もう一人の悪魔   作:多趣味の男

263 / 330
第二百三十六話 不穏なO/残された謎

「相変わらず事件を嗅ぎ付ける鼻は良いな翔太郎。」

 

現場の保存が終わり倒されたEXEのメンバーを全員逮捕し終わった刃野が愛用のツボ押しを使いながら第一発見者の翔太郎にそう言う。

 

「まぁ、これでも探偵だからな刃さん....いや"刃野班長"って呼べば良いか?」

「おいおい止めてくれよ翔太郎。

只でさえ俺には不釣り合いな立場なんだ。

むず痒くて仕方ない。」

 

風都署の超常犯罪捜査課は風都第二タワーの一件以降、再編成が行われ本庁からも人員が送られ増員された結果、15~20名に分けられた3チームで捜査を行う形式に変わった。

 

刃野や真倉は先の功績を認められチームの班長に就任したのだ。

因みに班により目的は変わっており課長である照井が主導する一班はドーパントに対する実力行使を目的としその他、捜査は刃野と真倉が班長を勤める"二班"(刃野)"三班"(真倉)が受け持っていた。

 

閑話休題

 

二人が話し込んでいるとそこに照井が現れる。

「ご苦労様です照井課長。」

「刃野班長も現場の保全ご苦労....報告を」

 

「は!....やはりEXEの連中ですね。

全員、仮面ライダーに倒されていますが意識はハッキリしています。

病院で検査を終えたら真倉の班が直ぐに事情聴取を始めます。」

「良し...刃野班長は周囲の聞き込みを頼む。

奴等の行き先を見ていた者がいるかもしれない。」

 

「了解しました。

じゃあな翔太郎、また風麺で一杯飲もう。」

そう言うと刃野はその場から離れていった。

 

「左、率直な意見が欲しい。

奴等と戦ってどう思った?」

「そうだな......"メモリの質が良すぎる"。

EXEのメモリの入手手段は盗みだろ?

それにしては使っているメモリは質が良く量産型が少ない様に思えた。」

 

「やはりか。

奴等の使っているメモリは質もランクも高い。

たまたまそう言ったメモリを手に入れたとしても偶然が続きすぎている。」

「じゃあ、EXEは意図的にランクの高いメモリを盗んでいるって言うのか?

半グレの集まりがどうやってそんな情報を....」

 

「俺も気になって調べてみた。

これはこの一ヶ月でEXEによってメモリの盗難が行われた場所のリストだ。

廃倉庫や研究所、会社に偽装した建物等、色々あるが一つだけ共通点があった。

 

どの建物も"ある人物"が一度所有していたんだ。」

「そりゃ、誰だ?

園咲家の連中か?」

 

「いや、名前は"伊豆屋 忠信"。

井坂を信奉するシンパだった男だ。」

「マジかよ!?

そんな奴がいたのか?」

 

「あぁ、俺も何度か会ったことはある。

奴は井坂と言うメモリの怪物に心酔し奴にメモリや過剰適合者の斡旋も行っていた。

 

だが俺が井坂を倒した後、奴は風都から忽然と姿を消していた。

奴は井坂の為に大量のメモリをコレクションしていた。

それがEXEに流れたのなら左のメモリの質に対して説明がつく。」

「伊豆屋の居所はわかんねぇのか?」

 

「懸命に捜索しているが手掛かりすら無い。

まるで"風都から存在ごと消えてしまった様"に痕跡が断たれているんだ。」

「そうか....なら、現状は晶の依頼をこなした方が進展しそうだな。

こっちでも何か分かったら報告する。」

 

そう言うと翔太郎は早速、発信器を起動し逃げていった晶を追うのだった。

 

 

 

Another side

 

偽名で借りているビルの一室にEXEのメンバーが集められていた。

 

メンバーが見つめる方向には彼等が信奉するカリスマであるヘッドと協力者を名乗る伊豆屋が座っていた。

 

「それで?唯の件は結局どうなったんだ?」

そう尋ねるヘッドにメンバーの一人が怯えながら答える。

 

「それが.....仮面ライダーの邪魔が入って弟を逃がしちまって」

「あ?奴等にはそこそこ強力なメモリを与えた筈だろう?

