風都を地獄に落とそうとした事件は終息した。
失った者も大きく街にも傷が残った。
だが、それでも相棒から"託されたもの"は守る。
それが俺が最後に受けた絶対に破れない依頼なのだから......
事件から三日経ち........
街は平穏を取り戻しつつあった。
ミュージアムは崩壊し照井も風都に帰って来た。
俺も探偵業を再開させるべきなんだろうが.....相棒を失った心の痛みが予想よりも重くのし掛かっていた。
俺は花束を持ちフィリップが命を懸けて助け出した若菜の元へ向かう。
彼女はこれまで肉体を酷使された影響で病院のベッドで横になっていた。
病室に入ると照井と刃さんが先に入っていた。
俺を見て照井が言う。
「翔太郎、お前も来たのか?」
「大切な相棒の依頼だからな。」
「そうか.....では若菜さん今日はこれぐらいにしましょう。」
照井はそう言うと刃さんを連れて病室を出ていった。
二人がいなくなると若菜に花束を渡す。
「あら?また持ってきてくれたの?」
「手持ち無沙汰は流石に不味いだろう?
....体調はどうだ?」
「不思議だけど悪くないわ。
お医者さんの話じゃ私の身体はもう普通の人間と同じになってるみたい。
もう、地球の本棚に入る力も無い程にね。」
「良いことじゃねぇか。
元気でいることが一番だ。」
「....そうかしら?
弟の....フィリップの命を犠牲にして私は生きてるのよ?
それを納得しろって!」
「納得なんて求めてねぇ!......
フィリップはアンタの命を救う為に自分の命を賭けたんだ。
俺はアイツの相棒だ。
だからこそ、フィリップの選択を尊重するしそのお陰で生き延びたアンタが自分の命を粗末に扱ったり思うことを俺は許さねぇ。」
「.......」
「....悪い。
兎に角、早く元気になってくれ。
それが俺達の願いだ。」
翔太郎はそれだけ言うと病室を出ようと手を掛ける。
「ねぇ!...貴方はどうなの?
私の事をフィリップから託されたと言っているけどそれだけじゃないでしょう?
探偵として仮面ライダーとしてこの街を託されたんじゃないかしら?
あの子ならきっとそう言うわ。」
「.....んな事は言われなくても分かってんだよ。」
小さくそれだけ言うと翔太郎は病室から逃げるように外へ出ていった。
翔太郎は帽子を深く被り心を落ち着ける。
(依頼人を怒鳴り付けちまうなんて、
こんなんじゃ....おやっさんやフィリップにも笑われちまうな。)
翔太郎は気分を変える為にも久々に鳴海探偵事務所に向かった。
中に入ると部屋はきっちりと整理されていた。
「亜樹子が綺麗にしてくれてたのか。」
俺はフィリップがいたラボに入った。
そこは決戦に出た頃のままになっており掃除はされていなかった。
「やっぱり....ここはまだ片付けらんねぇよな。」
翔太郎はフィリップが使っていた中身が書かれていない真っ白のページで埋め尽くされた本に触れる。
中を開いてページを捲っていると外のチャイムが鳴った。
「依頼人か?」
翔太郎は玄関に戻り扉を開けるとそこには松葉杖をつきながら身体を支えている大道 マリアの姿があった。
「マリアさん....どうしてここに?」
「実は私達が風都を離れることを伝えようと思ってね。
ミーナと二人で別の街で暮らすつもりなの。
産まれてくる克己の子供と一緒に....」
「そうか.....何か困ったことがあったら直ぐに言ってくれ。
手伝うからよ。」
「ありがとう。
ここに来たのはその報告とこれを渡すためよ。」
マリアはそう言うと後ろに置いてある荷物から一つのアタッシュケースを翔太郎に渡す。
「これは?」
「坊やと無名が貴方に渡そうとしていた物よ。
私が託されたから代わりに渡しに来たの....」
「これを...フィリップと無名が?」
「えぇ、確かに渡したわよ。
じゃあ、これで私は行くわね。」
そう言うとマリアはその場を後にした。
誰もいなくなった部屋にアタッシュケースを置くと中を開いた。
そこに入っていたのは新造された新たな形の"ロストドライバー"と一枚のDVDだった。
翔太郎はDVDプレーヤーを事務所から引っ張り出すとDVDをセットして再生する。
映像が映るとそこは事務所の中にあるラボでありフィリップが椅子に座っていた。
『あーっ、あーっ....良し上手く撮れているな。
.....やぁ、翔太郎!これを見てるってことは....違うな。
.....翔太郎!元気でやっているかい?......これもちょっと違うか....やっぱり難しいな"映像"で何かを残すって言うのは』
始めからグダグダなスタートを見てしまい翔太郎は苦笑する。
「何やってんだよ相棒。」
