もう一人の悪魔   作:多趣味の男

327 / 330
仮面ライダーベイル編、二幕目です。


After Story/SとEの行方(Confrontation)

 

 「元太……大丈夫かな?」

鎖で自由を奪われ牢獄に繋がれながらも"五十嵐 幸実"(いがらし ゆきみ)が考えていたのは共に時を過ごした青年の事だった。

 

瓦礫の下から助けた彼は名前を持たなかった。

だから私は彼に元太と名付けた。

それから、2人で過ごした時間は私にとってとてもかけがえのない物となった。

 

元太が私と家族になれたら幸せだと言われた時、私もそう思った。

でも、元太の追手が私達を見つけ出し捕まえた。

そして、彼はここの研究員に連れ出されてしまった。

それから何もない。

ただ、外が騒がしくなっているのは聞こえる。

きっと、元太はまたあの仮面ライダーとかう言う存在にさせられて戦わされているのだ。

 

「元太……無事でいて」

 

瞳から自然と涙が溢れて来た瞬間、この牢獄を監視していた兵隊が檻に向けて吹き飛ばされてきた。

奥の扉から現れたのは私達を助けようとしてくれた伊良部さんと武器を持った4人の人間だった。

 

伊良部さんは私を見つけると近付いてきた。

「幸実さん!良かった無事で……」

そう言って近付こうとした瞬間、横にいた男がムチを持って心配そうな顔で近付いてきた。

「あぁん、その顔の傷、酷いわ!? 

ここの奴等にやられたのね?

全く、レディの扱いが分かってないわねぇ。

ここは私がミッチリガッチリムッチムチにしながら相手を……」

そうして倒れている研究員と兵士に近づこうとするのを女の人が蹴りを入れて止める。

「ちょっと京水、暴走している暇は無いよ。

ごめんね、貴方が五十嵐 幸実さんだね?

私達はアンタ達を助けに来たの。」

「元太……順平は!?無事なの!?」

 

尋ねてきた女性に縋る様に身体を掴むとその両手を優しく握ってくれた。

「安心してアンタの心配してる人は克己と荘吉さんが必ず救い出してくれる。」

 

そう話していると牢獄に兵士達が入ってきた。

「貴様ら何者だ!?

ここで何をしている!!」

現れた兵士を見たレイカは舌打ちをする。

 

「チッ!悠長に話してる余裕はないか。

堂本と芦原は首謀者を捕らえる為に別行動してる……なら、私達のやることは一つ。

行くよ京水。」

「えぇ、思いっ切り暴れてやりましょうレイカ。」

 

二人はNEVERドライバーを腰につけると懐からガイアメモリを取り出す。

 

「HEAT」「LUNA」

 

「「変身」」

 

ドライバーにガイアメモリを装填し展開すると二人の肉体は変化し仮面ライダーへと変身が完了した。

 

「かっ……仮面ライダー!?」

「へぇ、アンタらも仮面ライダーは知ってるんだ。」

「なら、ここから先、貴方達がどうなるか分かるわよね?」

 

「こっ……殺せぇ!!」

兵士の一人がそう叫ぶと手に持っていたライフルを発砲する。

その弾丸を京水はルナメモリの能力でムチにしたメタルシャフトで防ぎレイカは撃ってきた相手を足から放つ爆炎で吹き飛ばした。

 

「さっさと潰して克己と合流するよ京水。」

「そうね。

プロらしくスマートに行きましょう。」

 

2人のライダーはそう言って笑うと伊良部や幸実、そして他にも捕らえられていた人達を連れてその場を後にするのだった。

 

 

時同じくして仮面ライダーベイルと仮面ライダースカル。

そして、仮面ライダーエターナルと現れた不完全な悪魔との戦闘は両極端な結果を生み出していた。

 

仮面ライダーエターナルに変身している克己は巧みなナイフ捌きと格闘で不完全な悪魔に対して完全に優位に立ち回っていく。

攻撃を捌きながらナイフで切りつけ本能的に囲もうとしてくる悪魔を優先的に攻撃し陣形を乱し続けていった。

 

「成る程、本能的に囲み込んで戦おうとするのは面白いがそれ以上の戦術は無い。

ドーパントと違い完全に化け物に成り果てている様だな。

これ以上、無駄に傷つけるには忍びない。

力量も分かった……ここからは本気で仕留める。」

 

克己はエターナルメモリを専用武器であるエターナルエッジに装填する。

「ETERNAL MAXIMUMDRIVE」

 

青色のエネルギーがナイフの表面を纏うと克己は悪魔の集団を走り抜けながら斬り続けた。

一瞬の内に全ての悪魔が斬り伏せられると切り口から青い光が溢れ大爆発を起こす。

 

「お前達は被害者だ。

だから、永遠に苦しまなくて良い。

お前達を怪物にした奴は俺達が責任を持って地獄に送る。

………安心して眠れ。」

 

目を瞑り被害者に黙祷を捧げた後、克己はもう一つの戦闘に目を向ける。

 

ベイルと荘吉の戦いは一方的な展開になっていた。

近付き荘吉を殴り続けるベイルに対して反撃せず防御を続けている。

(何をしてる?