なら、傷の一つや二つは付けられたんだろうな?」

 

「実は...その戦いを見ていた奴からの話では...全く歯が立たず全員、瞬殺されたと」

「あ!?」

 

「すっ....すいません!」

怒るヘッドの声を聞きメンバーは萎縮するが伊豆屋は想定通りの口調で話し始める。

「やはり、普通の手段じゃ仮面ライダーに勝つことは不可能か。

今の仮面ライダー相手では私の持つ"コレクション"を全て使っても勝つことは出来ないだろうな。」

「おいおい、伊豆屋さん...冗談でもそんな事は言って欲しくねぇな。

確かにアンタにはメモリをくれた借りはある。

 

だが、俺はこのEXEを風都を裏から支配する"第二のミュージアム"にするって野望があるんだ。

もし、裏切ったり逃げようなんて考えているのならここで死んで貰う事になるぜ?」

 

ヘッドは自分のメモリを伊豆屋に見せつけながら脅す。

しかし、その懸念とは打って変わって伊豆屋は冷静だった。

「勘違いしているようだが私は"普通の手段"では勝ち目が薄いと言っただけだ。

"普通じゃない手段"ならば方法は山程ある。

 

......盗まれたメモリは見つからなくても"アダプター"は取り返せたのだろう?

ならば、それを使いエサを撒き仮面ライダーをおびき寄せる。

 

そして、まだ変身してない絶好のタイミングで命を奪えば良い。

狩人の様に息を潜めてな.....」

「成る程、だが具体的にどうする?

仮面ライダーが食い付くエサなんてあるのか?」

 

「あるさ。

私は風都を離れてからも"協力者の管理する街"でずっと彼等を見てきた。

 

だから分かるのさ仮面ライダーの弱点がな。

漆黒の仮面ライダー....確かジョーカーと言ったか?

奴の弱点は相棒が残した形見である"園咲 若菜"だ。

 

病院のカルテを手に入れて分かったが今の彼女にはもうあの超常的な力は無い。

車椅子に乗る非力な女性になった。

誘拐するのなんて難しくない。

 

問題はどうやって彼女のいる場所から誘拐するかだ。

彼処はセキュリティ(仮面ライダー)が厳しいからな。

目的を悟られたら成功する確率はほぼ無いだろう。

 

.....お前からメモリとアダプターを盗んだ()は今どうしている?」

「唯ならEXEを裏切った粛清をする為にも生かしてある。

EXEを裏切り逃げられると思うバカどもへの見せしめにする為にな。」

「そうか....ならば丁度良いな。

その女を使うとしよう。

構わないか?」

 

「それで俺の目的が達成できるなら何の問題もねぇ。

だが、どうするんだ?

もう、拷問してもろくな情報は吐かねぇぞ?」

「そんな事は求めてない。

少し昔話をしよう。

 

私は元々、不治の病を患っていて余命幾ばくも無かった。

名医と呼ばれる者を金で呼びつけて治させようとしたが結局、誰一人私を治せる者はいなかった。

 

井坂先生を除いて.....

どうやって私の身体を治したと思う?

彼は私にエンゼルビゼラを与え"バイラスメモリ"を挿した。

 

そして、バイラスメモリの持つ力で病魔に犯された細胞をウイルスで死滅させたのだ。

こんなことはまともな医者じゃ試そうとすらしなかっただろう。

 

だが、そのお陰で私はもう一度、生を得た。

それから井坂先生の考えやメモリと毒素について理解を深めることで井坂先生こそこの人類を救う神になられる方だと分かったんだ。」

 

「だが、その井坂先生は"仮面ライダー"(アクセル)との戦いで死んだってニュースになってたぞ?」

「古今東西、人が神になるには死と言うファクターが必要不可欠だ。

イエス・キリストも張り付けにされ命を亡くした事で人を捨て神になったのだから.....