そんな事を言っているとフィリップは話始めた。
『僕がこれを撮ろうと思ったのは無名に言われたからだ。
もし、僕に何があって翔太郎を一人にしてしまった時の事も考えた方が良いと言われてね。
まぁ、何もなければ中のドライバーもこの映像も流れないとは思うが....まぁ、話を進めよう。
今、君の手元にあるドライバーは、
"左 翔太郎専用のロストドライバー"だ。
中にはロストドライバーとデモンドライバーのデータが使われていて二つの力がハイブリッドされている。
それがあれば君一人でもドーパントと戦うことが出来るだろう。
生憎、時間が無くて完成はマリアさんに任せることになるが性能は保証するよ。
.....本当ならこれを作る気にはなれなかった。
このドライバーは保険だ。
僕が何かの要因で命を失った後、君一人で風都の街を守る為のね。
でも、僕はこの街で長く過ごしてきた。
ビギンズナイト以降、探偵として仮面ライダーとしてね。
もう僕にとってもこの街は守るべきかけがえの無い存在なんだ。
だから、翔太郎.....僕の愛したこの街を頼んだよ。
仮面ライダー....左 翔太郎。』
そう言い残してフィリップは映像を切った。
俺は相棒が残してくれたドライバーに触れる。
「....ありがとうよフィリップ。」
残された相棒の想いを知った翔太郎はドライバーに大粒の涙を溢す。
今まで抑えていた感情が吹き出した様に涙が絶え間なく流れ続ける。
一頻り泣いた翔太郎の目は涙でボロボロの顔を洗うとこれまでと違い覚悟が灯っていた。
「確かおやっさんも大事な仲間を失って暫く探偵業を休止してたよな。
なら、ここが俺にとっての"休止期間"だ。
だが、もう休むのは終わりだ。
探偵として仮面ライダーとしてこの街でやることはまだまだ残っている。
任せろフィリップ。」
このタイミングで鳴海 亜樹子が事務所に入ってきた。
翔太郎の姿を見て彼女は驚く。
「翔太郎君!?.....どうしてここに?」
「亜樹子、暫く事務所閉めてて悪かったな。
漸く決心できたわ。」
その言葉を聞いて亜樹子は笑顔になる。
「って言うことは.....もしかして!」
「あぁ、鳴海探偵事務所の再開だ。
休んだ分もミッチリ働かねぇとな。」
「....そうだね。
あっそうだ!忘れてた忘れてた。」
亜樹子はそう言うとバックに隠していたスリッパを取り出して翔太郎の頭を叩いた。
パコン!
「痛ってぇな!何すんだ亜樹子!!」
「あー、これよこれ。
やっぱり、これをしないことには始まらないわよねぇ。」
「だからって何もしてねぇのに頭叩くバカがいるかよ!」
「何もしてない?
アンタね数日、事務所休むだけで一体どれだけの損害があると思ってるのよ!
家はね弱小探偵なのよ!
ちょっとでも休みが続くだけでこの事務所の家賃すら払えなくなるんだからっ!」
亜樹子は事務所の家賃滞納の督促状を机に叩きつける。
「はぁ!?滞納ってお前.....てか、この事務所の家賃の支払いは1ヶ月前だったろ?
何でその時に払ってねぇんだよ。」
「仕方がないでしょう?
ミュージアムならやにならで忙しくて忘れてたのよ。」
「んな自信満々に言うことかよ。」
「兎に角!このままじゃ、復帰よりも先に事務所を退去しなきゃ行けなくなるからそうなる前にホラッ!持ってきた依頼をさっさとこなしちゃって」
「おっ!休んでてもやっぱり依頼は来るんだな。
.......って何で全部、ペット捜索なんだよ!?」
「しょうがないでしょう?
翔太郎君の得意分野は動物探しなんだからグダグダ言わずに働く。
....あっこれ所長命令だからきっちりと仕事を終えてらっしゃい!」
亜樹子は翔太郎の背中を押して外に放り出した。
「うおっ!?....全く亜樹子は相変わらずだな。
しゃーない、さっさと仕事を終えるとしますか。」
翔太郎はハードボイルダーに乗るとヘルメットを被る。
「行ってくるぜフィリップ。」
『あぁ、翔太郎。』
フィリップの返事が聞こえた様な気がしながら翔太郎はハードボイルダーを動かすのだった。
風の街"風都"........
この街では人も事件も全て風が運んで来てくれる。
俺の名前は左 翔太郎。
表の顔は鳴海探偵事務所で困っている街の人を助ける為に働く探偵だ。
しかし、もしこの街を泣かせる様な奴が現れたら俺の裏の顔の出番だ。
風都の平和を人知れず守る仮面ライダーと言う顔の.....
Another side
ロノスはその目で風都での物語の終わりを眺めていた。
「ゴエティア....漸く時間のループから開放されたんだね。」
ノロスもういない曾ての同胞に想いを寄せる。
「加頭君は元の流れ通り退場か......
