アルケとの決戦が終わり、1週間が経った。
風都に残った戦いの傷跡がまだ消えることは無い。
だが、俺達は悔やんでいる暇はない。
それよりも大事な事があるからだ。
不幸の後には幸せが必ず訪れる。
それが今日という日だった。
半壊した風都が見える一角に一つの教会があった。
今日、その教会で一つの結婚式が行われる。
来賓席には沢山の人が座っていた。
特徴があるとすれば新郎側に警察関係者が多かった所だろう。
「いやぁ……緊張するなぁ。」
泊が小さく呟くと横にいた後藤と大門が答える。
「ちょっとアンタが緊張してどうするのよ。」
「俺達はただ見てるだけだろう。
静かにしてろよ。」
「分かってるよ……それより後藤、お前これからどうするんだ?」
「どうするって?」
「求めていた力を手に入れたんだろ?
だから、正義さんから警察手帳を受け取った。」
「手紙を読んだのか?」
後藤の問いを否定する。
「いや、正義さんから何かを受け取るのを見ててな。
その後の顔を見て何となくな。」
「ふっ……敵わないな。
確かに正義さんから手帳は受け取った。
だが、戻る気はない。
俺にはやる事が残ってる。
それが終わってから考えるさ。」
後藤の顔を見た進ノ介と大門は答える。
「そうか。
まぁ、その時は先輩として指導してやるよ。」
「そんな事言って大丈夫?
成績だって3人の中で進ノ介が一番下だったじゃない。」
「うるさいよ本当に……」
そう話している最中、新婦側の席も盛り上がっていた。
「まさか、俺達も参加出来るとはな。」
ハートの言葉をブレンも肯定する。
「えぇ、我々ロイミュードに対して何の偏見もありませんでしたね。」
メディックが嬉しそうに言う。
「あの人達がいるのならハート様の願いも実現出来そうですわね。」
そう言っていると後ろの席にいたNEVERの京水が尋ねる。
「何々、何の話?」
それにブレンが答える。
「ハート様は人間とロイミュードの共存を考えています。
故に我々に偏見を持たない者達が増えてくれる事を願っている。
この結婚式に参加出来たと言う事はハート様の願いの実現に一歩近付いたと言えるわけです。」
「成る程ねぇ。
貴方達も人生楽しんでるのね良かったわ。」
「そういうお前達はどうなんだ?
そう言えば克己とミーナの姿が見えないが……」
ハートの質問にレイカが答える。
「未来が泣かないようにマリアさんと3人で別室にいるよ。
挙式後の食事会には来るって……確か芦原もそこから参加だよね?」
「えぇ、黒岩の家族と揃って風都に来るから準備が必要らしくてね。」
その言葉を無名が肯定する。
「漸く、家族が揃ったのです。
この結婚式も大事ですが家族サービスも同じ位、大事ですよ。」
そうして話しているとメディックが尋ねる。
「それにしても人が多いですわね。
皆さん、お知り合いなのでしょうか?」
「新郎側は警察関連やそこでお世話になった人も多いですね。
そこにいる人は照井さんの主治医である放射線科医ですし……」
「横の
「まぁ、彼女なりのスキンシップなのでしょう。
新婦側は翔太郎さんや私の関係者が多いですね。」
そう話していると今度はレイカが無名に話し掛ける。
「それにしてもこの結婚式よく参加出来たね無名。
貴方って一応はミュージアムの幹部だったでしょう?」
京水がレイカを諌める様に小突くが無名は気にした様子なく答える。
「勿論、取引をしました。
ガイアメモリとドライバーも預けましたし発信機ありの腕輪も付けてます。
逃げない様にリーゼも近くいますから……」
「えっ?でも中にはいなかったわよ?」
「えーっと……実はフィリップが園咲家の飼い猫であるミックを連れてきた結果、大喧嘩を始めまして2匹とも檻に入れられて反省させられています。」
それを聞いたレイカが呆れる。
「それじゃあ、ダメじゃん。」
「まぁですが、ここには風都署の署長である氷川さんもいますから問題ありませんよ。」
そう話していると教会の後ろの扉が開き、新郎である照井 竜がフィリップを連れて現れる。
何時もの赤いライダースではなく銀色のタキシードを来て親の変わりにフィリップが隣を歩いていた。
それを見た無名が首を傾げる。
「照井さんの付き添いは翔太郎さんだった筈ですが何かあったのでしょうか?」
