クスクシエに到着した照井はボロボロの身体をキチョウに支えられながら店内へと入ってきた。
中では比奈が開店の準備をしていたが傷だらけの照井を見て驚いてしまう。
「すいませんまだオープン前....きゃっ!酷い傷っ!」
「ひだ...り....は?」
「え?....その...まだ帰ってきてません。」
「そう....か...」
遂に照井は限界に来たのか意識を失ってしまう。
「ちょっと!!大丈夫ですか?」
「照井!しっかりして!」
比奈が横で照井に声をかけている女性に尋ねる。
「貴女は?」
「私は....キチョウ。」
「キチョウ....さん?
取り敢えずここにいても危ないですし一緒に中に入りましょう....ふにゅ~!!」
比奈は持ち前のパワーで照井を"楽々"と持ち上げるとキチョウを連れてクスクシエの中へと入っていくのだった。
鎧の怪人を追っていた映司だったが相手の方が速度が速く見失ってしまった。
変身を解除して辺りを捜索しているとボロボロの服を纏った青年が地面に倒れ付していた。
「大丈夫ですか!しっかりしてください!」
映司の声に反応して青年は起き上がる。
「ここは....何処だ?
お前は誰だ!」
「えっと...俺は君が気を失っているのを見かけて声をかけたんだ。」
「俺が気を失っていた?
....俺は誰だ?ここは何処なんだ?」
「もしかして記憶喪失とか?」
「記憶....喪失?」
まるでそんな言葉を知らない対応をとられた映司は恐る恐る青年に向けて尋ねる。
「えっと、俺の名前は火野.....火野 映司。」
「火野....映司?」
「そう!貴方の名前は?」
「俺....は.."ノブナガ"。」
「ノブナガかぁ....じゃあノブ君だね。」
「ノブか。
悪くないな。」
「取り敢えずここは危険だから一緒に行こう。」
そうして映司はノブナガをクスクシエへと連れて帰った。
フィリップの黒炎により洗脳が解けた鴻上が二人に話し始める。
「やれやれ、私が洗脳されている間に随分と好き勝手されてしまった様だ。
流石はアルケと言ったところだな。」
「アルケ?」
「君の知りたがっていた黒幕の名前だよ。
....正確には可能性があると言う段階だがね。
アルケは欲望を司る超越者だ。
フィリップ君!君はオーズとコアメダルの歴史については調べたかね?」
「えぇ、800年前のとある小国の王が錬金術師に指示をして作らせたと」
「その通り!!
だが、その時代の錬金術と言えば平凡な化学反応を利用した物ばかりだった。
それでどうやって欲望と言うエネルギーに目を付けられたと思う?」
鴻上の問いにフィリップは一つの可能性を考え答える。
「まさか、アルケが錬金術師と接触しその力を分け与えたのか?」
「正確に言えば製法を教えたのだ"直接"な。
これを見たまえ!
最近、出土した800年前の遺物だ。」
そう言って鴻上は机にあったタブレットを操作して一枚の写真をフィリップに見せた。
それは透明な琥珀の様な結晶体であり内部には金色の液体の様なエネルギーが滞留していた。
「800年前の王と錬金術師の手記からこれは"賢者の石"と呼ばれていた。
錬金術師達はこの賢者の石からオーメダルやドライバーの精製方法を教えられたらしい。
写真では中心に黄金のエネルギーが流れているが実際に見ると透明な結晶だった。」
「まさか、ゴエティア以外にもこの地球に直接介入した超越者がいただなんて....」
「驚くのはこれだけじゃない!
手記によれば賢者の石は800年前の王にこの地球全てを操る方法を教えた様なのだ。
その方法を聞いた王はグリードを作り上げ全てのコアメダルをその身に取り込もうとした。
だが、器が持たなくなり石棺にグリードごと封印された。」
そこまで聞くと伊達が鴻上に尋ねる。
「おいおい、そりゃかなりヤバイ話じゃねぇか。
会長、あんたさっきその賢者の石を出土したって言ってたよな?
その賢者の石は今、何処にあるんだ?」
「そりゃ、もちろん保管していたさ。
"照井君が事件を起こした場所"にね。」
「「!?」」
「その事に気付いた私は直ぐに事件当時の監視カメラを見ようとしたんだが....そこで記憶が途切れている。
今、確認したがその時の映像も私が消してしまっている様で何も分からん!」
「何だよそれ....」
「大方、そこで鴻上さんが洗脳されたんだろうね。
しかし、困ったな。
正体が超越者だと分かっても目的が分からないのならこっちは動きようも無い。」
「フィリップ君の地球の本棚だっけ?
