もう一人の悪魔   作:多趣味の男

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W×OOO 37.破壊と誤算

 

風都タワーから脱出した須藤兄弟は怪人に襲われている市民達の救援を行っていた。

暴れる怪人を兄が斬り伏せ妹が安全な場所へ逃がす事を繰り返してはいるが逃げ惑う人の流れや暴れる怪人が一向に減ることは無かった。

 

「こっちよ!早く逃げてっ!」

避難誘導をしていた雪絵だったが突然、体を抑えて動きを止めてしまう。

「雪絵っ!」

兄である霧彦は雪絵に駆け寄る。

「大丈夫よお兄ちゃん。」

口ではそう言う雪絵だったがいくら無名が改良したガイアドライバーを使いドーパントになっていたとしてもメモリブレイクされた影響は肉体に現れていた。

 

動けなくなったその一瞬を狙った怪人が襲い掛かる。

妹を助けようと霧彦が近付こうとするがタイミング悪く現れた怪人に肉体を抑えられてしまう。

助けが間に合わない霧彦は雪絵に向けて手を伸ばすしか無かった。

 

そんな兄妹を助けたのは複数の"エネルギー弾"だった。

突如、現れたエネルギー弾が兄を抑えていた怪人と妹を襲おうとしていた怪人に当たると爆発を起こした。

 

兄はそのエネルギー弾の色に見覚えがあった。

「あのエネルギー弾は………」

そんな事を考えていると雪絵の前に一体のドーパントが降りてきた。

その姿を見た二人は絶句する。

何故なら、そのドーパントはもうこの世には存在しないと思っていたからだ。

 

「まさか、貴方達を私が助けることになるなんてね。」

そう言って地面に着地した"タブードーパント"がメモリを抜くとそこに現れたのは死んだ筈の"園咲 冴子"だった。

「どうしてアンタが……」

「さぁね。

私もどうして生き返ったかなんて分からないわ。」

 

雪絵の前に守る様に現れた霧彦が尋ねる。

「蘇ったのが本当だとして何をしに来た?

また、風都の街を傷付けようとするのなら私が……」

「元ミュージアムの幹部だった貴方がそんな事を言うなんて時代は変わるものね。

でも、その心配は無意味よ。

私達が来たのは"アレ"を壊す為だから」

 

風都タワー上空に鎮座するマゴニアに指を指した冴子はタブーメモリを起動させ身体に挿す。

「須藤 雪絵……だったわね?

この一件が終わってまだ私を殺したいなら相手をしてあげるわ。

それを伝えたかっただけ」

「待てっ!?」

 

霧彦の制止も聞かず冴子は空を飛びその場を後にするのだった。

 

 

須藤兄妹と園咲冴子が邂逅していた時間。

戦線撤退を行おうとしていた天津 劾は思わぬトラブルに見舞われていた。

 

「全く、面倒な事です。

どうしてこうなっているのでしょう。」

彼はZAIAのCEOであるリオン·アークランドの命令でNOAHと呼ばれる組織が保有する兵器である仮面ライダーの捕縛を行おうと捜索をしていた。

 

そして、見つけ出した天津だったが彼の目に映った光景は現れる怪人を片っ端から殺し続けている仮面ライダーベイルの姿だった。

彼の周囲には倒した怪人の破片が転がっているが当の本人はそんな事に目を向けず新たに生成され続けている怪人を殺し続けていた。

 

そんな仮面ライダーベイルの周りには仲間であろう迷彩服にライフルを携えた集団が呆然と立っていた。

天津はそこに向かい話し掛ける。

 

「失礼、貴方がたはNOAHと言う組織で間違いありませんか?」

その言葉を聞き我に返った集団は天津にライフルを向ける。

「おっと、ご安心を我々は貴方達の味方ですよ。

ZAIAのCEOから依頼を受けて参りました。」

 

ZAIAの名前を聞いた恐らく、集団のリーダーであろう人物が前に出て天津に話し掛ける。

「我々の目的は仮面ライダーベイルの回収なのだが、現れる怪人を悪魔と誤認した結果、制御不能状態となっている。」

「悪魔?……ですか。

分かりましたでは私が彼を止めて貴方がたに引き渡せば良い訳ですね。」

 