そんな事を考えていると照井が朗読台付近で止まるとフィリップは離れ両家側の席に着く。
無名は気になり目を瞑り地球の本棚に入りフィリップを呼び出す。
『やぁ、無名。
どうしたんだい?』
『いえ、照井さんの付き添いは翔太郎さんがする筈だと聞いていたのですが貴方に代わったのですか?』
それを聞いたフィリップが合点が言った様に答える。
『あぁ、亜樹ちゃんの為だよ。
鳴海 荘吉を連れてくる為にね。』
アルケとの決戦が終わり亜樹子は父と再会した。
しかし、父は娘を抱きしめると言ったのだ。
「少し体を休めたら父さんは風都を離れる。」
「えっ?……どうして?」
「お父さんは探偵だ。
そして、仮面ライダーでもあった。
この世界には裏から世界を支配しようとする者や破壊しようとする怪物もいる。
私はそいつらにこの街を泣かされたくない。
お前はあの
アイツにならお前を任せられる。」
それだけ言うと亜希子達の元を離れてしまった。
それを聞いた翔太郎とフィリップそして亜希子は決断した。
「おやっさんの事だ。
ロストドライバーが修理されて動ける様になったら直ぐに風都から出るだろう。」
その言葉をフィリップは肯定する。
「あぁ、現に鳴海 荘吉からロストドライバーの修理を頼まれた。」
それを聞いた亜希子は悲しい顔をする。
「でも、だからってそんな直ぐにいなくならなくたって……」
「多分、おやっさんはまだ俺達や亜希子を守りたいと思ってるんだろう。
俺がWになる前はドーパントの相手はおやっさん一人がしてたからな。」
翔太郎の言葉を聞いた照井が尋ねる。
「つまり、俺達は信用されていない訳か?」
その問いにフィリップが答える。
「いや、傷付くのは自分一人だけで良いと考えているのだろう。
仮面ライダースカルになってからそうやって戦ってきたんだ。」
それを聞いた翔太郎達は言葉を紡げなくなった。
何故なら自分達もその思いで仮面ライダーとして戦っていることに変わりはないからだ。
翔太郎は少し考えると3人に提案をした。
「なぁ、亜希子……照井。
結婚式の準備はどこまで終わってる?」
その問いに亜希子が答える。
「えっ!?……式場は決まってるしドレスもあるけど後は招待状出すだけだって……」
照井はそれを聞いて翔太郎に尋ねる。
「まさか、鳴海 荘吉が風都にいる間に式をあげるつもりか?」
「あぁ、昔の経験からおやっさんの性格は知ってる。
受け身で対応してたら直ぐにどっか行っちまう。
なら、そうなる前にこっちで逃げ道を固めるしかねぇ。」
「でも、そんな事いきなり言って大丈夫かな?
式場の近くだってアルケの被害に遭ってるのに……」
亜希子の言葉を聞いたフィリップが答える。
「そこは僕が何とかしよう。
ここで亜希ちゃんにもこれまでの恩返ししたいからね。」
そう言うとフィリップは式場に連絡し日程を繰り上げてもらった。
幸い、アルケの事件の結果。
詰まっていた式が相次いでキャンセルになったのだ。
それを聞いた無名が尋ねる。
『それでも良く式場がOKを出しましたね。
普通のやり方じゃ恐らく無理だと思うのですが……』
『そこは色々と手を回したんだよ。
風都署にも協力して貰って営業許可をもぎ取って式場には、
僕が追加で"資金"を払って納得して貰った。』
『成る程、それで納得しました。
そして、修理したロストドライバーの受け渡し目的で式場に鳴海 荘吉を呼び寄せたと?』
『あぁ、だがそこから先は翔太郎次第だ。
僕は照井 竜の付添い人に志願したからね。
鳴海 荘吉と最も付き合いが長いのは翔太郎だ。
僕は相棒を信じた。』
『なら、その結果がもう少しでわかりますね。』
そうして二人は会話を終えると地球の本棚から出て意識を戻す。
すると、扉が開き中から白いウェディングドレスを着た鳴海 亜希子が現れた。
横には付添い人がいない。
その姿を見て周囲の人達は訝しむ。
しかし、その声も直ぐに静まり返った。
亜希子の横に一人の男性が現れる。
その男の顔を見た鳴海 亜樹子は笑顔になる。
「……お父さん」
「遅れてすまない。
少し着替えに手間取った。」
急いで着替えたのだろうシワの入った黒いスーツを着た鳴海 荘吉はトレードマークであった帽子を脱ぎ顔を現していた。
これまで出来なかった愛する者の手を掴む幸福を噛み締めながら花嫁と共に前へと進んでいく。
