もう一人の悪魔   作:多趣味の男

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第二百三十九話 Aとの邂逅/終幕への一撃

 

「おらぁ!」

翔太郎の攻撃がEXEのドーパント達を次々にメモリブレイクさせていく。

それを見たヘッドは内心では焦っていた。

 

(おいおいおいおい....強いにしたって限度があるだろう?

殴られただけでメモリブレイクするなんて見たことねぇ。

ムカつくが伊豆屋の言う通りだ。

 

この仮面ライダーに勝つにはやっぱりこれを使うしかねぇか。)

 

ヘッドは自分のエナジーメモリに伊豆屋から受け取ったアダプターを取り付ける。

 

Energy upgrade(エナジーアップグレード)

 

ヘッドはメモリを鼻に挿すと肉体が変化していく素体はエナジードーパントでありながら左手のレールガンは禍々しく形を変え頭部と背中に巨大なプラグが生成された。

 

強くなった身体を見つめてヘッドは笑う。

「はは、これがアダプターの力か!

今なら何でも出来そうだ。」

 

ヘッドは背中にあるプラグにエネルギーを蓄積させるとそのエネルギーを左手のレールガンへ流し込んだ。

そして、翔太郎の戦いに紛れる様に天井に登りプラグから発生させた磁力で天井に張り付くとレールガンを翔太郎に向けるのだった。

 

 

 

「はぁはぁ....流石に量が多いな。」

EXEのドーパントの集団を片っ端からメモリブレイクしているがまだ彼方には余力が有りそうだ。

 

対して此方は戦えるのは翔太郎一人しかいない。

分が悪いのは明白だった。

(晶は俺のメモリガジェットが守ってるから良いがあっちで人質になってる若菜さんも何とかしねぇとな。

あー、こういう時フィリップなら何て言うんだろうな。)

 

答えが返ってこない想いを心の中で吐露しつつ現状を再確認する。

(最優先は晶の姉さんと若菜さんの安全の確保だな。

俺のメモリは直接強化する面が強いメモリばっかだ。

若菜さんの安全を確保しながら奴等を叩き潰せるメモリは.....これしかねぇか。)

 

「フィリップ、力借りるぞ。」

翔太郎は"サイクロンメモリ"を取り出すとマキシマムスロットに装填した。

 

「CYCLONE MAXIMUMDRIVE」

 

「行くぜ....CYCLONE EFFECT(サイクロンエフェクト)

 

翔太郎の四肢に緑色の風の塊が纏われるとその風を使い高速でホバー移動しながらEXEのメンバーをメモリブレイクしていった。

 

唯は咄嗟に渦潮のシールドを展開したことで翔太郎の攻撃を防御したが若菜の元に翔太郎が辿り着いてしまった。

 

「まずい!あのライダーを引き離せ!」

 

EXEのメンバーが若菜を奪還しようと動くが翔太郎は地面を殴り付け若菜の周囲にサイクロンの風で出来た竜巻の防壁を展開する。

 

「サイクロンのマキシマムで作った風の壁だ。

お前らじゃ傷一つ付けられねぇよ。

若菜さん、悪いがここでちょっと待っててくれ。

あの子()を助けたらすぐに戻ってくるから」

「分かったわ。」

 

若菜からの返事を聞いた翔太郎は竜巻を抜けて唯の元へ向かった。

 

翔太郎が来たことで薬を打てなかったせいだろう。

エンゼルビゼラの禁断症状が身体に出始めていた。

 

息づかいが荒くなりハルバードを握る手が震えている。

「はぁはぁ....う....あ...」

「おい、大丈夫か?」

 

「く...すり...が...エンゼル...ビ...ゼラ。」

「どうやら、あんまり長くは戦ってられねぇみてぇだな。

ちっと強引なやり方するが許してくれよ?」

 

「来いバットショット!」

 

翔太郎が晶を警護していたバットショットを呼びつけると手に取り中のメモリを入れ換えた。

 

「LUNA MAXIMUMDRIVE」

 

「ルナメモリのマキシマムでメモリの位置を探り当てる。

バードドーパントの一件みたく上手く行けば良いが....やるだけの価値はあるだろう。」

 

バットショットがルナメモリの力を内包したフラッシュを唯に何発も当てていく。

その眩しさに禁断症状の幻覚が重なった唯は持っているハルバードを振り回して暴れ始める。

 

「チッ!大人しくしろ!」

翔太郎が唯の身体を押さえつけようと動くがオーシャンメモリの能力で発生させた渦潮が翔太郎の身体を吹き飛ばした。

 

「いてて....簡単にはいかねぇか。

デモンジョーカーの身体に傷を付けられるとはな。

メモリとの適合率が上がってんのか?