それで何か分からねぇのか?」
「かつて同じ超越者を相手にした時、地球の本棚の世界で殺されかけた。
超越者にとって地球の本棚は自分達のフィールドだ。
何の策もなく無闇に突っ込めば返り討ちに遭う可能性が高い。
鴻上さん....保管庫から盗まれた物については把握していますか?」
「勿論、保管庫から盗まれたのは三つ。
一つが"賢者の石"....二つ目は"石板"....最後は...出土された場所から見つかった三枚の"黒いコアメダル"。」
そうしてタブレットに表示される円形の石板と"エビ"、"カニ"、"サソリ"が掘られた三枚の黒いコアメダルが表示されるのだった。
アケチは黒塗りのベンツに乗りながらスマホで日本の警察に連絡していた。
「えぇ、照井 竜を"全国指名手配"してください。
罪状?....氷川署長の殺人未遂、それに私の部下も殺されました。
それだけあれば十分な筈です。
えぇ、お願いします。
照井 竜の捜査に反抗する者についてですか?
それは貴殿方のトップの判断に任せます。
もう良いですか?
これから大事な用件がありますので....では失礼します。」
連絡を終えると運転手に声をかける。
「ここで良い....停めろ。」
運転手がアケチの言う通りに車を止める。
「それで....供物の準備は?」
そう声をかけると運転手が話し始める。
「一人は確保しましたが...他二人はまだ....」
「随分と手こずっているな。
主と共鳴する波長を持つ人間にセルメダルを打ち込むだけなのにどれだけ手間をかけるのですか?」
「申し訳ありません。」
「はぁ....まぁ良いでしょう。
お前達にはその間に"二人目の供物"にセルメダルを打ち込んで貰いましょう。」
「もう見つけられたのですか?」
「えぇ、二人目の供物は"園咲 若菜"です。
彼女はゴエティアにより超越者の力を植え付けられました。
十分に供物として使えます。
彼女は風都にいる筈です。
それぐらいならお前達でも出来るでしょう。
分かったのならば早く向かいなさい。」
アケチにそう命令されると運転手は外に出ると大量のセルメダルになり二つに分裂するとプテラヤミーに姿を変え空を飛んでいった。
「はぁ....やはりセルメダルしかないヤミーでは知能に差がありますか。
とは言えグリードも手駒が少ない。
悩みどころですね。」
アケチは金色のセルメダルを取り出すと地面に落とした。
落とされたメダルは地面にチャリン!と音を鳴らし吸収されるとアケチを別空間へ移動させた。
アケチの周囲に広がったのは周囲を掘削して作られた岩の空間だった。
その空間を作っているのはガメルとカザリでありメズールとウヴァは運び込まれている装置を組み立てながらエネルギーを供給していた。
装置の中心部には台座がありそこに賢者の石が取り付けられていた。
『戻ったかアケチ。』
賢者の石からアルケの声が発せられアケチに話し掛ける。
「はっ!お待たせして申し訳ありません。」
『前置きは良い....報告を』
「ノブナガ様とキチョウ様ですが...順調に成長を続けています。
このペースで行けば覚醒も直ぐでしょう。
しかしノブナガ様が暴れた際、仮面ライダーにコアメダルを奪われてしまったのですが....」
『その点は問題ない。
メダルは此方の手にある。』
賢者の石はそう言うと特殊な力で黒いコアメダルを浮かせるとアケチの前に差し出した。
『これを埋め込み直すにはまだ時がいる。
しばらく成長させてから戻せ。』
「はっ!丁度、鴻上から手に入れたドライバーがありますのでそれと平行させて渡します。
それと....もう一つ報告が
"貴方の力が効かない人間"が現れました。」
『効かない....効きにくいではなくか?』
「はい、ガイアメモリ使用者や貴方様の力で出来たオーズに洗脳能力が効きにくくなるのは聞いておりましたが全く効かないのは始めてです。」
『ふむ....そいつの名か姿形は分かるか?』
「名前....確か照井 竜が奴の事を"左"と呼んでいました。」
『左.....そいつの使っていたメモリは分かるか?』
「"ジョーカー"....そう聞こえました。」
ジョーカーの名を聞いたアルケは合点が言った。
『ジョーカーか...ふふっそれで納得した。
アケチよお前が会った男は左 翔太郎だ。
奴の使うメモリには超越者の一人だったコスモスの力が宿っている。
そして、超越者として根幹の力を持つメモリ使用者には私の洗脳能力は効かなくなるのだ。』
「そういう訳だったのですね。
どういたします?
邪魔になるようでしたら私が消しましょうか?」
『いや、コスモスのメモリを持っているのなら役に立つ。
生かしておけ....だが覚醒の邪魔をされたら面倒だ。
先程、鴻上の洗脳が解かれた事をあるからな。
ウヴァ!ガメル!』
賢者の石が二体のグリードを呼ぶと仕事を止めて此方を向いた。
『お前達に仕事を与える。
儀式が始まるまで左 翔太郎とフィリップを足止めしろ。
それとアケチ...."ローブの男"にオーズの足止めを指示しろ。』
「よろしいのですか?
