もう一人の悪魔   作:多趣味の男

30 / 330
第二十七話 写し出すC/外道の流儀

 

「バカな!」

スコープ越しに起こったその事態に黒岩は悪態を付く。

弾が額に当たった筈なのにターゲットは生きているどころか此方を睨んでいた。

距離からして800mはある筈なのに正確に俺の場所を見つめていたのだ。

 

そして、その男の身体は変化すると大量の液晶が付いた人型の怪物へと変化した。

黒岩は直ぐにボルトを引き次の弾を込める。

しかし、敵はそれよりも早く黒岩の背後に現れた。

黒岩を後ろから押さえ付ける。

「ぐおっ!」

そうして、液晶に表情が投影される。

ソイツはとても下品な笑顔で見つめてきた。

 

「お前か?俺を撃ったのは」

「どうやって...ここに来た。」

「あ?知らねぇよ。

ただ、そこに行きたいと思ったらそこの"テレビの画面"から出てこれただけだよ。」

「それにしても本当にいるんだな殺し屋って奴。

誰が俺の殺しを依頼したんだ?」

「誰が、教えるか!」

 

「まぁ良いや....ん?これはお前の家族か?」

そう言うと男は黒岩の持っていた写真を取る。

倒された時に落ちたのだろう。

「....ははっ!こりゃ良いな。」

「何を言っている?」

「このメモリの凄さにだよ。

"写真"を見ただけでここが何処なのか一発で分かったぜ!」

 

「!?」

「そうだなぁ、良いこと思い付いたぜ。」

「おい、お前俺を殺そうとした奴を殺してこい!

それが出来ないならお前の家族を殺してやるよ。」

「ふざけるなよ!そんな事受けられるかっ!」

 

「断るのならそれでも良いぜ。

でも、少し自分の"立場"について考えてみろよ...な?」

そう言うと男は黒岩から離れるとテレビに吸い込まれていった。

それから数分後、病院から入院している娘と妻が消えたことを黒岩は伝えられた。

 

 

朝になり、無名はミュージアムから宛がわれた高級ホテルで目を覚ました。

横ではリーゼが器用にタブレットを使ってルームサービスを頼んでいた。

「君の悪知恵には悩まされそうだねリーゼ。」

しかし、そう言われたリーゼは知らん顔をしていた。

まぁ、僕の目的のために動いてくれるのならある程度は目を瞑ろう。

 

しかし、あのスナイパーは面白い人だった。

殺し屋ではあるが通すべき筋を自分で決めて持っている。そんな印象だった。

だからこそ"もっと詳しく"調べたのだが....

 

黒岩 幸太郎、元陸上自衛隊特殊作戦軍所属、

現役時代は狙撃手として数々の作戦に従事し活躍する。

彼の人生を変えたのは奥さんと娘さんが交通事故に会った時だろう。

轢いた犯人は官僚の息子で事件は揉み消されてしまった。

そして、娘は現状意識不明。

妻は脊髄に損傷を受け病院で寝たきりの生活を強いられている。

 

その後、自衛隊を除隊し殺し屋として生き稼いだお金を家族の治療費に充てている。

 

悲劇の主人公のような人生。

だからこそ惹かれるのかもしれない。

僕は悲劇が好きだ...何故なら悲劇は人の本性を剥き出しにさせる。

そして、その悲劇を糧に強く生きようとする人はもっと好きだ。

死者だろうと未来を求めた大道克己や、家族を奪われても復讐ではなく仕事として人を殺す黒岩幸太郎。

 

どちらも自らに振りかかった悲劇を糧に強い人間へと成長した。

そして、それはヒーローである"あの二人"にも言えるのだが....

そんな事を考えているとスマホから着信がある。

宛名は芦原だった。

 

「どうしましたか?芦原さん。」

「無名様、実は黒岩がもう一度会いたいと

しかも時間がないらしく今すぐに会うことが出来ないかと言ってきていますが。」

「今すぐですか...何かあったのかもしれませんね。

分かりましたホテルの名前と番号を言いますのでそこまで来るように言ってください。」

そうして芦原にホテルの情報を教えて暫く、待っていると待ち人が現れた。

彼を中に通すと胸に拳銃を突きつけられ椅子に座るよう促された。

 

「これは一体どういう事ですか?」

無名のその問いに黒岩はゆっくりと銃を下ろす。

「娘と妻が拐われた。

相手はガイアメモリを使っていた。

お前なら何か知っている筈だ。」

そう言う黒岩の目には余裕がなかった。

 

「ガイアメモリ関係の事件なら確かに僕の組織は関わっているかと思いますが私はその一件に関わっていません。

ですので、バイヤーの事も購入者の事も何も知りませんよ。」

黒岩はその言葉を信用できないのか銃を向けたまま動かない。

「それにここでそう言う"脅し"は止めておいた方がいい。

ここは、組織のメンバーが使うホテルですよ。」

 

そう言うと黒岩の首筋にナイフが当てられる。

ホテルのクロークの格好をした男の仕業だ。

何時もの冷静な彼なら気付ける状況だったが焦りがそれを無に帰していた。

 

観念したのか銃を下ろすがその目は諦めていない。

「頼む。

家族は俺の"唯一の宝"なんだ。」

(宝.....か。)

無名はクロークに引くように合図をするとナイフをしまいその場を立ち去った。

「メモリを使った相手の名前は分かりますか?

そうすればデータベースから相手を探れます。」

黒岩から名前を聞いた無名は早速、ミュージアムのデータベースから検索をかける。

対象はあっさりと見つかった。

 

(使用しているメモリは"コンピューター"か.....)

能力は電子回路の操作、そして"自らをデータ体"に変換できること、これを使って移動したのだろう。

しかし、欠点もあり先ず戦闘能力が無い。

ライアーやジーンのような能力メインのメモリであること.....

そして、変換できるデータ量と質が拙い。

フィリップのように無線で身体と精神を完全にデータ化する様な事はできない。

電流のパルスに身体を変換して有線で繋がった場所になら行けると言うだけだ。

まぁ、所詮はプロダクトメモリと言うことだろう。

 

手口が分かれば後は簡単だ。

無名は黒岩のいたホテルの電器系統のデータを確認する。

そこには、特徴的な跳ね上がりをした傾向が見えた。

(後は、これを追跡できれば......)

この結果を黒岩に伝える。

「貴方の家族を奪った犯人ですが追跡できる可能性があります。

しかし、それには貴方の協力が不可欠です黒岩さん。」

「分かっている。協力は惜しまない。」

 

「そして、これは確認なのですが犯人を見つけたらどうするんですか?」

「元々、その男を殺す依頼を受けていた。

失敗したのはガイアメモリだけでなく俺が油断した結果だ。

きっちりと依頼は果たす。」

「ならば、尚更このメモリが必要になりますよ。

ドーパントの肉体に普通の兵器は通り

ませんから...」

「だけど、このメモリなら彼を殺せます。

それでもメモリを使うのが嫌なのなら僕達が始末しても構いませんが....」

 

「いや、俺が奴を殺す....。

このメモリとやらを使ってな。」

「では、計画とメモリの使い方についてご説明しますよ。」

そう言うと生体コネクターを身体に刻む機械と"腕輪型の装置"を黒岩に渡した。

外伝 続編の投稿に関して

  • このまま続きで見たい
  • 新規投稿で見やすくしたい
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。