 

晶の話じゃ姉さんはメモリの運び屋はしてても実際には使ってなかった。

元々、オーシャンと適合率が高かったとしてもこの強さはありえねぇ。

 

つまり、何かしらの施術を行われてる可能性がある。

だとしたら、このままメモリブレイクするのは危険だな。」

 

そう考えていると翔太郎の元にバットショットが帰って来た。

目のくらみが収まった唯は言う。

 

「こんな目眩ましに何の意味があるって言うの?

私には傷一つ無いのよ。」

「まぁな。

バットショットとルナメモリの組み合わせは相手にダメージを与える戦法じゃねぇ。

 

ルナメモリのエネルギーをタップリと受けただろう?

そのエネルギーがお前の身体の異常を教えてくれるんだよ。」

 

翔太郎の言った通り、ルナメモリのエネルギーが唯の身体を満たすとメモリとその周囲を渦巻くどす黒いエネルギー(エンゼルビゼラ)が視覚化される。

 

「良し....今助けてやる。

来いスタッグフォン!」

翔太郎は呼び出したスタッグフォンを手に取ると内部にメタルメモリを装填する。

 

「METAL MAXIMUMDRIVE」

 

すると、スタッグフォンは銀色に輝き始める。

そして翔太郎の周囲を飛び始めるとジョーカーメモリをドライバーのマキシマムスロットに装填する。

 

「JOKER MAXIMUMDRIVE」

 

(今の彼女を救うには普通のマキシマムじゃ危険すぎる。

メタルメモリの力を込めたスタッグフォンで彼女の身体を渦巻いてるエネルギーをメモリごと巻き込んでぶっ壊すしてかねぇ....チャンスは一回。

 

失敗したら.....いや、違う失敗なんて絶対しねぇ。

俺はフィリップと約束したんだ。

この街を守る仮面ライダーとして必ず救って見せる!)

 

翔太郎の強い感情に呼応してジョーカーメモリの力が強くなる。

それを直感的に感じ取った唯は翔太郎に恐怖する。

 

「いや....来ないで..いやいや...いやぁぁぁぁ!!

 

唯の感情に反応しオーシャンメモリが力を暴走させる。

唯の身体を包み込むように発生した巨大な渦潮がまるで意思を持った様に蠢き怪物の姿に変わっていく。

 

その姿はまるで海の怪物として名高いクラーケンの様だった。

足の触手の先端が変化しハルバードの切っ先に変わると翔太郎に向けてハルバードを振るう。

 

それを翔太郎は回避しながら中心の唯の元へと走っていく。

唯も近づかせない様に全てのハルバードがついた触手で翔太郎を攻撃する。

 

回避が出来るスペースが無くなると翔太郎は両手で攻撃をいなしつつ前へ進んでいく。

完全にいなすことが出来ず身体に傷が付こうと翔太郎は止まらない。

 

「くっ....来るなぁ!」

唯が全ての触手を束ねて巨大化させたハルバードが翔太郎の身体の中心に向けて振り下ろされた。

 

ズバン!と言う音と共に土煙が舞う。

「翔太郎兄ちゃん!」

晶が心配そうに声をかけると土煙の中で声が聞こえる。

 

「安心しろよ晶。

言っただろうお前の姉ちゃんは俺が救うって....俺は依頼人との約束は破らねぇ。」

 

そう言って翔太郎はクロスした腕にジョーカーのエネルギーを纏わせて唯のハルバードの攻撃を受け止めていた。

 

「それに...漸く近付けたしなぁ!」

両手足に力を込めると一気に解放した。

 

「おらぁ!」

解放された力によりハルバードが弾かれると一瞬だが唯は無防備になった。

 

そこを狙いすます様に翔太郎の必殺技が炸裂する。

 

JOKER METAL BULLET(ジョーカーメタルバレット)

 

翔太郎は周囲を待機していたスタッグフォンをジョーカーのエネルギーが込められた左足で貫くように打ち抜いた。

 

するとスタッグフォンはまるでビリヤードの玉の様に翔太郎が狙う場所へ一直線に進み唯のいる渦潮に激突した。

 

凄まじく強い流れに飛び込んだスタッグフォンだがジョーカーとメタルのマキシマムエネルギーを蓄えドリルの様に回転しながら渦潮の流れを断ち切って前へと進む。

 

そして、遂に唯の元へ辿り着いた。

 

スタッグフォンと言う砲弾を受けた唯は渦潮の力で何とか抑え込もうとするが間に合わず自らもスタッグフォンの回転に巻き込まれ渦潮から身体が弾き出される。

 

その身体を背後から翔太郎が支える。

そして、そのままスタッグフォンは唯の身体を貫通すると発生していた渦潮は姿を消した。

 

スタッグフォンの牙には唯の身体の中にあったオーシャンメモリが挟まれており勢いを付けて回転させることでメモリブレイクを行った。

 

その瞬間、彼女の身体が光り元の人間の姿へと戻るのだった。

翔太郎は唯の脈を確認する。

「.....ふぅ、どうやら成功したみたいだな。」

「姉ちゃん!」

 

助かった安心感から晶は唯と翔太郎の元へと走り出すのだった。

 

 

 

その光景を見ていた伊豆屋は翔太郎の起こした奇跡に驚いていた。

「バカな!?....エンゼルビゼラの副作用を無効化してメモリブレイクするなどどうやって?」

 

伊豆屋は翔太郎の行った行動を一つ一つ振り返っていき一つの違和感に気付いた。

 

(何故、攻撃が当たった時、彼女の身体を背後から支えたんだ?

