「素晴らしい手際ね無名。
お陰でこちらの被害は最小限で済んだわ。」
そう言ってディガルコーポレーションに通された無名は冴子と共にテレビを見ている。
そこには誘拐された楠原親子が救出されたこと、
そして楠原みやびが市議会議員を辞めて風都第二タワー建設の後任に同じ市議会議員である
「取り敢えずはこれで暫くは大丈夫でしょう。
あの地下についてもバレる心配はないと思います。」
「そうね。雨ヶ崎なら上手くやるでしょうね。」
「ご苦労だったわ。もう帰って良いわよ。」
その冴子からの言葉に無名は従おうとするが、足を止めると冴子に尋ねた。
「そう言えば助けた鷹村ですが、一体どうなさるのですか?」
「それも問題ないわ。
彼はもう二度と失敗できない...いや失敗を心配する必要が無い姿に変わってるわ。」
その予想できた結末を聞いた無名は静かに笑うと部屋を後にするのだった。
「クソッ!」
翔太郎が怒りに任せてラボの壁を殴った。
「落ち着きなよ翔太郎。」
その姿を見たフィリップが宥めるが治まる気配はない。
「これが落ち着いていられるかよ!」
そう言って地面に投げ捨てた新聞には、鷹村がビルから飛び降りて自殺した記事が書かれていた。
「あの時、俺がもっとヤツの事を気に掛けていたら死なせることも無かったかもしんないんだぞ!」
「けど、そうしたら楠原親子が死んでいたかもしれない。
起こってしまった事実は変えられないんだよ翔太郎。」
「敵のメモリについて調べてみた。
微かに見えた特徴から相手のメモリは恐らくシャークメモリだ。」
フィリップは地球の記憶が全て納められた空間、
通称"星の本棚"に入り検索を行うことが出来る。
今回もその力で襲ってきた敵のメモリについて調べていたのだ。
「シャークって鮫の事だろ?
あんな高速で移動できる能力があるなんて知らなかったぞ。」
「いや、それは違う。」
フィリップの否定に翔太郎が尋ねる。
「あ?どう言うことだ?」
「文字通り違うんだよ。
シャークメモリに高速で移動する力は無い。
水中を速く泳ぐことは出来てもルナの追尾弾やサイクロンの弾を避けられる速度は無い筈なんだ。」
「じゃあ、あれは何だったんだ?」
「分からない...組織の新しい実験かそれとも検索内容が違うのか、全くの手詰まりだよ翔太郎。」
その言葉に翔太郎は驚いた。
知識の権化と言えるフィリップですら知らない能力。
星の本棚を使っても分からなかった事実に翔太郎は黙り込んだ。
「だが、このままじゃ終わらせねぇ!
もうこれ以上、組織の犠牲者を増やすのはまっぴらだ。」
「あぁ、分かっているよ翔太郎。」
そこでフィリップはあることに気付いた。
「そう言えば亜樹子ちゃんは?」
「あぁ、アイツは葛原親子の所に行ったよ。
襲われる心配はないだろうけど用心のためにってな。」
「そう。」
そこで翔太郎は空気を変えるために別の話をする。
「そう言えば第二風都タワーの話知ってるか?
後任になった新しい議員が町の風景にも配慮した新しい施設にして建てるんだってよ。
正直、あの見た目はあの親子には悪いが俺もちょっと文句があったからな。
そこが上手く纏まって安心したぜ。」
「ふーん、僕には興味がないね。」
そう言うとフィリップは研究に戻り、翔太郎はそんなフィリップを笑いながら見るのだった。
その日の夜、冴子と霧彦のニ人がレストランで食事をしていると、一人の男が現れた。二人が待っていた人物であり、今回の事件を終息させた立役者の一人である雨ヶ崎天十郎だった。
「失礼、遅れてしまいましたかな?」
「いいえ、構いませんわ。
どうぞお座りになって。」
冴子に促されるがまま天十郎は椅子に座る。
「今回はありがとうございました。
お陰で厄介事から解放されましたわ。」
「それは良かったです。
個人的にも第二風都タワーの見た目は気に入らなかったんです。」
「それに風都の象徴は風都タワーと貴女方の作る商品で充分ですからね。」
「それで、今回私を呼んだ理由を伺っても?」
「実は、その商品に関することなのです。
天ノ川地区で最近、メモリととある薬をばら蒔いている組織があります。
その組織の名は"セブンス"。七つの組織が合体して生まれた複合組織だそうです。
そいつらは"メモリ"と"エンゼルビゼラ"と呼ばれるメモリ併用を目的とした薬を共に撒いているんですよ。」
「成る程、しかしそれはそちらの組織が行っている事でしょう?
ならば問題ありますまい。」
天十郎の言葉を霧彦が否定する。
「そうはいかない。その薬は組織でもまだ実験段階の代物だ。
しかも、年端もいかない子供が犠牲になっているんだぞ!」
激情に駆られた顔で霧彦は天十郎を睨むが、彼は全く関係ないと言う顔で続けた。
「つまりは試作段階の薬を奪われて挙げ句の果てに売られてしまったと、そう言いたいわけですか?
ご自分達の組織の汚点を話されても私は何にも出来ませんよ。」
「貴様っ!」
霧彦の動きを冴子が目で止める。
「確かにこのままなら組織の汚点の話ね。
まぁ、そんな独断行動をした奴らは"始末"したけど....
問題はここからなのよ。」
「そのセブンスを仕切っている男の名前が分かったの。
そんな偶然あるのかしら?」
天十郎の動きが止まり少し考えため息を吐くと答えた。
「偶然ではありません。
雨ヶ崎灯夜は私の"愚息"です。」
初めて天十郎の顔が苦々しくなった。
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