映司の過去を聞いた翔太郎は尋ねる。
「なぁ映司、お前はどっちだ?」
「それはどういう意味ですか?」
「"只の人間である自分とOOOである自分"、どっちが本当のお前なんだ?」
それは過去に翔太郎が投げ掛けられた質問だった。
「貴方にとって大切なのは"仮面ライダーWの片割れである自分"で鳴海荘吉に教えられた"探偵としての自分"ですか?」
昔、俺がWに変身出来なくなった時に無名に尋ねられた言葉。
遠回しだがそれを聞いて自分が何者なのかを再認識した。
「お前の過去は分かった。
正直、それだけの絶望を味わって折れなかったのが凄いと思ったぜ。
お前の背負おうとしてる罪は本来一人で持つ物じゃねぇしな。
自分の命を勘定に入れなくなったのも罪が重すぎてもう自分を守るそんなスペースが無いんだろ?」
「…………」
翔太郎の問いに映司は答えない。
「こっからは俺の推理にはなっちまうがお前にとってOOOの力はとても魅力的に写ったんじゃねぇか?
お前に残されたのは"自分の命を捨ててでも人を救える手と力"。
あの時に救えなかった手を掴めるそんな力をお前はOOOに見た。
アンクにすればメダルを手に入れる手段だったOOOがお前にとっては欲望その物だったんだ。
だからこそ、OOOの力を失って余計に冷静さを無くした。
守れなかったあの頃に戻るのは嫌だからな。
どんな手段を使ってもOOOの力を……」
「それの……何がいけないんですか?」
黙って聞いていた映司だったが遂に我慢できず反論した。
「翔太郎さんの言う通りです。
確かに俺の欲望はOOOの力で叶いました。
これまで届かなかった場所に手が届く様になったんです。
俺はこの力でもっと沢山を人を!?」
続けようとした言葉を翔太郎の言葉で遮られる。
「"変わってないんだよ"映司。
お前は昔から変わってないんだ。
寄付した金が戦争に使われた時から何も変わってねぇ俺はそう言ってるんだよ。」
その言葉を聞いた映司は黙ってしまう。
「命を捨ててでも人を助けるって事は"助けられた人間にお前の死を背負わせちまうかもしれねぇ行為"だ。
お前は人を救って死ぬ事が贖罪になると思ってるのか?
甘えてんじゃねぇぞ映司!
お前のしてる事は贖罪じゃねぇ!
払い切れない罪に蓋をしてるだけだ。」
高ぶった感情のまま翔太郎は映司の胸ぐらを掴み上げる。
それに当てられた映司も感情を露わにした。
「じゃあ、どうすれば良かったんですか!?
貴方だって俺と同じ様に仮面ライダーの力を手に入れたでしょう!
貴方も俺と同じ様に人を救っている。」
「あぁ、だが"一人"でじゃねぇ。
フィリップに照井、亜樹子だってそうだ!
大切な仲間と一緒に俺は事件を解決して命を救ってきた。
映司、一人で救える者には限界がある。
OOOの力を使ったからって取り零す命はあるんだ。
だから俺は仲間に頼る。
そして、仲間も俺を頼ってくれる。
それをするには先ず自分が死なねぇ様にするしかねぇ!
思い出せ映司!
お前は一人で戦ってきたのか?
仲間はOOOじゃないお前を無価値と決めつけたか?
お前の価値は一体何なんだ?」
「俺の……価値……」
呆然とする映司を見て翔太郎は掴んていた手を離し肩に手を置いた。
「じっくり考えろ。
そして、もう一度自分の罪を数え直せ。
お前にはそれが必要だ。」
そう話をしていると翔太郎のスタッグフォンに着信が入る。
「もしもし?」
「……左。」
「その声は照井か?一体どうした!?」
声の調子からダメージを受けているのだろうと察した翔太郎は焦りながら尋ねる。
「所…長……が……連れて行かれた。」
「亜樹子が?誰にだ?」
「鳴海荘吉……だ。」
「おやっさんが!?……待ってろ照井直ぐにそっちに」
向かうと言いかけた言葉を照井が遮る。
「俺の事はいい!
それよりも…無名達の所に戻って戦力を整えさせろ。」
「戦力?