周りから溢れんばかりの拍手に包まれながら一歩一歩踏みしめながら鳴海 荘吉はこれまでの人生を振り返る。
(探偵として一人で生きてそれから相棒が出来た。
愛する者と出会い相棒を失った。
そして、翔太郎に仕事のイロハを教えフィリップを救い出し死んだ。
神様の気まぐれで復活して亜樹子の愛する者にも会えた。
……ふっ、失うばかりの人生かと思ったが案外悪く無いもんだな。)
荘吉は後ろに目線を向ける。
そこには服を交換した自分の弟子である翔太郎が渡した帽子を深く被り、涙と鼻水に塗れながら拍手を続けていた。
(全く……そういう所は相変わらずのハーフボイルドだな。
だが、それを良いのかもしれない。
この街の風も冷たいだけじゃない。
誰かに優しく寄り添う温かい風も必要だ。)
そう考えながら照井の前に行くと荘吉は話し掛ける。
「照井 竜………だな。」
「はい。」
緊張した面持ちで答える照井を見ながら続ける。
「俺がお前に求める事は一つだ。
亜樹子を泣かせる事は許さない。
もし、泣かせたら地獄の底だろうと殴り行くからな。」
「決して……そんな事にはさせません。
亜樹子さんもこの風都も両方守ってみせます。」
「……良い目だ。
照井 竜……家の娘を……亜樹子を宜しく頼む。」
荘吉はそう言って頭を下げる。
そして、顔を上げると亜樹子に向き直った。
花嫁になる娘に父が出来る最後の仕事。
荘吉は亜樹子のヴェールに手を掛けると顔を隠した。
そして、両家席につく。
そのタイミングで来賓者である映司が気づいた。
「あれ?……そう言えば牧師様がいない。」
その言葉を聞いた隣にいたアンクが尋ねる。
「あ?それの何が問題なんだ。」
「牧師様がいないとこれ以上、式が進まなくなっちゃうんだよ。」
それを聞いたアンクが怒る。
「おい、ふざけんな。
じゃあ、この後の飯はどうな………」
そう言うと朗読台の方から声が聞こえてくる。
『では、新郎新婦揃ったこと様ですし始めましょうか。』
それを聞いた進ノ介が小さく反応する。
「その声ってベルトさん!?
えっ、何処にいるんだ?」
『ここにいるとも』
そう声が聞こえると朗読台の上にドライブドライバーがシフトカーと合体しロボのような見た目となり姿を現した。
『始めまして私の名前はクリム·シュタインベルト。
そこにいる泊進ノ介と共に超常事件解決に手を貸している者です。
実は私は生前に牧師の資格を取っておりまして新郎である照井 竜殿から光栄にも二人の仲人となる役目を頂けました。
奇っ怪な見た目かとは思いますが流して頂けると幸いです。』
そう言って動揺の声を遮るようにクリムは話の続きを始めた。
『新郎、照井 竜あなたはここにいる鳴海 亜樹子を
病める時も 健やかなる時も
富める時も 貧しき時も
妻として愛し 敬い 慈しむ事を誓いますか?』
「誓います。」
『Great!……
では次に新婦、鳴海 亜樹子 あなたはここにいる照井 竜を
病める時も 健やかなる時も
富める時も 貧しき時も
夫として愛し 敬い 慈しむ事を誓いますか?』
「はい、誓います。」
『ここに新郎新婦の二人が神の元、愛を誓い合いました。
それでは結婚指輪の交換を……カモン!!』
クリムがそう言うと結婚指輪の箱を乗せたジャスティスハンターが二人の前に現れる。
『それでは指輪の交換を……』
クリムの言葉に合わせて二人は指輪を受け取ると互いの薬指に付ける。
『では……誓いのキスを……』
それを聞いた照井は亜樹子のヴェールを上に上げる。
そして、口元に優しくキスをした。
その瞬間、会場の中は割れんばかりの拍手に包まれる。
こうして、幸福に包まれたまま2人の結婚式は幕を閉じたのだった。
風都で結婚式が行われている頃、一人の青年が辺り一面の砂漠の一角で目を覚ました。
「ここは……何処だ?」
その問いに答える様に沢山の集団が現れた。
「漸く来たか"アルケ"。」
その声を聞いたアルケは起き上がる。
「その声は"ゴエティア"か?」
「私だけじゃないぞ。」
そうして次々と超越者だった者達がその場に姿を現した。
困惑したアルケが尋ねる。
「これは一体……どういう事なんだ?」
「えっへっへ!!驚いた?ドッキリだーいせーいこう!!」
そう言ってゴエティアの後ろから現れた少年をアルケは見たことがあった。
「お前はロノスか?」
「正解!!