違いがあるとすれば最愛の女性を手に掛けたか掛けないかの違いだが....まぁ、これぐらいなら良いだろう。
そっちはどうだった信彦くん?」
ロノスの問いに信彦は答える。
「お前の言う通り見つけてきたぞ。」
「それは良かった。
ところで"あっちの世界"はどうだった?」
「あぁ....中々の絶望だったな。」
「まぁ、彼処は確定された未来の中でも最悪に近い結末だからね。」
「あれが最悪ではないのか?」
「最悪は"800年前の王"に勝てず人類が完全に滅ぼされる未来だからね。
それに比べたらまだマシだよ。
それであっちの返答は?」
「お前が出した条件を聞いたら飛び付いた。
その願いが叶うなら財団に協力するそうだ。」
「良かった。
これで僕の想い描く未来に進んでいける。」
「そうか.....それで何時始めるんだ?」
「一年と少し.....かな?
それまで流れがズレ込まない様にバランスを取らないと.....とは言ってもあんまり元の流れからズレる事はしたくないしなぁ。
ちょっとあっちの方も覗いてみるか。」
ロノスは指で丸い輪を作るとその中を覗き込んだ。
「ほうほう....結構進んじゃったかな?
バースもいるしメダルも結構集まってるなぁ。
やっぱりちょっとテコ入れが必要だな。
そうだ!次いでにそれを利用してこっちの仕込みも終わらせておこう。」
ロノスはそう言うとポケットに入れていた"金色のパス"を取り出す。
「ちょっと信彦にも手伝って貰おうかな?
これから、"君の大先輩"に挨拶に行くからさ。」
「どういう意味だ?」
「だから大先輩だよ.....悪党のね。」
ロノスはパスを開くと中に"無限のマーク"が書かれた赤いチケットを差し込む。
すると、空が光りロノスに向けて空中に"列車の線路"が出現すると一台の列車が現れる。
「これはあらゆる時代を移動できる神の列車"ガオウライナー"。
この列車と僕の力を使って"過去の並行世界"に向かう。」
「過去の並行世界?」
「そう、始まりの仮面ライダーである。
"仮面ライダー1号".....彼と幾度も戦ってきた悪の組織である"ショッカー"に会いに行くよ。」
「だが、会ってどうする?
財団との協力を結びつけるのか?」
「そんな事をしなくてもアイツらは力を手に入れたら勝手に暴れてくれるよ。
時の列車を使えば"電王"も気付くだろうしね。」
そう言うとロノスと信彦はガオウライナーに乗り込む。
ロノスは先頭にあるバイクにパスを差し込むと超越者としての力の一部を開放した。
「行き先は"1971年4月3日"......
仮面ライダーが"正義のヒーローではなく悪の手先"として存在する世界。」
設定を終えるとガオウライナーは自動で動き始めた。
幾つもの時代を越え移動するガオウライナーだが、それを追いかける様に後ろから"緑色の牛の形"をした列車が追いかけてきた。
「"ゼロノス"か。
流石に嗅ぎ付けるのが早いね....でもガオウライナーが乗っているのは"神の路線"。
君達の使う"時の路線"とは格が違う。」
ゼロノスが乗る列車もガオウライナーの様に時間を移動する力はあるがガオウライナー程、遠い時間軸に行くことは出来ない。
まして、並行世界に行こうとしている列車を追うことはどう足掻いても出来なかった。
ガオウライナーが現れた光のゲートを通り残った光りに向けてゼロノスが操る"ゼロライナー"が無理矢理突破しようと突進するが光りに触れた瞬間、列車は弾かれて地面を転がりながら横転してしまった。
ゲートが消えるとゼロライナーから一人の青年と一体のイマジンが現れる。
「クッソ!やっぱりゼロライナーじゃ通れなかったか。」
列車に腕を怒りのまま打ち付ける青年にイマジンが話しかける。
「
どうしようこのままじゃ.....」
「分かってるよ"デネブ"。
しゃーねぇ歴史の介入を阻止できなかった以上、出来るのは改変された歴史を正すことだけだ。
デネブ幸太郎に連絡しろ。
この事件を解決するには特異点である幸太郎の力が必要だ。」
「分かったよ侑斗!」
そう言うとデネブは横転したゼロライナーに戻っていく。
「一体、財団Xは何を企んでやがるんだ?」
侑斗はそう言いながらガオウライナーが消えていった時の空間の空を見つめるのだった。
【原作との違い】
ロノスの介入によりオーズは映画"レッツゴー仮面ライダー"で起きた事件の解決を先にすることになる。
物語は原作通りに進むが歴史の修正にオーズが関わった影響でオーズに関連する者達の時間が他の者よりも"一年"経過することになった。
外伝 続編の投稿に関して
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