どういう事だ?」
「アルケが時間稼ぎをしていたのは……」
照井が続きを話し始める前に外で爆発が起きる。
「アレは……?」
「遅かったか。」
翔太郎達の目の前に広がっていたのはドーパントとは思えない怪物が空を舞う姿だった。
時は映司と翔太郎が話し合っている時間にまで遡る。
ドライバーを装着し変身した。
仮面ライダースカルと仮面ライダーアクセルは両者睨み合っていた。
先に動いたのはアクセルの方だった。
スロットルを勢い良く回し追加発生させたエネルギーを右手に込めて殴り付ける。
初見で危険性を理解したスカルは奮われたアクセルの右腕に肩を添わせながら軌道を変えて逸らすとアクセルにボディブローを当てた。
しかし、攻撃されたアクセルはダメージを負った素振りも無く追撃を加えようとする。
それを見たスカルは地面を蹴り上げてアクセルとの距離を空けた。
「成る程、"加減"をして勝てる相手では無さそうだ。」
スカルにそう評されたアクセルだったがその言葉を挑発とは受け取らなかった。
(俺の攻撃を冷静に対処しながら分析し反撃を仕掛けてくるとは……左が言っていた通りだな。)
それは嘗て左が自分の師である鳴海荘吉について語った時の言葉。
「おやっさんはハードボイルドだがそれだけじゃねぇ。
探偵ってのは荒事が付き物な商売だがおやっさんはどんな奴が相手でも冷静に対処するんだ。
"集団で囲まれても銃を抜かれても一切動揺しない"。
互いの戦力を冷静に分析しながら戦い続けるんだ。
味方だと頼もしいがもし、おやっさんが敵になると考えたら正直、ゾッとするな。
例え意表をつけてもそのタイミングで決められなければ直ぐに反撃されてこっちがやられちまう。
"フィリップ級の頭脳に
(左の話した通り……いやそれ以上だな。
無手で戦うのは分が悪い。)
アクセルはスカルに警戒の目を向けながらビートルフォンを操作する。
それを見たスカルが笑う。
「ふっ…"奇遇"だな。
俺も武器を使う。」
突如スカルは腰から"スカルマグナム"を抜くとアクセルに向けて引き金を引いた。
アクセルは一拍遅れて回避行動を行う。
ギリギリのところで初弾を避けられたが目の前には既に次弾が迫っていた。
「くっ!」
アクセルは両腕をクロスして弾を受ける。
火花を上げアクセルは後ろに吹き飛ぶがアクセルもやられてばかりでは無い。
突然、スカルの立っていた場所から爆発が起きる。
ギリギリの所で回避したスカルは攻撃を受けた場所を見た。
そこにいたのは嘗て自分も助けられたアクセルのサポートメカである"ガンナーA"だった。
「アレは…文音の作っていた奴か。
と言うことはそのドライバーも文音が作ったのか。」
「園崎文音を知っているのか?」
「まぁ、腐れ縁だな。
そうか、奴の作った物ならば"心配は要らないな"。」
そう言ってスカルはガンナーAに銃口を向けようとするがそれよりも先にアクセルがスカルに向けて走り出す。
「これ以上、先手は取らせん!」
「無謀な突撃だな。」
スカルは銃をアクセルに向け直すと引き金を引いた。
しかし、その弾丸はアクセルに握られていた"エンジンブレード"により防がれる。
スカルがガンナーAに目を向けると砲身から煙が出ていた。
「成る程、援護ではなく武器の受け渡しで来たのか。」
「貰ったぁ!」
十分に接近したアクセルがスカルにエンジンブレードを振るう。
スカルの身体に火花が上がり仰け反る。
しかし、ダメージを喰らった筈のスカルは平然としながら銃弾をアクセルに叩き込んだ。
「なっ!?」
驚きながらもアクセルはスカルの攻撃を防御する。
そして、切られた傷口にスカルは触れると冷静に対応する。
「……成る程、並のドーパントなら下手すればメモリブレイクする威力だな。
マキシマムを使わずにこれだけの威力を出すとは……お前、相当メモリを使い込んでいるな?」
「そう言う貴方もどう言うトリックだ?
切られて仰け反るどころか平然としている理屈が分からん。 」
そう言うアクセルにスカルは説明する。
「俺にとって変身することは少しの間、死ぬ事だ。
死んでいる骸骨はそれ以上、殺せない。
だが、それはお前も同じだろう?
お前の場合は死と言うより再生に近いが」
スカルの言う通り、照井はアクセルメモリを使い続けた事でメモリの適合率が上がり生物として加速度的に進化を続ける力を生身でも獲得している。
そして、命の危機に瀕するダメージを負うことでその回復能力が強化されスカルと戦っている現在はもう過去の傷は完全に回復していた。
似ていながらも決定的に違う不死の力を持った二人だからこそ小手調べ程度の戦闘では決着がつかない事が理解出来た。
故に両者の取った選択は奇しくも同じになった。
「SCULL MAXIMUMDRIVE」「ACEEL MAXIMUMDRIVE」
短時間で相手に最大の攻撃を与えるマキシマムの発動。
両者の身体からエネルギーが溢れ出し突風を巻き起こす。
そして、エネルギーを体内に保有したまま二人はぶつかった。
超至近距離からスカルは銃をアクセルは剣で対峙する。
スカルは急所を徹底的に狙い銃弾を放ちアクセルはそのブレードでスカルを切り裂こうと振るう。
どちらかの一撃が当たり怯んだ隙に必殺のマキシマムを叩き込む。
故に牽制の攻撃とは言え当たれない。
避けて逸らし反撃を繰り返しながら相手の自滅を待つ。
極限まで集中した空間ではお互いの動きがスローに見える。
(胸や頭に撃たれた弾丸は剣で弾けばいい。
格闘戦は僅かだが此方に分がある。)
アクセルは勝負に出た。
エンジンブレードを持った右手を矢をつがえる様に引きながら勢いを込めて刺突としてスカルの右肩を狙う。
その攻撃がスカルに命中すると大きく仰け反った。
(今だっ!)
