必死に手を伸ばした....だけど届かなかった。
泣き叫ぶ少女が炎と降り注ぐミサイルの爆発に巻き込まれ消えていくのを見ていることしか出来なかった。
悲惨な紛争地域の実態をその時の俺は知らなかった。
善意の気持ちで送った寄付金が戦争の資金源にされ政治家の息子だった俺は莫大な身代金を支払われ生還した。
俺の手は誰の所にも届かなかった。
俺の
「付いてくんじゃねぇ!」
アンクは後ろから追ってくるを怒鳴り付けた。
「そうも行かない。
無名の作戦には僕達と君....そして火野映司の協力が必要不可欠だ。」
「なら、映司の所に行けば良いだろ。」
「それは相棒の役目だ。
僕は君と話したくてここまで来たんだ。
同じ"怪物"としてね。」
怪物と言う言葉を聞いたアンクは立ち止まるとフィリップの胸ぐらを掴み上げる。
「俺とテメェは違う。」
「いいや同じさ。
互いに道具として存在意義を見出だされたからね。」
フィリップはガイアメモリを生む存在。
そして、アンクはコアメダルの力を利用する存在。
そう言う意味では二人の立場は同じ様にフィリップには見えた。
だが、そんな事実すらアンクにとっては苛立ちを増長させるファクターにしかなり得ない。
「お前に...俺の何が解るって言うんだ!」
「"君が相棒を心配している"のは痛い程、分かるよ。」
その言葉を聞いたアンクはフィリップを掴んでいた手を離していた。
「君が映司がオーズドライバーを失ったと聞いた時、君の顔は"失望ではなく安堵"の顔だった。」
「ふざけた事を言ってんじゃねぇ。
俺が何でそんな事を......」
「君は相棒の事を心配していた。
心配するにも色んな側面があるがその中でも君は火野 映司の"命に関する事"に特に意識を置いていた。」
「当然だろ。
OOOに変身出来るのは映司だけだ。
奴がいなければコアメダルが回収出来ない以上、心配は.....」
「それにしては過剰だ。
あくまで君の利益目的ならば火野 映司を変身者として拘る意味もない。
仮に彼しか変身できないとしても利己的な付き合いをしていたのならば彼処で殴り合いをする意味もない。
あの拳は君の心が起こした現象だと....僕は考えている。」
フィリップはこれまで感情と言う不確定な物を不合理と理解しない傾向があった。
そこを理解するのは翔太郎が得意だから自分は理解する必要はないと.....
だが、無名と関わり感情を理解しようと努力した。
故にアンクと映司の殴り合いはフィリップからは感情的な意味を持つ喧嘩だと理解できたのだ。
「僕達は二人で一人の探偵であり仮面ライダーだ。
翔太郎が欠けてもダメだし僕が欠けてもいけない。
君と火野 映司の二人も本当はそんな関係では無いのかい?」
フィリップの問いにアンクは答えること無く後ろを向く。
そして、顔を背けながらアンクはフィリップに尋ねた。
「もし....自分とそっくりな奴が現れてお前の相棒を自分が殺すことになるって言われたらお前はどうする?」
時同じくして風都の病院にある集中治療室には一人の男性が入院していた。
心電図が一定の音を放ってはいるが未だ目を覚ます気配はない。
ベッドには氷川 誠と書かれた名札が付けられていた。
そのベッドの横に無名は立っていた。
無名は氷川に触れるとそこから黒炎が上がり彼を包み込んだ。
少しして黒炎が収まると氷川は目を覚ます。
「ここ....は?」
「目を覚ましましたね。
良かった。
やはり、貴方の傷は僕の力が受け付けない物では無かった様だ。」
その声を聞いた氷川は起き上がろうとする。
「その声は.....もしかして貴方はっ!?....くっ!」
「無茶はしない方がいい。
傷は塞ぎましたが身体に残ったダメージは確かにあるんです。
黒炎では怪我と言う事象しか消せませんでしたから」
そう言って横になることを促すと氷川はそれに従った。
「僕がここに来たのはあの日、貴方達は何を見たのかと言う事です。
照井さんと二人で鴻上が管理する倉庫に入った貴方達が一体何を見たのかを......」
「それは.....」
「警察官として言いたくないのも分かります。
ですが、事態は逼迫しています。