.....まさか、あのマキシマムでメモリとエンゼルビゼラの毒素の両方を分解したのか?

 

メモリを破壊したのはあのクワガタだ。

となれば毒素はどうやって?

身体を密着させたのは....自分の身体に毒素を移したのか。

 

成る程、だとしたらジョーカーメモリを使った理由も納得がいく。)

 

エンゼルビゼラの毒素は強大だ。

普通にメモリブレイクすれば変身者()は死ぬ。

だからこそ、メモリブレイクはスタッグフォンに任せて翔太郎は毒素を受け持ったのだ。

 

メモリが砕かれた瞬間、メモリと共に巻き込んでいたエンゼルビゼラの毒素を翔太郎は自らの体内に押し込んだ。

そして、体内に全ての毒素を取り込むとジョーカーのマキシマムのエネルギーで"完全に破壊し消滅させた"のだ。

 

(確かにこの方法ならば彼女の命を助けてメモリブレイクする事も出来るだろう。

だが、こんなやり方思い付いても実行する人間がいるなんて想像できない。

 

猛毒を飲み込んでその後に解毒する様なものだ。

体内へのダメージだって当然あるだろう。

そんな無謀で愚かな選択.....私だったら絶対に取らない。)

 

その行為に驚いている伊豆屋に照井が言った。

 

「驚いて....いるようだな....お前は左 翔太郎を見誤ったんだ....」

「何だと?」

 

「フィリップがいなくなって....奴は変わったが...本質は同じだ。

依頼人の...為ならば.....命を賭けて行動する。

 

端から見ればバカな行為だとしても....それで命が救えるならやる....アイツはそういう奴....だ。」

「.....用は私があの男の愚かさに気付けなかったのが敗因と言う訳か....お見事だ照井 竜。」

 

そう言うと伊豆屋は解毒剤を素早く照井の首に打ち込むと中身を注射した。

「!?」

「本当ならばお前の無力感を見ながら与えてやりたかった絶望だが....仕方がない。

ゲームのルールは"解毒剤を(照井)の身体に注射されたら敗けだ.....少々強引だがこれで良いだろう。」

 

「貴様っ!?」

照井は怒りから伊豆屋の首を掴み締め上げる。

「くっ!?....くく、さっきまで毒で犯されていたとは思えない力だ。

やはり君も悪に怒りを現せる仮面ライダーか。」

 

「貴様の思い通りになどさせるか!

爆弾の起動は絶対にさせない!」

「爆弾?....ははは!

残念だがそれは的外れだ。

爆弾ならとっくに"解除"したさ。

 

その約束を破るつもりはない。

今日お前が失うのは"たった一人"だ......」

 

「まさか!?」

伊豆屋の真意に気付いた照井はモニターに目を向ける。

その姿を見て伊豆屋は復讐の成功を確信するのだった。

 

 

 

晶が姉の元へ走り出すのを見て安心した翔太郎は一瞬だが油断してしまった。

故に気付くのが遅れてしまったのだ。

 

廃墟の天井に貼り付いて武器を構えている"ドーパント"(エナジー)の姿を見落としていた。

奴の持つ武器から光が見える。

 

「やべぇ!晶、伏せろ!」

翔太郎は晶に向かって叫ぶとその声に驚き走るのを止めてしまう。

 

それを狙った様にエナジードーパントが光弾を放った。

ギリギリで間に合った翔太郎は自らの身体を盾に攻撃を防ごうとするがその光弾は翔太郎のドライバーに命中する。

 

ズドン!と言う音と共にドライバーから火花が上がると翔太郎の変身が解除される。

 

そして、エナジードーパントは生身になった翔太郎に追撃のレールガンを撃ち込む。

 

翔太郎の胸部に火花が上がるとまるで糸を切られた人形のように翔太郎は地面に倒れるのだった。

 

その光景を呆然と見ていた晶が叫ぶ。

 

「兄ちゃん?....翔太郎兄ちゃん!?

 

 

そして、タイミング悪くその光景を救援に来た"亜樹子"も見てしまう。

「そん...な....翔太郎....君。」

 

「ふふっ....ははっ!

あひゃひゃひゃ!やったぜ!

俺はこの手で仮面ライダーを仕留めたぞ!」

エナジードーパントは仮面ライダーを殺せた実感を感じながら地面に降り立つ。

 

 

辺りが絶望に包まれるなか亜樹子は小さく呟いた。

 

「アタシ.....聞いてない....」

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