もう一人の悪魔   作:多趣味の男

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ドーパントの襲撃にあった病院を刃野と真倉が部隊を率いて鎮圧すると周囲の調査を始めていた。

話を聞き終えた真倉が刃野に話し掛ける。

「刃さん、やっぱりこの事件を起こしたのはEXEの奴等で間違いなさそうです。
連中にクスリ漬けにされた者達を扇動して暴れさせたみたいです。」
「やっぱりな....暴れてた連中を見ても目的が分からなかったのはそのせいか。」

「えぇ、全員エンゼルビゼラ欲しさに事件を起こしたと証言しています。」
「はぁ....薬の為に病院を襲うなんて世も末だな。
それで...奴等の狙いはやっぱり?」

「はい、先程助け出された青山 唯の身柄ですね。
彼女だけ消息が掴めていません。」
「って事はEXEの狙いは彼女だった訳か....おい真倉、こりゃもう一波乱ありそうだぞ?

さっき、彼女の身体検査の結果が出た。
見てみろ。」

そうして刃野から渡されたカルテを見て真倉は驚愕する。
そこには仕事の関係で見慣れてしまった薬物の成分が羅列されていたが問題はその量だった。

「何ですかこれ!?
体内の薬物基準値が普通の数十倍も高い。
これでどうやって生きてるんです?」
「ちょっと前に照井課長からの指示で井坂に関して調べてたことがあるんだが彼の出した論文にこんな記述があった。

"今の人類は肉体の保持や文明の発展に伴い人本来が持つ潜在能力を発揮する機会を失っていった。
だが、もしその力を解放し人間が100%の力を使える様になれば世界を制する既存のルールは著しく変わるだろう"....ってな。

そして、載ってたのがマウスを使った薬物と電気によるリミッター解除の方法だった。」

「じゃあ、この子はリミッターを外されたって言うんですか?」
「5%の力しか使ってこなかった人間のリミッターを外すんだ。
当然、免疫機能なんかも強化される筈だ。

人が本来持つ限界値100%の性能があればこんな状態で生きられても不思議じゃない。

だが、当然リスクもある。
元々、そのリミッターは肉体と精神を守る為の物だ。
それを無くしたら身体にどんな弊害が出るか.....それにクスリで痛覚も麻痺してたとしたら....」
「そんなの...危険すぎるじゃないですか!?
早く彼女を見つけないと!」

「あぁ、早く助けてやらないとな.....」

刃野はそう言うと病院での調査を進めていくのだった。


第二百三十八話 Aとの邂逅/狂信者の目的

照井は風都を第二タワー跡地に着くと目の前に伊豆屋が立っていた。

「待っていたよ照井 竜....いや、仮面ライダーアクセルと呼んだ方が良いかな?」

「探したぞ....伊豆屋。」

 

「まぁ、待ちたまえ。

そんなに警戒しなくても今の私は丸腰、メモリの一本すら持っていない。

 

君と会う為にここら辺一帯の土地は買い占めた。

だから、君が仮面ライダーだとバレる心配はない。

横にある喫茶店が見えるだろう?

 

君との再会の為に色々と準備をしたんだ。

さぁ、中に入ろうか。」

「貴様とお喋りしている暇など無い。

EXEに関することを洗いざらい吐いて貰う。」

 

「そうか....ならば喋る気はない。

このまま、犠牲者が出るのを黙ってみているんだな。」

 

「ACCEL」

 

照井はアクセルに変身するとエンジンブレードを伊豆屋の喉元に突き付けた。

しかし、伊豆屋は構うこと無くエンジンブレードに喉元を当てる。

 

エンジンブレードの熱により喉の皮膚が焼けて煙が出るが伊豆屋は笑う。

「私を殺すか?....それも良いだろう。

それも想定した上で君を呼び寄せたんだ。

さぁ....見せてくれ復讐に歪んだ君の力を.....井坂先生を殺したその力を!!」

 

伊豆屋の狂喜を孕んだ目を見て照井はエンジンブレードを下げるとアクセルメモリを抜き変身解除した。

「良いだろう....お前の策に乗ってやる。

だが、その代わり全て真実を語って貰うぞ。」

「勿論だとも!私は君に嘘は着かない。

着く意味すらないからな。」

 