加勢が必要か?)

 

そう思い動こうとしているのに気付いた荘吉が手を出して止める。

それを見た克己は動くのを止めた。

 

「何か作戦があるのか……お手並み拝見と行こう。」

 

そう言って克己は二人の戦いを見守るのだった。

 

 

「フハハハ、さっきまでの威勢はどうした?

ろくに反撃もせず防御しかしないじゃないか!!」

ベイルは楽しげに荘吉に攻撃しながら言った。

「随分と嬉しそうだな。

そんなに暴れるのが楽しいか?」

 

荘吉の問いにベイルが笑いながら答える。

「あぁ、楽しいねぇ!!

順平と俺の二人が組めば最強だ。

この力があればどんな奴でも倒せる。

そしてそれは順平が望んでいたことだ。」

 

ベイルは順平の持つ悪魔への復讐心から誕生した。

そんな彼だからこそその望みはシンプルだった。

順平と共に復讐を行いその為に汎ゆる者を破壊する。

 

だからこそ、幸実と幸せに暮らす姿を妬ましく不快に思い。

逆に今この瞬間とても幸福な心情となっていた。

 

「俺はベイル……順平の願いを叶えられるただ一人の悪魔だぁ!!」

 

高揚する感情のまま拳を振るった。

禍々しいエネルギーを纏った拳は例え、仮面ライダーでも喰らえば致命傷になるだろう。

しかし、その拳は荘吉に受け止められる。

 

「何っ!?」

驚くベイルに向かって荘吉は言った。

「良く分かった。

今のお前には"気つけ薬"がいるらしい。」

 

荘吉は右手を握るとベイルの顔を殴り付けた。

殴られたベイルは地面に転がる。

 

「ガハッ!?……貴様っ!!」

「どうだ?……少しは目が覚めたか?」

 

「ふざけるな貴様の攻撃なぞ……」

そこから先の言葉を続けようとしたベイルの言葉を荘吉が遮る。

「お前に話してはいない。

家主のいない家を盗んだ泥棒は引っ込んでいろ。」

 

そう言って荘吉はベイルの中にいる順平に話し掛ける。

「お前の事は伊良部から聞いた。

殺された両親の復讐の為に仮面ライダーになった事も……」

 

組織の研究の為に肉体を改造され名前も記憶も失った。

悲劇にしたって悲惨すぎる内容だ。

だが、そんな悲劇の中にも幸福があった。

 

「しかし、お前は幸実と出会った。

彼女と出会い過ごした日にちは短くともお前にとって掛け替えのない大切な記憶の筈だ。」

 

「やっ止めろ!?」

 

動揺したベイルは荘吉の話を聞かない様に耳を塞ぐ。

 

「今お前は絶望の中にいるんだろう?

自分に起こった全てが悪魔と組織により仕組まれ……愛した女すら守れずその手から零れ落ちようとしている。

お前のその気持ちは痛いほど分かる。」

 

鳴海 荘吉の人生は失敗の連続だ。

 

最愛の女性を守る為に最高の相棒を失い二度と愛する者に触れられなくなった。

 

大切に育てていた半人前の門出を見届けること無く死んでしまい愛する街を託すしか無くなった。

 

生き返っても敵に操られ最愛の娘と……その夫に危害を加えてしまった。

 

「守りたい者はこの手から零れて傷つくだけの人生……不完全で失敗ばかり……だと思ってた。

でもな、そんな風に思ってた俺に気付かせてくれたのは半人前だと思ってた男の言葉だった。」

 

 

鳴海 亜樹子と照井 竜の結婚式の会場で

荘吉は翔太郎と二人で話していた。

「おやっさん、亜樹子と照井の結婚式に出ないって

どうしてだよ!?」

「翔太郎、俺は大事な娘すら守れなかった男だ。

そんな俺が二人の結婚式にいたらケチが付く。

それに、まだ財団Xの動きも油断出来ない。

お前達を守る為にも俺は一人で……」

 

そこから先を言おうとする前に翔太郎は荘吉の顔を殴り付けた。

倒れた荘吉は驚いた顔で翔太郎を見つめる。

「俺は……アンタの言う通り半人前だ。

捜査だってフィリップがいなきゃ回らないし、

コーヒーもろくに作れねぇ。

感情的で……ハーフボイルド、それが俺だ。

でも、そんな俺だからこそ必要だと、

フィリップは言ってくれた。

 

覚えてるかおやっさん?