このままでは地球が消滅しかねないんです。
ですから....お願いします。」
無名に頭を下げられた氷川はゆっくりと語り始めた。
「あの日、私と照井さんは鴻上の管理する倉庫の捜査をしていました。
鴻上は"考古学的観点から保存の必要な物"を入れていると言っていましたが中にはそれにそぐわない物が入っていたんです。
"厳重に保管された三本の試験管と一本のガイアメモリ"を見つけたんです。
それを見た私は照井さんに応援を呼ぶよう指示を出しました。
すると、急にメモリが起動して黒いメダルが三枚試験管に吸収されたんです。
眩い光が起きるとそこには三人の人物が立っていました。
そして、私達を見た三人は"怪物"に姿を変えたんです。
暴れ回る怪物達を止める為に照井さんは仮面ライダーに変身しました。
私も銃で応戦しようとしましたが敵に吹き飛ばされそこに崩壊した倉庫の瓦礫が落ちてきて.....」
「そうでしたか。
その三人が変わった怪物について何か他に気付いたことはありますか?」
「三人の内、二人は男性で一人は女性でした。
怪物になると鎧を着た武者の様な姿になっていて照井さんがとても苦戦していたのは覚えています。」
「鎧....それは日本の甲冑の様な姿でしたか?」
「そう言われればそう見えたかもしれないです。」
氷川の証言を聞いた無名は原作の知識を交えながら考察を進める。
(甲冑になったのはノブナガとアケチそしてキチョウだろう。
三人に入ったメダルは劇中通りのエビ、カニ、サソリのコアメダルだと推察出来る。
問題はどうしてアルケがそのメダルを狙ったか?
奴にとってのメリットは何だ?)
そう考えていると氷川の頭に痛みが走る。
「くっ!?」
(そろそろ"限界"か。)
「氷川さん、今警察は敵の策略に嵌り照井竜と彼の仲間を殺人犯として指名手配しています。
病み上がりで申し訳ないですが即刻、彼らに掛けられた嫌疑を取り下げさせてください。
それと……に連絡を
この事件の解決には彼等の力が必要です。」
「わ…かりました。」
「では僕はこれで……」
無名がそう言ってその場を後にすると氷川は疲れからかもう一度、意識を手放した。
「やはり、負担が強すぎましたか。」
無名はそう言いながら彼の傷を治した自分の黒炎を思い出す。
「
氷川が無名に警戒心をあまり抱かず話した理由の一つに彼を治す為に使った黒炎が関係していた。
無名は黒炎に相手を洗脳するライアーメモリの力を地球の本棚から読み込んでいたのだ。
その影響もあり氷川は無名に真実を話したのだ。
しかし、地球の本棚から力を読み込むのにもリスクは存在する。
膨大な記憶のデータを一部とはいえドライバーを介さずに使用するフィリップと同じデータ人間である無名だがそれでも負担は高い。
無名は一瞬、身体がフラつきそうになるが足に力を入れて何とか耐えた。
「まだだ。
僕が倒れるのは全てが終わりアルケの計画を阻止した時だ。
それまでは持たせて見せる。
折角手に入れた最良のエンディングをこんな所で台無しにはさせない。」
無名達がいなくなったクスクシエでは現在、其々の出来る事を行っていた。
NEVERの面々は無名の作戦を成功させる為の準備を行い、後藤と伊達の二人は真木博士が修復しているバースドライバーの手伝いをしていた。
「後藤君、そのコードを取ってください。」
「これですか?」
「はい、君のドライバーの修復はそこまで難しくありませんからこれで完了です。
しかし、注意してください。
リバースドライバーはバースドライバーを戦闘用に発展させた新型ドライバーです。
スペックも装備もバースシステムより数段上です。」
真木はそう言うがそんな事は後藤にも分かっていた。
自分が為すすべもなくやられたグリードを瞬殺した仮面ライダーリバース。
自分がどう足掻いても勝てる手段がない。
でもだからといってもう止まる気もない。
「分かってます。
……でも俺は敵を倒す為に力を手に入れた訳じゃない。
人を守る為にこの力を使うんです。」
その言葉を聞いた伊達が言う。
「良いこと言うじゃないの後藤ちゃん。
でも、分かってるとは思うけど無茶と無謀は違うぜ?
