黒岩と無名の戦いが終わった水音町の夜....
そんな中で一人の男が血塗れの状態で走っていた。
息が切れて今にも倒れそうだが、構いはしない。
あの悪魔から逃げるためなら何だってする!
きっかけは天井に貼り付けられた仲間の死体と悪魔の姿を見た時だ。
あまりの恐怖に声を上げてしまう。
「うわぁぁぁぁ!」
「なっ、何だ?」
その声に反応した仲間がこちらに駆け寄るが、
こちらに到着することはなかった。
背後から腕で胸を貫かれその血と臓物が最後の一人である俺にかかった。
そして俺はその恐怖から逃れるため人質を無視してビルから逃げたのだ。
路地裏に逃げ人気の無い場所に向かう。
俺の手には三本のメモリが握られていた。
偶然、拾うことが出来た同じイニシャルの入ったメモリ。
それを持って逃げ回っていたが突如背後から光が見えると上からコンクリートが降ってきて道を塞がれてしまった。
逃げ道はもう無い。
後ろからはゆっくりと近づいてくるあの悪魔がいた。
人のいない夜の闇の中で起こる悪夢...覚める手段は何もない。
(マッタク...テコズラセル。)
リーゼは最後の敵を追い詰めるとそう思った。
無名から頼まれた人質の救出....コンピュータードーパントの残したエネルギーの痕跡から人質の場所を特定したまでは良いが、予想よりも人間がひ弱だったのを忘れていたリーゼは敵が逃亡するのを許してしまった。
腰に止めているタブレットで人質の場所を添付したメールを黒岩や無名に送ったから、後はこの男を仕留めれば、仕事は完了だ。
ガイアメモリの影響により知能が上がったリーゼはピグミーマーモーセットと呼ばれる小猿でありながら、人間クラスの知能と思考能力を得ていた。
発声機関が未熟なため言葉は話せないが、
それでも思考には言語が使われている。
(コイツヲ、ハヤクシマツシテカエロウ。)
そう考えていたが、現実が自分の思うように進まないことをリーゼは知っていた。
男は持っていたメモリの1つを起動した。
「
メモリを差し込むと身体から木の幹が生え巻き付くと怪物へと変身した。
そのまま、リーゼへと向かっていく。
リーゼは向かってきたドーパントの腕を掴むと腕力に任せて引きちぎった。
「ぐぎやぁぁぁあ!」
ドーパントは痛みからのたうち回るが暫くすると千切れた箇所から木が生えて腕が再生した。
(コイツ....サイセイノウリョクガアルノカ。)
リーゼが警戒度を上げるとドーパントはもう1つのメモリを取り出すと起動した。
「
そして、先程と同じようにメモリを身体に挿す。
すると、メモリは身体に全て入らず"半分だけ入った状態"で少し止まるがその後、身体に吸収された。
すると、ドーパントの身体を更に木が覆い巨大になっていく。
大きさがリーゼを超えると下にいるリーゼをドーパントが睨む。
「もっとだ....もっと"力"がぁぁぁ!」
もう姿だけでなく声すらも変わってしまったがまだ強くなる為、大きくなったドーパントは身体から生えた木でメモリを持つと起動した。
「
そして、メモリを差し込むがそこに付いていた生体コネクターから火花が上がる。
だが、それを無視して無理矢理メモリを突っ込むとメモリは吸収され、身体から生えている木が黒く変色する。
大規模な身体の変質が起こりそれは辺りの建物にも伝播する。
黒い木が放射状に広がりリーゼに向かってくる。
それを腕で叩き落とすがその際、火花が上がる。
(コレハ....フツウノ"木"ジャナイ)
リーゼは背中の翼を広げると空中に退避する。
サイカッドメモリ.....ソテツの記憶を宿したメモリ。
通常このメモリが持つ力は欠損した肉体をある程度治せる"再生能力"だけだったが、三つの計算外がこの人間を強くした。
1つは、この人間とサイカッドメモリの適合率が高く一本だけならそこまでメモリの毒素の影響を受けなかったこと
もう1つは試作品の簡易型コネクターにはメモリの個人登録機能がなくメモリの使い回しが可能だったこと
最後は、彼がサイカッドメモリを三本所持していた事である。
この三つの計算外が彼を黒い樹木の怪物へと変身させたのだ。
ソテツは蘇鉄と表記される...それは何故か?
この植物は幹に鉄を打ち込むと木が復活したと言う話から由来されている。
そう....このメモリは鉄を吸収できるのだ。
度重なる同種メモリの使用により肉体に蓄積されたソテツの記憶が鉄と反応しメモリに変化が起きた。
"鋼鉄の性質を備えた木"のドーパントとなったのだ。
「グオァァァァ!...シネェェェ!」
くぐもった声を発しながら黒い樹木の塊となったドーパントが空中にいるリーゼに向かって木片を飛ばす。
鋼鉄の硬さを持った木片が高速で襲ってくる。
(ホントウニヤッカイダ。)
リーゼは攻撃をかわしながらドーパントに攻撃を加えようとするがリーゼの鋭い爪でも火花が上がる程度で傷1つ付かない。
すると、背後から現れた樹木への反応が遅れたリーゼは木の成長に巻き込まれ身動きが取れなくなってしまう。
「トドメダァァァ!」
螺旋状に変形した木がリーゼに向かって飛んでくる。
そこで木により拘束されたリーゼの怒りが、限界に達した。
(オゴルナヨ...人間ガァァァ!)
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