アンタが尾藤さんに残した

木彫りの熊に入れていたメッセージ。」

 

「……"Nobody's Perfect"。」

「"誰も完璧じゃない"。

でも、俺は自分で出来る事を……フィリップや亜樹子、それに風都の為になる事をしたい。

これから先も相棒と一緒に……だからおやっさん。

俺達とこの世界を信じてくれ。

もう涙を拭えるのはアンタ一人だけじゃないんだからさ。」

 

そう告げられた荘吉は小さく笑う。

「ふっ……お前の拳がこんなに効くとはどうやら俺は臆病風に吹かれてたらしいな。」

立ち上がった荘吉は翔太郎に尋ねる。

 

「翔太郎、そのタキシードを借りても良いか?

持ってき忘れてしまってな。」

「あぁ!勿論。

好きに使ってくれ。」

 

そして、翔太郎と荘吉は衣装室で服を交換する。

「父親が帽子を被るのはマナーが悪いな。」

そう言って荘吉は翔太郎に自分の白い帽子を差し出す。

「分かった。

式が終わるまで預かっておくよ。」

 

それを聞いた荘吉はその言葉を否定する。

「いや、お前にやる。

言ったろう帽子の似合う男になれと……お前にこの街とその帽子を託す。」

「おやっさん……」

 

荘吉は衣装室から出る前に言った。

「デカくなったな翔太郎。

お前にはその帽子がよく似合うぞ。」

顔を見ずに告げられた本音の言葉を聞いた翔太郎が涙を堪えられぬまま感動しているのを他所に荘吉は式場へと足を進めた。

 

 

 

荘吉は大切な記憶を思い出させる様にまた自分も思い出しながら順平に語り続ける。

「Nobody's Perfect……誰も完璧じゃない。

でも、だからこそ俺達人間は他者を思いやれる。

憎しみだけじゃない。

愛や慈しみを持って生きれるんだ。」 

 

「止めろぉぉぉぉぉ!?」

 

「Charge」

 

「ベイリングインパクト」

 

ベイルは焦りに身を任せ必殺技を発動させ荘吉を殴る。

狙うのは心臓……いくら、仮面ライダーと言えど致命傷は避けられない。

だが、荘吉は避けない。

 

「思い出せ順平!!

お前が掴みたかった者はこんな悪魔の手か?

本当に手に入れたい者は一体誰だ!!」

 

その瞬間、ベイルの放とうとした拳が当たるギリギリで止まる。

「まっ……まさか!?」

「うぉぉあぁぁぁぁ!!」

 

ベイルの支配を絶叫を上げながら抗った順平はそのままその拳でベイルドライバーを殴り付けた。

 

 

その衝撃で中にいた本体である悪魔ベイルは外に弾き出され順平は変身解除した。

倒れそうになる身体を荘吉が支える。

 

「漸くお目覚めかこの寝坊助。」

荘吉のジョークに順平は立ち上がりながら答える。

「起こすなら少しは優しくしろ。

全身痛くて仕方が無い。」

「ふっ……それだけ文句が出るなら問題ないな。」

 

荘吉が順平を起き上がらせると動揺しながらベイルが叫ぶ。

 

『何故だぁ!?

お前は私が完全に眠らせた筈だ……それを……どうして!!』

 

動揺しながらも順平を取り返そうと進むベイルをエターナルに変身した克己が止める。

「おっと!……もう良いだろうそろそろ俺も暴れさせて貰う。」

『邪魔をするなぁ!!』

 

ベイルは克己を倒そうと攻撃を加えるが克己はそれを巧みに躱しながら反撃を加えて順平達に近付かせない。

 

そうしていると幸実を連れた伊良部とNEVERのメンバー(レイカと京水)が研究所から出てくる。

 

順平を見つけた幸実は彼を抱き締める。

「元太!」

「幸実……良かった無事だったんだな。」

 

「うん、元太も無事で良かった。」

幸福を噛み締め抱き合う二人を見ながら京水は言った。

「あぁ、やっぱり良いわねぇ良いことをするって!!

