もう一人の悪魔   作:多趣味の男

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第三十六話 Wとの対決/現れる魔

井坂は目の前の現状を理解出来ないでいた。

確かに無名は私の攻撃を受けて動けなくなっていた筈なのに今の彼にはダメージが全く無かったのだ。

 

「貴方にはかなりのダメージを与えた筈ですが、

それもメモリの能力ですか?」

それに対して無名は答える。

『井坂 深紅郎....ガイアメモリの狂気に取りつかれた悪魔....か、過分な評価を受けているな?』

まるで、私の情報を今、見たかのような発言をする彼に私は尚更興味を持った。

 

「面白いですねぇ貴方のメモリは...やはり使ってみたい。貴方を殺してでもね!」

そう言って攻撃しようとするが身体がピクリとも動かなくなった。

正確には両手足が縛られたかの様な体勢になる。

その姿は十字架に張り付けにされたようだった。

「こっ...れは...いっ..たい?」

『君の周りの重力の指向性のバランスを消したんだ。そのせいで君の身体はこの世界から弾かれた存在となっている..それだけだよ。』

 

『本当は"出てくるつもり"は無かったんだが、彼を殺されるのは困るのでね。余計な手出しをさせてもらうついでに....』

 

『この身体に傷をつけた罰も与えよう。』

 

無名はそう言って指を上に向けると空が一気に暗くなった。

町にある街灯や月の明かりすら無くなってしまったのだ。

「なっ!お前も天候を操ることが出来るのか!」

井坂の問いに無名は答える。

『違う、空を見てみたまえ。私はただ、空と黒炎を入れ換えただけだ。』

『時に質問だが井坂 深紅郎。』

 

 

『"黒炎の雨"に打たれた事はあるかね?』

 

そう言うと空に流れる黒炎から細長い水滴の様な何かが降ってくる。

それが井坂の身体に当たると黒い炎が巻き上がった。

「ぐっぐぁぁぁぁ!」

『黒炎を凝縮させた雨だ。ゆっくりと苦しみながら死ぬといい。』

 

黒炎の雨は井坂の周りでのみ降り続ける。

その雨が当たる度に井坂の身体を焼き尽くしていく。

ダメージの限界が来てメモリが破壊されても雨は続き、井坂の絶叫が響き渡る。

そして、ピクリとも動かなくなり命が失われた時にシュラウドが現れた。

 

そして、無名を見るや銃を向ける。

 

「貴方は一体誰?」

シュラウドの問いに無名は笑う。

『そんな事を知ったところで意味は無い園咲文音、その情報は君の知る必要が無い事だ。』

 

そう言うと井坂のいた方向に無名は目を向ける。

それに合わせてシュラウドも井坂の遺体を確認しようとするがそこに遺体は無かった。

 

「どういうこと!井坂は確かに貴方の手により死んだ筈よ。」

『そんな事をすれば物語が変わってしまうからね。彼には罰も与えたから"書き換えた"のだ。』

 

「書き換える?どういうこと?」

 

『君にヒントを上げよう園咲 文音。私は君や鳴海壮吉と何度も会った事があるのだよ。君達がその記憶を失くしているだけでね。』

 

その言葉を受けてシュラウドは考えた。精神操作系の能力なら何らかの異常が必ず起こる筈、何度も会っているのなら無名を見た瞬間、違和感があっても不思議ではないのに無かった。

まるで"そんな歴史その物が無くなった"かのように...

 

歴史?....無名は言っていた「書き換えた」と...

まさか!? あり得ない、そんな能力が存在していい筈が無い!

シュラウドが目の前の悪魔に目を向ける。

きっと彼は私が真実を知ったことが分かったのだろう。

"笑っていた"。

 

 

「まさか....貴方は記憶を!?」

 

『ではサヨウナラ園咲 文音。また"会い"ましょう。』

そう言うとシュラウドも"姿を消す"のだった。

 

 

 

無名は白い空間に本が大量に並ぶ世界に足を踏み入れた。

正確には無名ではなく原初の魔神なのだがそんな事はどうでもいい。

 

無名は部屋に向かって呟いた。

『検索対象....記憶

キーワード"シュラウド" "井坂深紅郎" "無名" "水音町"』

すると、本棚が動き一冊の本が現れる。

表紙には「memory」と記載されている。

中を捲りながら探してるページを探す。

 

『あった』

そこにはあの時に起きた事態が事細かく書いてあった。

 

【井坂深紅郎は無名による攻撃で死亡し、それをシュラウドに目撃された。】

無名は羽根ペンを取り出すと黒い炎を纏わせてその部分を書き直した。

 

【井坂深紅郎は風都で急患を見ており水音町に現れず、無名とシュラウドは無事取引を終えて協力関係を結んだ。】

 

そう書き終えた本を無名が手放すと、その本は本棚にしまわれ、記憶の"改変"が行われた。

そして、少しすると本棚はいつもと同じく正常に稼働し、全てを正しく誤認して動き始めた。

 

一仕事を終えた無名はさっきのシュラウドの表情を思い出し笑う。

やはり、彼女は変わらない。

 

"園咲家の人間を皆殺しにした時も"

"来人がNEVERになった時も"

"左 翔太郎にその命を奪われた時も"

 

いつも、気付くのが遅い。

 

その度に僕が書き換えながら物語を楽しんでいることにも気付かず、彼等は自分達がこの世界を作り出していると本気で思っている。

 

愚かで傲慢な人間よ....故に愛おしくも面白い。

 

だからこそ、期待しているよ無名()

もっともっとこの世界を面白くしてくれ。

そして、僕を.......

 

 

 

『もっと"笑顔"にしておくれ。』




勇気とは、恐怖に抵抗することであり、恐怖を克服することである。恐怖を抱かないことではない。

~マーク・トウェイン~

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