もう一人の悪魔   作:多趣味の男

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Another side

「はい、もう大丈夫ですよ。」
笑顔で告げると少年は笑顔で私に言った。
「"井坂先生"ありがとう。」

「どういたしまして、軽い風邪でしたからもう安心ですよお母さん。」
そう言うと母親も安心したように笑う。
そうして私が微笑んでいると少年が尋ねた。

「井坂先生は僕が病気じゃなくなって嬉しいの?」
「あぁ、勿論。(違うよ。)
そう言うと少年と母親は嬉しそうに帰っていった。
私があの二人を見て笑ったのはちょうどこの前、"焼き殺した子供と親"にそっくりだったからだ。

井坂 深紅郎(いさか しんくろう)
表の仕事は、井坂内科医院を営む評判の良い開業医であるが裏ではドーパント専門の闇医者をしているマッドサイエンティスト。
日夜メモリの研究を欠かしたことはない彼はメモリを使いこれまで何人もの人間を殺害してきた。

全てはあの日見た恐怖の帝王....あの男の使っていたメモリを手にする為に

ここ数日、彼はとある噂を調査していた。
水音町に怪物が複数出現した...そんな噂だ。

井坂は時計を確認する。
もう患者が来る心配はないだろう。
ならば、真相を確かめなければ....
井坂は白衣を脱ぎ黒いスーツに着替えると水音町に向かうのだった。


第三十三話 巡りあうS/復讐の剣

計画を聞いた琉兵衛は偽装工作としてディガルコーポレーションを経由して二人と会うことを提案してきた。

 

"ディガルコーポレーション"は風都に存在するIT企業で裏ではガイアメモリの流通と人体実験を風都で行っていた。

因みに社長は園咲 冴子だ。

僕はそこで琉兵衛に進言し、二人に会う際にとある人物を借りたいと提案した。

疑問は出たもののこれまでの無名の功績のおかげもあり琉兵衛から簡単に許可が降りた。

 

そうして、会合を終えると反省しているリーゼを連れて園咲邸を後にした。

すると、そこで携帯に着信がかかる。

開くと黒岩からメールが入っていた。

実は黒岩とはあの一件以降、僕とサラの二人である契約を結んでいた。

それは"僕らの依頼を叶える代わりに娘と妻の治療を手助けする"と言うものだ。

 

治療にサラの部下である美頭の持つスフィンクスメモリが必要だった為、彼女を巻き込んだ。

結論として快く協力してもらった。

この前の一件の礼もあるだろうが、俺と獅子神どちらと組む方が得か考えての行動なのだろう。

 

結果、娘は意識を取り戻し妻も順調に回復している。

今も病院でリハビリを行っているそうだ。

サラが黒岩に何を求めたのかは知らないが僕が彼に求めたのは情報だった。

"定期的にドーパントになってとある人物を探してもらう"その条件を彼に頼んだ。

 

そうしてどうやら成果があったようだ。

メールにはこう書かれていた。

『探している人物を見つけた。

今は水音町にいるようだ...と』

 

僕は水音町に向かった。

彼女....."シュラウド"に会うために

 

 

 

Another side

 

シュラウドが水音町に来ていたのは復讐に燃える男。

照井 竜(てるい りゅう)に会うためである。

鳴海荘吉に変わり来人と共に園咲 琉兵衛を倒せる存在、そんな彼の復讐心を育てつつ強くするのが彼女の目的だった。

今回は完成した武器を彼に渡す為、ここに呼び出した。

 

少し待っていると上下真っ赤なライダースーツに身を包んだ男がやってきた。

「完成したのか?」

その問いにシュラウドが指を指すとその場所に火が上がり一本の剣が現れる。

「これは?」

「"エンジンブレード"。メモリを使って戦う武器よ。

これがあればドーパントにダメージを与えられる。」

 

「俺はまだお前の言う仮面ライダーにはなれないのか?」

照井の問いにシュラウドは答える。

「まだ、ダメ。

もっと憎しみの力が無ければ....」

照井は文句を言いたそうだったがエンジンブレードに触れ地面から抜こうとするが抜けなかった。

「これは!?何て重さだ!」

「これぐらい使いこなせないようじゃWのメモリを持つ者には勝てないわよ。」

 

その言葉を受けると照井の表情は怒りに歪み力任せに剣を引き抜いた。

「使いこなして見せる....必ず!」

「良い覚悟ね...これもあげるわ。

その剣に指すことで力を発揮するメモリよ。」

そう言うとシュラウドは「E」のイニシャルが入ったメモリを照井に投げ付けると姿を消した。

 

(まだ、この男を来人に会わせるのは早い。)

私が唯一信頼していた鳴海壮吉は来人を助けるために死んだ。

今は弟子であった男が来人を守ってはいるが、あの男では恐怖の帝王には勝てない。

だからこそ、照井 竜が完璧に仕上がるまで代わりに戦ってもらう。

例え壊れても構わない....来人が無事ならばそれで良い。

来人はあの事件の影響で自分の記憶を失くし、フィリップと名乗っている。

けど、暫くはそれで良いのかもしれない。

記憶を失くしているのなら園咲 琉兵衛に気付かれる危険性は減る。

唯一の懸念点は新しく幹部になった三人の存在だ。

 

家族以外信じてこなかった琉兵衛が初めて認めた他人の幹部。

そんな彼等の功績は凄まじい。

先ずこの水音町は"サラ"と呼ばれる幹部のテリトリーでここでもメモリの販売や実験は行われているがそれは表沙汰になったことはない。

どうやら、権力者と強いパイプがあるのか警察官である照井でさえ迂闊に捜査が出来ないでいた。

 

そして、もう一人獅子神と呼ばれる存在。

風都の財閥である獅子神家の現当主である彼は、天ノ川市でガイアメモリの取引を行っている。

そして、"レオグループ"と呼ばれる会社を作り続々と傘下を増やしていった。

最近では宇宙関係の研究にも資金を提供している。

 

だが、それよりも危険だと思っているのは無名と言う男だ。

幹部の中でガイアメモリ流通の仕事をしておらず研究者もして活躍しているがその功績は尋常な物ではない。

新型のガイアドライバーの開発、最近ではドーパントの強化にギジメモリまで作り出していた。

はっきり言ってこの男は危険すぎる。

私が琉兵衛の元を離れたのは来人を助けるためだが、それ以上に私がいなければ琉兵衛の計画が進まなくなる確信があったからだ。

 

彼はガイアメモリについて詳しくても、あくまで歴史学的観点からでしか見ることはできない。

ガイアメモリに精通し実際に開発できる人物は私だけの筈だった。

だからこそ、あの時に捕まえるもしくは殺せなかった事が悔やまれた。

 

そんな事を考えていると付近の警戒のため展開していたメモリガジェットの一体が警告音を発する。

誰かが私に接近してきたのだ。

「誰?」

その問いに昔よりも成長した男が答えた。

「お久しぶり....いや、"初めまして"の方が良いですかね?

シュラウドさん。」

そう言うと無名が私の前に現れるのだった。

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