もう一人の悪魔   作:多趣味の男

43 / 330
第四十話 不運なN/調節された死闘

霧彦は三人の幹部を前に冷静に考えていた。

先ず第一に霧彦はこの三人の幹部に会ったこともなければ手合わせしたこともない。

 

元々、風都以外のメモリ販売の開拓を担当していた二人と孤島で研究をずっとしていると噂の幹部だ。

会うことすら難しいだろう。

 

私はドライバーを腰に付けるとナスカメモリを見る。

ナスカメモリを受け取ってから何度か使用したが同じランクのメモリを相手に戦えるかと言えば不安が残った。

 

故に戦う敵を選別しなければならない。

これは最後の試験だ。クリアすれば冴子と結婚し園咲の人間として迎えられる。

 

考えることはメモリの能力とナスカの相性が良さそうな相手を探すことだ。

普通ならレオメモリを選ぶだろう。

他のメモリはゴーゴンやデーモンと言った空想の産物が記憶となっているのだろう。

故に能力が読めない。

 

だがレオメモリは獅子の記憶を持ちながらゴールドクラスの能力を有している。

つまり、想像し得ない強大な力が隠されていると言うことだ。

リスクが高い。

 

次に気になるのはゴーゴンメモリだ。

ゴーゴン確か瞳を見たものを石に変える怪物か。

もし、本当にそのままの能力を持っていれば変身した瞬間に勝負が付いてしまう。

このメモリもリスクが高いな。

 

残るはデーモンメモリ。

デーモン...悪魔か?

こちらも能力は分かりづらいが翼が生えて炎を操るイメージがある。

三つの中なら"コイツ"だな。

「そこのデーモンメモリの青年。

君に相手を頼もうかな。」

「僕の名前は無名ですよ霧彦さん。」

そう言うと無名はメモリを装填し変身するのだった。

 

 

 

僕の持つ園咲霧彦のイメージはガイアメモリの魅力に取りつかれながらも外道にはなれなかった悪役というイメージだ。

出会いが早ければ正義の味方にもなれたそんな男だ。

だからこそ、彼が退場した時は悲しかった。

そして妹である須藤雪絵の登場。

あのストーリーは感動する良い話だがだからこそあの、バッドエンディングに納得が言ってなかった。

 

ここまで言えば分かるだろうが須藤霧彦、須藤雪絵は僕が助けたいと思っている人達であった。

だからこそ、この戦いは手を抜けないが、だからと言って本気で相手をしたくもない。そんな複雑な気分だった。

琉兵衛の前だからこそ手を抜いたら警戒される。

(仕方ない霧彦には苦労をして貰おう。)

そう決めるとデーモンドーパントとなった無名は霧彦と向かいあった。

 

霧彦は持っていたメモリを起動する。

Nasca(ナスカ)

そして、メモリをドライバーに挿すとナスカドーパントへの変身が完了する。

先制は霧彦からだった。手に集めたエネルギー弾を無名に放つ。

無名はそれを上空に蹴り飛ばした。

「ここの庭園は綺麗でお気に入りなんです。

よろしければこれで決着をつけませんか?」

そう言うと無名は刀を生成した。

「良いだろう。」

霧彦もそれに同調しナスカブレードを取り出すとお互いに斬り合い始めた。

 

霧彦は、素早い連撃で無名を追い詰めようとするが回避され一瞬の隙をついた抜刀をナスカブレードで受け止めるがその力に耐えきれず吹き飛ばされる。

「ぐっ!ならばこれはどうだ!」

ナスカウィングを広げて霧彦は空中から無名に攻撃を仕掛ける。

前よりも速度の上がった攻撃は無名も回避できないのか刀で攻撃を受けていく。

 

その戦闘を見ていた琉兵衛は獅子神に尋ねた。

「君の目から見て霧彦くんはどうかね?」

「メモリを渡されて時間がない割には良く使いこなしているとは思います。

しかし、だからと言って無名に有効打を与えられるとは思えませんね。」

「意外だね、君は無名くんを嫌っていたと思ったのだが」

「否定はしません。

ですが、それと強さは関係ありません。

無名は少なくとも幹部として認められるくらいには戦える奴です....気にくわないですがね。」

 

ここで、琉兵衛への説明を終えたが獅子神には無名が本気で戦ってないことが分かっていた。

(余裕かます暇があるならさっさとぶち殺せば良いものを、何がしたいんだアイツは?)

