ここでは無名のその後をについて描かれています。
時系列的には風都探偵
アルケとの戦いの後、どうなったのかご覧ください。
「身分証の提示をお願いします。」
完全武装した兵士の一人にそう言われた照井は懐から警察手帳を取り出すと見せた。
兵士はその手帳と照井の顔を見比べ無線で通信を行うと話し始める。
「確認が取れました。
"特事捜査"係の照井警視殿、お待ちしておりました。
中にお入りください。」
特事捜査係……正式名称、"特別事案兼生物担当捜査"チーム。
度重なる怪人や怪物事件に対応する為に創設され捜査官に選ばれるのは怪人との戦闘経験のある刑事や仮面ライダーが在籍している。
アルケの起こした地球規模の大事件後に警察は今後この様な事態が起きた際に動けるチームを作り上げたのだ。
現在、照井はそのチームに在籍し多数の捜査官と共に数十年、働いている。
風都担当の彼が街を離れているのもその用件の為だ。
施設に通された照井は一人の兵士に声をかけられる。
「お待ちしておりました照井警視。
今回、本部からこの監獄の案内を仰せつかりました。
「風都署の照井です。
今回はよろしくお願いします。」
「こちらこそ……先輩の仮面ライダーでもある貴方にお会い出来て光栄です。」
ヒロミの尊敬な眼差しから差し出された手を握りながら照井は尋ねる。
「と言うことは貴方も仮面ライダーなのですか?」
「はい。
ここに来る前、とある"政府機関"にいた際に仮面ライダーとなったのです。
色々とあり組織は解体されましたがそのタイミングで"ネイビーネスト"で働かないかと声を掛けていただいてここにいます。」
"ネイビーネスト"
政府機関が怪人、怪物関連の凶悪犯を収監する為に作り上げた"海中監獄"。
「深海に作り上げられたこの監獄に収監されるのは大量殺人や世界を破滅に導く様な事件を起こした者達が殆どです。
故にその危険性からこの監獄の場所を特定されないように汎ゆる対策が取られている……まぁ、特事の方ならばそれぐらいはご存知でしょうが。」
「えぇ、外部との連絡手段や移動手段が完全に絶たれておりここに収監されれば出る手段は存在しない……俺のように"変身"できなければ」
そう言いながら照井はアップグレードデバイスが装着されたアクセルメモリを取り出す。
それを見たヒロミも同じようにデモンズドライバーを取り出した。
「その通り、飛行手段を持つ我々だけが唯一の移動手段となり犯人の監視や収監を行う……まぁ、最初にこの方法を聞いた時は私も面食らいました。」
「ですが、良く政府も許可を出しましたね。
言い方は悪いですがそれはつまり、凶悪犯の身柄を仮面ライダーに完全に託すことになるのですから……」
「実際にかなりの反対があったようですが……政府も一枚岩と言う訳じゃありません。
実際にかなり時間がかかりましたから……
しかし、正義側にも悪に屈し加担する者もいる……その犠牲になった者も……だからこそ、我々の正義を信じてくれたのだと私は思っています。
それに答えるべきだとも……」
「悲しみの連鎖を断ち切り悪意を振り切る。
それが俺達、仮面ライダーの責務ですから」
「貴方と話せて良かったです照井警視。
ここから先のフロアになります。
中に入れるのはお一人だけです。
お気を付けて照井警視。」
そう言って敬礼するヒロミに見送られながら照井は開いたゲートの先へと入っていくのだった。
周囲を強化ガラスで囲われた全面白い壁の空間に一人の男性が椅子に座り本を読んでいた。
照井を見るや否や本を閉じる。
「おや、珍しいお客様だ。
こんな独房に何か御用が?」
「貴様が大人しく独房にいるのか確認しに来た"井坂 深紅郎"。」
照井にそう言われた井坂は嗤う。
「くっく……相変わらず嘘が下手ですねぇ照井 竜。
大方、目的は"あの人"でしょう?
彼ならばもっと下の階ですよ。」
「意外だな。
お前の事だこの独房を脱獄しようと画策してると思ったが……」
「そんな事はしませんよ………"今はまだ"
ここに収監されたお陰でガイアメモリだけではない色々な力を目に出来ましたから今はそれを知るので忙しいのですよ。」
そう告げる井坂の独房の強化ガラスに照井は拳を打ち付ける。
ガン!!
大きな音は鳴るがヒビ一つ入らない。
「………」
「見えるか?
