もう一人の悪魔   作:多趣味の男

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第六十八話 嘘つきのL/道化の末路

ライアードーパントが倒された町には仮初めの平和が戻った。

ジミーも自分の歌う理由を見つけて元気でやっているし、応援していたゆきほさんとも付き合ったらしい。まさに、ハッピーエンドと言っても良い結末だが照井と翔太郎、フィリップの顔色は悪い。

 

フィリップが後に検索して出た結論は、戦闘中に浴びたあの爆発に幻覚作用を及ぼす成分が入っていてその影響を俺達は受けたと言うことらしい。

しかも、その幻覚を及ぼす範囲は大きい爆発を浴びた俺は兎も角、精神的にリンクしていたフィリップにまで同様の幻覚作用を与えていた。洗脳レベルならライアーと同等かもしれない。

 

しかも、ライアーと違いこっちは爆発した成分を浴びれば洗脳できる分、完全な上位互換だろう。

そして、このドーパントも過去のアノマロカリスと同じくメモリの検索は出来なかった。

そして、照井も表情が暗い。

自分が相手をしたドーパントに足止めされなければ沢田を捕まえることが出来たかもしれないからだ。

 

そう、沢田はあれ以降見つかっていない。

生きているのか死んでいるのかさえ分からないのだ。

 

「それで照井の相手をしたドーパントについては何か分かったのかフィリップ?」

翔太郎の問いに首を横にふる。

「全くだ....照井がイールチャンネルで録画したドーパントとの戦闘記録を元に検索したんだが、

あんな"武器と生物が融合した"ようなメモリは存在しなかった。」

照井の持ってきた映像には爬虫類の様な皮膚を持ち右腕が変形したドーパントとの戦闘映像が写っていた。

 

「爬虫類の所だけ見ればメモリは"リザード"だろう。

だが、この腕が分からない。」

そこには機械的なパーツを生物の外骨格で再現したチェーンソーの様な武器が映っていた。

「シュラウドからメモリと適合率が高いと新たな能力が得られる場合があると聞いたが、これはそうではないのか?」

「確かにそれは事実だが、こんな類似性の無い変化はしない。

過去に戦ったアイスエイジも川の水を操り氷に変える等必ず元のメモリと関連性のある力が覚醒していた。」

 

「爬虫類にあんな進化点が存在しない以上、これは人為的に後付けされたシステムと言うことになる。」

「一体何なんだ?コイツらは」

「分からない....だが次は負けない。」

フィリップは意気込んでいた。

Wが二度も同じシステムを持つであろうメモリの使い手に負けた。

翔太郎と同じくらいフィリップも悔しい思いをしていたのだ。

そして、フィリップはポケットからアイスエイジの事件の時に狙撃された弾を取り出した。

調べてみると生物性の分泌物だと分かった。

しかも、意図的に無毒にしてあったのだ。

 

「この風都には"僕らの知らない力"を持ったドーパントがいる。

必ず突き止めてやる。」

その言葉に翔太郎と照井も同意するのだった。

 

 

 

「それじゃあ、もう電波塔の道化師とか言っていたドーパントが悪さをすることはないのね?」

若菜の問いに無名は答える。

「えぇ今頃、獅子神がきっちりとお灸を据えているでしょうから...」

「なら、良かったわ。

フーティックアイドルは私の癒しでもあるんだから...」

そう言って上機嫌になる若菜を無名は見つめる。

 

(このまま原作通りに進めば彼女は"地球の巫女"としての運命を生きていくことになる.....

それが本当に正しいことなのか?)

 

琉兵衛や冴子と違い若菜は組織のために行動する目的が無い。

親がミュージアムの創設者で自分が幹部に据えられたから仕方なくやっている....そんな印象だ。

 

だからこそ、これから起こる原作通りの結末が本当に正しいのか僕には分からない。

何も知らずフィリップと生きる未来を掴んでも良いのではないか?

そう無名は思いつつも口には出さない。

今、自分はミュージアムの幹部だ。

介入できる事柄にも限界がある.....

無名は初めてこれから先の未来に対して不安を募らせるのだった。

 

 

 

Another side

 

風都のビルの一角にレオグループが構える支社がある。

そこのトレーニングルームで獅子神が素手でサンドバッグを叩いていた。

ただ、一撃一撃に強く力と殺意を込めて放つ拳は人間の姿でありながらも強力で、何度もサンドバッグが宙に浮いた。

 

ドライバーのお陰によりメモリの適合率が上がった獅子神は漸く"90%"の領域に足を踏み入れた。

因みにサラの適合率は93%でありまだ獅子神は負けていた。

無名については知らないがきっと俺よりまだ高いのだろう。

その怒りをサンドバッグで発散させる。

殴り蹴り....それを数度繰り返していると携帯に着信が入る。

獅子神は携帯をとり電話を行う。

 

「首尾はどうだ紫米島?」

その問いに紫米島が答える。

「あぁ、順調に進んでる。

このまま行けば直ぐ試作品も作れるそうだ。」

「それは良いニュースだな。

無名から委託された時は腹がたったが、話を聞けば有益そうな道具じゃないか。」

 

「それは俺達でも使えるのか?」

「アクセサリーシステムとの併用か?

今は止めておけ、こう言った装置は実験動物にやらせるのに限る。」

「兎に角、状況は分かった。

お前も風都に戻ってこい。後の事は灯夜に任せる。」

そう言うと獅子神は携帯を切った。

 

サンドバッグに向き直ると思いっきり振り抜いた右ストレートで繋いでいた鎖が切れてサンドバッグが地面に倒れた。

すると、中から血が大量に溢れ出す。

「俺を虚仮にする奴は誰であろうと許さない。

俺こそが最強なんだ.....」

 

そう言うとトレーニングルームを後にした。

残ったのはサンドバックの中でその生涯を終えた、

 

沢田さちおの"死体"のみだった......

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