そう言うと天津は戦っている仮面ライダーベイルに割り込む。

「邪魔だっ!!」

 

突如、振るわれた拳が割り込んだ天津ごと怪人を吹き飛ばす。

腕を使いガードした天津は軽く吹き飛び怪人はその一撃で爆発してしまった。

 

(くっ!?……アメイジングヘラクレスのプログライズキーの強化装甲で受けてもこのダメージとはかなり厄介ですね。

仮面ライダーベイルと言いましたか。

彼の攻撃は受けない選択がベストですね。)

 

天津はガードした腕の装甲から火花が出るのを見ながら冷静に状況判断を行う。

(先程までの行動やNOAHのメンバーであろう兵士の意見から推測すれば仮面ライダーベイルは悪魔を倒す為にここにいる。

だが、当の本人が悪魔と怪人を見分ける事が出来ず現れる怪人を根こそぎ殺し尽くそうとしている。

 

このまま、放置して体力切れを待つのも手ですが組織として友好な関係を築きたいなら余り消耗させるべきじゃない。

 

あれだけの強さと兵士の焦り具合から

恐らくですが長時間の変身や能力の使用に何かしらのデメリットがあるのは明白。

ならば、最良な結果を得るのに必要なプロセスは"対象の願望を叶え動きを止めてしまえば良い"。)

 

天津は開発中のスマホ型デバイス"ライズフォン"を取り出すと操作を始めた。

すると、変身している天津のヘッドディスプレイに複数の映像が映った。

 

それはZAIAが管理している監視衛星からの映像で今回の作戦の為に全ての衛星を使いこの街で起こっていることをデータ化していたのだ。

 

(後は分析AIを使い映像内での不審な事や違和感を抜粋する。

そして、その中にはこの増え続ける怪人のカラクリが分かる何かがある。) 

 

天津の分析通り、AIによる分析が終わった映像には別の仮面ライダー(アーマードライダー)がモノリスの様な石柱を破壊する光景が映っていた。

そして、石柱が破壊されると周囲の怪人は消滅していた。

 

(これだ。

このモノリスが怪人を作り出す装置なのだろう。

なら、この周囲にも同じモノリスがある筈……)

 

そう考え周囲に目を向けると丁度、仮面ライダーベイルが戦闘を続けている場所の近くに一つのモノリスがそびえ立っていた。

「アレだな。

成る程、あの仮面ライダーも闇雲に怪人を倒していた訳では無いということですか。

恐らく本能的に破壊するべき対象を理解しているのでしょう。

ならば、次に取る行動は決まってくる。」

 

天津はフォースライザーのレバーを一回操作する。

 

アメイジングディストピア】

 

天津はヘラクレス型のエネルギーを足から放つと仮面ライダーベイルの邪魔をしていた怪人を横薙ぎで倒した。

「あのモノリスが怪人の発生源です。

貴方が破壊してください。」

 

天津にそう言われたベイルだったがそれを無視するようにモノリスに向かって走っていくとエネルギーを纏った拳で殴った。

しかし、その拳はエネルギーごとモノリスによって発生したバリアにより阻まれる。

 

追撃しようとしたベイルの拳をモノリスから新たに生成された怪人が止めると彼を後ろに押し戻した。

「成る程、見た所あのモノリスには自動防御を行うシステムを有している様ですね。

計測してみましたが仮面ライダーベイルが放ったあの攻撃の威力は十二分に強力だった。

それで破壊できないとなるとそれを上回る威力を出すには………はぁ、仕方ありませんね。

全てはZAIAの利益の為です。」

 

天津はフォースライザーのレバーを2回操作する。

 

アメイジングユートピア】

 

突如、天津の身体を覆っていた黒いケーブルである"リストレントケーブル"が太くなり天津の四肢の装甲が肥大化する。

その瞬間、天津の身体に火花と痛みが走る。

 

「グァっ!?……や……はり!?

