もう一人の悪魔   作:多趣味の男

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悪魔の取引とは元々、死者の魂の選別に使われていた。

だが、もし悪魔同士が取引を行う事があるとしたら
それは一体何を目的としたことなのだろう。


第五話 Nとの邂逅/実験結果

大道 マリアから良い返事を貰えたのは良いものの条件がどう見ても怪しいものとなっていた。

 

"先ずは自分達NEVERの研究を先に完成させろ"...か裏の思惑が透けて見える。

恐らくは自分の研究が完成したら僕との取引を有耶無耶にするつもりなのだろう。

恐らく、僕を只のミュージアムの構成員だと思っているのも大きい。

 

良いだろう。

その"提案"に乗ってやる。

どちらにしても"結末"は変わらないのだから....

 

 

大道 マリアとの合同研究が始まり、

メモリーメモリの能力を酵素剤に掛け合わせる研究は思ったより簡単に成功した。

元々、地球の記憶をメモリと言う形に封じ込めていたのだから当然ではあるがミュージアムの技術力は一介の科学者では勝てない程、高度なものとなっていた。

 

新たな酵素...."再生酵素"(さいせいこうそ)とでも名付けようか。

その実験を行うためミュージアムの実験施設にNEVERのメンバーが集められた。

 

大道 克己、泉 京水、芦原 賢、堂本剛三の四名が実験施設に集められた。

マリアにも確認したがどうやらこの4人が今のNEVERのメンバー全員だと言う。

 

(羽原レイカがいないと言う事は、今の時間軸はVシネ"エターナル"が始まる前と言う事だな。)

園咲 琉兵衛の屋敷にいる時、今の時間軸がどの辺りなのか調べようとしたが詳しく断定出来るほどの情報がなかった。

 

思わぬ情報を手に入れたと考えていると克己が無名に話し掛ける。

「本当に完成したんだな?」

「えぇ、プロフェッサーマリアの御墨付きも得ていますよ。」

「なら良い。

始めてくれ。」

その言葉を聞いた無名は部下(ミュージアムの研究員)に指示を出し酵素の注射準備を命ずる。

新しい酵素は深い赤色をしておりまるで血の様であった。

「克己ちゃん...これ大丈夫なの?」

京水が克己に問いかける。

 

「さぁな。

だが、お袋が問題ないと言ったんだ大丈夫だろ。

それに俺達は"死人"だ。

失敗したところでこれ以上悪くなることはない。」

その言葉に納得したのか全員、渡された酵素入りの注射器を身体に刺し射ち込んだ。

 

酵素を全て射ち終わると身体の状態を確認する。

「これで終わりか?」

克己の問いに無名は答える。

「えぇ、直に新しい酵素が身体に周ります。

そうすれば記憶が戻ってくる筈です。」

すると、NEVER4人が頭を抑えだす。

「うっ!....これは」

 

それに合わせて無名が一人ずつ話をする。

堂本剛三(どうもとごうぞう)、元は山で狩りや林業を行っている青年だった。」

それに合わせて剛三も話し出す。

「そうだ。

俺は山での違法なゴミの不法投棄をする会社に抗議して..それで....」

 

芦原 賢(あしわら けん)、元警察特殊部隊SWATのメンバーであった。

だが、ある事件の解決の為に突撃した現場で....」

「...."仲間"に裏切られて殺された。」

 

泉 京水(いずみ きょうすい)、指定暴力団体の若頭だったが部下にミスを押し付けられそのケジメとして...」

「私....ナイフで刺されちゃったのよね。」

 

「そして、大道 克己。

これが何か分かりますか?」

そうして無名はマリアから預かったハーモニカを渡す。

すると克己はとある曲を吹き始める。

自分を落ち着けてくれる曲を......

「その"曲"は?」

「これは...俺がまだ生きていた頃、

聞いていたオルゴールの曲だ。

お袋が眠れない俺のために買ってくれて寝る時は何時も流してくれた。」

 

その言葉を聞いたマリアは涙を流す。

真実だったのだろう。

そして、それは彼等の記憶が正常に戻っている証しでもあった。

「実験は成功ですねプロフェッサーマリア。」

無名は笑顔で彼女に告げる。

その顔は打算など無い心の底から出たものだった。

 

 

そして、克己に顔を向けると頭に"衝撃"を受ける。

無名はそのまま地面に倒れた額に穴を1つ開けて...

克己はそんな無名を見ながら笑顔で告げた。

 

「本当にありがとう。これで"用済み"だ。」




Another side

マリアは新たな酵素を打たれている息子を神に祈る様に見ていた。
自分の技術では身体の蘇生は出来ても"記憶"や"人間性"を戻すことは出来なかった。

だが、無名という少年が持ってきたメモリにより全てが変わった。
酵素を改良しメモリのデータと肉体を同期させる。
無名曰く、"脳だけドーパントになる"状態を作り上げたのだ。

そして、完成した新たな酵素が今彼等と息子の身体に入っていく。
酵素の注入が終わると無名が一人一人に話を聞いていく。
すると、全員が死んだ時の情報を鮮明に思い出すことが出来た。

克己に至ってはあのオルゴールの曲についてまで思い出してくれた。
私は余りの嬉しさで涙を流す。
やっと、"息子を甦らせる"ことが出来た。

克己が事故で死んだことを聞いた時、
私は自分の魂を悪魔に売り渡す覚悟で自分の研究成果を息子に使った。
全ては息子の死を覆すため...そして今、それが叶ったのだ。

「実験は成功ですねプロフェッサーマリア。」
無名が私に向かい笑顔でそう告げた。
あまり、優しい笑顔に私は戸惑う。

.......何故ならここで、彼を殺してしまうからだ。
そして、克己は隠していた銃を抜き無名の額を撃ち抜いた。
それに呼応するように周りのメンバーも研究員を殺害する。
この酵素を作る際、私はあえて人間性の欠如を治さなかった。
そして、この実験を小規模なものにしたいと言う私の提案を受けてくれたおかげでここにはミュージアムのメンバーと無名と数名の研究者しかいなかった。

私は額を撃ち抜かれた無名に向かって告げる。
「本当にごめんなさい....けど貴方がミュージアム、いえ園咲 琉兵衛の部下である以上、生かしておくのは危険なのよ。」

息子を救うためなら私は"悪魔"にだってなってみせる。



全ては子への愛ゆえの行動.....

だが、マリアは大事なことを忘れている。

本当の悪魔には愛等と言う感情はなくそして

「額を一発とは流石、傭兵として生きていた事だけはありますね"大道 克己"。」


悪魔は銃弾程度で死ぬ存在では無いことを....

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