もう一人の悪魔   作:多趣味の男

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第二百三十五話 孤独のJ/新たな切り札

仮面ライダージョーカーへ変身を終えた翔太郎は目の前のドーパント(ヤドカリドーパント)に向けて拳を放った。

 

ドゴン!

 

拳の衝撃で爆発音が発せられるが攻撃されたドーパントはその拳を背中の殻で受けてダメージを防いでいた。

 

「中々に堅いな。

甲殻類の記憶の影響か?」

「はっ!その程度かよおっさん!」

 

反撃を加えようとするドーパントの腕をいなすとその勢いのまま背中を蹴り飛ばした。

今度は耐えられる威力ではなかったのか背中の殻にヒビが入りながら吹き飛ばされる。

 

「オッサンじゃねぇよクソガキ。

こりゃ、終わったら説教も追加だな。」

「何勝った気でいるんだよ!? あぁ!」

 

アノマロカリスドーパントが翔太郎に向けて口から歯を飛ばす。

飛んでくる弾を片手でキャッチすると地面に捨てた。

 

「!?」

「厄介なのは数だな。

んな長く相手にすんのも面倒だ。

 

しゃーねぇ、久々に"これ"使うか。」

 

翔太郎はドライバーを戻すとロストドライバーのソウルサイドに付けられた新しいデバイスの上面に触れる。

すると、何かを認証したのかドライバーから音声が鳴った。

 

 

"DEMON system on-line"(デモンシステム オンライン)

 

するとベルト中心部のシャッターが開き赤い瞳の様なパーツが現れた。

 

それが終わると翔太郎はもう一度、ドライバーを展開する。

 

「DEMON」「JOKER」

 

その音声と共に翔太郎の変身が変化する。

両手にエターナルの様な黒と紫の炎の様な模様が浮かび上がり両目に縦の赤いラインが出ると全身から紫のエネルギーを放出した。

 

「何だその姿は?」

「これか?

仮面ライダー"デモンジョーカー"(悪魔の切り札)ってところだな。

仲間が俺の為に残してくれた力さ。」

 

フィリップと無名が翔太郎に残した専用のロストドライバーにはデモンドライバーのシステムが流用されておりそれがこの"デモンシステム"だった。

 

翔太郎は軽く片足に力を込めると一瞬の内に"グラスとインジャリードーパント"の首を掴み上げた。

 

「ちょっと痛てだろうが我慢しろよ。」

翔太郎はそう言うと両手に紫色のエネルギーを纏い二体のドーパントごと回転し両者を壁に投げつけだ。

 

壁に激突したグラスとインジャリードーパントは爆発するとメモリブレイクされ元の人の姿に戻り気絶してしまう。

「は?」

 

圧倒的と言うより呆気なさ過ぎる瞬殺に呆然としていると今度はダイヤモンドドーパントの腹部を翔太郎は蹴り上げた。

 

かなりの威力で後ろに戻されるが直ぐに立ち直り翔太郎に向かおうとするが突如、蹴られた腹部が爆発しメモリブレイクされた。

 

ここまで来て漸くハーミットクラブドーパントは目の前の仮面ライダーの異質な強さに気付く。

「奴を近付かせるな!

遠くから攻撃しろっ!」

 

焦りながらも的確な命令を受けた他のドーパントは命令に従い遠距離攻撃を主体とした戦法に変える。

 

「そっちがそう来るならこう言うのはどうだ?」

 

 

「METAL」

 

 

「DEMON」「METAL」

 

翔太郎はメモリチェンジを行うがそのタイミングでエクスプロージョンドーパントの爆破攻撃が直撃した。

凄まじい爆発と共に翔太郎は炎に包まれる。

 

「やったか?」

 

その声を否定するように爆炎の中から翔太郎は現れた。

銀色と白で構成されたカラーリングの中で両手に赤黒いラインが入っていた。

 

 

「仮面ライダー"デモンメタル"(悪魔の闘士)

そんな攻撃じゃ、傷一つ付かねぇよ。」

 

翔太郎は背中から取り出したメタルシャフトを手に持つとエクスプロージョンドーパントに走っていく。

「くっ!来るなぁ!」

エクスプロージョンドーパントは叫びながら翔太郎を何度も爆発させるが効果はなくメタルシャフトで胴体を打ち抜かれてしまう。

 

「ぐぁあ!」

飛びながらメモリブレイクされた男は転がりながら気絶した。

 

「ふっ....ふざけんな!