奴とアンクは平行同位体です。
万が一我々を裏切る様な事があれば....」
『それは不可能だ。
奴の欲する者は儀式の過程でしか手に入れられん。
儀式を止めることは望みが果たせなくなる事と同義だ。』
「では....その様に」
『念には念をと言う。
この世界の仮面ライダーは強いからな。
ウヴァ、ガメル....お前達に力を与えよう。』
そう言うと賢者の石が光出し周囲のセルメダル集まり融合すると二本のガイアメモリを作り出された。
造られたガイアメモリをウヴァとガメルの二人に渡した。
『それはお前達の力を高める。
勝てないと思ったら使うことだ。』
メモリを渡されたウヴァとガメルは岩だらけの空間から移動した。
アケチは賢者の石に尋ねる。
「では、私はノブナガ様の覚醒をお手伝いすれば宜しいですか?」
『あぁ。
ノブナガが全ての起点だ。
奴が覚醒すればキチョウも自ずと覚醒するだろう。』
「承知致しました。
ではカザリをお借りしても宜しいですか?
供物の準備にプテラヤミーを使っていますが予想よりも時間が掛かっていますので.....」
『分かった。
カザリ!お前はこのメモリを持ってアケチに従え。』
アルケはセルメダルからもう一つメモリを作るとカザリへ渡した。
そして、メモリを受け取ったカザリはアケチの傍にかしずく。
「ありがとうございます。
では、カザリ早速だが働いて貰おうか。
ノブナガ様を追え....あの方はきっとオーズと行動を共にしている筈だ。
見つけたら程々に痛め付けて覚醒を促せ。」
「分かったよ。」
そう言うとカザリもその場を後にした。
「では、私もこれにて....」
『行けアケチ。
覚醒が始まれば儀式を進められる。
そうなったら後は時間が全てを洗い流してくれるだろう。』
そう呟く賢者の石の背後には"巨大な砂時計を模した装置"があったのだった。
映司にノブナガと名乗った男は尋常ではない才能を有していた。
最初は片言しか話せなかった言葉も図書館で読み漁った本の知識を使い直ぐに順応したのだ。
そして、映司が伝で紹介した仕事場で起きたトラブルを一瞬で解決しそこの社員として働ける内定まで貰った。
「それにしてもノブ君って本当に凄いよね。
何て言うか才能と努力の塊みたいな。」
「才能と努力か.....お主の事だ素直な称賛なのだろうな。
なぁ、映司よ。
お主の望み....欲望とは何だ?」
「欲望?どうしたの急に」
「お主は我を助けた。
そして、こうして世話もしてくれた。
何か考えがあるのか?
お主の望みは何なのか知りたいのだ。」
「うーん、"望みなんて無い"よ。
俺は君が困ってると思ったから助けた。
伸ばしてくれた手を掴んだだけだよ。」
「手を掴む?」
「うん、この世界にはどうしようもない程の悲劇や事故が必ずあるんだ。
どんなに手を伸ばしたって届かない命だってね.....
だから、決めたんだ。
せめて、この手が届く範囲の人は助けようって!
だから、もっと手を伸ばす....それだけだよ。」
映司の答えを聞いたノブナガの表情は先程と違い冷たくなる。
「ノブ君?」
「"小さい"。」
「え?」
「お主の届く手の範囲等、小さいと申したのだ。
そんな手で一体何人の民草を救えると言うのだ!」
「急にどうしたのノブ君?」
「お主と語らい分かった。
映司、お主は"主....王となる器"がある。
お主ならばこの世界を悲劇無きものに変えられる。
そんな力を持っている筈だ。
それなのにお主は自分の手の届く範囲しか守ろうとしていない。
それはあまりにも小さすぎるのではないか!」
ノブナガは洞察力が人並み外れていた。
映司を一目見た時から只者ではないと直感で理解していたのだ。
「.....ノブ君、俺はそんな凄い人間なんかじゃないよ。」
「いいや、お主程の"大きな器"をワシは見たことがない。
今は空だがこれからどんな大きな欲望でも飲み込めるだろう。
だが、お主はその器に何の欲望も満たしていない。
どれだけ大きくて丈夫な器でも中身が無ければ意味など無い。
器とは中身があるからこそ意味を持つのだ。」
「.....買い被りすぎだよノブ君。
俺は俺!ノブ君はノブ君!
欲望だって人それぞれだ。
俺の欲望がたまたまそうだってだけだよ。」
そこまで聞いたノブナガは悲痛な顔をしながら「そうか」とだけ答えるとそこで会話が終わってしまった。
(あれだけ大きな器がありながら満たすことをわすれてしまっている.....いや、恐れているのか。
どれだけ器が大きかろうとも中に何も無ければ価値など無い。
映司.....お主は"つまらない男"なのだな。)
ノブナガは映司を心の中で軽蔑しつつ己の欲望を定めた。
(映司.....お主が諦めたのならば"俺が引き継ごう"。
民草を守り"ワシ"が"この世界の王"となる。)
その思いに隣の映司は気付かぬまま.....
本作でもオリジナルガイアメモリを募集しています。
どしどしご応募ください。
【メモリの条件】
"ウヴァ"、"カザリ"、"メズール"、"ガメル"に関連する記憶を持ったメモリ。
メモリのアイデアは活動報告に【メモリアイデア募集】で作りますのでそこでお願いします。
外伝 続編の投稿に関して
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