その境界線を見誤ると火野みたいになっちまう。」
「えぇ、俺は"凡人"です。
その事だけは警察官だった頃から嫌という程、分かってます。
でも凡人だからこそ普通の人を守れる。
俺はそう信じてます。」
強い目でそう告げる後藤を見て伊達は笑う。
「そうか……良しっ!!後藤ちゃんばかりに働かせる訳にはいかねぇな。
真木博士、俺のドライバーの復旧にはどれだけ掛かるんだ?」
「無名君の作業も並行して行いますから最低でも一週間は必要ですね。」
「一週間!?おいおい先生、そりゃいくらなんでも遅すぎるぞ!
それじゃ、俺のドライバーが直る頃には全部終わっちまうじゃねぇか。」
「そうは言いますが伊達君。
貴方のバースドライバーはリバースドライバー開発の為に一度分解しデータ取りを行ったのです。
復旧させるにはそれだけの時間が必要です。」
「そこを何とかしてくれないか真木博士、お願い!」
「無理です。」
「んな事言って真木博士なら何だかんだ言ってやってくれるんだろ?
頼むよほら真木博士の人形もお願いしてるしさ。」
伊達はそう言いながらいつの間にか真木の肩に置かれていた筈の人形を手に取っていた。
それに気づいた真木は目を見開きながら人形を奪い返そうと掴む。
「!?……返しなさい伊達君。」
しかし、伊達も力を込めているのか一向に手を離す気はない。
「大体、こんな人形ばっか触って部屋に引きこもってるから新しいアイデアが浮かばねぇんだよ。
ここは太陽の光が降り注ぐ外に出て気分転換をだな……」
「そんな簡単に解決出来る事案ではありません。
だから返しなさい。
そして、人形を引っ張らないでください服が切れたらどうするのですか?」
「そこを何とか……」
ゴネる伊達に真木は限界を迎えた。
「離せぇ!!はーーなーーせぇーー!!はーなーー……」
発狂気味の真木を助けたのはクスクシエ店長である知世子さんだった。
「ちょっと伊達さんに真木さん。
赤ちゃんがいるんだから静かにしなさい!」
その声を聞いた真木は昔の記憶を思い出し反射的に手を離してしまう。
「うわっ!?ちょ!」
引っ張られる力を失った伊達は後ろに倒れ込みその衝撃で人形は飛び上がってしまう。
放物線を描きながら落下したのは克己とミーナの子である未来の眠るベビーベッドだった。
落ちた衝撃で未来は目を覚ますが人形を見つめると笑いながら抱きかかえまた眠りについた。
子供にぶつからなくて良かったと安心する伊達と違い真木はどうやって人形を取り返そうか悩んでいると知世子が話し始める。
「私には二人が何で揉めているのかは分からないけどイライラするのはお腹が減っている証拠よ。
比奈ちゃん亜樹子ちゃんの三人でカレーを作ったから先ずは腹拵えをしましょう。」
そう言うと知世子は二人の前に山盛りのカレーを置いた。
「はいどうぞ!
イギリスの伝統料理である"フィッシュ&チップスとハギス"が入ったオリジナルカレーよ。
今日はシャーロックホームズフェアをしようと思ってて沢山作ってたんだけど臨時休業にしたじゃない?