そうして、伊豆屋と照井は喫茶店に入る。

伊豆屋はカウンターを開けるとコーヒーポットを手に取りコーヒーカップに注いだ。

「君はコーヒーが好きだと聞いている。

実は私の趣味もコーヒーでね。

井坂先生からも評判が良かったんだよ。

 

....さぁ、どうぞ。

毒は入ってないから安心して良い。

だがもし毒味が必要なら私が飲むがどうする?」

挑戦的な伊豆屋の態度を受けても照井は動じること無く出されたコーヒーに口をつけた。

 

「確かに良い腕だ....だが、少し蒸らし過ぎだな。」

「そうかね?.....ふむ、確かに君の言う通りだ。

少し蒸らしが多すぎたな。

すまない。

君と会える事に興奮して時間を見誤った様だ。」

 

 

そう言う伊豆屋にバレない様に携帯を操作しながら照井は尋ねた。

「本題に移るぞ。

伊豆屋....お前の目的は何なんだ?」

「レコーダーにも入っていただろう?

井坂 深紅郎を神として永遠の者にすると....」

 

「井坂を神にするだと!?そんなバカげた話を....」

「人は古来から自分の想像を越えた存在に畏怖し崇めてきた。

それは歴史により呼び名が変わってきた。

そう考えれば神と言う呼称も人を越えた存在にならば使っても問題はない。

 

井坂先生はガイアメモリに出会ったことで人を越えたのだ。

そして、君により与えられた一度目の死から復活した瞬間、人類は理解するだろう井坂先生と言う神の存在を.....」

 

「無駄だ井坂は死んだ。

死体も粒子となり消え去った今、どんな方法を取ったところで死人が生き返ることはない。」

「あぁ、普通の手段では不可能だ。

だが、そんな事を私が理解してないとでも?

私がこの一年の間、何もしなかったと思うのか?

 

ミュージアムや財団についてありとあらゆる手段を使い調べ上げた。

そして見つけたんだ

だが、どうしても入れない場所がある園咲家が管理していた別荘に"隠された研究室"だ。

 

そこには無名が研究していた資料や発明品が保管されている。

だが、その扉を開くには園咲家の生体認証が必要だ。

だからそれを手に入れる。

 

もう、駒は送った。

今頃、"彼女"は役目を果たす筈だ。」

 

「彼女だと?」

 

「もう分かっているんじゃないかい?

"盗み聞きしてる探偵"なら...」

「!?」

 

「君が何の策もなく私との対話を受けるだなんて思ってない。

青山 唯に園咲 若菜を拐う様に命令を与えた。

 

今頃、彼女の身柄はEXEの拠点に向かっているだろう。」

「貴様っ!?」

 

「おっと!....ドライバーとメモリを机の上に置け。

この建物には爆弾を仕掛けてある。

 

それに、私に危害が加われば園咲 若菜や周りの者を出来るだけ巻き込んで殺す様に仕込んでおいた。

その命令を下すのはこれだ。」

 

伊豆屋はシャツを開けると心臓に心電図を測るプラグが付けられており片手でそのプラグを握っていた。

「少しでも不振な動きをすればプラグを抜く。

そうすればEXEの拠点は凄惨な殺人現場となるだろうな?

 

警察として仮面ライダーとしてもそれは悲劇だろう照井竜。」

「くっ!....」

 

「命令通りドライバーとメモリを置いて座れ。

まだゲームは始まったばかりなのだから....」

「EXEはお前にとってただの捨て駒と言う訳か。」

 

「私の目的を果たす為の捨て駒だな。

園咲 若菜の生体認証を手に入れるには色々と準備が必要なのさ。

 

その為にEXEには私の息が掛かった手駒を潜り込ませている。

奪い取った生体認証を使い研究所から井坂先生の蘇生に必要な情報を手に入れれば計画は成功だ。」

「このまま、逃げられるとでも思っているのか伊豆屋?