ハイドープである俺の一撃ですら破れない特製の檻だ。
お前が抜けられる可能性など万に一つもない。
覚えておけ……もし、脱獄したとしても必ず捕まえてやる。」
「ふっふっふ……やはり照井 竜、君は面白い。
えぇ、その日が来るのを楽しみにしていましょう。」
それだけ話し終わると照井は次のフロアへと向かっていくのだった。
次のフロアも内装は全く同じだったがベッドの上にタブレットを大事そうに抱えた男が座っていた。
「大人しく収監されているようだな"加頭 順"。」
「貴方は……仮面ライダーアクセル、照井 竜ですね。
ここに看守以外の人が来るとは珍しい。」
照井は加頭を睨みながら話を続ける。
「聞いたぞ。
随分と警察に協力的だと……財団の情報すら差し出すお前の目的は何だ?」
「今の私には財団などさして重要ではない。
私は自分の望みを叶えたいから情報を提供しているに過ぎません。
……それに財団Xは貴方達が考える程、脆弱ではない。
私、程度が知る情報などほんの氷山の一角ですよ。」
「なるほどな。」
「用が済んだのならもう宜しいでしょうか?
これから、大事な時間なんです。
貴方に邪魔されたくはない。」
その言葉を聞いた照井は黙ったまま次のフロアへ向かった。
それを見た加頭は手に持っていたタブレットを付ける。
そこに映った女性に加頭は笑顔で告げた。
「こんにちは"冴子さん"。
今日もまた貴方と話せて嬉しいですよ。」
次に現れたフロアの中には巨大な風都タワーの模型が置かれていた。
まだ未完成なのだろう男はピンセットを使い小さなパーツを丁寧にはめ込み時には接着していく。
「監獄生活を随分と楽しんでいる様だな"園咲 琉兵衛"。」
照井の言葉を聞いた琉兵衛はピンセットを置くと照井に顔を向けた。
「ここには何もないからね。
皮肉な事だが凶悪犯であればあるほど取引をすればある程度の融通はきく。
この風都タワーの模型もその戦利品といった所だ。
しかし、君が来るとは意外だったな。
てっきり、来人か相棒の左 翔太郎が来るかと思ったが……」
「ここに来れるのは政府に自分が仮面ライダーだと公表している存在だけだ。
奴の立場上、それは難しいだろう。」
「成る程、正義のヒーローとは随分と不便なものだな。
来人も大変な道を選んだものだ……」
「フィリップからの伝言だ。
"罪を償って下さい……身体に気をつけてお父さん"だそうだ。」
それを聞いた琉兵衛の顔は優しい父の顔へと変わる。
「ありがとう……お前も身体には気を付けるんだよと伝えてくれ。
私の家族はどうしてる?」
「フィリップと園崎 若菜ならば問題ない。
園崎 冴子に関しては分かっているだろう?」
「まぁ、私達の様な凶悪犯罪者程ではないが冴子も罪を背負ったからね。
ここではない別の所にでも収監されているのかな?」
「それ以上、話す義理はない。
ここまで教えたのはお前が曲がりなりにもフィリップの父親だからだ。
だが、忘れるなお前は風都とフィリップを危険に晒した。
脱獄しようなどと思わず大人しく刑に服する事だ。」
「分かっているよ………だが、君程度が私を捕まえられると本気で考えているのかね?