人間が使用するには……負担が大きい……様ですね。

ですがっ!」

 

天津は体の痛みに耐えながらベイルを押し戻そうとする怪人に近付くとその身体を掴み上げモノリスに向けて投げ付けた。

投げられた怪人は自動展開されたバリアとぶつかり爆発する。

 

ベイルを助け出すとそのまま彼を掴みモノリスに向けて投げる。

「!?」

「申し訳ありませんが……この姿を維持するには限界がありまして……ですから……ここからは力技です。

私があのシールドを破壊しますから貴方はモノリスをっ!?」

 

天津は全身を包む痛みを我慢して地面を踏み込むと投げたベイルよりも速くモノリスに到着する。

そして、両手で展開されたシールドを掴むとあらん限りの力を込める。

 

「この、フォースライザーはプログライズキーの性能を強制的に100%以上引き出せる。

そして、肉体への多大な負荷と引き換えに手に出来るのは"常軌を逸した力"……例えどんなに強靭なシールドでも私が破れない事など"1000%あり得ない。

……ハァッ!!」

 

気合の乗った声と共にシールドにヒビが入ると丁度、人一人分入れる隙間がこじ開けられた。

そこを狙い澄ましたかのように仮面ライダーベイルは穴の中に入るとそのまま、バイスタンプをドライバーに押し当てた。

 

「Charge」

 

そして、ドライバー両サイドのスイッチを両手で押し込んだ。

 

「ベイリングインパクト」

 

 

勢いに任せてモノリスを殴り付けるがその反動により腕からは肉が裂け骨が砕ける音と共に変身者の苦痛に満ちた声が響く。

 

「ガァアァアアァァァァァ!!」

 

常人ならば狂死してもおかしくない痛みの中、仮面ライダーベイルの変身者である白波純平の心にあったのは"怒りと憎しみ"だった。

悪魔により家族を奪われNOAHの命令で現れる悪魔をただ殺す日常は彼の心と体を確実に蝕んでいた。

そして、それは彼の心臓に移植された全ての悪魔の始祖とされる"ギフ"の細胞にも影響を与えた。

 

自壊していく肉体をギフの細胞が無理やり回復させていく。

まるで宿主に寄生している細胞自身が生き残ろうとしている様に……

そして、その歪な共生関係が彼の肉体を一種の不死状態にしていた。

 

その一撃にモノリスが耐えられるはずもなく粉々に砕け散ると周囲で暴れていた怪人も塵となって消えてしまった。

その瞬間、2人は突然、変身解除して地面に倒れ込む。

 

白波 純平は意識を失い天津 劾は荒い呼吸をしながら周囲を確認する。

「どうやら……モノリスが破壊された事で……怪人の発生も止まった様ですね。

グッ!?……それにしても……やはり、負荷が大きい。

これ…は……改良……の……余地…が…あ………」

 

天津もそこで限界を迎えたのか2人揃って意識を失った。

その姿を見ていたNOAHの兵士達は2人を回収してこの街から撤退を進めるのだった。

 

 

 

 

キース·アンダーソンには"3つの誤算"があった。

1つ目はマゴニアへのエネルギー供給源となっていたモノリスが2つ破壊された事。

これにより、放った光弾の威力と速度が落ちた。

 

そして、2つ目は"オーロラカーテン"より現れた仮面ライダーディケイド(門矢 士)が起こした誤算。

 

ATTACK RIDE(アタックライド) SLASH(スラッシュ)

 

ソードモードに変形させたライドブッカーの斬撃が仮面ライダー達を閉じ込めていた球体状のシールドに当たると簡単に破壊されてしまう。

 

「何っ!?」

「どうやら、外側からの攻撃には弱い様だな。

なら、次はコレだ。」

 

ATTACK RIDE(アタックライド) BLAST(ブラスト)

 

門矢はディケイドライバーにカードを装填するとライドブッカーをガンモードに変えて空中に向けて放った。

複数の光弾がマゴニアから放たれた光弾に着弾すると爆発していく。

速度の落ちていた光弾に当てることは門矢にとって容易だった。

しかし、それでも全て撃ち落とす事は出来ずまばらに散らばっていく。

 

「チッ!……流石に全部は落とせないか。」

「ならば、ここは私たちの出番だね。」

「なっ!?」

 

突如、空中から声が聞こえてくると空に"黒い壁の様なエネルギー波"が、現れる。

そして、そこから更に黒く染まった"巨大な竜巻"と"大火球"が降り注ぐ筈だった光弾を飲み込み発射した砲台に激突すると大爆発を起こした。

 