俺はお前を何処までも追い詰めるぞ。」

 

「逃げる?.....井坂先生の蘇生は我ら同志の目的だが君を呼び出した理由は全くの別物さ。

 

照井 竜....私と賭けをしないか?」

伊豆屋はそう言うと机に"一つのカプセル"と中心の机に一本の注射器を置いた。

 

「このカプセルには毒薬が入っている。

そして、注射器にはその毒の解毒剤が入っていると言う訳だ。

 

君にはこれからこの毒を飲んで貰う。」

「もし断ったら?」

 

「断ったらどうなるかなんて私が言わないと分からない程、君は愚かでは無い筈だ。」

そう言うと喫茶店に掛かっていたテレビの電源が入る。

 

テレビには廃墟が映されておりそこには一体のドーパントとドーパントに捕まっている園咲 若菜を助けようとする少年の姿が映し出されていた。

 

「ここはEXEの拠点だ。

映像をリアルタイムで此方に送信している。

 

見えるか?園咲 若菜の腕を縛り上げた男....あれが私の協力者だ。

 

そして....あぁ、良かった"ヒーロー"(翔太郎)が到着したぞ?」

 

伊豆屋の言う様に現場に翔太郎が現れるとドライバーを装着した。

 

「左が来たのなら彼方は問題ない。

奴ならきっと助け出すだろう。」

「ふふ.....あぁ、このまま何も仕掛けていなかったならな?」

 

そう言うと映像を映していた画面が急に変わり建物の周辺に付けられた点滅する機械を映し出す。

 

「ミュージアムが試験開発していた"高性能爆薬"だ。

ドーパントを爆殺できる威力になるまで強化された爆弾だ。

もし、ここで爆発したらヒーローごと巻き込まれて死んでしまうかもな?」

「くっ!これが人質と言う訳か?」

 

「勘違いするなEXEの奴等は爆弾の事など知らん。

それと、この爆弾も私の身体を繋いでいるプラグと連結している。

 

つまり、爆弾を止めようと私に危害を加えれば君もEXEのアジトも両方とも木っ端微塵になると言う事だ。

 

それでは賭けの内容について教えよう。

ルールは簡単、君が毒薬を飲んでからEXEのアジトでの事件が解決するまで君が生きてたら君の勝ち。

逆に君が死ぬ....もしくはそこの解毒剤を注射したら君の敗けだ。

 

井坂先生に勝った君なんだきっとこれぐらいの苦境など屁でもないだろう?

それでどうする?

私との賭けを受けるかね?」

 

伊豆屋の問いに照井は乱暴に置いてあったカプセルを掴むと飲み込んだ。

 

「では...賭けを始めようか。」

 

そうして伊豆屋と照井は画面に映る事態を見届けるのだった。

 

 

 

EXEの拠点となっている廃墟に渦潮が浮かぶと唯と若菜そして晶をその場に吐き出すと姿を消した。

 

若菜の姿を見たヘッドか声を掛ける。

「おいおい、連れてくるのは園咲 若菜だけだろう?

お前の弟まで来るとは聞いてなかったが?」

「この子が勝手に着いてきたのよ。

でも、園咲 若菜を連れてきたんだから問題はないわよね?」

 

「まぁ、それもそうか。

こんなガキが何をしたって問題ねぇ。

おい、お前ら園咲 若菜の身柄を抑えろ。

 

彼女はEXEにとって必要な人物だ。

何せミュージアムの幹部だった方だからなぁ。」

 

ヘッドが指示を出すと部下が降りてきて若菜の両手を手錠で縛る。

 

「....痛っ!」

「おい、何してんだ?」

 

痛がった若菜を見てヘッドが尋ねる。

「す....すいません!

どうやら下のガラスで指を切ってしまったみたいで...」

「はぁ、丁重に扱え。

お前らと彼女は立場が違うんだからな。」

 

そんな話をしていると唯がヘッドに尋ねた。

「仕事はこなしたでしょう?

薬は何処にあるの?」

「あぁ、安心しろ伊豆屋さんからちゃんと預かってる。

ホラよ!」

 

ヘッドが薬の入った袋を投げて渡す。

唯はそれを急いで受け取り中を開けると注射器と薬液が入った小瓶が入っていた。

 

それを受け取ると唯はメモリを身体から抜き注射器で薬液を吸い取る。

 

注射器を薬で満タンにすると手首に射とうとする。

しかし、唯の手を全身、びしょ濡れでボロボロになりながらも晶は止めた。

 

「何で!?」

「姉....ちゃん....は....僕....が...守...る。」

 

「離して!その手を離しなさい晶!!」

「嫌だ!絶対に離すもんか!