アクセルはマキシマムのエネルギーを右足に込めて相手を打ち抜く必殺技である"アクセルグランツァー"をスカルへ放った。
ズドン!
重く響き渡る衝撃音と共に攻撃を受けた男は吹き飛ばされる。
吹き飛ばされ"変身解除された照井竜"は驚愕しながらスカルを見つめた。
「バ……カな!?どうして…」
スカルは右手に持っている"破損したスカルマグナム"を見せる。
「お前のキックを"この銃で受けて逸らした"。
とは言え賭けだったがな。
蹴りの威力を殺し切れなかったらやられていたのは俺の方だった。
お前の強さは良く分かった……ここで生かしておいたら後々厄介になる相手だと言う事もな。」
スカルはそう言いながら照井にトドメを刺そうと近付くがその歩みを亜樹子が体を張って止める。
「所長!?何をしている……逃げろっ!」
「お父さんの狙いは私なんでしょ?
なら、私が言う事を聞けば竜くんは見逃してくれるよね。」
「随分と楽観的だな。
敵となっている以上、両方殺すとは思えないのか?」
「本当に私達、二人を殺すつもりなら竜くんと戦いながらでも私を狙えたでしょう?
……お願い。」
目に涙を浮かべながらも覚悟の籠った瞳を見たスカルは変身解除する。
「全く、その頑固な所は誰に似たんだかな。」
荘吉はそう言うと亜樹子の首筋を手刀で打ち彼女の意識を奪う。
倒れる亜樹子の身体を荘吉が抱き抱えた。
「所長!?」
「照井と言ったか?
安心しろ気絶させただけだ。
亜樹子はまだ"殺さない"。」
「どういう事だ?」
「俺はこれから亜樹子を連れて風都に戻る。
アルケの狙いは翔太郎達をこの街から追い出す事だ。」
「何故……それを俺に伝える?」
照井の問いに荘吉は答えることなく続ける。
「翔太郎達に伝えろ。
アルケは大胆な言動をするが裏では狡猾で用心深い。
計画を成功させる為にあらゆる策を講じている。
その一つ……が……これ…か……ら起こる。」
突如、荘吉は頭を抑え始める。
しかし、スカルメモリを強く握りしめた事で抑えていた手を下ろした。
(何だ今のは?)
荘吉の謎の行動に照井は疑問を持つがそれを指摘する前に荘吉は話を続ける。
「時間の逆行は死者を復活させるだけではなくこれまでの軌跡すら白紙に戻してしまう。
人を守る為に戦った"過去の仮面ライダーの軌跡"すら……」
そんな話をしていると荘吉達のいる地面に時計の針を模した紋様が浮かびそこから緑色の怪物が現れた。
それは過去に仮面ライダーカブトが戦い倒してきた"ワーム"その者だった。
「何……だと!?どうして怪物が……」
「やはり、逆行による暴走が始まっている様だな。
こうなってはもう装置を破壊しなければ地球は完全に崩壊する。
早くこの事を翔太郎達に伝えろ。
アルケの計画を止める以外にもあの化物たちに対処する戦力も必要になる。」
荘吉はそう言うと照井の手から離れたエンジンブレードを掴み持ち上げた。
生身で持つと尋常では無い重さがある筈のエンジンブレードだが荘吉はそれを逆手で持つと現れたワームに向けて投げ付けた。
投げられたエンジンブレードが刺さったワームは苦しみながら爆発した。
爆炎により陽炎が起こる場所で荘吉は照井を見る。
「風都で待つ……"亜樹子を救ってみせろ"。」
それだけ伝えると荘吉は陽炎に紛れながら姿を消したのだった。
照井はその姿を見つめながら怒りで手を握りしめる。
(守れなかった……大切な存在を……だが、これで終わりじゃない。)
「待っていてくれ所長。
貴女は俺が救う……」
照井はボロボロの身体を無理矢理起こすとエンジンブレードを杖代わりに体を支えた。
そして、ビートルフォンを取り出し翔太郎に連絡をする。
「もしもし?」
「……左。
所…長……が……連れて行かれた。」
「亜樹子が?誰にだ?」
「鳴海荘吉……だ。」
「おやっさんが!?……待ってろ照井直ぐにそっちに」
左は照井や亜樹子を心配しながら援護に向かおうと言うが照井がそれを遮る。
「俺の事はいい!
それよりも…無名達の所に戻って戦力を整えさせろ。」
「戦力?
どういう事だ?」
敵である筈の鳴海荘吉が何故、俺にアルケの計画について話してくれたのかは分からない。
だが、目の前で起きた危険性をいち早く翔太郎や無名に伝えるべきだと照井は直感で判断した。
「アルケが時間稼ぎをしていたのは……」
そこから先を続けようとした瞬間、電話の奥で爆発音が聞こえた。
電話越しから伝わる翔太郎の驚愕した声が事態が手遅れだったと照井は実感した。
そして、小さく呟くのだった。
「遅かったか。」と…………
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