………このミュージアムの総帥を」
「……試してみるか?」
数秒、互いの殺気がぶつかり合うと琉兵衛は笑顔で告げた。
「安心したよ。
君のような刑事がいてくれれば風都は安泰だ。
これからもその正義感で私の愛している街を守る事だ。
さぁ、早く行きたまえ。
君の待ち人は下にいるぞ。」
そう言って地面を指差す琉兵衛を一瞥もせずに立ち去る。
しかし、照井の手には緊張から来る汗が流れ続けていた。
「俺もまだまだだな。」
小さく呟くと次のフロアへと進んでいった。
そのフロアの地面には沢山の折り鶴が置かれていた。
そこに収監されている青年は黙々とだが丁寧に鶴を一つ一つ折り続けている。
照井がそのフロアに到達すると中にいた青年が声を掛けてきた。
「貴方がここに来たと言うことは漸く政府もここの情報解禁に本腰を入れ出したということでしょうか。」
「どういう意味だ無名?」
照井の問いに無名は答える。
「この施設は数十年前から稼働しています。
その時に来ていたのは囚人の移送に現れる数名の仮面ライダーと政府高官のみでした。
政府は増え続ける怪人事件の対処の為、複数のプランを提示した。
……その一つが"プロジェクトアウトサイダー"。
悪に堕ちた仮面ライダーや怪人の力を兵器として利用する……まぁ、そのプロジェクトが本格始動する前に私や琉兵衛さんの二人で潰したのですがね。」
「そうか、やはり現れたかお前達の力を利用しようとする輩が……」
「おや?驚かないのですね。
昔の貴方ならば憤慨してもおかしくなかったのに……」
「風都や水音町で不正や汚職と嫌という程、向き合ったからな。
警察官だからといって正義とは限らない。
逆に世間で悪人と公表されているからといってそれが真実だとも信じれないさ。」
「では、貴方は何を信じるのです。」
「"俺と仲間の直感"……どうやら俺にはこれが合ってるらしくてな。
今まで致命的な間違いはしたことがない。
だから、"今回"も俺は自分の選択が間違ってないと信じている。」
照井はそう言うと強化ガラスで覆われた壁の横にある電子デバイスに自らの手を翳した。
すると、無名を閉じ込めていた強化ガラスが下がり無名は檻から解放される。
「どういうつもりですか?」
「最近の風都について知っているか?」
「ここに来てから地球の本棚への侵入は許可されていません。
この首の装置がそれを無効化していますので……」
「外してやる。
だから、検索しろ。」
照井が首の装置に触れると音が鳴り無効化される。
それと同時に無名は地球の本棚へ入り込んだ。
『キーワード検索……"風都"……"最近の出来事"。』
そうして検索すると他愛もない事件が書かれた本の中で謎の本が一冊手元に現れた。
『これですね……最近の風都で頻発しているガイアメモリ事件。
被害者は全員、肉体の一部、又は全てを欠損しており周囲には血痕しか残っていなかった。
だが、左 翔太郎、フィリップ両名の活躍により犯人を断定。
事件を起こしたロードメモリの使用者も無事逮捕したと……』
「そうだ。
左達がロードドーパントを追っている最中に奇妙な経験をしたらしい。」
『奇妙な経験?』
「あぁ、風都と似ているが全く別の世界に行ったと……」
それを聞いた無名は納得する。
『成る程、確かに彼等はまだ捕まっていませんでしたね。』
「知っているのか無名?」
『えぇ、その世界の名は"裏風都"。
本来の歴史ならばもっと早く起こっていた事件です。
特殊な空間でそこでの出来事は地球の本棚には記録されない。
恐らく、フィリップも調査は難航しているのではありませんか?』
「流石だな。
やはり、お前の力が必要だ無名。」
そう言いながら照井は懐から書類を取り出すと無名に差し出した。
「"G·R·I"……
ガイアメモリを科学的観点から調査分析を行い対抗策を研究する部署ですか。」
「そうだ。
アルケの一件でゴタゴタしていたせいで稼働が遅れたが漸く始動し始めた。
今は人員の選定と研究施設の建設を同時に行っている。
ここではガイアメモリの研究を行う特性上、危険が伴う。
だからこそ、施設は地下深く数十のプロテクトを有した場所となるだろう。」
「僕の目から見ても素晴らしいプロテクトだと思いますよ。
生半可なドーパントや怪人ではここに侵入するのは難しいでしょう。」
「そうだ。
外部からの侵入は警戒するべきだが今は問題ない。
それよりも目を向けるべきは"内部"だ。」
「確かに"スパイ"や"裏切り者"を内部に招き入れたら危険だ。」
「俺は警察という組織を信用している。
だが、"仁良"や"前風都署長"の一件もある。
恐らくこれから大量のガイアメモリを保管することからも保険が欲しい。
絶対に裏切らないと信頼出来る存在が……」
「僕は元ミュージアムですし貴方達に何度も危害を加えましたよ?
ガイアメモリも沢山作りました。」
「そうだな。
そして、自分の命を賭けてフィリップや左……俺達を救った。
アルケとの戦いでもお前は世界を救う為に戦った。
俺はそんなお前だからこそ信じてみようと思った。
"罪を憎んで人を憎まず"……俺は左の様にはなれない。
アイツの様に甘くも出来ないからな。
だからこれは"取引"だ。
お前は風都に住む人を悲しませた……ならばせめてその命を人を守る為に使ってみせろ。」
照井の言葉を聞いた無名は少し考えて決心をつけ立ち上がると檻の外へと足を進める。
「一つ、条件があります。
その施設で
「起きてください!!"副所長"!」
「!?」
耳元から大声が聞こえた無名はビックリして目を覚ます。
「あぁ……
急に大きな声で起こされてビックリしましたよ。」
銀野に向けて無名がそう言うと彼女は無名の傍らに置かれていた資料を指差しながら怒った。
「ビックリしたのはこっちの台詞ですよ
何ですかこの資料の山は!?