俺もなるんだ!...."翔太郎兄ちゃん"みたく...強く!」

 

唯の手に必死でしがみついていると見かねたEXEのヘッドが仲間に指示をだす。

「はぁ....おいこのガキを"始末"しろ。

喧しくて敵わない。」

「はい、ヘッド!」

 

ヘッドの命令を受けたメンバーはメモリを取り出すと起動し首に挿した。

 

「Arms」

 

アームズドーパントに変わると右手の銃を晶に向ける。

しかし、その弾は発射される前にバイクで突撃してきた翔太郎とアームズドーパントが激突する。

 

「翔太郎兄ちゃん!」

「よう晶!ちょっと見ない内にカッコ良くなったな。

男子三日会わざればってか?」

 

「でもどうやって?」

晶の疑問に翔太郎はバイクを降りると晶の服に着けていた発信器を外して見せる。

 

「最初逃げた時に外し忘れてたんだがまさか、こんなとこで役立つとは思わなかったぜ。

 

でもお陰でここのアジトが分かったんだから結果オーライか。

....何時まで隠れてる気だ?

まさか、EXEのヘッドが臆病者って訳でもねぇだろう?」

 

翔太郎がそう言って挑発すると隠れていたヘッドが姿を現した。

「オメェは...サンタちゃんとこの"ペットショップの店員"じゃねぇか!?」

「黙れ!あの姿は世間を騙す仮の姿で本当の俺はEXEのトップであるヘッドだ。」

 

「成る程なぁその"パッとしない顔面"なら俺を騙すにももってこいって訳だ。」

自分の容姿について言われヘッドは不快な顔をする。

 

「あんまり、調子に乗ってんじゃねぇよ。

唯!その探偵を殺せ!

殺したらもっと薬をくれてやる。

テメェらも唯に手を貸してやれ。」

 

その言葉を聞いた唯やEXEのメンバーはメモリを持って翔太郎を睨み付ける。

 

翔太郎は持っているメモリガジェットを起動させると晶に渡した。

「これがあればお前を守ってくれる。

だから、巻き込まれねぇように離れててくれ。」

「翔太郎兄ちゃん....姉ちゃんを助けて!

あんな姉ちゃん始めてみたんだきっと、奴等に何かされたんだ!」

 

「分かってるよ。

お前の姉ちゃんは助けてやるから安心しな。」

 

そう言うと翔太郎はドライバーを腰に着ける。

 

「DEMON system on-line」

 

「JOKER」

 

「変身」

 

「DEMON」「JOKER」

 

仮面ライダーデモンジョーカーへの変身が完了した翔太郎はヘッドに向けて指を指し示す。

 

「さぁ、おまえの罪を数えろ。」

 

翔太郎は言い終わると目の前の敵に突撃していくのであった。

 

 

 

Another side

 

EXEと翔太郎の戦いをモニター越しに見ている照井の表情が徐々に曇り始める。

呼吸がしづらいのか息を吸う音が大きくなってきた。

 

それを見た伊豆屋が言う。

「薬が効いてきたみたいだな?

呼吸をするのは苦しいか?

 

身体の痛みは感じているか?

その痛みをお前は私に与えたんだ。」

「どういう....意味...だ?」

 

「井坂先生の死を聞いた私はこの世界に絶望した。

お前が私の神を殺したせいで私はこの世界にいる意味を見失い。

癒えることの無い永劫の痛みと苦しみを味わったのだ。

 

この苦しみから解放されたいだろう?

その解毒剤を射てばこの苦しみと死の恐怖から解放されるぞ?

生きたいだろう?

 

遠慮することはない解毒剤を射つと良い。」

「俺が....解毒剤を...射てばアジトを爆破するのだろう?

.....俺は..警察官だ.....例え犯罪者でも....救える命は....救う。」

 

「そうか....だが、その救う命に井坂先生は入っていなかったのだな?

お前は復讐を優先し井坂先生の命を奪ったのだ。

 

そんなお前が命を救うだと?.....ふざけた事をほざくなっ!!

「確かに...俺は井坂を殺してしまった....だが...そこに復讐の感情は...無い!

俺は....奴を殺したかった訳じゃない倒し止めたかっただけだ!」

「そんなのは結果論でしかない。

良いでしょう....その毒が貴方の命を奪うまでにはまだ時間がある。

 

ここで、命が奪われる瞬間を共に見届けましょう。」

 

「ふざ....ける....くっ!....」

照井は伊豆屋を掴もうとするが力が入らず机に手を起き身体を支える。

「無駄に体力を使うな.....お前には最後まで見届ける義務がある....照井 竜。」

 

そう言って伊豆屋は笑いながら現状を眺めるのだった。

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