その攻撃をキースは見たことがあった。

今でも思い出せる忌まわしい記憶の1つ……

 

「やはり………貴様らも復活していたか。

"園咲 琉兵衛"、"井坂 深紅郎"それに……"加頭 順"。」

 

そこに現れたのはかつて、風都を震撼させた"3人の悪魔"である。

園咲 琉兵衛(テラードーパント)井坂 深紅郎(ウェザードーパント)加頭 順(ユートピアドーパント)だった。

 

「あっはっは、久し振りだねキース君。

随分と見ない間に見窄らしい姿になったじゃないか。」

「この私を操り手駒にしようなど余りにもお巫山戯が過ぎる。

ここで死んでもらいましょうキースアンダーソン。」

「私も貴方の事は好きではありません。

冴子さんの平穏の為にもここで貴方も黒幕にも消えて貰います。」

 

「愚かな事を……神となった私に逆らおうなど」

キースの言葉に琉兵衛は笑う。

「おやおや、借り物の力で良くそれだけ調子に乗れるものだね。」

 

「無様に死んだ貴様らに分かるまい。

私は超越者であるアルケ様直々に選ばれたのだ。

お前達もアルケ様からの慈悲を受けると良い。

そして、この仮面ライダー共を倒すのだ。

殺した相手の復讐を出来るのだ君達としても嬉しいだろう?」

 

「……やはり君は勘違いをしているようだね。」

「勘違い?」

キースの問いに井坂が答える。

「私達が殺したいのは仮面ライダーではない。

"お前と超越者達"だ。」

 

そう言いながら井坂はキースに向けて攻撃を放つ。

その攻撃が防がれると地面からテラーフィールドが生成されキースを包み込もうとする。

 

回避しようと力を込めようとするが加頭が、発生させた重力波により動きを封じられそのままテラーフィールドに飲み込まれてしまった。

だが、その瞬間マゴニアが発光すると新たなエデンドーパント(キースアンダーソン)が召喚された。

 

「成る程、いくら君を殺してもあの(マゴニア)がある限り、無限に復活する様だね。」

「ならば、あの島を破壊すれば良い。」

「えぇ、いくら超越者の力が含まれているとは言え限界があります。

我々で分身を片付けていけば自ずと本体も現れるでしょう。」

 

その言葉を聞いた新たに再生したキースは声に怒気を孕みながらも尋ねた。  

「何故だ?何故貴様らまで我々の邪魔をする?」

その問いに琉兵衛が答える。

 

「簡単な事だ。

我々は一度、死んだ。

そこにいる仮面ライダー達に野望を挫かれ敗れたのだ。

だが、私達はその死に後悔はない。

互いの信念をぶつけ合い満足して敗れたのだ。」

「何が言いたい?」

 

「分からんかね。

我々の物語は終わったのだ。

美しく終わったものに蛇足を付け加えようなどましてや君のように今を生きている者達を犠牲にしようなど無粋の極みだ。

私の愛したこの街をそんな醜い手で汚して欲しくは無いのだよ。」

「何をくだらないことをアルケ様の計画が完遂されればこんな街などどうとでもなる。」

 

そう言い放ったキースに今度は井坂と加頭が言葉を付け加える。

「私はそのアルケと言う超越者が気に食わない。

私の身体を操り駒として使おうとした。

上位者ならば何をしても良いとは実に傲慢な考えだ。

ならば、私は人として超越者の作り上げた盤面を壊してみせましょう。

私という人間を舐めた罰としてね。」

「元はと言えば財団を裏切った貴方を完全に消せなかった私に落ち度がある。

冴子さん達を蘇らせてくれたのには感謝していますが今後、彼女の生きる世界に貴方や超越者は不要だ。

私は彼女に安寧な人生を与えたいその為ならば例え神が相手でもねじ伏せてみせます。」

 

3人の言葉を聞いたキースは激昂する。

この愚か者共がぁぁ!!

アルケ様の計画を邪魔する者は誰であれ殺す。

お前達もこの世界の歴史から完璧に消し去ってやるっ!!」

 

「あっはっは……はてさて君程度で私達に勝てると思っているのかね?

それならば思い知ると良い。」

 

 

「この街を支配した我々の力と言うものを………」

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