井坂先生は"メモリユーザーにとっての神"だ。

ならば、私は"ヤコブ"となろう。

 

彼の思想や願いをこの世界に広める事こそ私の役目だ。」

 

「お前の話は分かったが結局どうするんだ?」

「私としたことが少し熱くなりすぎた様だ。

 

つまり私は井坂先生の残した物を伝えるためにその技術をこの身に体得している。

 

過剰適合者の選別からメモリの改造方法.....それに"エンゼルビゼラの薬効操作"もね。」

 

「エンゼルビゼラ.....成る程。

唯をジャンキーにさせるのか。

優しい顔をしておっかない考えをするな伊豆屋さん。

 

アンタが恐ろしく感じるぜ。」

「恐ろしい?.....それは良い。

神の意向とは本来、恐れ敬われる物。

 

私のこの行動が井坂先生を人の領域を越えた神へと昇華させるのだ。」

 

伊豆屋の目はそこにいる誰よりも濁り狂っていた。

彼にとってはEXEに手を貸しているのも井坂と言う存在を神とする作業の一つでしかないのだろう。

 

井坂はガイアメモリと毒素に見いられた狂人だったがそれを理解し信奉する伊豆屋はそれ以上の思考回路を持つ狂人だったのだ。

 

だが、ヘッドにとってそんな事は些末な意味しか持たない。

EXEをミュージアムを越える風都の裏を支配する闇の組織にして今まで見下してきた者達を見返す。

 

その目的の為ならば彼は狂人とも手を組む。

その先にある未来が例え風都の破滅だったとしても......

 

 

 

Secret side

 

地球の本棚の更に下にあるかつてゴエティアが縛り付けられていた深淵の空間。

 

その空間に今にはコスモス、ゴエティア、そして無名は中心の緑色の光に目を向けていた。

 

「上手くいきそうなのか無名?」

そう尋ねるゴエティアに無名は答える。

「えぇ、多少時間は掛かりましたがあの少しです。」

 

そう言う無名にコスモスは悲しい顔をしながら尋ねる。

「でも、本当に良いの無名?

これが成功したら貴方はもう.....」

「覚悟は出来てます。

それこそ、ゴエティアと決別したあの日から.....」

 

「だが、間に合うのか?

この世界は私とお前(無名)が物語に介入したことでバタフライエフェクトの影響をかなり受けている。

 

間に合った頃には"相棒"は死んでしまった......ではそれこそお前の行動は無駄になってしまうぞ?」

「ちょっとゴエティア!?

そんな言い方しなくても良いでしょう?

 

元々は私達、超越者が起こした失態の尻拭いをして貰っていると言うのに......」

「だからこそ、私達二人は無名の考えに賛同し協力しているのではないか?

 

リスクをちゃんと理解した上で行動する。

そうすれば後悔も生まれないだろう?

だがまぁ、私達二人が協力するのだ。

そんな可能性は万に一つもあり得ないがな。」

 

「そうね。

物語りはハッピーエンドが一番だものね。」

にこやかに微笑むコスモスを見ながら無名とゴエティアは緑色の光を放つ存在の構成を再開していく。

 

光の中で形づくられていくフィリップを見つめながら......

 

 

 

 

 

 

ロノスはガオウライナーの中でこれから先の未来をまた盗み見ていた。

その手には"金色のガイアメモリ"が納められている。

 

そこには信彦と黒いローブを羽織った男が立っていた。

信彦がロノスに尋ねる。

 

「ロノスどうだ?