余らして捨てちゃっても勿体ないから使える食材や料理を有効活用したの。
ほら、二人ともボーっとしてないで食べて食べて」
二人は差し出されたスプーンを受け取るとオリジナルカレーを口に運んだ。
「…旨っ!?フィッシュ&チップスの油っぽさがカレーの風味と良い感じにマッチしてハギス独特の臭みがカレーのコクを更に増している。
とんでもねぇベストマッチだ。」
伊達は驚愕しながらカレーにがっついている。
余談だがハギスとはイギリスの伝統料理の一つで羊の胃袋に羊の内臓やオートミール、たまねぎ、ハーブ等のスパイスを詰め込み茹でた詰物料理である。
肝心の味だがこれを食べたフランスの大統領が「こんな物を食べられる連中は信用できない」と言ったことだけは述べておく。
伊達も世界中で治療行為を行っていたのでハギスももちろん食べたことがあった。(吐きそうになりながらも何とか食べた。)
「単体じゃ意味が無くても合わせて見たら案外美味しくなることもあるって事よ。」
知世子の言葉を聞いた真木はカレーを見ながら考える。
「単体では意味が無くても……合わせれば…」
真木はカレーの器を持ち上げると大急ぎで口に運んだ。
自分のカレーを大急ぎで空にする姿に周りが呆然としていると立ち上がる。
「ご馳走様でした。
知世子さん貴女は料理だけでは無く私に素晴らしいアイデアを下さいました改めてありがとうございます。」
お礼を言われた知世子は困惑する。
「ええっと……役に立ったのなら良かったです。」
「それと伊達君、ドライバーの復旧ですが変身して戦うだけならば上手くいくかもしれません。」
「本当か?」
「えぇ、その為には"とある方の力"をお借りしたいのですが……」
伊達と真木がクスクシエで話し合いをしている頃、離れた公園のブランコに亜樹子は一人座っていた。
そんな彼女を心配する様に照井竜が現れる。
「……所長。」
照井を見た亜樹子は立ち上がる。
「あっ、竜君!!
まだ怪我も治ってないんだから動いたらダメだよ。
クスクシエに戻って、実は私と知世子さんで腕によりをかけて作ったカレーが…」
「大丈夫か?」
照井の心配する言葉に亜樹子は何時もの笑顔を止めた。
「…やっぱり分かっちゃうよね。」
「お父さんの…事か?」
「……うん。
私が風都に来たのは連絡がつかなくなったお父さんを探す為だったんだ。
そこで翔太郎くんやフィリップくんと出会って一緒に探偵として頑張ってきた。
"ビギンズナイト"を知った時は悲しかったけどお父さんは最後まで依頼を守ろうとして死んだんだって知って誇らしかった。
……でも、フィリップくんからお父さんが生き返って翔太郎くんを襲ったって聞いて……もう何が何だか分からなくなっちゃって」
苦しそうに話す亜樹子の目からは自然と涙が溢れていった。
照井はそんな亜樹子を黙って抱き締める。
「大丈夫だ。
この事件は俺が解決する……もうこれ以上、君に涙は流させない。」
「竜…君…。」
その言葉を聞いた亜樹子は両手を照井の体に回そうとするがその前に聞こえた声に身体が固まってしまった。
「"俺の娘"に何か用か?」
声に目を向けるとそこには亜樹子の記憶に残るそのままの姿をした自分の父親である鳴海壮吉が立っていた。
それを見た照井も驚愕する。
「お…父…」
「危ない!」
照井が亜樹子の身体を突き飛ばすと彼女の背後にあった木にナイフが突き刺さった。
壮吉が投げたのだろう左手を丁度、亜樹子が立っていた場所に向けられていた。
照井は亜樹子を守る様に壮吉の前に立ち塞がる。
それを見つめる荘吉が照井尋ねる。
「お前とは何処かで会ったか?」
何時もなら質問を嫌う照井だったが彼の言葉だけは真摯に返すべきだと思い答えた。
「いえ、初対面です。」
「そうか……お前にとって亜樹子は何だ?」
その問いに照井はドライバーを腰に装着しメモリを構えた。
それを見た壮吉は少し笑いながらロストドライバーを装着した。
「ふっ、良い
「ACCEL」
「 SKULL」
「変…身!!」
「……変身」
掛け声と共に照井と壮吉はメモリをドライバーに装填した。
全身をエネルギーが駆け巡り二人は仮面ライダーへと姿を変える。
照井は拳を握りファイティングポーズを取った。
対する壮吉は構える事はせず照井を見ている。
「さぁ、来い。」
「うぉぉぉぉ!!」
壮吉の言葉を合図に照井は彼に向かって突っ込んでいった。
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