『蛮野の命令に疑問を抱かずに聞く?
それが俺達が自由になるために必要なのか?』
「えぇ、あの男は1度でも反旗を翻したら敵と認定します。
それは自分が作り出した貴方達も例外ではありません。
だから、蛮野が我々を裏切り行動を開始するまで彼にどんな命令を受けても遂行する"使いやすい道具"を演じて欲しいのです。」
『そうすれば蛮野は油断して我々が動けるタイミングが現れる....そう言うことですね?』
「その通りですブレンさん。
ただ、これはハート...貴方にとってはとても残酷な事をお願いしています。
蛮野から不本意な命令を受ける確率が高いからです。
それでもやってくれますか?」
無名の問いにハートは悩む。
その姿を心配するようにブレンとメディックは眺めている。
『俺達は友達が蛮野の支配から抜け出せるのならばどんなことでもする覚悟はある。
無名.....本当に俺達は自由になれるのか?』
「それは保証します。」
『分かったその時が来るまで俺は...いや俺達は、蛮野の道具を演じよう。』
ハートとブレンによりミーナ達から離された克己は、ハートが手を離すとナイフを取り出して構えた。
しかし、ハートとブレンは戦う構えを解いていた。
「どうした殺り合わないのか?」
『その必要はない。ブレンここなら良いか?』
『はい、ここなら蛮野に気付かれる心配はありません。』
『そうか....大道克己、先程の非礼を詫びる。
俺達は蛮野から自由になるために無名と取引をした。
お前をあの場所から遠ざけたのも俺達に協力して貰いたいからだ。』
「それが本当だと言う確証は?
お前らが蛮野に操られていないと言う保証はない。」
『確かに提示できる証拠はない。
メイカーからはこの身体とメモリは問題ないと説明されたがな。』
「待て、メイカーは蛮野が操っているんじゃないのか?だからこそ、機械人形をあんなに生産できたんだろう?」
『それについては私が説明しましょう。
確かにメイカーの意志決定思考は"フリーズ"によって蛮野の手にあります。
しかし、それを予期していたメイカーは私達三人と個人的に通信できる回線を作っておいたのです。
そして、そこから流れる蛮野の計画や情報を私が暗号化して無名殿に流しておいたんです。』
「そのフリーズってのは何だ?」
『俺達と同じく蛮野によって作られたロイミュードの人格データの1つだ。
今は蛮野に改造されて意志を消されてしまっているが...俺は彼も助けたい。』
そう言うとハートは地面に正座すると克己を見据える。
『人は誠心誠意の願いを行う時はこの行動をすると良いと学んだ。
頼む! ....俺の友達をあの男から助けたいんだ!
君の...君達の力を貸してくれ!』
そう言いながら彼は頭を地面につけて克己に懇願した後ろにいたブレンも同じ動作をする。
克己にはロイミュードの事は分からない。
蛮野が作ろうとしているヤバい物と言う意識程度だ。
だが、それでも言葉に心が籠っているかは分かる。
ハートは心の底から仲間を助けたいのだと理解した。
「分かった.....お前を信じよう。
だが、ミーナやお袋は安全なのか?」
『そこに関しては心配ない。
メディックが彼らと彼女を命に代えても守る。』
「それは困る。」
『?』
「メディックもお前の友達なんだろ?
なら、全員助けるべきだ....違うか?」
人間にロイミュードの友を認められたハートの心に歓喜の感情が表れた。
『感謝する。』
「無名が一枚噛んでいるのなら、あの糞科学者の計画は失敗するだろうな。
なら、俺達は余計な犠牲が出ないように行動すれば良いわけだな。」
『あぁ、だがそんなに凄いのか無名は?
契約した俺が言うのも何だが、蛮野は天才だぞ。』
そう、蛮野は確かに天才だ。
凡人が数年かかる研究を彼なら数日でこなし、
どんな物でも作り出せる。
だが、その言葉を聞いて克己は笑う。
「はっ!確かにあの男は天才なのだろう。
無名が必要としたぐらいだからな。
だが、それでも無名には勝てない。
蛮野と無名は"根本的に違う"んだよ。」
「それに少し考えれば分かるだろう?」
「
無名とNEVERの打ち合わせが終わり、其々が行動を開始した。
そして、残った無名、黒岩、赤矢は蛮野のいる西の研究所へと向かった。
無名は懐からスマホサイズの機械を取り出すと起動する。
「電波妨害装置です。
これがあれが会話を聞かれる心配はありません。」
「そんな物があるなら何故、NEVERがいる時に使わなかったんだ?」
赤矢の問いに無名が答える。
「電力の消耗が激しくて稼働できるのは5分が限度なんです。
時間がないので手短に説明します。赤矢さん、貴方の蛮野に関する所見を聞かせてください。」
赤矢はそう言われると手に持っていた本を開きページをめぐる...よく見るとそれはメモ帳になっているようで、中には赤矢の筆跡がびっしりと書き込まれていた。
「精神的成熟度が低く常に自分を高位の立場に起きたがる典型的な人間の思考だな。
知識に関しては人のそれを越えているのだろうが、それが全てだと勘違いしている。
自分の知っている知識こそが全てだと思うタイプだ。
犯罪者で言うなら激情型サイコパスな側面が強い。
故に他者との距離を計ることが難しく、コミュニケーション能力が著しく低い。
そんなところだろう。」
「流石、本職の方のプロファイリングは面白く興味深いですね。
では、彼の次の行動はどうですか?」
「こういうタイプは常に自分の想像内で事象やトラブルが起こると考えているだろう。
IQが高いのならその範囲も広い。
だが、精神的幼児性がその判断基準を邪魔している。
だとしたら彼は自分に恥をかかせた存在への復讐を選択するだろうな。
無名....君が襲われたことを見ると、復讐の対象には君も入っているだろう。」
「ならば、僕が前に出れば蛮野は間違いなく食い付きますね。
ありがとうございます、確証が持てました。
黒岩さんと赤矢さんは重加速の範囲外から援護をお願いします。」
「たしか、重加速の範囲内にいてもメモリを使えば問題ない筈じゃなかったか?」
「えぇ、ですが貴方達は僕のアクセサリーシステムの被験者でもあります。
何か不具合が起きて貴方達に被害が出るのは避けたいんですよ。」
「分かった。どっち道、機械相手なら黒岩のメモリは使えても私のメモリは対して効果がないからな。」
そう言って赤矢は「A」のイニシャルが入ったメモリを見せると黒岩と共に離れるのだった。
この時、無名は嘘をついた。
重加速によってアクセサリーシステムが不備を起こすことはない。
では、何故そんな事を言ったのか?
蛮野には"二度のチャンス"を与えた。
一度目はクリムとの話し合いの時、正直に忠告を守れば命が救われる選択肢を残したこと。
二度目は孤島に来て歯向かってきた時だ。
ダメージも回復させて忠告したのに、受け入れて貰えなかった。
日本にはこう言う諺がある。
『仏の顔も三度まで』......
だが、僕はもうチャンスを与えない.....
蛮野天十郎、"君の運命"は決まった。
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