良かったよ地球の本棚から消えた僕達の記憶を全員回収出来たみたいでさ。」
「記憶の回収?……だがこの身体は何だ?
超越者の肉体ではないだろう。」
「そうだよ。
この肉体は無名と同じ人間のものだ。
彼のデータを使い僕たち全員……人間になったんだ。」
「じゃあ、ここは?」
「時から隔絶された空間、分かりやすく言えば新たに作られたパズルからはみ出したピースって所かな。
アルケ、君の起こした一件で時空間が逆転しゴエティア達はそれを止める為に超越者の記憶を代償にした。
その影響で僕達を収めていた記憶の余白が誕生したんだ。
そして、地球はその余白を、この歴史で死ぬ筈だった人間に当てた。
ここまでは君も知ってるよね?」
「あぁ、その余白を使い平行世界の火野映司の歴史にも干渉したからな。」
「そこで僕は自分の力を使ったんだ。
財団Xの技術力で複数の時間軸に僕の肉体を転移させてマーカーにした。
そして、世界が崩壊し再構築されるタイミングで切り離した。
僕達が存在出来る空間を作るためにね。
そこで一つの問題が生じた。」
それに答えたのかゴエティアだった。
「私達、超越者の収められている記憶だ。
その力だけでも膨大な記憶を有する我等をこのままこの切り離された時間軸に転移させるのは不可能だった。」
そこまで話してアルケは納得する。
「成る程、そこで態と超越者の記憶を消費させたのか。
我々全員が転移出来るレベルの記憶に収める為に……」
「そうだ。
そして、超越者としての力は失ったが記憶だけは保持した人間として私達は生まれ変わったんだ。
それにどうやら、新たなオマケも付いてきた様でな。」
ゴエティアがそう言って指し示した方向には白い砂に鎮座する"マゴニア城"が聳え立っていた。
それを見ながらロノスはアルケに言った。
「うん、どうやら彼等はマゴニア城を転移させたらしくて
偶然、この空間に落ちてきたみたいなんだ。
それで君の力を借りたいんだ。
もしかしたら、僕たちに力を貸してくべるかもしれないしね。」
アルケはロノスに尋ねる。
「ロノス、お前は此処からどうするつもりだ?
我々は復活した……これから財団Xを再編し世界を支配でもするのか?」
「まさか……財団Xを作ったのも君達を復活させる為に過ぎない。
僕は君達と一緒に生きていたいんだ。
その願いを叶えるためにも自衛の力は欲しい。
残念な事にどんな世界にも争いの種はあるからね。」
隔絶された空間を手に入れたとしても誰かが見つけるかもしれない。
そして、その見つけた者達が優しいとも限らない。
ロノスの願いは仲間達と安全に暮らせる力を手に入れることだった。
それを聞いたアルケは笑う。
「はは……相変わらずだなロノス。
お前の強欲さには驚かされる。
だがそれなら尚更、あの城は必要だな。」
「策はあるのか?
お前を見たら攻撃してくるかもしれないぞ?」
ゴエティアの問いにアルケは自信を持って答える。
「欲望については知り尽くしている。
それに……超越者の力は失ったが錬金術は失われていない。
使い方さえ知っていれば自衛は出来る。
お前達にも同じ様な者がいるだろう?」
アルケの言葉を聞いて笑う元超越者は数人いた。
「では、先ずは接触だな。
どうする?
武力で脅してみるか?」
ゴエティアの提案をタナハが否定する。
「そんな野蛮な事はする必要はないだろう。
我々には対話をする知恵も口もある。」
タナハの言葉を肯定する様にコスモスが話す。
「心を込めて話せばきっと分かってくれるわ。」
そうしてロノスが皆を扇動する。
「じゃあ、行こうか。
僕達の新たな第一歩だ。」
その声に従い元超越者達はマゴニア城へと足を進めていくのだった。
【超越者達の未来】
ロノスの計画により力を失いながらも全員復活を果たした。
切り離された空間の中に偶然、マゴニア城が転移してきた。
元超越者達はマゴニア城の制御システムとなったノブナガとキチョウの2人に出会うと彼等に肉体を与える事を条件に協力を結び付けた。
そして、今も彼等は行動を続けている。
超越者達の安寧を続ける為に………
外伝 続編の投稿に関して
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