気分も良いしテンション爆アゲよぉ!!」

その姿を冷めた目で見ながらレイカが尋ねる。

「あっそ……ところで芦原達から連絡はあった?」

「えぇ、どうやら面白い拾い物をしたらしいわよ。」

そう京水はレイカに告げるのだった。

 

 

陣頭指揮を取っていた筈のNOAHの所長である東山は焦りながら金庫から大量の書類とデータを手元のバックに詰めていた。

「こんな所でNOAHは……この研究は終わらない。

"バイスタンプシステム"の製造に必要なデータは揃った。

これがあれば何処ででも研究出来る。」

 

そうして、資料を集めていると後ろから眼鏡を掛けた一人の研究者が現れた。

「こんな所で何をしているんですか東山所長?」

そう聞いてきた男の名は"狩埼 真澄"(かりざき ますみ)

東山と共にバイスタンプと悪魔の研究を行なっていた科学者だった。

今、順平が使っているベイルドライバーの開発者でもある。

 

「狩埼……丁度いいお前も手伝え。

この資料を奴らにバレる前に運び出す。」

「それは……これまでの実験やベイルドライバーのデータですか?」

 

「そうだ。

研究所が襲撃されることを想定しマスターデータをここに保管していた。

これがアレばNOAHは何時でも再起出来る。」

東山は狩崎に口で説明しながらも資料をバックに詰めるのを止めない。

それ程までに情報を抜かれまいと必死だった。

そんな後ろ姿を見ていると扉をこじ開けてアサルトライフルと鉄の棒を携えた二人の傭兵が現れる。

 

芦原は資料を詰めている東山を見ると即座に発砲してバックを彼の手元から弾き飛ばした。

狩埼の近くにバックが落ちる。

それを見た東山は叫ぶ。

 

「狩崎、バックを死守しろ!」

「動くな!……動いたら打つ。」

 

芦原が狩崎に銃口を向けようとすると東山が懐から拳銃を取り出した。

「NOAHの研究員としての使命を思い出せ狩崎。

全ては我々の大いなる目的の為だ。」

「人間を悪魔に変えることの何が使命だ。」

 

「凡人には分かるまい我々の大義が崇高な目的を…」

「分かりたくもねぇ。

そんなクソみたいな計画なんざな!!」

 

堂本は怒りを声に乗せて叫ぶ。

それを見た狩崎は覚悟を決めた。

懐から銀色の試作品バイスタンプを取り出す。

「狩埼何をしている?」

「東山所長……僕はこれまで多くの人間を犠牲にしてきた。

その罪はどんな事をしても抗える物じゃない。

ですから……お供しますよ………"地獄"まで」

 

狩崎がバイスタンプをバックのある地面に落とすと中で爆発が起こり強烈な光と熱を発する。

その熱はバックを燃やし始めた。

 

「か……狩埼ぃぃぃい!!

「このスタンプは元々、自決用に持っていたんです。

中に入っているのは高密度に圧縮したテルミット剤です。

紙の資料は勿論の事、メモリーカードすら灰になります。」

 

「貴様ぁぁぁあ!!」

激昂した東山が狩崎に向けて銃を放つ。

芦原も東山に向けて弾を放った。

 

東山は頭部に銃弾を受ける即死しそのまま地面に倒れ込む。

一方、狩埼に向けられて放たれた弾丸は堂本が棒を巧みに操り弾丸を弾く事で防いだ。

それを見て狩崎が尋ねる。

 

「どうして?」

「さぁな。

お前をここで殺しちゃいけねぇと俺の勘が言ってたんでな。

左手に突っ込んでるポケットの中身のせいかもな。」

 

芦原が狩崎の左手を抜くとそこには一枚の写真が入っていた。

狩崎が愛する息子と撮った一枚の写真。

それを見た芦原も納得する。

 

「成る程……それがお前が罪を数える覚悟をした理由か。」

「罪を数えるですか……確かにそうかも知れない。

僕の息子は僕に似て発明が得意なんです。

そんな息子に今の自分がやっている事を……胸を張って言えない。

順平さんと出会い本当にそう思った……余りにも遅すぎますが」

 

「でも、分かったんだろう?

ならば子供に誇れる自分になれる様に今から頑張れば良い。

……俺もそうした。」

「子供に誇れる……」

 

狩崎は芦原に目を向ける。

「貴方達の目的はNOAHの壊滅と順平さんの救出ですよね?

今彼は何処に?」

「俺の仲間がその男の中にいる悪魔を分離させて倒そうとしている。」

 

「それは駄目です!!

宿主である人間と悪魔は繋がっている。

もし、ここでベイルを殺せば順平さんも死ぬ事になります。」

「ならどうすれば……」

 

そう言うと狩崎は真っ直ぐ二人を見つめながら言った。

「僕に一つ考えがあります。

協力してくれませんか?」

 

狩崎はそう言って二人を連れて自分の研究室に急いで戻るのだった。

 

外伝 続編の投稿に関して

  • このまま続きで見たい
  • 新規投稿で見やすくしたい
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。