これ絶対、徹夜しましたよね!?
私達には定時帰宅を厳命してる癖に何やってるんですか!」
無名はガイアメモリ研究所……通称G研で働く為に照井から偽名を渡されていた。
今彼は
無名は時計に目をやる。
「あぁ、もうこんな時間でしたか。
最近、新しいメモリが増えましたからその調査と研究に集中してましたからねぇ。」
「確かに昨日、新型のメモリは来ましたけどそれで徹夜って……」
「でも、"5本中3本"は解析が終わりましたし"無効化処理"も行えますよ。」
「……それにこの研究所で誰よりも優秀だから困るんだよねぇ。」
無効化処理とは無名が作り出した技術で解析したメモリのデータに外部パーツを用いたプロテクトをかけることで万が一盗まれてもメモリを使えなくなせる事が出来る。
プロテクト解除には所長か副所長のどちらかが知っているパスワードと研究員の持つ生体認証を使う必要があり二人いなければ解除出来ない。
「残り2本は……無効化処理をしてからにしましょう。
銀野さん手伝ってください。」
「まだ働く気ですか!?
と言うよりやっぱり黒火副所長この後の予定忘れてますよね?」
「予定………あぁ、照井警視がこちらを訪問されるんでしたね。」
「そう、竜兄……じゃなかった照井警視が私達の働きを見る為に来てくれるんですから副所長もしゃんとしてください!
ほらっ!朝ご飯は持ってきましたからシャワー浴びて身綺麗にするんです!」
「ああっ……いきなり起こさないでください。
分かりました行きますから……あっ、リーゼの餌を準備しないと」
「それなら、リィナがとっくに終えましたよ。
今は2人で仲良く眠っています。」
指を差された方へ目を向けるとそこにはリィナの"胸の上"で幸せそうに眠るリーゼの姿があった。
「どうりで僕を起こさない訳だ。
そう言えば所長は何処に?」
「あぁ、"玄道所長"なら照井警視のお出迎えに行きましたよ。
そんな事は良いから早くシャワーを浴びるぅぅ!!」
銀野に押し出されながら無名は考える。
(はぁ、やはりそう上手くは行きませんか。
僕が隣にいたせいで強硬手段を取るつもりなのでしょうね。)
恐らく、G研の所長である玄道は研修所の保管室から盗まれたガイアメモリの調査と内通者の捜索を照井達に頼んだのだろう。
ならば、来るのは翔太郎とフィリップだ。
(玄道の目的は僕を犯人に仕立て上げる事なのでしょうね。
これまで露骨に彼の邪魔をしましたから。)
特に無名が導入したガイアメモリの無効化処理。
これによりプロテクトを解除するには所長と研究員2人のデータが必要になり使うと使用記録が残ってしまう事になる為、容易に盗み出す事が難しい状況を作り上げた。
そのせいだろう。
盗まれたシザースメモリには無効化処理に使われたデバイスを無理矢理、引き剥がした影響で基板にダメージが残っておりそのお陰で負担なくメモリブレイク出来たとフィリップに地球の本棚の中でお礼を言われた。
だからこそ、今動こうとしている。
例え所長と言う地位を捨てて犯罪者になろうとも……
ならば、仕方が無い。
僕にも照井との"契約"がある。
(暫くは玄道の思い通りに動きましょう。
裏風都の事についても何か分かるかもしれませんし……)
そう考えているとG研の扉が開き玄道と照井が翔太郎とフィリップを連れて中に入ってくる。
無名の姿を見て驚く翔太郎に声を被せる様に言った。
「始めましてようこそG研へ……
僕は黒火、ここの副所長をしています。」
さぁ、新たな物語の始まりだ。
【原作との相違点】
アルケの一件によりメモリ犯罪で死んだ者達が復活しており他ライダーの犠牲者も復活している。
その者達を閉じ込めておくためネイビーネストが作られた。
無名もそこに収監されていたが照井により釈放される。
以後、G研の副所長としてリーゼと共に働いている。
所長である玄道を改心させようとしつつメモリ強奪阻止に動いていたが2つとも失敗し玄道から命を狙われてしまう。
翔太郎達の機転で玄道が犯人だと分かると研究所内で暴れようとするが仮面ライダーW、仮面ライダーアクセル、そして緊急対応として変身した仮面ライダーデモンの活躍により事態は悪化せずに終わる。
その後、G研が解体されることは無く所長代理として無名が就任し残業時間が倍に増え銀野達から叱られることとなった。
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