無名の意図が読めず獅子神はただ戦いを静観していた。

 

そして、その戦いを見ていた若菜は二人の強さに驚いていた。

(何だ?お互いにやるじゃない。)

霧彦は勿論だが無名とはミックとリーゼを通じてしか会ったことも話したこともなかった。

私が風都のアイドルとしてラジオ番組を受け持った時はケーキと花束を送ってくれたから、それなりに気が利くのは知っていたがここまで戦えるとは思っても見なかった。

 

膠着する戦いに霧彦は焦りを覚える。

(このままでは埒が明かない。

仕方がない....こちらから仕掛けるか!)

そう決めると霧彦はこれまでと違い仕留めるつもりで空中から剣を持ち急降下した。

その攻撃を受けて無名の武器は砕けて吹き飛ばされる。

(良しこのままっ...何!?)

霧彦は足に黒い鎖が巻かれている事に気が付いた。

良く見ると刀が砕かれたように見せかけて、鎖に姿を変えているのが分かる。

「捕まえましたよ。」

無名はその鎖を掴むと思いっきり地面に向かって叩き付けた。

それに追従するように私も地面に激突する。

そして、このまま弧を描く様に身体を地面で削られるとそのまま鎖で持ち上げられ地面に再度打ち付けられた。

 

そのダメージから展開していたウィングとブレードが壊れ霧彦の身体にも損傷が起きる。

そんな霧彦の姿を見て無名は言った。

「こんな程度ですか?

そんなんじゃ園咲家の一員になるなんて夢のまた夢ですよ。」

「なん....だと!」

「憤る力が残ってるなら早く立った方がいい。

でないと本気で死にますよ。」

そう言うともう一度鎖を上空へ振り上げる。

それに追従するように霧彦も空へ浮かぶ。

そして、その勢いのまま地面に振り下ろされた。

 

霧彦の頭に死のビジョンが浮かぶ。

(死にたくない!私にはまだやることが....)

そこで妹の顔が浮かぶ。

たった一言「お兄ちゃん」と笑顔で私を呼ぶその姿が...私が身体に力を込めるとその思いにメモリが答えた。

私の身体は地面にぶつけられるより速く動き、気が付くと折れたナスカブレードを無名の首もとへ向けていた。

すると、無名は両手を上げて私に言った。

 

 

「参りました。

貴方の勝ちです....構いませんよね琉兵衛様。」

その姿に琉兵衛は笑顔で答える。

 

「これで文句はないよ霧彦くん。」




Another side

琉兵衛が霧彦に三幹部との戦いを求めたのには理由がある一つは霧彦がナスカメモリのレベルを上げられる存在か見極めること

そしてもう一つは幹部達の実力を確認することだった。
特に無名....彼の力は確認しておきたかった。
恐らくだが彼には私の恐怖の力は効いていない。
文音が過去に言っていた精神攻撃に対する耐性があるのだろう。
確かに、幹部にはワードメモリによる制約により我々への反抗は出来ないようにしたが、どうも胸騒ぎがする。

まるで、何かを見逃しているような....もしくは忘れているようなそんな感覚だ。
だからこそ、霧彦くんと無名くんの戦いは興味深かった。

お互いに死力を尽くし霧彦くんはナスカのレベル2の力である"超高速"を使うことが出来た。
初期型のガイアドライバーでだ。
そう、霧彦くんに与えたのは無名が作ったガイアドライバーⅡではなく過去に私達が使っていたドライバーだったのだ。

恐らく、この一戦によりメモリの適合が早まるだろう。
その分、毒素も強くなり彼の命を蝕む。
だが、そのお陰でナスカメモリの謎が分かるのだ。

冴子が霧彦を婿に選んだ時は少し驚いた。
私は獅子神や無名の様な男を選ぶと思っていたからだ。

だが、構わない。
我がミュージアムにとって有用な存在ならば、
この男を家族として向かえよう。


例え、その先の未来が悲しい結末だとしても....

外伝 続編の投稿に関して

  • このまま続きで見たい
  • 新規投稿で見やすくしたい
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。