そんなのズルだろうがっ!」

「なら、二人がかりだ!」

 

フィンガードーパントとチキンドーパントが翔太郎に攻撃するがキン!キン!と堅い金属を叩く音しか鳴らずダメージは与えられなかった。

 

「諦めな。

この姿の俺は加減するのが難しいんだ。

攻撃よりも防御に気を回せ。」

そう言うと翔太郎は持っていたメタルシャフトをフィンガードーパントに投げつけ右腕に力を込めるとチキンドーパントの首を狙いラリアットを打ち込んだ。

 

攻撃を受けた二体のドーパントはメモリブレイクされると地面に倒れ気絶した。

残ったのはアノマロカリスとバット、そしてハーミットクラブドーパントだけである。

 

「何だよそのデタラメな強さは....チートだろっ!?」

「チートか....まぁ、否定はしねぇよ。

デモンシステムを使ったこの形態は常時マキシマムを発動しているのと同じレベルのエネルギーを発している。

 

つまり俺の攻撃に当たっちまったら最後、並大抵のドーパントだと耐えられずメモリブレイクされちまうのさ。」

 

そう説明するとバットドーパントが言う。

「クソッ!勝てねぇなら逃げるだけだ!」

バットドーパントは逃げる為、空に飛ぼうとするが突如放たれた黒と紫のエネルギー弾の直撃を受けて爆発しメモリブレイクする。

 

見ると翔太郎はまたメモリを変えており今度は青色のカラーで両手に灰色のラインが入っていた。

「仮面ライダー"デモントリガー"(悪魔の射手)

俺の銃口からは逃げられないぜ。」

 

「チッ!なめんなぁ!」

アノマロカリスドーパントは翔太郎に歯の弾丸を連射するがそれに応対する様にトリガーマグナムの引き金を引いた翔太郎の弾丸は相手の弾丸を全て砕きアノマロカリスの身体に突き刺さった。

 

「ぐぁぁあ!....嘘....だろ!?」

メモリブレイクされ呆然としながら倒れ気絶し残ったハーミットクラブドーパントはその光景を見て驚愕する。

 

「聞いてねぇぞ仮面ライダーがこんなに強いなんて....くっ!」

ハーミットクラブドーパントは地面を水の様に変えて潜る。

 

「あん?逃げる気か?

させっかよ!」

翔太郎はハーミットクラブドーパントがいた地面にトリガーマグナムを乱射する。

 

すると、その中の一発がハーミットクラブドーパントに当たり弾が当たった肩を抑えながら地面から飛び上がった。

「この形態のトリガーの弾丸を受けてメモリブレイクしてねぇとはな。」

 

「ふざけんなよ.....ヘッドは命令は絶対だ。

俺がこんなところで失敗する訳にはいかねぇんだよ!!」

ハーミットクラブドーパントは持っていたエンゼルビゼラを全て口に放り込むと一気に噛み砕いた。

 

「アイツ、エンゼルビゼラ食ったのか!?

何て無茶しやがる。」

「うぉぉああああぁ!!!」

 

大量のエンゼルビゼラの服用によりメモリとの適合率が上がったハーミットクラブドーパントは肉体が巨大化し両手が巨大な鋏に変わり背中の殻が更に禍々しく変化した。

 

「喰らえぇぇぇ!!!」

 

背中の殻についたトゲをハーミットクラブドーパントはまるでミサイルの様にして翔太郎に放った。

 

翔太郎はトリガーマグナムでトゲを撃ち落としながらドーパントを観察する。

「大量のエンゼルビゼラの服用でメモリの力が暴走してやがるな。

こりゃ、早くメモリブレイクしてねぇと不味い。」

 

翔太郎はジョーカーメモリをドライバーに装填しデモンジョーカーに戻るとジョーカーメモリをマキシマムスロットに装填した。

 

「JOKER MAXIMUMDRIVE」

 

「アグァァああ!!」

 

「もう暴れんな!直ぐ助けてやるからよ。」

 

翔太郎は右の拳にエネルギーを充填させると構えながらハーミットクラブドーパントに向かう。

 

迫り来る攻撃を回避しながら飛び上がる。

 

「ライダーパンチ!」

 

そのまま、顔面を殴り付けハーミットクラブドーパントを地面に倒すとそのまま一回転し左足を相手に向けると今度は左足にエネルギーが纏われた。

 

「ライダーキック!」

 

急降下しながら放たれた必殺キックがハーミットクラブドーパントに当たると大爆発を起こしメモリブレイクされた。

 

目の下に隈が出来る程、疲弊してはいるがエンゼルビゼラの副作用はメモリブレイクと共に無効化出来た。

 

「罪の清算は牢屋の中でするんだな。」

 

翔太郎はそう言うとドライバーに触れてデモンシステムを解除する。

 

「DEMON system off-line」

 

ドライバーの赤い瞳の様なパーツにシャッターが降りると翔太郎の変身が解除された。

ドライバーを腰から外すと亜樹子達に話し掛ける。

 

「亜樹子!無事か?」

「何とかね。

ほら、依頼人も無事だよ!」

 

「そりゃ良かった。」

安心する翔太郎に晶が尋ねる。

「もしかして....おじさんが風都で有名な仮面ライダーなの?」

 

おじっ!?.....んんっ!