お前の望む未来は来そうか?」

「うん、流石はゴエティアとその肉身を分け与えられた無名だ。

これなら、きっと上手く行くさ。」

 

 

「随分と嬉しそうだな?」

「そりゃ、だってゴエティアが本当の意味で元に戻ったんだ。

嬉しくもなるさ。」

 

ゴエティアは地球の本棚を書き換える際、自分の存在を切り取って改変に使うエネルギーを賄っていた。

 

記憶の存在となったゴエティアにとってそれは意思と記憶を少しづつ捧げるのと変わりがなく長く改変を続けたことで彼の精神は限界に達してしていたのだ。

 

「今の彼はコスモスと同じく超越者の力を失い記憶のみの存在になった。

改変は出来ないが精神汚染される心配もない。

 

だからこそ、ゴエティアは無名と協力できているのだからね。」

「そうか.....だが、それにしても驚いたぞ。

お前が"コイツ"(黒いローブの男)をショッカーに支配された世界に呼ぶと言った時はな。」

 

「まぁね。

こっちとしても想定外だったんだよ。

まさか、ショッカーグリードにアンクが吸収されるなんてね。」

ロノスはとある目的の為に並行世界のショッカーに"ショッカーメダル"を与え、そこから"ショッカーグリード"が誕生した。

 

だが戦いの最中、アンクがショッカーグリードに吸収され持っていた全てのコアメダルが奪われてしまったのだ。

想定外の事態にロノスは早速取引を交わした黒いローブの男をこの並行世界に呼び寄せた。

 

彼は映司を見るなり"タカ、トラ、バッタ"のコアメダルを渡して窮地を脱すると分離したアンクが奪い取った"ショッカーメダル"と共に戦った"モモタロス"と言うイマジンから生成した"イマジンメダル"を使った"タマシーコンボ"で勝利を収めた。

 

そして3つのメダルを映司から返して貰うとその場を後にするのだった。

 

ガオウライナーに乗った男は映司と掴んだ自分の手を見つめる。

「やっぱり並行同位体の方でも生きている火野 映司に触れられて嬉しかった?」

ロノスの問いに怒りを覚えたローブの男は怪人化した右腕でロノスの首を絞め上げながら持ち上げる。

 

「勘違いするな....同じじゃない。

アイツが共に歩んでいるのは俺じゃない。

まだ、自分の欲望にすら気付いていないちっぽけな俺だ。

 

オーズを利用することしか考えてない片腕でしか生き帰れなかった哀れなグリードだ。」

「へぇ.....彼も君と同じ道を歩むと...そう思っているのか?」

「グリードは永遠に満たされることの無い欲望を持たされた怪物だ。

欲望が満たされても"まだ....まだ...もっと"と求めるに決まっている。

 

俺自身がそうなんだからな。」

 

「成る程ね。

あっ、一つアドバイスすると僕のこの身体はあくまで僕の"精神を乗っける受け皿の意味"しかないから痛め付けようが殺そうが意味はないよ?

 

そんなにカリカリしなくてもちゃんと君の願いは叶えるさ。

何たってこれは僕自身の願いでもあるんだから....」

 

ローブの男はロノスを乱暴に離すとドアを開けて出ていってしまった。

それを見た信彦が尋ねる。

 

「ほおっておいて良いのか?」

「うん、問題ないよ。

いくら強い言葉を吐いたって彼には選択肢なんて始めから無いのさ。

 

例え、自分の力を利用されているとしてもそれの先にしか彼の求める結論には辿り着かない。

だから、安心して良い。

 

けど、意外だったよ。

この提案は君も乗ると思ったのに....」

 

「確かに俺にもやり直したい過去や生き返らせたい人はいる。

.....だが、それでは過去の俺と変わらない。

 

俺は死んだ人の意思を受け継ぐと決めた。

光太郎と同じ様にな。」

「へぇ.....強いんだね君は

僕や彼よりもずっと....」

 

「さぁな.....俺も風を浴びてくる。」

そう言って信彦が出ていくとロノスはメモリを見ながら呟く。

「強いよ...君達は

何千何万の時を生きてきた僕達よりもずっと分かってる。

羨ましく思える程に....でもだからと言って止まる時間はないんだ。

例え、僕達の願いの先に何万何億の屍が積み上がったとしても僕は手に入れる。

 

あの頃と変わらぬ景色の為にね。」

 

ロノスは手に持ったガイアメモリに過去の記憶を重ね合わせる。

"友だった者の記憶が入った"メモリを手に持ちながら......

外伝 続編の投稿に関して

  • このまま続きで見たい
  • 新規投稿で見やすくしたい
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。