第二の風都と呼ばれる程、人と人工物が多い。
そんな町を象徴するのがこのアクアタワーだ。
塔の中央から四つの管が分かれておりそこから水が滝のように流れている。
黒岩が待ち合わせ場所として選んだのはこのアクアタワーの最上階よりも更に上、整備用に作られた屋上であった。
一応、気を利かせて屋上までのドアの鍵は開けてあるが俺に会いに来たクライアントには意味がなかった様だ。
空から黒い翼と捻れた二本の角を持つ禍々しい怪物が一人の青年を連れて現れた。
青年が地面に降り立つと言う。
「遅れてしまったかな?」
その堂々とした姿は悪魔を従える王のようにも見えた。
黒岩は目の前に現れた青年と怪物に最大級の警戒をしていた。
これまでも人の理を越えた奴等を殺してきたことはある。
でも、炎を出せたり物を手を使わずに動かせる人間相手だ。
まかり間違っても怪物を相手にしてきたわけではない。
そんな事を考えていると件の怪物から銀色のメモリが排出される。
すると、怪物の姿は成りを潜め小さな猿へと変わってしまった。
クライアントである男が"リーゼ"と呼んでいることから飼い主はこの男なんだろう。
「お前が俺に会いたいと言っていた無名と言う奴か?」
「そうです始めまして。
黒岩 幸太郎さん、お噂はかねがね伺っていますよ。」
「それで、俺に何のようなんだ?」
黒岩が無名に尋ねる。
「単刀直入に言います。
僕の部下になってくれませんか?」
「どういう意味だ?」
「僕はミュージアムと言う組織に所属しています。
そこではこんなものを作り、街にばら蒔いています。」
そうして、無名が取り出したのは、骨の様な紋様が入った紫色のメモリだった。
「ガイアメモリとか言う奴か。」
「よくご存じで」
「最近、風都のブローカーがこぞって集めだしてる代物だからな。
話はよく聞く。」
人間を越え超人になれる魔法の小箱。
その魔力にとりつかれた人間は多く、裏の取引を行うブローカーも積極的に入手しようとしていた。
しかし、黒岩にとって然したる興味もなかった。
「俺は"スナイパー"だ。
狙撃に必要なのは銃と腕、そして忍耐力だけだ。
ガイアメモリなんて言う訳の分からない力は必要ない。」
「芦原が紹介してくれた相手だ、無下にするのは申し訳ないが仲間になるつもりはない。
仕事なら受けても良いがな。」
「....そうですか"残念"です。
ですが、僕は暫くこの町に滞在しますので助けが必要なら言ってください。」
そう言うと懐からさっきの銀色のメモリを取り出し起動する。
「
そしてリーゼの背中にとりつけてある機械にメモリを差し込んだ。
メモリが身体に吸収されると先程の悪魔の姿になる。
リーゼに抱えられるように無名が座ると、翼をはためかせて水音町の夜へと消えていった。
夢でも見ているかのような錯覚を黒岩は味わったが顔に当たる夜風の冷たさがこれは現実だと教えてくれる。
本当に断って良かったのだろうか?
自分の選んだ選択に珍しく悩む黒岩であったが、
今回のターゲットに意識を向けるのだった。
ホテルについた黒岩はベッドの下に置いていた
ケースについているジッパーを開けて中から写真を取り出す。
この男が今回のターゲットだ。
女子学生を専門に狙うレイプ魔。
何故、コイツが捕まらないのかと言うと、
父親が有名な弁護士で常に彼の罪を不起訴としてきたからだ。
俺が受ける仕事の殆どはこう言うクズの始末だ。
こう言う奴等を一人でも多く地獄に送る事が、俺がライフルを撃ち続ける理由だ。
服の懐から一枚の写真を取り出す。
そこには黒岩と妻、そして娘の三人が笑って写っていた。
もうこの瞬間には戻れない.....
だからこそ、一人でも多くのクズを殺すことが俺の仕事なのだと思っている。
ターゲットの移動先を把握した俺は早速、予め分解してベッドの下に隠しておいたライフルのパーツを取り出し、組み立てていく。
この銃の名前は"レミントンM700"ずっと俺の仕事を片付けてくれている相棒だ。
組み立てが終わりスコープを取り付ける。
外の看板に銃を向け、スコープの調整を行う。それが完璧になると銃を持ってホテルの窓を開けた。
ここは、予め狙撃できるように周りの部屋を買い取っている。
音でバレる心配もない。
スコープを覗きターゲットを探す。
遠くの繁華街その路地裏に屯する集団...見つけた。
何をしているかは分からないが、何かを見せびらかしているらしい。
これ以上は距離が遠くて正確には視認できなかった。
だが、構うことはない頭が見えれば一発で終わる。
黒岩はライフルのボルトを開き弾を一発込める。
そして、頭に照準を付けるとゆっくり引き金を引いた。
ズドン!...空気を震わす音と共に弾丸が頭へと放たれる。
そして、ターゲットに着弾した。
ターゲットは大きく吹き飛ばされるが倒れない。
そして、スコープ越しに黒岩を睨むのだった。
another side
水音町の繁華街、そこで男は陽気に歩いていた。
周りには取り巻きの集団がいる。
その取り巻きの一人が声をかける。
「それにしてもまたヤッちまったのかよ。
これで何度目だ?」
「さぁね、数えてねぇわ 笑」
この男は事件を起こしても父親の力で何時も罪を免れていた。
それが普通だと思っているのか事件を起こす頻度も高くなっていった。
それに危ない連中との付き合いも増えた。
「そう言えば、本当に買ったのかよ噂の奴。」
取り巻きの問いに男は自慢するように懐から一本のメモリを取り出した。
「じゃーん!あったりまえだろ?
俺にかかればこんなもんよ。」
そして、懐から更に三本メモリが追加で出て来た。
「そんなに買ったのかよ 笑
結構、金使ったんじゃねーの?」
「こんなもん余裕だよ余裕。」
そうは言うがこのメモリは一本辺りの相場が高い。
安くても数百万、高いと何億もの金がかかるらしい。
「ホラよ。」
そう言うと男は懐の三本のメモリも取り巻きに渡した。
「おっ、サンキュー。」
「それにしてもこれってどう使うんだ?」
その問いに男が実践して見せる。
メモリの端子に"四角いコネクター"を取り付けると腕に押し付けた。
すると、四角いコネクターが割れて独特な紋様が腕に付くがすぐに消えた。
「このコネクターを自分の付けたいメモリにつけて押し付けると簡単に使えるようになるんだよ。」
そう言うと他の三人にもコネクターを渡す。
皆、思い思いの位置にコネクターを差し生体フィルターを刻み込んだ。
「なぁ、早速使ってみようぜ!」
取り巻きの言葉に男は意気揚々とメモリのスイッチを入れる。
「
そうして、メモリを突き刺した瞬間、額に衝撃が走る。
しかし、男はそれを耐えるとそれが襲ってきた方向を見る。
そこにはスコープ越しに俺を狙う男の姿があった。
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