まぁ、そうだな。

俺は探偵で仮面ライダーだ。

 

改めて依頼内容を聞いて良いか坊主?」

「坊主じゃない....名前は晶だ。」

 

「そうか、じゃあ晶。

依頼について詳しく教えてくれ。」

晶は翔太郎が仮面ライダーだと知り信頼したのか自分の知る全ての情報を彼と亜樹子に話すのだった。

 

 

 

最初は"小遣い稼ぎ程度の軽い気持ち"だった。

弟である晶に唯はそう告げた。

 

偶然、唯は落ちていたガイアメモリを拾い魔が差してしまった。

拾ったガイアメモリを売る為にEXEに渡すと学生では到底稼げない金額を唯に渡したのだ。

 

そして、EXEのメンバーは唯を仲間に誘った。

最初はその申し出を断った。

ヤバい奴等なのは知っていたし一回限りの付き合いになる筈だった。

 

でも、父が"風都第二タワー"で起きた事件に巻き込まれて大ケガを負ってしまった。

その治療費や二人の学費で家計が苦しくなり唯は家族を助けるためにEXEのメンバーになった。

 

彼女の役割は運び屋でありメンバーが盗んだメモリを警察にバレない様に運ぶことだった。

 

唯は深夜何時もの様にメモリを運ぼうとしていると家を出た所を不信に思った晶が跡をつけて更に犯罪をしている現場を目撃されてしまった。

 

唯はメンバーを説得し弟を助けようとするが犯罪の露呈を恐れたEXEのリーダー"ヘッド"と呼ばれる者の命令で晶と母が襲われた。

 

母が自分の中の身体を盾に晶を守ったがそのせいで母は意識不明の重体となった。

弟を狙われた唯はEXEを抜ける決心をして弟と共に逃亡したのだ。

 

 

「話は分かった。

んじゃ、どうしてEXEはお前達、兄弟を狙うんだ?

見たことろお前を捕まえようとしてたが」

「.....姉ちゃんはEXEで運び屋の仕事以外にも運んだ荷物の管理も任されていたらしい。

 

それで姉ちゃんは母さんを襲われた腹いせにヘッドが大切にしていた物と"あるメモリ"を盗んだって言ってた。」

「何てバカなことを.....つまりそのせいでお前らは追われる立場になったって訳か。」

 

「このままじゃ、姉ちゃんが殺されちゃう。

ねぇ、おじさんは仮面ライダーなんでしょ?

ねら、EXEをやっつけて姉ちゃんを救ってよ。」

「........」

晶の言葉を聞き翔太郎は黙ってしまう。

それを疑問に思った亜樹子が尋ねる。

 

「どうしたの翔太郎君?」

「俺がお前の姉さんを助けた後、お前はどうするんだ?」

 

「え?.....それは姉ちゃんと家族の皆でまた」

「姉ちゃんの罪に目を瞑って....か?」

 

「!?」

「確かにお前の話には同情の余地がある。

だが、そもそものキッカケはお前の姉さんがEXEと関わったからだろう?

それも小遣い欲しさに.......」

 

「それは......」

「ここでちゃんと罪を償わなかったら姉さんを助けたとしてもまた同じ状況になったら繰り返すぞ。

何故ならお前達にとってその行為は家族を助ける正義の行動になっちまってるんだからな。」

 

「.....じゃあ、良いよ。

他の人に頼る。」

「他の人って......姉さんはお前の家族だろうがっ!

 

だって僕は子供なんだよ!?

僕に姉さんを助ける力なんてある訳ない。

半人前の僕に何が出来るって言うんだよ!」

「半人前って言葉に逃げてんじゃねぇ!

完璧な人間なんて誰もいないんだ。

大人もそうさ....俺だって....相棒がいなけりゃ何も出来ないハーフボイルドな男なんだよ。」

 

「じゃあ、その相棒に頼れば良いじゃないか!」

「......もういない。

俺の相棒はもうこの世にいない。」

 

「.....え?」

感情的に反論した晶だったが翔太郎の独白を受けて固まってしまう。

「...覚えておけ晶。

本当に大切な物はな失って初めて気付くんだ。

 

そうなってからじゃ遅いんだよ。

姉さんを大切に思ってんなら何でもかんでも誰かに頼ろうとすんな。

 

姉さんの事を思うならちゃんと!.....罪を数えさせてやれ。」

「僕には....分かんないよ。」

 

そう言って晶は翔太郎の前から逃げる様に去っていった。

「ちょっと晶くん!?.....翔太郎君!依頼人に対してその言葉遣いは配慮にかけてるよ。」

「....悪い亜樹子。

ちょっと熱くなりすぎた。」

 

「....でも、翔太郎君の言ったこと私は間違ってないと思う。

だから、晶くんは私に任せて!ちゃんと見張っておくから!」

そう言うと亜樹子は晶を追っていくのだった。

 

「ったく...亜樹子もちゃんと所長らしくしやがって.....なぁ、フィリップ?

俺は本当に.....お前の信じた探偵で仮面ライダーになれていんのかな?

 

このドライバーがたまにとても重たく感じるんだ。

....駄目だな。

俺もあの餓鬼の事を言えねぇわ。

ハーフボイルドのままで何も成長してねぇよ。」

 

 

そんな事を言ってるとパトカーのサイレン音が聞こえてくる。

突入前に照井に連絡した奴等だろう。

 

「....愚痴るのはここまでだな。

まだ、依頼は始まってすらいねぇんだからよ。」

 

翔太郎はそう言って帽子を被り直すのだった。

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