な方達だ。
ですが、ありがとう....その一言を聞いただけで少し救われた気がします。
どうやら、もう限界の様だ。
これで漸く貴女の元へ行ける.....では失礼。」
加頭はそう言うと肉体が完全に粒子となり消滅してしまった。
「逝ったな.....あいつ。」
『そうだね....翔太郎。
僕もそろそろ行くよ。』
そう言ってドライバーに手を掛けようとするフィリップの手を翔太郎が抑える。
「俺に....やらせてくれ。」
『....任せるよ。』
ドライバーに手を掛けた翔太郎の頭にフィリップとの色々な記憶が蘇る。
初めて出会ったビギンズナイト。
探偵として仮面ライダーとして共に歩むことになった日々。
思い出が頭を駆け巡る度に翔太郎の目から涙が溢れ出す。
それを隣で見ているフィリップは笑う。
「泣いているのかい翔太郎?」
「バカ言うんじゃねぇよ.....」
「大丈夫だ...君一人でも風都を守っていける。
何たって僕の最高の相棒なんだから....」
「.......」
「僕が消えた後....姉さんを頼む。」
「あぁ....勿論だぜフィリップ。」
「やっぱり....君を相棒に選んで...良かった。」
「.....閉じるぜ。」
翔太郎はゆっくりとドライバーを閉じる。
その瞬間、エクストリームメモリはフィリップの魂と共に空へ消えていった。
翔太郎は帽子で顔を覆うがその顔からは涙が止めどなく流れていく。
「やっぱ....まだダメだな。
親っさんみたくハードボイルドに.....出来ねぇや。」
翔太郎は防止を深く被りながら倒れている若菜を抱き抱えると園咲邸を後にするのだった。
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